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No.12290の一覧
[0] 稀代の陰陽師、麻帆良に《オリ主 習作》新章開始[清明](2010/12/09 19:27)
[1] プロローグ[清明](2009/10/04 07:19)
[2] プロローグ2 ほんのちょこっと改正12/15[清明](2010/12/16 00:20)
[3] 第一話[清明](2009/10/04 07:21)
[4] 第二話[清明](2009/10/04 07:25)
[5] 第三話[清明](2009/10/04 07:31)
[6] 第四話[清明](2009/10/04 07:32)
[7] 第五話[清明](2009/10/04 07:34)
[9] 第六話[清明](2009/10/04 07:43)
[10] 第七話[清明](2009/10/04 07:39)
[11] 第八話[清明](2009/10/04 19:41)
[12] 第九話 序章完 12/8改正[清明](2010/12/08 00:13)
[13] 第十話 12/9改正[清明](2010/12/08 19:14)
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[12290] 第五話
Name: 清明◆fd456053 ID:087dfb27 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/04 07:34
「さて、どうしたものか」

 ふと、放課後に一人になってから、放課後はいつもエヴァの家に行っていた事に気づき、思わず苦笑した。新しく刹那が護衛に着いたからといって安心しすぎだった。

 そういえば、刹那が剣道部に体験入部するから、木乃香が見学に行くと言っていた事を思い出し、足を武道館の方へと向けた。

 麻帆良学園の武道館は凄まじい。何がと言われれば、全てと答える他無いだろう。

 広大な面積に、最新の物で整った設備、武道館にかかりつけの講師もいて、顧問のように素人が教えるのではなく、本職の人をわざわざ呼ぶあたり、かなりの熱が入っている。そこを、小中高、それに加えて大学のサークルが順番を決めて使っている。もちろん、問題が起きる事はあるが、それも些細なものだ。

 と、しきりに感心する真治が右奥のスペース、剣道部が使う板張りの所に目を留めた。そこでは、防具と面を付けた男女とも分からない二人が向き合っていた。

 奥の方の大柄な相手が、ふっと一瞬気を抜いたのが遠目でも分かった。その隙を見逃さず、こちら側の小柄な方が、遠く離れたこちらの腹にまで響く張りのある声を発した。

「面!!!」

 その剣先が一瞬ぶれたかと思うと、次の瞬間には相手の面に気持ち良い音を立てて当たっていた。大柄な相手は、竹刀を握ったまま2,3メートル吹き飛ばされ、大の字になって転がった。

「……あ、そ、それまで!!」

 そのあまりの速さに、相手も何が起こったのかほとんど分かっていないのだろう。心配そうに手を差し出した審判を無視して、呆然と刹那の方を見ていた。

 あの剣裁きで分かった。あの小柄なほうは刹那だ。木乃香がこちらに背を向けて観戦している事から間違いないだろう。

 まぁ、それも仕方が無いだろう。それなりに鍛えている真治でさえ、竹刀を間に置いて身を捻るだけで精一杯だっただろう。結果、竹刀は粉砕され、肩かどこかに当たっていたことだろう。

 しかし、あの刹那が一般人相手に―――防具有りで竹刀で気を使っていないとはいえ―――本気を出すのは珍しかった。

 何か理由があるのだろう、と心持ち早足で真治はその場に向かった。





 真治が到着した時、その場には不穏な空気が漂っていた。周りにいた部員達が皆立ち上がり、刹那の方を怒りの混じった目で見つめている。

「て、めぇ……っ」

「なにしやがる! この野郎ぉ」

「主将は試合を控えてるんだぞ。少しは考えやがれ!」

「何を言っている? 先に手を出してきたのはそちらだろう」

 刹那はぎゃいぎゃいと騒ぎ立てる男達の罵声を涼しく聞き流すと、面を脱いで静まる様子の無い男達を冷ややかに見つめた。

 刹那のような美人に睨まれたら怯んでもいいものだが、男達には逆効果だったようだ。転がっていた男が部員に助け起こされて、ようやく立ち上がった。

 面を剥ぎ取るように脱ぎ捨てた男は、顔をゆがめて刹那に更なる罵声を浴びせた。

「はっ、普通の女子にあんな力があるわけがねぇ。何か薬でもやってんのか?」

「確かに、化け物・・・みたいな力だったよな」

「ばか、みたいじゃねぇ。化け物・・・なんだよ」

 相手にとっては何ともなしに言った言葉だったのだろう。しかし、それはいまだトラウマから完全に脱しているとは言い切れない刹那の心を深くえぐった。

 めき、と刹那の握った竹刀が音を立てる。竹刀には気が纏われており、軽く叩いただけでも一般人は軽くあの世を見る事になるだろう。俯いた刹那の表情は分からないが、明らかに平常心を失っていた。

「ふん、どうせあそこで見ている女もどうる…い……」

 真治が止めに入ろうとしたその瞬間、主将と呼ばれた男は、一番言ってはいけない事を言ってしまった。

 ゆっくりと顔を上げた刹那の顔には何も無かった。能面のような無表情、それでいて目はらんらんと光っていた。

「(まずい!)―――オンアミリテイウンハッタ」

 真治は咄嗟に小声で呪を唱えると、ついこの間覚えた瞬動で、男と鼻先を突き合わせるように移動した。

 刹那は真治が現れるのと同時に竹刀を振り下ろした。

 どすっ、とサンドバックに拳を突きたてるかのような音を立てて、刹那の竹刀が真治の肩にめりこむ。

 めりめりと音を立てる肩を無視して、真治は竹刀がめりこんだ方と逆の手をポケットに入れ、一枚の上等なカードを取り出した。

「警備員だ。何の騒ぎか、聞かせてもらおうか」

「あ……あぁ」

 後ろで刹那が力を抜いたのが分かる。真治の肩骨を砕き、1cmほどもめりこんだ竹刀は、音を立てて転がった。

 痛みを顔に出さないよう、無表情を心がける。

「顧問はあなたですか?」

「あ、ああ……」

「一応、事情を聞きます。代表二名、顧問のあなたと君、それと君と……連れの君。事務室に来るように」

 男は、自分よりも年下の少年が指図する事に憤って口を開きかけたが、真治の有無を言わさぬ迫力に、押し黙った。





「双方に過ちがあったようなので、両方には反省文を来週末までに提出してもらいます。了承したなら、練習に戻ってもらって結構です」

 真治は終始冷静に話を進め、結論を言い渡した。男は一瞬、何か言いたそうに口を開いたが、真治に静かな目で見つめられ、舌打ちをすると顧問と共に練習に戻っていった。

 結局、女子中の練習日を間違えた刹那に、今日使っていた男子高の生徒が絡んだのが原因だったらしい。男子高には花が無いので、可愛い二人にちょっかいの一つでも出したくなったのだろう。そこで、竹刀袋を持っていた刹那に声をかけたらしい。

 刹那が怒っていた理由は、刹那が着替えているうちに他の部員が嫌がる木乃香に無理やり話しかけていたのを、勘違いした刹那が激昂して―――とのことだった。運良く喧嘩両成敗に出来たが、あれが男子生徒に当たっていたら、と思うと肝が冷える。

 ぱたん、と音を立ててドアが閉まると同時に、どっ、と真治がソファに沈み込んだ。

 近くのソファに座って落ち込んでいた二人が慌てて真治に近寄る。抱き起こした真治の額からは大量の脂汗が吹き出ていた。

 木乃香がそっと患部に手で触れてみると、そこだけ見事に陥没していた。木乃香は顔色を真っ青にして、この六年で練習し、それなりに上手くなった治癒魔法を必死に施す。

「プラクテ・ビギ・ナル 汝が為にトゥイ・グラーティアーユピテル王のヨウイス・グラーティア恩寵あれシット ―――治癒クーラ

 ぽう、と優しい光が真治の肩を包む。真治の顔から見る間に苦痛の色が消えていく。

「オンセンダラハラバヤソワカ」

 それに加えて、真治は『月光菩薩』と行書体で書かれた札を取り出すと、肩に貼り付けた。この札には自然治癒力を高める効果がある。

 真治は一息つくと、心配そうに覗きこむ木乃香の頭を軽く撫で、地面に膝を突いて頭を垂れる刹那に向き直った。

「俺は気にして無いから気にするな……と、俺個人の話なら言ってやれたんだがな」

 びくっ、と小さくしていた身を更に縮こませる刹那。

 木乃香は何かを言おうとして、口をパクパクとさせているが、言葉が出てこない。

「あの一撃は、俺が庇っていなければ確実に相手の命が無くなっていた。怒るなとは言わない、楽しむなとは言わない。だが、刹那は木乃香の護衛だ。ここ一番というときはその感情を押さえ込まなくてはいかない」

 今、まさにそれを実践して見せた真治の言葉には重みがあった。ぎゅ、と制服のすそを握り締めて泣きそうに顔をしかめる刹那を真治は抱きしめたい思いで一杯になった。

 それを拳を握り締める事で抑えると、その気持ちを押し殺した。

「……刹那は一週間護衛の任から外す。しっかりと反省する事。以上だ」

 真治はこれで終わり、と刹那の頭を撫でて立ち上がった。

 罰にしては軽すぎるのは分かっているが、刹那を護衛から外すのは正直きついので、仕方ない、と自分の冷静な心を誤魔化した。

「……え? そ、それでは軽すぎます!!」

「ふぇ? 別にいいんとちゃうん?」

「うちは、このちゃんの事を引き合いに出されたとき、自分が抑えられへんかった……あそこで、真治さんが止めてくれなかったら、どうなっとったか、うちにはよう分かる。相手の男の人は、運が良くても半死半生くらいにはなったはずや。うちは、うちは自分で抑え切れへん自分が怖い……」

 自らの体に腕を回し、項垂れる刹那。その様子がどこか、迷子になった幼子が助けを求めているように思った真治は、つい自然と手が伸びた。

「あ……」

「怖がらんでええ。怖がらんでええんよせっちゃん。うちがおる、真治がおる。せっちゃんが手を伸ばせばすぐ届くとこに、いつでもおるから、な? 安心してええんよ」

 怯える刹那を木乃香がふわっ、と抱きしめた。ぽんぽんとあやす様に背中を叩く。

 見事に先を越された形になった真治。しかたなく、しばらく伸ばした手を遊ばせていたが、木乃香に微笑まれてもう一度その手を伸ばす。

「強くなろう、刹那。守れるくらいに、強く。周りに文句を言われるような事が無くなるくらい、心も、体も」

 ぐりぐりと刹那の頭を撫でる。刹那はぶるり、と震えたかと思うと木乃香の腕から抜け出して、真治の胸に飛び込んできた。

「はい……」

 小さく体を震わせて、嗚咽をかみ殺す刹那を抱きしめ、ゆっくりとゆすってやる。そんな刹那に今度は木乃香が手を伸ばし、先ほどの真治のように優しく頭を撫でた。

 ぎゅうぅ、と少し息苦しいほどに抱きしめてくる刹那。いつもよりも素直に甘えてくる刹那に、真治はいろんな意味で胸が詰まる思いだった。

 同じように優しく刹那を見守っていた木乃香とふいに目が合い、小さく微笑みあった。




 主人公が頑張った第五話でした。

 刹那の抜け切らないトラウマを何とかしようと思い、書き上げました。
 本編までには、正式に三人を引っ付けようと思います。しかし、そうしたらネギ君の寝床はどうしよう……
 いくら十歳とはいえ、主人公に感情移入しまくっているので一緒の部屋で寝泊りさせるのはどうも少し抵抗があります。うーん、どうしよう。

 テスト期間が終わり、小説を書く時間が減ってしまいました(今までは昼からずっと書いていたもので)。それに応じて更新のペースが落ちてしまうと思います。ご了承ください。

 誤字修正いたしました。ご指摘くださった方、ありがとうございます。


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