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No.12290の一覧
[0] 稀代の陰陽師、麻帆良に《オリ主 習作》新章開始[清明](2010/12/09 19:27)
[1] プロローグ[清明](2009/10/04 07:19)
[2] プロローグ2 ほんのちょこっと改正12/15[清明](2010/12/16 00:20)
[3] 第一話[清明](2009/10/04 07:21)
[4] 第二話[清明](2009/10/04 07:25)
[5] 第三話[清明](2009/10/04 07:31)
[6] 第四話[清明](2009/10/04 07:32)
[7] 第五話[清明](2009/10/04 07:34)
[9] 第六話[清明](2009/10/04 07:43)
[10] 第七話[清明](2009/10/04 07:39)
[11] 第八話[清明](2009/10/04 19:41)
[12] 第九話 序章完 12/8改正[清明](2010/12/08 00:13)
[13] 第十話 12/9改正[清明](2010/12/08 19:14)
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[12290] 第十話 12/9改正
Name: 清明◆fd456053 ID:087dfb27 前を表示する
Date: 2010/12/08 19:14
 ただただ青く、雲ひとつない蒼穹が広がる空。下には分厚い雲が風に流され、漂っている。

 今、真治達はエヴァの別荘に来ていた。真治達がいるのはそんな広大な空間のど真ん中。直径二キロほどの円錐をひっくり返したような物体の上だった。

 そこで真治は木乃香と刹那を相手に模擬戦をしていた。刹那が前衛に立ち、木乃香が援護する形だ。

 刹那はじっと真治を見つめていたが、不意に翼を広げると、三次元の動きを駆使して真治に向かって行った。

 真治は刹那の動きを目で追いながら札を取り出した。それを見た木乃香が牽制に魔法の射手を放つ。

「プラクテ ビギ・ナル
   光の精霊三柱トレース・スピリトゥス・ルーキス
      集い来りてコエウンテース 敵を射てサギテント・イニミクム
        魔法の射手サギタ・マギカ 光の三矢セリエス・ルーキス!!」

 木乃香の前に光が収束し、光弾が出来る。その光弾が真治に向かって襲い掛かった。

「オンバザラ ダド、バン!」

 真治は構えた札をくるっ、と手に巻きつけると手だけを集中的に強化して、魔法の射手を弾き返し、刹那が放つ上からの唐竹割りを瞬動で避ける。

 手に巻きつけた札を解くと、呪をとなえ、地面に投げつけた。

「謹請し奉る、我が槍は土の中に在り。その槍は全てを貫く瞬槍也!」

 唱えた瞬間、地面が隆起し、刹那に襲い掛かった。

 それを上空に舞い上がることで避ける刹那。それに追い討ちをかけるようにして隆起した土の中から目にも止まらぬ勢いで金属の槍が無数に突き出る。

「っ!?」

 不意を突かれた刹那は、くるくると舞い上がることによって襲い掛かる槍の群れを避ける。

 しかし、真治の狙いはそちらではない。後方で詠唱を続けている木乃香に狙いを定めた。

「プラクテ ビギ・ナル
   来たれ光精!!! 闇を切り裂き、照らす光となれ
       雷光一閃!!!」 

 しかし、それは遅かった。木乃香は詠唱を完成させると、つい先日エヴァからもらった発動体である指輪をはめた右人差し指を真治に向けた。

 とたん目を焼く光とともに、一条の光が真治のかざした防御符を容易く破りその肩を貫いた。攻撃魔法が苦手な木乃香がこんな大技を使うとは思っていなかった真治は成すすべなく吹き飛ばされた。

「くぅっ……」

 いや、当たる瞬間、九字を切ってなんとか二重に防御壁を完成させていた。しかし完全に威力を防ぐことは出来なかったらしく、錐揉みしながら上空に向かって吹き飛ばされた。

 そんな真治に向かう刹那。翼がある刹那は360度からの自由な攻撃を駆使して真治を上空にとどまらせ、自分にとって有利な土俵で勝負していく。

 上空にいる真治は、刹那の猛攻を両手に札を巻き付けて何とか防ぐしかない。いくら浮遊術を使えたとして刹那の高速機動の前では焼け石に水だ。

 虚空瞬動で離脱しようとしたところに、止めとばかりに木乃香が魔法を発動させた。

風花 武装解除フランス・エクサルマティオー!!」

 ばしゅっ、という音と共に、真治が手に巻き付けていた札はおろか、真治のポケットからも札や数珠が飛び出した。

「くっ……」

「はあぁっ!!!」

 真治の抗魔用に付けていたアミュレットもなんら効果を示さない。

 驚きに身を固める真治に刹那が振り下ろした峰での強打を、腕をクロスさせて防ぐ。体全身を揺さぶる衝撃と共に、真治の体がまっすぐに墜落した。

 真治はそのあまりの勢いに、受身を取る余裕もなく叩き付けられる。背中を強打したことによってがふっ、と肺の中の空気が強制的に排出された。

 ひりつく喉に手をやりながら、あわてて転がろうとしたが、次の瞬間には真治の喉元に無骨な大太刀が突きつけられていた。

「……お見事。完敗だ」

 2,3度息を吸い、新鮮な空気を肺に入れた後、すっ、と両手を挙げ敗北宣言をした。

「やったぁ! せっちゃん、初勝利やで!!」

「うん、やったね。このちゃん」

 手を取り合って喜ぶ二人に真治は寝転がったまま苦笑した。最初は二対一でも、木乃香が攻撃魔法をなかなか習得しなかったので何とかなったが、闇の吹雪級を持ってこられると、きちんとした札が無いと勝てないほどにまで二人は強くなっていた。

「まったく、だらしないな。真治」

 少しイラついた様子の声に振り向くと、案の定不機嫌なエヴァが。

 大方気に入っている真治が負けたのが気に入らないのだろう。

「まぁ、確かに木乃香と刹那の才能は相当なものではある。……正直なところ、たかが一年とちょっとでここまで上り詰めたその技量には感服する」

 実際、別荘を多用しているので二年近くにはなるんだろうけども、それにしてもかなりのスピードだった。

 それは単にエヴァの効率のいい指導と実践を中心とした魔力運用の叩き込み、後は木乃香自身の意志だろう。強くなりたい、その意志は真治とエヴァの決闘のときからずっと木乃香と刹那が思い描いていることだった。

 木乃香の急成長に目を奪われがちだが、刹那の上達振りも凄い。真治の前世の知識にある、チャクラを使った効率的な気の増幅や運用がきっかけとなり、今でその気の扱いには師である葛葉 刀子ですら舌を巻くほどだ。もちろん、剣術も鍛錬を欠かさずやっているおかげで技のキレと威力が大違いだった。

「本当だよなぁ。まさか二年ほどで追いつかれるとは……」

 しかし、それに対して真治は一つの壁にぶつかっていた。それは決め手の少なさによる決定打不足だった。

 真治の結界は一流どころか超一流と呼んで差し支えないレベルにまで高められている。術の応用性も高く、真治自身のバトルセンスも一流。しかし、決め手となるような技が少なかった。

「何を贅沢な悩みをしている。馬鹿者」

 う~ん、と唸っていると、エヴァにぴんっ、と額を指ではじかれた。

 ん? と見返すと、エヴァが呆れた表情で見返してきた。

「貴様にはあの反則じみた剣やら勾玉やらがあるではないか。何が不満なんだ」

「あれは一回使ったら消耗が激しいからな。もうちょっと連発出来る大技が欲しい」

 エヴァはなるほど、と頷いたが顎に手を当てて頭を振った。

「……ふむ、陰陽術師のことはあまり詳しくないからな。助言できることは少ない」

「ああ、今じゃ知る人はほとんどいないだろうからな」

 師がいない、ということが最大の弊害だった。前世の自分が使っていた技は全部使いこなしている。まぁ、今作り置きしている札が使えるようになればエヴァとも打ち合えるのだが、便利な道具に頼りすぎるのはよくない。

「ま、そのうち何とかするかな」

 十種神宝を使いこなすなりなんなりして何とかしなければいけない。

 目下のところの目標は十種神宝の多重投影だろう。

 ふと、視線を感じ、目線をずらすとそこには目を輝かせた二人が。

「どうした? 二人とも」

「えへへ、あのな、せっかく初勝利したんやし、ご褒美があってもいいと思うんよ」

 隣では刹那もうんうん、と頷いている。

 そんなことを言われても用意なんかしていなかった真治は困ったようにぽりぽりと頬を掻いた。

「そんな立派なものじゃなくても……ただ、最近忙しかったから」

 もじもじしながら刹那の言った言葉に、真冶はああ、と納得した。

 最近、修行ばかりで忙しかったから三人でどこかに出かけたり、ということはあまり無くなっていた。

 真冶は、わかった。と頷こうとしてちら、とエヴァのほうを見た。

 エヴァは顎に手を当てて、期待に目を輝かせた二人と、どこかそわそわしている真冶を見て、頷いた。

「いいだろう。修行も一段落したし、真冶も少し考える時間が必要だろう。二週間……いや、一月ほど遊んで来い」

 その予想外の言葉に三人は色めき立った。もらえてせいぜい三日ぐらいだと思っていたのだ。

 早速デートの計画を立て始める三人にエヴァは苦笑すると、念のために口を開いた。

「言うまでもないと思うが、自己鍛錬は欠かすなよ。それと、私も忙しくなるから家をちょくちょく空けることになる」

 了解、はーい、と返事が返ってくる。浮かれている三人に釘を刺しておくべきか、とも思ったがやめておく。

 ニコニコと話す刹那を見て思う。だいぶ変わったな、と。前は口調も固苦しく、雰囲気もどこか陰鬱としたものを背負っていたが、今はどこにでもいる少女だ。

 エヴァは、そんなところが気に入っていたはずなのだが、今のほうが良い、と思うのは心境に変化があったからか。

 何にせよ、戦うときはきっちりとスイッチが切り替わっているので、特に問題はない、と思考を片付けた。現にここまで慕っている真治をぼこぼこにしていたことだし。

 エヴァは、茶々丸が持ってきた紅茶を飲みながら、話し合いからじゃれあいに変わってきた三人を、微笑ましそうに見つめた。





 事のきっかけは、いつもの馬鹿騒ぎから始まった。

「ええーー!? 彼氏ができたー!?」

 昼、いつものように騒がしい教室で、いつもの二人に加え、最近よくしゃべるようになった明日菜を混ぜてご飯を食べていた真冶は、教室に響き渡ったその声に、一瞬手を止めた。

 声を上げたのは釘宮円。必死にその口を押さえているのは柿崎美砂だった。

 なんやなんやー、とお祭り大好きなA組はクラスにいた大半がそこに向かって行った。当然、お年頃な明日菜や木乃香もそれにつられるように慌しく駆けて行った。

 教室のほとんどが一斉に動く様を見て、同じようにぽかん、とその様子を見つめていた刹那と目が合い、お互いに苦笑する。

「大変だな、柿崎も」

「そうですね。根掘り葉掘り聞かれそうだ」

 特に、ゴシップ好きな朝倉からはしつこい追求が待っているだろう。と、そこで十分ほど騒ぎあっていた団体の目がばっ、と一斉にこちらを向いた。

 たくさんの目に見つめられ、思わずたじろぐ二人。そんな二人など意に介さず、そのお祭り集団は少し顔を赤くした木乃香を押しながら、一斉にこちらに押しかけてきた。

「あー、なんか用か?」

「ねぇ、あんた木乃香と刹那ちゃんの両方と付き合ってるって本当?」

 ものすごい勢いで迫ってくる明日菜を見て、やっぱりか、とため息をつく。視線をずらせば、手を掲げて謝るジェスチャーをする木乃香が。

 ふと周りを見ると、その視線はどれも少し険を孕んでいるように見えた。

 ま、当然だよなぁ、と今の関係を正確に把握している真冶は苦笑する。世間体的に、今の三人の関係はおかしいと言える。そして、真冶は傍から見れば、二股をかけている最低男だ。いや、間違っちゃいないが。

「ま、そうだよ」

 こうなった以上隠し通せるものではないので、あっさりと頷く。

 あっけらかんと頷いた真冶に、周りの人垣からむっ、とした雰囲気が漂ってくる。

 とたん、飛び交う真冶に対する罵声。しんじられない、や最低、といった言葉だが、たくさんの人から言われればそれなりにくるものがある。

 そして、真冶は女性からすればふしだらな男だろうからな、と思い、甘んじてそれを受ける。刹那と木乃香はそれを止めようとするが、周りの勢いにかき消され、誰も聞いていない。

 と、そこでこの喧騒を止めたのは意外な人物だった。

「ちょっと待った」

 そう言って手を上げて周りをどうどう、と嗜めるのは、普段から修羅場が大好き、と言っている早乙女ハルナだった。

「パル?」

 ハルナだと止めるより、むしろ扇動するんじゃないか、と周りは疑問の声を上げる。

 それに、酷いなぁ、と返しながらハルナは口を開いた。

「皆が思っているのは、長原君が二人のどちらかを振って二人が傷つくんじゃないか、って事だよね?」

 うんうん、と人垣が一斉に揺れ動く。

「う~ん、断言はできないけど、それは多分ないと思うよ」

「なんで?」

「私がラブ臭を嗅ぎ取ることができるのは皆知ってるよね?」

 本来存在しないはずの臭いだが、ハルナは普段からそれを連呼しているので、とりあえず周りは頷く。

「で、そのラブ臭の強さ……便宜上ラブパワーとでも言いましょうか。人間が発することができるラブパワーの限界が100とするよ?
 小学生の初々しいカップルが15くらいで、中高生のカップルが30.大学生以上ないし大人な関係を持っているカップルが50っていうのが私が今までの経験上の基準値なの」

 ほ~、と周りは感心する。存在するかわからないもので、大人な関係かどうかまで嗅ぎ分けるとは。もちろん出任せだが。

「んでね、木乃香のラブパワーが、なんと73もあるのよ!」

 ええー、と周りが驚きの声を上げる。すでに、懐疑的だったハルナの特殊体質を完璧に周りは受け入れている。相変わらず対応力の強いクラスだ、と真冶は苦笑した。

「んでもって、刹那ちゃんが74!」

 おおー、と歓声が上がる。もはやそこは、真冶を問い詰める場ではなく、お祭り騒ぎをする場になっていた。

「そんでもって、長原君が木乃香と刹那ちゃん両方にちょうど78のラブパワーを放っているのよ!!」

 とうとう,わー、と歓声が上がり、拍手が巻き起こる。やるじゃん、と鳴滝姉妹にうりうりと脇腹を小突かれる真冶は、机に突っ伏していた。もうどうにでもしてくれ、といった心境だった。

「これは、今まで感じた中でも最も強いラブパワーなのよ! 今までの高畑先生と……あ、なんでもない。とにかく、今までの最高を大幅に塗り替える記録になったのよ!!!」

 ハルナは思わず口を滑らせてしまい、猛烈な勢いで突っかかってくる明日菜を人の壁をうまく利用して避けながら説明を続ける。

「ようするに、長原君と二人は、よっぽどの事がない限り別れる事がない、強いラブで結ばれた関係なのよ! だから、これ以上の詮索は野暮ってものよ。それより、私はエヴァジェリンちゃんがたまにどこか遠いところを見てるときの71の数値が気になるんだけど……」

 今まで騒いでいた一団は、ハルナの後半の台詞を聞いて、次のターゲットへと襲い掛かった。去り際に、ぱちん、とウインクを残していったハルナが眩しく見えた。

 嵐のような一団が去った後には、ぐったりとした刹那と木乃香。机に突っ伏している真冶が残された。

「台風みたいだったな……」

「でも、皆あんなに真冶のこと悪く言わんでもいいやん」

「本当に。真冶も少しは言い返せばよかったのに」

 むー、と膨れる二人に苦笑する。遠くから聞こえてくる「何だ貴様ら? ちょっ、まて、……た、助けろ茶々丸、真冶ー!」という声は笑って聞き流す。

「ま、これで学校でも堂々といちゃつけるからいいんやけどなー」

 とたん、両肩に柔らかい重みがのしかかる。言うまでもない、刹那と木乃香だ。

 学校内でこういうことをするのはあまり好きじゃない真冶は身をよじって逃げようとしたが、幸せそうなため息をつく二人に、あきらめた。

 よっ、と体を起こして昼食を再開する。量が少ないため、すでに食べ終わっている二人は、真冶の邪魔にならないように、すすっと身を寄せてきた。

「……あいつらが気づくまでだぞ」

 それでも少し食べにくかったので、じとめで横を見るも、幸せそうな笑顔を返されて何も言えなくなった。 

 抱きついてくる二人の少し早い鼓動が聞こえてくる。猫のように擦り寄ってくる二人に、ついつい抱きしめたくなってるが、ここが学校だという事を思い出して踏みとどまる。

 顔をこすり付ける木乃香と、肩に顔をうずめて緩みきった表情を見せる刹那。二人といつものようにいちゃいちゃしようとする手を止めるようにするのには相当苦労した。




 あれ? なんか見たことあるぞ?という方はお久しぶりです。なんだこの小説? という方ははじめまして。ありえない期間放り出しておいて戻ってきた清明と申します。今後はさらに甘さを増していく三人のいちゃラブ具合に三倍濃縮ブラック片手にお楽しみください。
 また、ストックが無いまま考え無しに投稿したので更新は不定期とさせていただきます。ご了承ください。

 PS
 いきなりですが少し改正を。
 木乃香が闇の吹雪はおかしいだろ! はい、おかしいです、すみません。いや、何で気がつかなかったんだろう? ということでオリジナル魔法を。

 雷光一閃
 詠唱は闇の吹雪などを転用したもので、威力もそれに追随するもの。むしろ一点突破なので貫通力はかなりのもの。スタングレネードと攻撃を兼ねる何気に便利な技。


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