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No.12279の一覧
[0] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人[ADFX-01 G-2](2010/06/06 02:14)
[1] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人-1[ADFX-01 G-2](2009/09/28 02:47)
[2] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人-2[ADFX-01 G-2](2009/09/29 00:26)
[3] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人-3[ADFX-01 G-2](2009/10/05 21:05)
[4] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人-4[ADFX-01 G-2](2009/10/05 21:21)
[5] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人-5[ADFX-01 G-2](2010/06/06 02:09)
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[12279] 【習作】ルイズちゃん達と寝不足の技術者才人-3
Name: ADFX-01 G-2◆a9671369 ID:b14f60b8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/05 21:05
 姉さまと喧嘩したヒラガサイトは、今、机に突っ伏つして寝ている。死んでいるのではないかと心配になるくらい静かに。あと2分もすれば起きるのだろうけど。寝ている間もペンを手放さず、時々文字をや図を描いているところを見ると尊敬したくなる。しかし綺麗な紙と不思議なペンだ。真っ白で凸凹がない。インクをつけなくても書ける。今度姉さまに頼んで作ってもらおうかな。
 文字を教えてほしい、と頼まれたのは一時間ほど前だったか。ということは、一日6時間睡眠コースを堪能しているということか。流石にこの世界の文字は知らないらしく、唸りながら簡単な文章を解読していった。今朝の約束じゃ、明日の予定だったはずなのに、もしや、今日は一日寝るつもりだったのだろうか?
 それはとにかく。私はその間の空いた時間を利用して『ニホン語』を勉強している。だが。
「…………」
 難解にも程がある。基本となる表音文字『ヒラガナ』、その補助と思われる全く音が同じ『カタカナ』、表意文字で複雑な『カンジ』、その他『あるふぁべっと』『ぎりしゃもじ』なるものをまず覚えないといけない。どうにか『ヒラガナ』は読めるが、『カタカナ』はともかく『カンジ』には手を出す気になれない。
 ヒラガサイトが持ってきた本が読みたいがために教えてもらっているのだが、この調子ではいつになることやら。辞書の類をヒラガサイトが持っていたのは僥倖だったが、それにすら『カンジ』が使われているので引くことすらできない。
 ヒラガサイトは『いずれ全部翻訳するからいいよ』などと言っていたが、それで諦める気にはなれなかった。
「……っしゃああああ!」
 ヒラガサイトが起きた。多分、15分丁度。相変わらずこれには感心する。起きる時叫ぶのは、気合を入れるためらしい。私も真似してみようか。すっきり起きれそうだ。
「で、ここの動詞はどこにかかってんだ?」
 寝る前に聞いていた言葉の、そのまま続きを言っていた。
「どこかしら? あ、ここね……この動詞はこの代名詞じゃなくてこっちの主語に……」
 もう驚かない。たった数時間で全く違う言語を覚えるなんて、どれだけ優れた頭脳をしているのだろうか。もう少しすれば複雑な言い回しとかまで進んでしまえるんじゃないか。
「こっちも教えてほしいんだけど」
「ん? どこだい」
「ここ。主語が見つからないのよ」
「あー、日本語は主語抜いて文脈から予測したりすることがよくあるからな……主語とか動詞必要ない時もあるし。この場合は次の行と一緒に訳して流れを掴まないとーーーー」
 と、こっちは複雑怪奇でフィーリングが多い超難解言語の一行の読解に何時間もかかりそうな予感がする。
 しかし不思議だった。ここまで音も文法も違う世界なのに、私とヒラガサイトは同じ言葉で話している。いや、実は双方違う言葉を話しているのかも。ルーンを得た動物が喋るのという事例はよく聞くし。それと同じ原理かもしれない。ルーンが何かしらの方法で互いの言葉を翻訳しているのかも。
「で、この文の意味は『俺とお前は同じ期に軍に入った同僚だ』ってことになる……聞いてるか?」
「あ? ええ、聞いてるわ『俺とお前とダイゴロウ』……と」
「違えよ!」



 一悶着あったけど、ヒラガサイトのハルケギニア語習得は完全に終わり、私は『ドーキノサクラ』を翻訳できないでいた。
「つまりここは、自分と友達が軍の学校を卒業したことを桜の樹で例えているのね?」
「そうだな。桜は日本のシンボルであると同時に学校の卒業や入学なども連想させるからね」
 日本語は面白い。一つの文に幾つもの意味を持たせている。そこらの機微が判らなければ理解することはできないと思えるほど。
「数字も覚えたし……気分転換に数学にするか」
 数学。ヒラガサイト曰く、世界を表現する幾多の方法の中でシンプルで最強の方法。興味は尽きない。
「四則演算って判る?」
「全然」
 ということで、基礎の基礎から教えてもらうこととなった。途中から何故か姉さまが乱入してきたが、ヒラガサイトは時に気にした様子もなく姉さまにも教えていた。
「こんな法則があったのね……」
 円周率などを使った基本的な形の面積の分割計算や、色々な計上の体積の計算。これは領地の面積計算や税の計算に使えると姉さまがヒラガサイトに言うと、頭を撫でられて褒められた。普通なら雷のように怒るはずなのに、姉さまはまんざらでもなさそうだった。むしろ嬉しそう。
「つか、初めてで暗算で9の5乗ぽんと出るのかよ」
「九九の表があってこそですわ」
「凄いわね。あんなに難しかった掛け算がこんなに簡単にできるなんて」
 信じられないという顔をしているヒラガサイト、いやサイト。そういえば、姉さまに聞いたがヒラガが家名でサイトが名だったらしい。家名なくてヒラガサイトが名だと思っていた。恥ずかしい。



 素晴らしい!
 位置と速度と加速度の概念!
 微分と積分なんてハルケギニアのどこを探しても無い!
「……凹むなぁ」
 サイトが言葉通り凹んでいる。
「何をおっしゃいますか、先生」
 今は勉強を教わる身。私はサイトを先生と呼ぶ。
「あんなに苦労して理解した微積の概念をほんの数分で理解しやがって。妬ましい」
「それは先生の教え方がいいからじゃありませんか?」
 わざと敬語を使ってからかってやる。
「俺が教授から教わった通りに教えてんだよ」
 となると、成程。同じ風に教えて、覚える速度が違うから劣等感を感じているのですね。
「くそ。じゃあ、この問題解いてみろ。ちょっとした応用だ。制限時間は15分」
 それだけ告げると、サイトはぱたりと机に伏した。
「え? おちび、寝ちゃったわよ?」
 日は沈んでいるけど、まだ寝るのには早い。
「姉さま、15分後には起きます。確実に」
 ルイズが妙に自信たっぷりに宣言した。

 ちなみに、さすがにその問題は難しく、十五分ぎりぎりまでかかったのだが。
「3……2……1……」
「……しぇぇぇい!」
 流石に驚く。絶叫しながらがばあっと起きるのだから。
「終わったか」
 何事も無かったかのように訊いてくるものだから、面食らうのも仕方がない。
「え、ええ。終わりましたわ」
「できたわ」
「……うげ」
 嫌そうな顔をするサイト。反応から察するに、間違いではないのだろうが。
「妬ましい……」
 そのどんよりとした眼で見るのはやめてください。こっちが病みそうです。
「じゃあ、また日本語やるか」
 サイトが腕につけた小さな時計を見て言う。ニホンゴ、とやらが気になるが、
「あれはまた別の日でいいじゃない。別のをやりましょう」
「じゃあ、物理でもやるか」
 物理。物の理と書くらしい。わざわざ翻訳して紙に書いてくれるので判りやすいのではないかと、私は思う。サイトの席の隣には本が積まれ、その全てが異界の知識。その殆どが教科書や参考書らしいが、どうも丸写しで翻訳している訳ではないらしい。ハルケギニアには無い概念をどうにか判り易く書き換えているようだ。
「この世界は全て小さな粒でできている。この大地も、俺も、無論君達もだ」
 幾分か芝居がかった仕草で、演説するように『物理』は始まった。

 眼から鱗だ。
 もしこれが夢でないのなら、どんな貴金属を作ったとしても精神力の消費は量に比例するだけ。流石に不安定な物質や危険な物質に関しては不安が残るが、銅を練金するのと同じくらいの疲労で……プラチナのインゴットができた。サイトもこれには驚いたようで、
「すげぇ……なんかいろんな問題が解決した……」
 と茫然としていた。なんでも、掘らなくても「セキユ」ができるとか。平民がランプに使っている植物油より遥かに汎用性の高い油だとか。用途についてははしょられたが。
「エリー、メイジ雇ったりできるか?」
「そうね、没落したり勘当された元貴族なら、割と簡単に雇えると思うわ。傭兵に身をやつす者も少なくないし、現役貴族でも領地も役職もないのは結構貧乏だし」
「設備と人員に対する初期投資、設備が大幅に削れる……ヒト・モノ・カネ……プライドの高い貴族を雇って採算が取れるか……?」
 思考の海に落ちたサイトは、時折紙に何か図形のようなものを描いては頭を抱える。
「なあ、金貨の偽造って罪になるか?」
「偽造? 金じゃないものを金貨と偽って使うの?」
「金だったら問題ないのか?」
「ええ。スクウェアの土メイジが勝手に造ってるから」
「よくインフレが起きないな」
「いんふれ?」
 貨幣価値が下がって相対的に物価が高くなること、らしい。
「金が大量に、それこそ稀少価値がなくなるくらいに生産されたら、誰も有難がらないだろ? 物資に対してカネが過剰に供給されると、すぐに貨幣の価値は下がるからな」
 なるほど、金が鉄クズほどに当たり前の金属に暴落する、ということか。
「一気に大量に使わなければいいんじゃないの?」
「緩やかにインフレだな。これならまだいいが、あんまりいい傾向じゃない。経済は管理も制御もできない巨大で危険な魔物だからな。経済調整がないとなると……やっぱりコツコツと稼いでいくのが一番だな。いずれは銀行もつくらねーと……」
 簡単な物理や数学はよく判ったが、この経済とか政治とかのことはよく判らない。サイト、実は政治家とか経営者とかに向いているのではないのだろうか。今でもブツブツと『ソンエキブンキ』とか『チュウオウギンコウコウソウ』とか呟いている。
「明日から、この世界を見て回りたい」
 ぱたりと呟きが消えると、そんな事を提案した。



 姉さまとサイトが難しい話をしている。
 政治とか経済とかの話なので、あまり口は出せないけど、ものすごく勉強になる。今までお金の価値は不変のものだと思っていたから。
 でも、昔はエキュー金貨や新銀貨は無かったそうだから、このハルケギニアでも『いんふれ』は起きてたのだろう。姉さまは気づいてないみたいだが。
「明日から、この世界を見て回りたい」
 は?
 世界を見て回る=ヴァリエール家出奔=逃走。
 召喚二日目にして使い魔逃走。
 不名誉極まりない。
「な、な、な……」
「? おちび、どうしたのよ」
「なんでよ!? あんたは私の使い魔なのよ? なのに出ていくなんて……」
「いや、出ていくなんて一言も……」
「ダメ! 許さないわ! あんたは私の使い魔なんだから!」
「だから……」
「ご主人様の言うことが聞けーーーー」
「聞けい!」
「落ち着きなさい!」

 ゴゴス

「ーーーーっ」
 頭に鈍痛。痛いところを押さえてちぢこまる。少し上を向けば、『シンメイカイ』とハルケギニアの国語辞典の背表紙。と、それを掴んだ右手二つ。
「まったく、人の話を聞かないんだから」
「誰が出ていくって言ったよ? いったいどんな化学反応が起きてんだか」
 どうやら私の早合点だったようだ。未だぐわんぐわん鳴り響く頭を押さえながら、サイトに訊く。
「じゃあどういう意味よ」
「ずっとここにいたんじゃ情報が手に入らねぇからだよ。条件、こっちの常識を教える、の一環だ。街とか見て物の相場やら貨幣価値とか物の質とか需要・供給量とか知らんと商売なんてできねぇんだよ。必要になる技術の開発もできん。ついでに着替えその他諸々も欲しい。だから案内でルイズもついてくる。Ok?」
 恥ずかしい。顔が熱を持つのが判る。
「わ、判ったわ。お母さまに聞いてくるわ」
 サイトと姉さまの顔が見れず、私は逃げるように部屋を去った。



 やれやれ。
 爆弾のような娘だ。
 頭はいいのだが、どうも沸点が低く、早合点と勘違いのケがある。
「もう少し落ち着きがあるといいんだけど」
「まったくだ」
 エリーと一緒にタメイキ。
「あら。ルイズが真っ赤な顔をして走っていったけど、何かあったのかしら?」
 勉強会の会場となっていた俺の部屋にノックも無しに入ってくるのは、ルイズ曰く『ちいねえさま』。名称未確認の美少女。エリーとルイズの中間くらいの歳か。ちなみに、彼女は人類の進化の形、突然変異であると俺はここに断言しておく。
「ちびルイズが勘違いと早合点して散々喚いたあげく逃げたってところかしら」
「あらあら」
 面白そうに微笑んで、本題と言わんばかりに俺に向き直り、変わらない微笑みで、
「貴方が、新しく来られたお医者様、ですよね」
 と訊かれた。
「え?」
 俺は機械の親で兄弟でマヴダチでドクターで葬儀屋ではあるが、人間を修理する腕は持っていない。何故なら俺は技術屋なのだから。せいぜいできて応急処置、人工呼吸くらいだ。
「誰がそんなことを?」
「お父様ですわ」
 ルイズの勘違いと早合点は公爵閣下の遺伝だ。間違いない。
「……カトレア、彼は異界の賢人よ。お医者様ではないわ」
 ものすごい誇大かつ過大評価。俺で賢人ならば、大学の教授(一部を除く)は神で、過去の偉人達は創造神です。身に余るにも程がある。
「そんな大層なもんじゃないよ。ちょっとここより文明の進んだ場所から来た、普通の学生、普通の技術屋に過ぎないさ」
「あら、そうだったのですか? お父様ったら、昨日『病気が治るかも知れんぞ! 名医が来た!』って、大慌てで私の部屋に飛び込んできたんです」
 確定どころじゃないな。属性『おっちょこちょい』が更に上乗せか。
「今朝になって、昨日のことが嘘みたいにおとなしくなっていたから……」
「お母さまね」
 多分、カリーヌさんの話を最後まで聞かずに飛び出してきたタチだろう。希望が絶頂のところで続きを聞かされて叩き落とされた、ってとこか。何となく、あの人の事が読めてきた。
「まだ、名乗ってもなかったね。俺は平賀才人。平賀が家名で才人が名。こっちじゃ珍しいみたいだがな」
「いえいえ、いい名前だと思いますよ。私はカトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・フォンティーヌと申します。カトレアとお呼びください」
「よろしくな」
「ええ、こちらこそ」
「なんで私だけ愛称でちびルイズとカトレアはそのままなのよ~」
 名前が長いからだ、と言うと叩かれた。

 それから、何故かカトレアも混ざって日本語の勉強をしていたのだが、カトレアは『化物か』と思うくらい習得が早かった。何となくだが、この三姉妹の頭の構造が理解できた。
 ルイズは政治系に強いのではないか。インフレの話とか、密かに理解していたみたいだったし。もしかしたら経済でもいけるんじゃないか。
 カトレアは文系。マトモな教科書もない状態で、変態的に難しい(と思われる)日本語の本をもう普通に読んでいる。漢字の読みと意味をちょくちょく訊いてくるが、その程度。流石に日本文学の微妙なニュアンスは判らないみたいだが、おおよそ意味を理解しているようだ。
 エリーは……いわずもがな、俺と同じ匂いがする。確実に理系の研究職向きだ。
 ……天才にも程があるぞ。うらやましい。



《あとがき》

Sep.29.2009
 大学始まったんで、今までのセミオートみたいな速度の投稿はできなくなると思います。
 種子島式くらいに遅くなると思うので。すみません。



 ヴァリエール三姉妹が頭がいいのは確定。カトレアにそんな表現は無かった気がするけど、ルイズとエレオノールがあんだけ頭よくて仲間外れはないと思う訳です。他の場所では悪の参謀みたいに扱われているところもあるようですし(マテ)。
 ルイズが政治経済なのは、原作を読んでいて、ルイズは完全に理系ではないと感じたのです。政治的なものによく絡まれてるからかなぁ?
 エレオノールは完全にマッドサイエンティストに仕立て上げるつもりです。あ、でも科学至上主義じゃないんですね。才人の悪企みで気づいた人もいるかもしれませんが、科学だけでどうにかしようとするとこの作品、詰んじゃいます。

 だってマイクロメータもノギスも旋盤もフライスも溶接機も何もかもないんだもん!
 技術屋としての知識がおもいっきし殺されてます。
 どうしろってんだ、才人、サミュエル・コルトの時代のかけらすらも恵まれてねぇ! あんときゃフライスも旋盤もあったもん。
 しばらくは技術者才人には工作機械中毒症に陥ってもらいますか。(あー、旋盤ブン回してぇ……)

 という訳で、製鉄は結構先になります。



 しかしこのルイズ、暴走しても結構素直だな、などと思う今日このごろ。
 エリー、二十歳。開幕早々にデレました。あれ?
 才人が結構切れやすいのはアドレナリンのせいです。ゆっくり眠ればもっと丸くなります。

 つくづくツンデレを書くのが苦手だと感じ入る次第です。ヤンデレは得ゲフンゲフン。



 1600℃に耐えられる容器、どうやって作ろう……



Sep.29.2009
 リンクがおかしいのを修正しました。

Oct.5.2009
 誤字を修正しました。
 報告ありがとうございます。


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