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No.11883の一覧
[0] 【習作】 カオスゲートオンライン (VRMMO系 TSアリ)[南](2009/10/09 23:29)
[1] 【習作】 カオスゲートオンライン 第2話[南](2009/09/19 00:43)
[2] 【習作】 カオスゲートオンライン 第3話[南](2009/10/27 00:54)
[3] 【習作】 カオスゲートオンライン 第4話[南](2009/10/09 23:36)
[4] 【習作】 カオスゲートオンライン 第5話[南](2009/10/27 00:53)
[5] 【習作】 カオスゲートオンライン 第6話[南](2009/10/27 00:54)
[6] 【習作】 カオスゲートオンライン 第7話[南](2009/11/15 22:01)
[7] 【習作】 カオスゲートオンライン 用語集[南](2009/10/09 23:28)
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[11883] 【習作】 カオスゲートオンライン 第2話
Name: 南◆e65b501e ID:073768d4 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/19 00:43

 カオスゲートオンライン

 VRMMOの初期からあるこのゲームは、運営開始から5年を数え、引退者と新規参入者の入れ替わりを経ながら、過疎化することも無く今に至る老舗ゲームのひとつだった。
 もっとも、VRと言っても、SFのように脳に直接信号を送ったり、考えただけで自由に動けると言うような凄い物ではなく、視線入力機能つきヘッドマウントディスプレイと、サラウンドヘッドホン、ボイスチェンジャーつきボイスチャットシステムが一体化したヘッドギアとゲームパッドで構成され、キャラクターの視点での臨場感溢れる演出を売りにしたもので、運営開始当初は爆発的な人気を博した。
 が、5年という月日はさすがに停滞を生む。
 運営側は、これ以上は小さなアップデートや、イベントなどでは顧客のモチベーションを維持できないと判断、5周年記念と題して大幅なアップデートの計画を発表した。
 それは、新MAPに新スキル、新アイテムに新クエストと、新要素てんこ盛りで、5年と言う年月でマンネリ化したゲームワールドを一新するとして、プレイヤーからはおおむね好意的な評価を受け、新規プレイヤーの増加と、引退プレイヤーの復帰を促した。

 そして、期待の大幅アップデートが行われた当日。
 その日は、明日から連休という事もあり、サーバーはほぼ満員、新要素の報告がBBSに次々書き込まれ、wikiはどんどん更新されていった。
 アイテム相場は大荒れし、新実装のスキルの使い方についてあれこれ論争が沸き起こり、新たな耕地や宅地を巡っての入札は白熱し、新クエストの攻略に頭を悩ませる者、弱そうに見えた新mobが意外に強く返り討ちにあう者、新マップ探索のために未知の大地へ赴く者など、様々なプレイヤーで沸き返っていた。

 そして、シニス達もそんなプレイヤーの一人だった。
 
 その日、ギルドホームのある森と湖の都、城塞都市リンドグラムは、立錐の余地も無いほどの賑わいを見せていた。
 
 「どう?買えた?」
 
 集合場所に最後に顔を出した残月に、ディーガンが問いかける。

 「ダメ、ポーションとかもう売り切れ、NPC売りのしかなかった」

 残月がオーバーなアクションつきで答える。

 「まぁ、初日だし、これだけの人出だし仕方ないよね、とりあえず手持ちで十分だと思うけど、足りなくなったら融通してね」

 回復の要である残月だが、戦闘中残月自身を回復してくれるPCが居ない為、残月の回復は主にアイテムに頼りがちだ、特にMPを回復してくれるマナ・ポーションの有無は、パーティー全体の生命線と言っても過言では無い。
 そしてこの手のアイテムは、NPC商店では基本的な物しか売っておらず、高性能な物が欲しければ、調合スキル持ちのPCなどから買うしかないのだが、さすがに今日は、どのPC商店も満員御礼品切れ続出と言う有様、もっとも通常の冒険なら手持ちで十分なのだが、今回は難易度の目安がつかないので少々不安が残るといった所だろう。
 皆もそれは解っているので、気楽に請け負いながら町の外へと歩き出す。

 「で、どうする?森回っていく? それとも湖の上飛んで山から行く?」
 
 NPCガードが守る城門を抜け、街の外に出た所でシニスが問う。

 リンドグラムから新マップへ至る道は2つ。
 周囲を囲む森を抜けた東側にある街道側から行くか、湖の反対側にある山脈を超えていくかだ。
 
 「山越えようぜ、新mobも居るみたいだし、もしかしたら何か新しい木とか生えてるかもしれない」

 そう提案したのは犬丸だ。
 確かにこのアップデートで、旧マップの方でも新mobが沸いたり、従来のmobのAIや能力や活動域に変更があったという話は聞くし、収穫物の沸きポイントの変更や、新しい収穫可能オブジェクトの配置もなされたという事で、新たに伐採可能な木などが生えている可能性もある。

 「でも山越えだと着くまでに時間かかるんじゃない? 素直に街道経由で行った方が早く入れるし安全でしょう、山越えで疲れ果てて、着いた先でグロッキーじゃ本末転倒だし」

 安全策を主張したのはディーガンだ。

「いや、みんなが来る前に、ツレとtellして聞いたんだが、街道ルートはかなり混んでるそうだ、mobよりPCの方が多いくらいだとか」
 
 そのグレンの発言で、皆の中から街道ルートと言う選択肢は消えたようだ。

 「山越えで行きましょう、それに私今回のアップデートで出たペガサス買ったんで、使ってみたいし」

 と言う残月の決断に、異議を唱えるものはいなかった。

 「あ、残月さんあれ買ったんですか、じゃあこれでみんな飛行ペット持ちって事ですね」
 
 エルフのアーチャーであるNonkoが、嬉しそうに言う。
 ペットには、調教スキル持ちがmobをティムして捕まえるペットと、オフィシャルで販売されている課金ペットの2種類がある。
 そして、 飛行ペットは例外なく課金ペット、残月は今まで飛行ペットを持って無かったので、湖を渡る必要があった時は、シーホースと言うやはり課金の水棲ペットで一人水上を渡って、たまに湖に住む水棲mobに襲われたりしていたのだ。

 「じゃぁこれで今までみたいに、残月さんが一人水中戦を繰り広げているのを、皆が上で観客しないで済みますね」
 
 ディーガンの安心したような言葉に皆が同意した。
 実際あれは心臓に悪かったのだ。

 城壁から離れた空き地で、皆がペットインベからそれぞれのペットを呼び出す。
 見慣れたワイバーン、グリフォン、魔法の箒、大鷲に混ざって、今回実装されたペガサスが姿を現し、皆がその周囲に集まった。

 「へ~結構出来良いですね」
 「お、腹からじゃなく、ちゃんと羽が前足の上から生えてる」
 「やっぱ新しいと作り込みも甘くないなぁ」

 新実装のペガサスには、皆興味深々だった。
 
 「で、パラメータとかどうなの? 強い?」
 
 ペガサスが気に入ったのかNonkoが聞いてくる。

 「やっぱり戦闘力は低いみたい、でもその代わり2人乗り出来るし、結構早いみたいよ」
 「へ~二人乗りできるんだ、じゃぁ私も買おうかな」
 「でもNonko結構ペット持ってなかったっけ? ペット枠大丈夫?」
 「あ~そう言えば一杯だ、拡張しなきゃ駄目だね」
 「拡張って、良くまぁそんなにペット買うなぁ」
 
 そんな話をしつつ、皆それぞれ自分のペットに騎乗する。

 「じゃ、行きましょうか、あんまりここでだべってても仕方ないし」

 そう言って真っ先に残月が空へと飛び上がる。
 それに大鷲とグリフォンが続き、少し遅れて魔法の箒とワイバーンが追随する。
 早いと言っていただけあって、飛行性能トップの大鷲に、わずかに遅れる程度の速度で飛行するペガサス。
 それを見て、さらに購入の決意を固めるNonko、そんなNonkoに呆れ気味の面々、短い飛行時間を終え一同は対岸へと到着する。
 対岸に渡り、山の斜面を登っていく。
 山の上空はロック鳥という飛行mobのテリトリーで、空から一気に新マップへという手段は危険が大きいとの判断からだ。
 森は天を覆うような大木が生い茂り、昔TVで見た北欧の森林地帯を思い起こさせる。
 ともすれば方向を見失いそうになる中、何度もマップ確認し、たまに出会う蛇やイノシシや狼に熊、ゴブリンなどを適当に処理しつつ、新マップへの入り口、グリムロックの橋へと向かう。
 
 「沸き位置はずいぶん変わってるっぽいな、前はこの辺は安全ルートだったんだが」

 伐採と木工のスキルを持ち、このあたりによく木を伐りに来る犬丸が言う。

 「ゴブリンてこの辺居たっけ?」
 
 集団でこちらに走り寄って来るゴブリン達を、弓の範囲攻撃スキル、アローレインで射殺しながらNonkoが問う。
 
 「いや、居なかったはず、新規実装ってやつだな、あっちの方に新しく何本か巨木や古木が生えてたから、それ用の障害だろ」

 巨木や古木からは高級板材が採れるものの、伐採難易度が高い上、周囲にmobが配置されていることが多く、入手困難な素材でもある。

 「お、この先だ、」

 グリムロックの橋へいたる小道、今までそこを塞いでいた巨大な岩が、今は跡形もなく消えている。
  
 「お~ちゃんと道が開いてる」
 「何か感動です」
 「さぁ、未知の世界へ出発」

 期待が高まり皆が足を踏み出そうとた瞬間。

 「ごめん、やっちゃった」

 さっきから後ろを追ってくるゴブリンに、景気良く矢を打ち込んでいたNonkoが、いきなり謝ってくる。
 何事かと一同が視線を走らせた先には、一本の大木が大地から根を引っこ抜きつつこちらに向かってくる姿が見えた。
 アローレインの範囲攻撃が命中しアクティブ化したそれは、おそらく古木や巨木の障害の本命なのだろう。
 高HP、高防御力、高攻撃力と、3拍子そろったそのmobの事は皆知っていた。
  
 「……トレントですか……」

 残月が疲れたような声を出す。

 「うわ、めんどくせぇ」

 そう言いつつも剣を抜き、戦闘状態へ移行するシニス。

 「どうする?逃げちまう?」

 グレンが撤退を提案する。
 実際トレントはあまり相手をしたくないmobなのだ。 

 「いや、あれ足速いから無理、追いつかれる」

 動きが遅いので誤魔化されがちだが、歩幅が大きいので実はPCより移動速度は速い、実際もう目と鼻の先だ。

 「しまったな、斧持ってくれば良かった」
 
 愛用の槍を構えながら嘆く犬丸。
 トレントは、伐採スキルが高ければ、普通に剣などで攻撃するより、むしろ斧で伐採した方がダメージがいく。
 高い伐採スキルを持つ犬丸にとっては、攻撃速度と命中が高い代わりにダメージが低めな槍で攻撃するより、斧で伐ったほうがダメージを与えられるのだ。

 「あ、じゃあ私の予備の斧使います?」
 
 そう言って、両手斧を主武器とするディーガンが犬丸にトレードを申し出る。

 「お、悪い、借りるわ」
 「どうでも良いが早くしてくれ」

 タウントやコールなどの挑発スキルでトレントのヘイトを稼ぎ、Nonkoらタゲを奪い取ったシニスが、トレントの攻撃を捌きながら叫ぶ。
 トレントの攻撃は鈍器扱いとなっていて、ダメージもダメージ貫通率も高い。
 Nonkoが喰らっていたら即死してそうな攻撃を受け止め、お返しとばかりに剣で切りつけてみるがろくなダメーが出ない。
 トレントの防御は特に刀剣系に強く現れ、ロングソード装備のシニスでは、下手をすればダメージ一桁などと言う事すらありうるのだ。

 「残月さん回復頼む!」
 「はい、すぐかけます」 

 残月は、素早くシニスに防御力上昇と自動回復のbuffをかけ、さらにトレントに攻撃力低下と行動速度低下のdebuffをかける。
 そこへグレンがファイアボルトを、Nonkoがフレイムアローを打ち込む。
 着弾のエフェクトと共にトレントから炎が吹き上がるようなエフェクトが表示され、延焼効果によるDoTダメージが発生する。
 ようやくダメージらしいダメージを与えたものの、その事によりタゲがグレン達に移りそうになる。
 
 「こらこら、余所見はだめだって」

 慌ててタウントでタゲを取り戻そうとするシニス。
 と、そこへ後ろから声がかかる。
 
 「待たせた」
 「後はお任せ」

 先にディーガンがスマッシュで斧を打ち込む。
 シニスとは比べ物にならないダメージが入り、トレントのHPバーがガクンと減る。
 が、凄いのはその後に続いた犬丸の攻撃だった。
 打ち込まれた斧の一撃は、それまでの攻撃がカスに思えるほどのダメージを与え、さらにそれが止まらず連続して続いていくのだ。
 伐採は、高スキルになるほどディレイが短くなる、犬丸ほどの高スキル持ちなら、ほとんど連打と言っていい速度での伐採が可能だ。
 あれよあれよと言う間にトレントのHPは0になり、青々と茂っていた葉が枯葉に変わって、周囲にアイテムがドロップする。 

 「おつかれ~って、どうした?」

 良い汗かいたぜとばかりに振り返った犬丸は、声もなく呆然と立ちすくむ皆を見て、不思議そうに問いかける。

 「いや、樵ってすげーと思って」
 「うんうん」
 
 シニスの言葉を皆が肯定する。
 トレントと言えば、プレイヤーが選ぶ相手にしたくないmobランキングの中では結構上位に位置するmobだ。
 それをこうもあっさり片付ければ、呆然とするのも無理は無い

 「ま、樵たる者、面子にかけても樹には負けられないって事だ、それにトレントがうっとうしいのは、動き出すまで見分けがつかないから不意打ちを喰らい易いのと、あの攻撃捌くのはナイトかパラディンじゃないと無理って話で、今回はたまたま上手く噛み合っただけだし、それよりトレントはドロップおいしいぜ、とっとと拾っちまおう」
 
 転がっているドロップアイテムは、トレントの枝にトレントの丸太、トレントの葉とトレントの樹液、どれも生産素材として高値で取引されている物で、これを売ればそれだけでフェイズ1ダンジョンクリアと同じ位の儲けは出る。
 
 「確かにおいしいな、でもこれでこの辺樵が増えそうだね」

 トレント狩りをする連中はほとんどが専門の樵パーティーだ。
 そんな連中が3パーティーもやって来れば、このあたりはあっという間に丸裸だろう。 

 「ここは気楽に樹が伐れるいい狩り場だったんでちょっと残念だな、でもこれでトレント素材多少値が下がるかもしれん」
 「あ~それはありそうね」

 元々樵が本職じゃない犬丸は、それほど気にしてないようだ。  

 「トレント材が安くなるって言うのは、アーチャーとしては嬉しい話だけどね」

 トレントの枝を使って作られた弓、高価で高性能なトレントロングボウが安くなるかもしれないと言う話を聞いて、Nonkoが喜ぶ。 

 「さて、では改めて新世界へ出発」

 そう言って残月が小道の先へと歩を進める。
 そこには始めて見る巨大な谷と、その間を繋ぐ一本の吊り橋があった。

 「おーなんていうか絶景」
 「これ、高所恐怖症の人間には使えないルートだな」
 「確かにこの光景は、その手の人には敬遠されそうですね」
 「橋から落ちらた死ぬかな?」
 「ずいぶん高そうだから、落下スキルMAXの人でも落下ダメージで死ねると思うよ」
 「というか、橋がゆれるのまで再現とかやりすぎだと思う」

 口々に感想を言いつつ、皆が橋を渡る。
 一瞬の読み込み時間の後、目の前には今までとは植生を異にする森が広がっていた。
 今までの森が、北欧のような寒い地域の森のイメージだったのに対し、もう少し暖かい、例えるならカナダの森のようなイメージがある。 
 
 「お、鹿がいる」 
 
 グレンが少しはなれた所をうろつくシカの群れを見つけた。 

 「あれ今までの鹿とちょっと違わない?」

 鹿というmobは今までも居たが、ここにいる鹿は微妙に違うし表示ネームも異なる。
 
 「見た目はテクスチャ張り替えただけみたいだけど何か違うかもね、試しに1匹狩ってみる?」

 残月の提案に特に異論は出ない。

 「じゃ、とりあえず射て見るね」

 早速Nonkoが弓を構えた。 


 それが、この世界がだのゲームであった最後の記憶だった。



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