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No.11872の一覧
[0] 【習作】アニスの冒険(現実→ランスTS転生)[ムラゲ](2010/01/20 00:04)
[1] 第一話  なんでエロゲ・・・[ムラゲ](2009/10/24 16:02)
[2] 第二話  やっぱり誰かの陰謀のような・・・[ムラゲ](2012/03/29 00:30)
[3] 第三話  千鶴子の思い[ムラゲ](2009/10/24 16:08)
[4] 第四話  学園編と思いきや・・・[ムラゲ](2009/09/18 23:05)
[5] 第五話  征伐のミト参上です。[ムラゲ](2009/09/18 23:06)
[6] 第六話  ガンジーの思い[ムラゲ](2012/03/29 00:31)
[7] 第7話  歴史を変えるのです。[ムラゲ](2012/03/29 00:34)
[8] 第8話  アニスの長い夜です。[ムラゲ](2012/03/29 00:37)
[9] 第九話  友と呼んでくれた人のために[ムラゲ](2012/03/29 00:41)
[10] 第10話 パパイアの思い[ムラゲ](2012/03/29 00:43)
[11] 第11話 悪役登場![ムラゲ](2012/03/29 00:47)
[12] 第12話 最強と最恐(少し百合的描写があります。)[ムラゲ](2012/03/29 00:48)
[13] 第13話 ハードボイルドな師匠、その名はケビン![ムラゲ](2012/03/29 00:53)
[14] 第14話  アリスちゃん参上!~私が女になった訳~[ムラゲ](2012/03/29 00:58)
[15] 第15話 笑っているからって嬉しい訳ではないのです。[ムラゲ](2012/03/29 01:00)
[16] 第16話  長官とペンタゴンと工作員[ムラゲ](2012/03/29 01:07)
[17] 第17話  天使達の巣をつぶせ![ムラゲ](2012/03/29 01:14)
[18] 第18話  ファーストコンタクト[ムラゲ](2012/03/29 01:18)
[19] 第19話  でたな変態!   ~ストーカーのススメ~[ムラゲ](2012/03/29 01:19)
[20] 第20話   失ったもの[ムラゲ](2011/09/28 01:52)
[21] 第21話   騒動終わって・・・何も解決していない?[ムラゲ](2012/03/29 01:23)
[22] 第22話   仲間との出会い・・・話的に最後に出るのがふつうでは?[ムラゲ](2012/03/29 00:24)
[23] 第23話   まずは進みましょう。[ムラゲ](2012/10/20 01:01)
[24] 第24話   みんなが主人公![ムラゲ](2012/10/20 01:00)
[25] 第25話   ヘルマンでの情報[ムラゲ](2012/12/18 20:17)
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[11872] 第24話   みんなが主人公!
Name: ムラゲ◆89e54959 ID:22f0b9b3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/20 01:00
第24話   みんなが主人公!




「やっほー、フィオちゃんだよ。」

「アニスです。」

「そう言えばアニスちゃん、前回の内政チートの話で随分枯れた感じだったけど、どうしたの?」

「グサッ!
 ・・・う、うう。
 そのあたりは黒歴史なのであまり触れないでほしいのですが・・・。
 実はかつて私も内政チートをしようとした事があるのです。
 けど、この世界、調べてみると元いた世界と天候や、植生、水問題が全然違うのですよ。」

「・・・ああ、そう言えば、ここの土地って聖獣の支えるテーブルの上に乗ってたっけ。」

「はい、お陰で、天候、水問題、土地の栄養分などはその土地の属性とそこを管理している神様次第でして。
 おまけに新たに農地を作ったりすると定期的に植物型モンスターまで畑に生えてくる始末で。
 また植物型モンスターが発生すると、ころっとその土地の植生が変わる事も珍しくないのです。
 こんな土地、経済屋の駄肉魔王さまが居てもどうにもならないですよ!」

「うわっ、なにそのファンタジーな土地柄。」

「お陰で、自信満々に千鶴子さまに語った農業改革を、千鶴子さまに私の考え違いの部分を懇切丁寧、やさしく説明され、やんわりと否定されました。
 ・・・うう、いっそひと思いに私の勘違いを否定してもらった方が良かったです。」

「ああ、あるわよね、やさしさがかえって辛いって事が。」






◇◇◇◇◇



 あの、ノミコンの騒動からしばらくの間、とりあえず私はリハビリに励んでいます。

 わたしの肉体は全体的に肉体創生の魔法のために急激なレベルダウンはしたものの、肉体的には、ほぼレベルダウン以前のパラメーターの肉体を創生したので今のところ魔力が肉体を破壊するなど、不都合は出ていません。
 おかげで、レベルダウンで落ちた身体能力も早い段階のレベルアップで回復しました・・・なんかモルルンみたいですね。

 ただこれモルルンのように能力アップのために使うのは危険なようで、1回2回ならともかく、あまり使いすぎると肉体と魂の乖離が起こる恐れがあるようで・・・うまい話は無いという事ですね。

 不都合と言えば、この数年盲目状態であった目の違和感が中々取れません。
 現在リハビリの重点はこれに慣れる事を第一としているのです。



「そう言えば、これからどうしますの?」


 わたしがリハビリのためにパパイアさんの塔の地下にある訓練場でメカドール(パパイアさん謹製試作型ガードロボ)と戦っていた最中、傍らで見ていたフィオちゃんからそんな声が掛けられた。


「そうですねぇ、とりあえずヘルマンに行こうと思っています。」

「ヘルマン?
 ああ、そういえばゼスの長官派とヘルマンの高官がやたらと繋ぎをとっているとか言ってましたね。」

 フィオちゃんのその言葉の後、わたしの刀は敵であるメカドールの持つ槍攻撃を受け流し、カウンターで、敵の中枢を貫いた。
 メカドールはしばらく火花を散らした後機能を停止する。
 それを見届けた後(残身は大切ですよ)、わたしは乱れた服装を直しつつ、フィオちゃんとの会話を続けます。


「パパイアさんの話ではここ最近、正規軍の方へやけに軍需物資が流れ込んでいるようでして、状況からどうも近いうちに軍事行動を起こすつもりではないのか、という予想があるのです。
 これは少々きな臭いのですよ。」


 するとフィオちゃんも少し驚いた顔をしました。


「軍事行動?
 穏やかじゃないわね、ついに王党派と全面対決でもする気になったのかしら?」

 わたしは首を横に振りつつ答えます。

「それは無いと思いますよ。
 正規軍もトップは長官派にべったりですが、下の方はそれほどひどくありませんし。
 もしそんな事が起これば間違いなく軍事行動に乱れが生じます。
 なにより、王都には雷帝様の軍が常駐しています。
 あそこの強さとゼス王に対する忠誠心の堅さは軍関係者で知らない人はいませんし。」

「となると、国内の反抗勢力の一掃・・・これは無いか、ヘルマンに話を通す意味がないし。」

「ええ残る一つ、最後の答え、間違いなくリーザス侵攻ですね。
 我が国の国境は、魔人領域、竜の国、カラーの国、ヘルマン、リーザス、AL教団に接していますが、魔人領域の侵攻は馬鹿でも考えませんし、竜の国は攻め込んでもうまみがない、カラーの国とはゼス王自ら不可侵を宣言していますので、ガンジー王が変わらない限り侵攻は無いでしょう、AL教団は言うまでもありませんね。
 自由都市圏はリーザスのパラパラ砦が邪魔で軍を進められません。」

「そうなるとかなりの大事になるのだけど、原作にそんなイベントあったかな?」

「さぁ、流石にわたしもこの世界の歴史年表丸覚えしている訳ではありませんので。
 ただ、わたしという存在の介入で結構歴史が変わっていると思いますので、これが新たに作られたイベントの可能性もあります。」

 というか、日常生活にも関係ない、テストにも出ないそんな年表、緩いオタクでしかないわたしは覚えていません、転生してるおかげで、自我が確立するまでそんな難しい事も考えられませんでしたし。
 ・・・憑依組はどうなのでしょう?

 わたしがフィオちゃんに目を向けると、フィオちゃんは笑いながら首を横に振りました。

「あはは、私の記憶を期待しているのなら無理よ。
 ランスシリーズは好きだったけど、元々それほど深いマニアじゃ無かったし、唯でさえ40年ほどランス世界を思い出す余裕も無かったのだからね。」

そんなわたしの期待を察してか、フィオちゃんからのお答えが帰ってきます。
・・・ですよね~。


「まぁ、そんな訳でして、情報収集をかねてハンティさんに会ってこようと思ってます。
 ・・・そう言えばフィオちゃんはこれからどうするのですか?」

その言葉に先ほどまで笑っていたフィオちゃんの顔が渋くなる。

「う~!
 うらやましいなぁ、私も伝説の『黒髪のカラー』に会いたいよ。
 ・・・はっきり言って今の私は表だってやれる事がないのよね。
 そこらへんの下級悪魔ならともかく私クラスの悪魔があからさまにみんなの味方をしていると確実にAL教団から異端審問受けそうだし。
 この塔に出入りしているところを天使達に見られるだけで、どんな難癖付けられるか。」

「けど、そのあたりの事はごまかす方法があるのでしょ?」

「まぁ~、ある事はあるんだけど何事も完璧なことってないからね。
 リスクは極力受けない方がいいと思うわ。」

 わたしの質問にフィオちゃんは更に渋い顔をして答えます。


「なにか、最強の剣を手に入れたけど、実は妖刀で、使うたびに天罰が落ちる感じのような・・・。」

「ごめん、その表現否定できない。」

 わたしの言葉にフィオちゃんは疲れたように肩を落としました。

 しかしもったいないです。
 現状、最強の手札を手に入れたのに使えば確実に災厄を呼ぶ呪いの札とは。
 肉体のデメリットより存在のデメリットの方が大きいような。


「そうなると現状、塔の地下迷宮を利用すれば天使達の感知を受けず、出入りが出来ますが、これに甘えているわけにもいきませんね。
 地上で戦闘行為でもすれば、一発で天使が飛んできますから・・・。
 そう言えばノミコンかたずける時は大丈夫だったのですか?」

 わたしのふと思いついた疑問にフィオちゃんが答えてくれます。


「ああ、あれね。
 あの時は戦闘にすらならない状況だったし、特に問題は無かったはずよ。
 もっとも、貴方が上級悪魔バージョンのノミコン外に放り出したおかげで、かなり天使達の興味は惹いたでしょうけど。
 現場に私の残り香を残しておいたから、ノミコンを倒したのは私だと誤解してくれているんじゃないかと思うのだけれど・・・。」

 ああ、そうでした。
 人間が上級悪魔に勝つなど最大級の変事です。
 下手をすれば神側に目をつけられるところでしたね。

 ・・・いえね、普段はそんな事がないように注意してるのですよ、本当に。
 唯あの時はそんな余裕が無かったというか・・・。
 ありがとうございましたフィオちゃん(土下座)。


「いいのよ、私もあれがあったから、ここの異常に気付いたのだし。
 おまけに丁度いい接触の機会になったのだから。」

と言ってフィオちゃんは笑ってくれました。
 細かいフォローありがとうございます。





「まぁ、そんな事だから、しばらく私はおとなしくしているわ。」

 そう、笑って答えるフィオちゃんにわたしは当分暇ならばと、いくつかお願いをすることにしました。


 一つは千鶴子さまやパパイアさんの護衛です。

 あの、御二人の事ですから滅多な事は無いと思うのですが、なにぶんお忙しい御二人です、忙しさにかまけてつい油断する事もあるでしょう。
 いつもなら、そんな時無職の私がフォローすればよいのですが、何分今後わたしは忙しくなる予定ですので。
 塔の外でのフォローは無理でしょうが塔の中にいる限り、フィオちゃんが居ればあのエセさわやか男には手が出せなくなるでしょう。
 絶対安全圏が出来るという事は非常に安心できるのです。


「あー、あの男に今後チョロチョロうろつかれると厄介だものね。」
これはフィオちゃんも納得してくれました。


 二つ目は新魔法や新技術開発のアドバイザーとして。

 あらかじめ言っておきますが、パパイアさん以外にも魔法研究をしている研究所を設立しています。もっともほとんどパパイアさんの下部組織になっていますが。
 その研究所は魔法研究のほかにも、マリアさんの様に機械を開発する『機械工学』や、魔法と科学を合成した『魔法工学』、聖魔教団の遺跡や遺物を研究し、再現研究をしている『魔鉄匠』の部門もあります。
 もっとも、これらの研究所は出来てまだ1年、碌な実績が上がっていないのですよ。
 これらの研究者の方は中々に優秀なのですが、この世界の常識に捕らわれ新発見がなかなかできません。
 まぁ、マリアさんの持っている『新兵器匠』のスキル所持者が中々居ない事も原因の一つでしょうが・・・。
 なんとかしてマリアさんをスカウトしなくては、でないと研究費がとんでもない状況に・・・。(大汗)

 研究といえばパパイアさんですが、その通りパパイアさんは開発関係に天才的な才能を持っておられます。
 が、基本的に魔法と生体系の研究者のため機械系はそれほど得意分野では無いのです。
 それに、人出が足りない現在、他の重要な仕事があるため、パパイアさんは研究に掛かりきりになれません。
 そんな中でも幾つかの新魔法の開発に成功しており、その力となったのが、わたしの持つ、『あちらの世界の知識』で、これは割と重要な役割を果たしました。


 ・・・こんなとことでオタクな知識がお役にたつとは。


「そう言えばアニスちゃんって随分と新技術や新魔法の開発に熱心だけど、やっぱり、今の状況じゃあ勝てないと思ってるからかしら?」


と面白そうに尋ねてくるフィオちゃん。

 フィオちゃん、この間から質問ばかりですよ、少しは自分で考えて・・・まだ無理か。
 ランス世界にはまだ来たばかりだと言ってましたし、まだ情報収集の段階なのでしょうね。
 そう自己分析で納得して、フィオちゃんの質問に答えます。


「ええ、このまま進めば確実に起こる天使達との戦いを考えると、この世界の一般的兵士と、天使達との戦力差が違いすぎますから。
 ゼスの記録を掘り起こして確認したところ、実際に天使が悪魔などと戦っているところが目撃されていつ記録がありまして。
 その内容を分析してみると下級の天使ですら、推定、レベル30オーバークラスと考えられます。
 で、わたしの『鬼畜王』の記憶を思い出してみると、あちらはこのクラスの天使を10万単位の軍団で攻めてくるうえ、英雄クラスの戦力を持つ上級天使も千体以上混じっていると考えられます。
 このままだと勝負にもなりませんよ。
 確かに人間側にも英雄クラスの天使を倒せる人間側の英雄もいます。
 けど、わたしの勝手な試算ですが、そんな人間側の英雄は100人位しか居ないと思われます。
 それにそんな人間が戦争の表舞台に出てきたら、これに対抗するため管理職クラスの神が出てきますよ。
 もとから戦力の厚みが違いすぎるのです。」

「なんというかどう考えても反則ですよね、その神様チートっぷりは。」

「まぁ、本物の神様ですし。
 そんな訳で、英雄以外の一般戦力の底上げは必須事項なのですが、人間それほど便利にできておらず、これが中々進みません。
 そこでわたしが考えた戦力の充実方法の1つが聖魔教団の技術です。」

 するとフィオちゃんは少し考えて言います。


「・・・闘神都市ですか?」

「はい、その通りです。」

 流石はフィオちゃん、鋭い読みです。

 かつて、圧倒的戦力を持つ魔人と唯一互角に戦った一大勢力『聖魔教団』。
 その後継を名乗っているだけあって、ゼスには多くの聖魔教団の技術を利用したものがあります。
 また国内にはその残滓である遺跡があちこちに残っており、わたしも冒険の場としてそれらの遺跡によく潜っています。
 そこから発見される技術やアイテムはゼスのそれを上回っているものが数多くあり、それはすなわち、現在の戦力では魔人の軍勢にすら勝てないという事を意味しています。

 で、考えたのが、唯一現存する闘神都市Y『イラーピュ』、これを何とか手に入れる事が出来ないかという事です。
 あそこには現役で稼働している『マナバッテリー』や超兵器の『魔道砲』、そして兵力生産のための『マーダーシリーズの生産工場』がある。
 わたしが特に注目しているのが『マーダーシリーズの生産工場』。
 この工場を手に入れる事が出来ればこちらの戦力事情は一気に好転すると考えています、と言うかはっきり言ってこれが一番欲しい!

 先ほどまでわたしが戦っていたガードロボはエネルギー補給の関係でそれなりの設備の整った施設やダンジョンでしか使えないのです。
 それどころか攻撃力を取っ払った『ウォール系』ですら、設備の無い場所での使用は難しいという事実。

 しかし聖魔教団のモンスターは違います、長期間稼働可能なエネルギーを持つ魔力炉を持ち自己修復機能まで搭載、なんて至れり尽くせりの戦力。
 聖魔教団系モンスターと言えば代表的なのは聖骸闘将であるロンメルシリーズですが流石に魔法使いの死体を利用しているこれを量産し戦力とするのは憚られます。
 それに対し完全機械型のマーダーシリーズは違います。
 マーダーシリーズは工場さえあれば量産できるし、基礎技術のあるゼスならこれを発展させることすら不可能ではないはず。


「ねぇ、エネルギー関係の技術が欲しいなら、倒したマーダーシリーズから魔力炉取り出して使えないの?」

と、フィオちゃんが質問してきました。

 言われるまでもなく、過去にゼスでは結構本格的な研究が行われたようです。
 が、どうもモンスター化したマーダーシリーズには変なウィルスが混じってるらしく、解析しようと分解すれば消滅を始めるし、魔力炉などの中枢部品を取り出しそのまま使用すると使用した機械がモンスター化し、こちらの命令を受け付けなくなるようです。
 それどころか、浸食されて変な進化を遂げた個体すらあるとか。
 『M・M・ルーン』の呪いですか・・・厄介です。
 ちなみに、ゼスの施設とは全く関係ない所に現れるガードロボはこれらの実験失敗でモンスター化した名残ではないかとわたしは思ってます。

 失敗作はちゃんと処理してください、不法投棄いくない。


「けど、あれってたしか都市の中枢が『M・M・ルーン』の呪いに侵されて使い物にならないはずじゃなかったけ?」

 まぁ、そのあたりの心配はもっともですが、実は闘神都市の中枢たる『聖柩』についてはかなり研究が進んでいます。
 過去に『聖柩』の部屋ブロックが丸まま発掘されたらしく、そのおかげで随分研究が進んだそうです。
 この世界に現在ある『脳』を利用したコンピューターは元々『聖柩』の研究の産物なのだそうです。
 考えても見てください、ランス4でゼスより遥かに魔法後進国のヘルマンが『聖柩』を起動させる事に成功しているのですよ。
 ヘルマンより遥かに魔法に優れたゼスが研究していないわけがないのです。

 もっとも、現在の『聖柩』の中に入っている魔法使いの脳は使用できませんので、ユニットごと取り換えてた上で更に別のものを用意する必要がありますが。


「別のものってなんですか?」

「人類抹殺の命令を解除するために『聖柩』の中に入っている魔法使い以上の魔法使い、出来れば『M・M・ルーン』クラスが必要ですね。」

「・・・(汗)、確か中枢になってる魔法使いって、当時最強クラスの魔法使いの上に闘神化で更にパワーアップしてなかった?」

 まぁ、確かに普通なら無理なのですが。


「これこれ、忘れてませんか、ここに2人いるでしょう。」


 そうわたしが答えると、フィオちゃんは直ぐに思い当たったようです。


「あっ!そうか。」

「はい、素質なら『M・M・ルーン』と同格の魔法レベル3で、魔力だけなら歴代最高クラスのわたしと、悪魔の貴族位を持つフィオちゃんなら上書き命令は可能でしょう。」

 わたしの答えを聞いたとたん、フィオちゃんが何時もの作り笑いではない、本当の笑顔を浮かべていました。


「凄い、凄いわ!
 なにか、暗闇しか見えなかった前途に一筋の光明が差した気分だわ。
 いいわ、とってもいいわ。
 こういう、具体的に戦力が上がっていく話はこう、聞いててドキドキするわね。」

 この言葉からしても、これから私達が行おうとしている戦いを、フィオちゃんがいかに絶望的として実感していたかがよく解りますね。

 これでもわたしは本気でこの戦いに勝とうと、いろいろ考えているのですよ。

 しばらく、うれしそうにニコニコしていたフィオちゃんですがしばらくすると冷静さを取り戻したのかわたしの元に戻ってきました。

 そして無邪気な提案。


「ねぇねぇ、なんなら私が今すぐイラーピュ探して持ってこようか?」


 浮かれたフィオちゃんからの提案、本当なら迷うことなく受けてしまいたい魅力的な提案なのですが・・・、しかしこの提案にはかなり重い意味を持っているのです。

 わたしはこの件について過去考えたことがありました、先にイラーピュを確保して戦力化出来ないかと、そして出た結果は・・・『不可』。
 メリットとデメリットを考えた結果です。

 メリットとはもちろん、戦力を早いうちから強化できること。
 これはかなりのメリット。
 しかし、デメリットが問題なのですよ。

 問題点

1 あんなでかいの物ゼス国内に移動させたら確実に噂になります。
   千鶴子さま達が権力を握ってまだ1年、あんな物を隠しきれるほどの権力はまだ掌握していないのです。
   何より他国にばれれば確実にトップレベルで警戒されるうえに警戒した魔人達から魔軍侵攻すらあるかもしれません。

2 メインストーリーに関わるものを下手に動かせません。
   わたし達の強みの一つにある程度ストーリーを知っているという事があります。
   メインストーリーの一つを無くしてしまったらどんなバタフライ効果がある事やら。

3 ランスくんです。


「ランス君?」

「はい、彼はゲームが新しくなるたび、レベルダウンを起こす困ったちゃんですが、そんな中でも人間的成長はおこっています。
 特に、ランス4はシィルちゃんへの愛を自覚する大切なイベントですから、へたにこのあたりのストーリーをすっ飛ばしたら、今後悪影響間違いなしだと思うのですよ。
 それにさぼり癖のあるランスくんの大事な戦闘経験の場を奪うのもどうかと思いますし。」

「ああ、そういう心配もあるわね。
 主人公としては、彼かなり不安な性格しているから。」

「でしょう、このあたりのイベントを失敗するとシィルちゃんへの愛が自覚しきれず、鬼畜王の『魔王END」になっちゃいそうで。」


 そう言うとフィオちゃんも納得したようで、大きなため息をひとつ吐きました。


「ねぇ、アニスちゃん、世界統一、やっぱりランス君じゃなきゃダメ?」


 フィオちゃんがかなり不安そうに話しかけてきます。
 確かにフィオちゃんの心配、解らないでもないのですよ。
 はっきり言って彼、かなり不安な性格していますし。
 あの自分の欲望に正直すぎる性格は不安要素でしかありません。


「そのあたりも散々考えたのですが、結局ランスくんしかいないという結果になりました。」


 そうなのです、どう考えても『神への反逆作戦』の総指揮官はランスくんしか思い当たらないのです。

 わたしの脳内会議を解説するとこうなります。


Q 神への反逆、これを実行するには?
A 神の洞窟に入らなければいけない。

Q 洞窟に入るには?
A ヘルマンにある遺跡の確保とカギの確保。

Q 現状で遺跡の確保は出来るか?
A 出来ない事は無いだろうが、ヘルマンと確実に戦争になるうえリーザスが確実にちょっかいを掛けてくる。何より軍隊で遺跡に入ろうなんて考えたら、背後から魔人達に襲われる事請け合い。

Q 世界の統一無しでは遺跡に入ることすら不可能と判断、ではゼスによる世界統一は可能か?
A 可能、しかし時間が掛かるだろうし、こちらの被害も大きくなる。それに統一した後も恨みの連鎖は続く。リーザスやヘルマンの大国が別の国に支配される事を良しとする訳がなく、確実にゲリラとテロ、裏切りで国内が混乱する事間違いなしです。

Q では、誰なら世界を統一できる。
A 各国の利害にとらわれない、各国のトップにコネを持つ者。

Q 最後に世界を統一した後に神に戦いを挑むような人物がいるか?
A いるわけがない・・・・。

 この世界に限らず人と言うモノは天使が大挙して襲ってきても、その本能から許しを乞う事を選ぶでしょう。
 人は神に逆らえるようには出来ていないのですから。
 前の世界では、昨今の物語の『はやり』で神様が土下座したり、神様を騙したり、殴ったりしている描写が見られますが、あれは本当の神を知らないからできることと思いますよ。


「え~と、アニスちゃんって神様に会ったことあったっけ?」

「会いましたよ、初めてなのにとんでもない存在に・・・アリスちゃんです。」

「あっ、そうか・・・あれ?けど話した時そんなプレッシャー(存在)出してたの?」

「いえ、たぶんお話している間はわたしの方の感覚をどうにかいしてくれていたのだと思います。そうでないとまともに御話が出来ませんから。
 ただ、アリスちゃんが帰ってからとんでもない目に会いまして。」

「へ?」

「麻痺していた『畏怖』やら『恐怖』が一気に来て・・・、眼球大全開のゲ○まみれになるという、ちょっと人様には似せられない状態に・・・。」

「・・・あぁ、ご愁傷さまでした。」


 フィオちゃんがかわいそうな者を見る目で慰めてくれます。

 うぅ、シクシク。
 あれは女の子がする経験ではありませんよ。
 わたしは銀○のヒロインですか。





 しばらくお互いに微妙な顔で固まっていましたが、再びフィオちゃんが話しかけてきました。


「そう言えば、イラーピュには、私達の仲間が居たっけ?」


 あぁ、そういえば前に他の転生仲間についてお話していましたね。


「はい、女の子モンスターに転生したと思われますが。」


「・・・リーザスにいるのは別として後の二人は、手を貸すなりした方がよくない?
 幸い、それほどストーリーに絡む重要なキャラじゃないのだし。」


 やはりその意見が出ましたか、、これについても何度か考えたことがあります。

 リーザスにいる元魔王さんは別として、後の二人は、戦闘能力は低いし、権力もそれほどありません。
 はっきり言ってこの世界で生きていくにはかなりつらいと思います。
 アリスちゃんは弱いキャラにはそれなりのメリットを与えていると言っていましたが、それでもチートと呼ばれるほどではないそうです。
 本当なら何らかの手助けが、必要なのでしょう。
 ・・・しかしそう安易に考えきれないものがあるのですよ。


「フィオちゃん、弱いからといって保護する事は正しい事でしょうか?」

「えっ?
 アニスちゃんそれはいったい?」


 この、一見弱者を見捨てるがごとき、わたしの発言にフィオちゃんが動揺の声を上げます。


「今、彼女達を助けるという事は彼女達を保護するという事になります。
 なにせ、わたしはやる事が山積していますし、フィオちゃんは表だって動けません。
 すなわち、彼女たちのそばに居続けてあげられないという事です。
 そのためどうしても彼女達を守るためにはわたし達の安全圏に連れてくる必要があるのですから。
 そして保護するという事はその人物がわたしの下に入る事になります。」

「え、え?なんでそうなるの?」


 わたしの言っている事、難しいですよね。

 フィオちゃんやリーザスの元魔王さんならこの世界でもトップクラスの実力があるので、例えわたしの支援を受けていたとしても自分の考えを通す事が出来ます。
 しかし、彼女達のように、実力的に恵まれていないものは違います。
 私に保護されるという事は、その人に負い目を作る事です。そしてその負い目と言うものが結構厄介なものでして・・・。
 今後私以上の実力(権力でも可)が無ければ、この負い目が払拭される事が無く、保護したわたしの影響を受ける可能性が非常に高いのです。
 無論わたし自身、彼女達に恩を着せるつもりはありませんし、彼女達が実力を上げたいというのなら喜んでご協力させていただきます。
 しかし、そんな行動は彼女達に更に『借りを作った』と意識させることになり、なにかとわたしに遠慮することになると思うのです。
 そうなればもう、わたしの下に入ったのと同じ事なのですよ。

 確かに『仲間5人で協力して』は、大切なことだと思います、しかし誰かに追従するという事は少し違うと思うのですよ。

 今回は、たまたまわたしがレベル30に一番乗りをしてアリスちゃんに出会いましたが、別世界にいたフィオちゃんと元魔王さんは別として、後のお二人にはわたしに変わってアリスちゃんに会う可能性があったのです。

 だから戦闘能力が低いという理由で、彼女達がもつ『自分が主人公になる』可能性を奪いたくないのですよ。

 これは、わたしの考えすぎかもしれませんが、正直な思いなのです。
 そんな事をフィオちゃんに伝えると、フィオちゃんは笑って


「そうね、私もアニスの考えすぎだと思うけど、私自身、強者の側だからつい、『強者の考え方』になっちゃうのよね。
 だから、私もこの事についてはどちらが正しいのか、はっきりとした事は言えないわ。
 なら、今は信じようか、アリスちゃんが選んだ主人公達の実力をね。」

と、言ってくれました。
 そして、わたしはフィオちゃんに決意表明をします。


「はい、だけど、もしこれから彼女達に出会い、助けを求められたら、全力でお助けします。
 他の人たちもです。
 ストーリでは死んでたから、不幸になっていたから仕方ない、という鬱展開なのは嫌いなのです。
 だから、これからも助けられる人は助けていきたいと思っています。
 ・・・ただ、シィルちゃんだけは別なのですが。」

「そうね、シィルちゃんだけはどうしょうもないのよね。
 下手に助けちゃうと『魔王END』になっちゃいそうだし。」


 そうですね、これからのストーリー上、シィルちゃん一人に随分と負担を掛けてしまいます。


 それを思うとわたしの胸は痛むのですが・・・。
 我ながらなんて偽善的なのでしょう。











≪おまけ≫


「結局のところ、私は積極的に動ける事が無いってことよね。」

「まぁ、そのあたりはキャラ的にしかたないかと。」

「・・・、ねぇ、原作の登場人物について確認はしてあるの?」

「はい、ゼス王国内にいる方なら一応は。
 ただ、私の記憶も確実ではないので、何人か見逃しはあるかもしれませんが。」

「じゃあ、1人貰っていいかな?」

「貰う?いったい何をするつもりですか?」

「どうせ、暇になるだろうし、それなら普通に進めたら戦力にならないキャラをそだててみようかな、なんて思ってね。」

「もったいないよね、ダンジョン作ってモンスターまで召喚できる素材を引き籠らせるなんて。」

「ああ、あの方ですか。
 まぁ確かにもったいないですが・・・、そうですねこちらに人格矯正できるほど暇と人材に余裕があるわけでなし、あの方を『教育』していただけるならこちらとしても助かりますが。
 しかし、そんな面倒臭いことをまたなんで?」

「しばらく暇になりそうだし、あっちの世界で育成型SLGが好きだったのもあるわね。
 で、もう一つが・・・。」

「もう一つが?」

「アニスちゃんばっかり原作キャラといちゃいちゃするのはずるいと思うの!」

「え~!!
 ・・・どちらかと言うと私の方がいじられてる方なのですが。」
 





≪あとがき≫


毎度遅筆なムラゲです。

ごめんなさい!

全開、ついにヘルマンへ出発など書いておきながら結局進みませんでした。

何か書いてたら次々と書きたい事が増えてしまいまして。


今回も説明系のお話。
アニスの再生の影響やフィオちゃんのデメリットのお話です。
魔人クラスのチートキャラが出たからといって無双出来るほどこの世界は甘くないのですよ。
誰ですか、この世界もっと夢や希望にあふれているなんて言ったのは・・・私ですね。

また、今後の戦力確保の道筋についても説明させていただきました。
空を飛べるアニスがなぜ闘神都市に手を出さなかったか、国の中枢にいるアニスがなぜたの転生者になんらリアクションを起こさないのか、少しは説明できたでしょうか?
今回の話、結局前話の2話目になっちゃいました。

さて、次こそは本当にハンティさんとの面会、そしてもう一人新キャラとはいったいとなる予定です。




neba様
お読みくださってありがとうございます。
これからもがんばります。




まほかにさま
ご感想ありがとうございます。
才能限界レベルについては、以前から問題になると考え、アリスちゃんと接触した際に限界上げの交渉をしています。もっともレベル2の英雄クラスで80、レベル1の強者クラスで50、これ以上は自分で何とかしろと言われていますが。
以外にこの世界の英雄達、才能限界が低いのですよね。



AQさま
お読みくださってありがとうございます。
かぎかっこの(。)はつい癖で、できれば気にしな方向でお願いします。
あまり見苦しい場合は考えさせていただきます。



松竹梅さま
ご感想ありがとうございます。
ニートさんは悪魔にロックオンされました。
冒険者の方々は・・・難しいですね。
魔法使いでないと王国側に付けられませんし、ウルザさんのところには、あのエセさわやか男がいるため、脳筋系の人間は危なくて紹介できません。
なにより彼らにメリットが薄いですから今のゼスに来てもらうのは難しいのではとムラゲは思っています。



朱々さま
お読みくださってありがとうございます。
確かにJAPANでした。ありがとうございます。



ASKさま
ご感想ありがとうございます。
アニスの肉体創生については肉体強度的には再生前のもので、レベルダウンによる数値の低下のみおこっている。モルルンに近いものとして説明させていただきました。
確かにあの二人にとっては健康になった事の方が遥かにうれしいでしょうね。



くらんさま
お読みくださってありがとうございます。
今後アニスにはチートキャラになってもらいますので今のうちに苦労してもらっています。
もっとも、ムラゲは鬱展開が苦手なので悲惨な裏設定が出ると同時に治ってもらいましたが。



ルアベさま
いつも、長文のご感想ありがとうございます。
サーモ眼については無くなったわけではございません、目は普通の目になりましたが何年もサーモ眼で暮らしていたのでこの目に維持的に変化させる事が可能になっているという事になっています。某ハンターものの『凝』のような使い方が可能。今後も魔力の解析解体に力を振るってくれる事でしょう・・・目立つ事はない能力ですが。
魔力封じのアイテムは未だ外せません。何かのはずみでフィオとのリンクが切れたり、肉体の限界を超える魔法の放出を抑えるため必要です。
フィオについては当分ひきこもり生活ですね。折角デメリットが無くなったと思ったら存在自体がデメリットだったという罠。
対魔人戦闘、固有結界のアイデアありがとうございます。
仮面の使用方法については・・・ノーコメントで・・・だめですか、実はフィオは仮面が無くても認識撹乱が使えます、これこそがフィオが言っていたばれないための奥の手です。
相変わらず良い感をしておられますね。
対洗脳の切り札についてはその通りです。ムラゲはエセさわやか男をかなり気の抜けない人物として設定しています。



XxXさま
詳しい説明ありがとうございます。
大変助かりました。



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