あの後、自分は建物の影に入るなり気絶した。
おかげで午前の授業には全て出られなかった。(午後は何とか出たが。)
あの闘いの後、何故だか知らないが視線を感じるようになった。
しかも、それらは一つ一つぜんぜん違う感じがするからたちが悪い。
恐怖や畏怖なら分かるが其れは小数に過ぎない。
後の視線はいったい何なんだ?
第七話 猫大好き??英雄登場
転入から数日が経った。
クラスの奴とは、だいぶ仲良くなったといってもいいだろう。
特に岳人。あいつとは筋トレ(鍛錬)についての話をよくする。
主にあいつの筋トレに自分に鍛錬メニューを比較するような感じで。
しかし、何故か岳人は俺のメニューを信じようとしない。
別に足に、バーベル括り付けて、逆立ちのまま走るのって、普通じゃね?
ボーリングの玉でリフティングぐらい普通だろ?
それなのに、
「馬鹿だな。いくらお前が強くたってそんなの無理だろう?いくらタフガイの俺様でもそんなの無理だぜ。」
だって。
やっぱり、おかしいのかな。大和たちは笑って答えてくれないし。
そんなこんなで、やっぱりこのクラスを選んでよかったと思う。
何度も思うがSではなくFを選んだのは一つの運命かもしれないな。
あの日ではなく前日に百代に挑んでいたら、風間に出会わないでSに入っていただろう。
もしかするとそういう可能性もあったかもしれない。
ちなみに、風間ファミリーとは仲がいい。大和辺りとはイカサマ(超スピードでカードを入れ替える)の話をしたり、色々な分野について詳しいから専門的なことを語ったり。
「ってそんな事より急がないと。」
最近充実しているからと、鍛錬に気が入りすぎて気がつけば遅刻していた。
家で部活の作品を仕上げていた事も原因の一つだ。
…部活動にはこの学園には園芸部が無かったため、芸術部に入った。
運動部からは色々なスカウトがあったが自分が入らないほうが、結果としていいだろう。
しかし芸術部も部員が無し。つまり一年で部長になってしまったのだ。
一人だけの部活だし、楽ではいいが作品を一つ提出する事が活動の条件だった。
流石に一人の部活を認めるのは難しいのだろう。
(顧問は麻呂です。しかしほとんど出ません。)
何か電波が流れた気がする。
考えているうちに橋につく。
もう少しで学園に着く。
しかし、自分の目にある姿が映る。
猫だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
やばい、前世はそうでもなかったが今は、
猫が好きだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そのまま思わず猫観察を始めてしまう。
和む~~
しかし、突然その思考の時間は終わりを告げる。
何かがこっちに近づいてくる。その視線の先にいたのは、
「金ぴかの人力車と、それを引くメイドだと…?」
現代の日本。しかも早朝。
誰が黄金色に輝く人力車が車と同じくらいのスピードで爆走すると理解できるだろうか。
しかもその進路上には自分と”猫”がいる。
「って、ちょっと待て!!!!!!!!」
軽く人が走るスピードを超えているそれを寸前でかわす。
同時に猫を助ける事を忘れない。
「む? あずみ、後ろで何者かが喚いているが。よもや轢いたのではあるまいな」
「そんな感触はありませんでしたが…ひょっとしたら轢いたのかもしれませんね☆」
怒鳴る謙一の声が届いたのか、人力車は一時停止する。
人力車の中からこれまた金ぴかの男が顔を出し、人力車を引いていたメイドと顔を見合せた。
「うむ…しかしながら、我の行く手に立ち塞がったのが悪い!」
「その通りです英雄様!」
「――――だが我は寛大なので、様子を見てやろう。万が一怪我をしていたら面倒を見てやろうではないか!!」
そして此方に歩いてくる。
謙一はブチぎれそうになった。
「朝っぱらから俺と”猫”を轢き殺そうとした馬鹿にはお仕置きが必要かなー?キッチリ半分だけにするから。」
「――――!」チャッ
「あずみ、どうした?」
謙一は朝の偶然に得た安らぎの時間を邪魔にされた事で、少しだけ気がもれる。
だがそれだけで十分の脅威と認識したのか、あずみは無言で忍刀を構える。
ただ一人英雄と呼ばれた男だけが状況を理解できていないのか、首を傾げた。
「……お前、この間モモ先輩と戦った奴だよな。何のようだ。」
「別に用は無かったんだが、いま少し用事が出来てしまった。」
あずみからすれば、いきなり要注意人物から半殺しにするといわれたのだ。
何があったかそれを聞くのが一番重要だ。
「なんで、そんなに怒っているんですか?」
英雄の前では脅す事もできず(どちらからしても意味も無いが)敬語で聞く。
「なんでだと!?それはお前が猫を引きそうになった。それだけで十分だろ?」
あずみは混乱した。
あの百代とまともに戦った男が猫一匹の為にけんかを売ることに。
しかし、どちらからしても戦いを避けられる雰囲気ではなくなっている。ならば英雄だけでも逃がさなければ。
「――英雄様お逃げください。ここ「それはすまないことをした。」は!英雄様!!」
その言葉の前に英雄は男に謝っていた。
「英雄様が謝る事ではありません。」
「いや王たるもの、時には自分の過ちに気づかなければいけないのだ。例え小さな存在といえども価値観は人によって違うのだからな。」
その言葉にあずみは感動した。相手の事を立てるその器の大きさに。
「申し訳ありません、英雄様。このあずみ、考えが及びませんでした。」
「よいのだ、あずみ。」
「英雄様~~~~~」
今度は謙一が混乱した。
さっきまでの雰囲気が見事にかき消され、其処には馬鹿っぽい光景が残っていたのだから。
「という事ですまなかったな庶民よ。」
「いや、分かればいいんだけど…」
なんか怒る気無くしたし。
改めて英雄の事を見る。
……金ぴかである。一言で言うと金ぴかだ。
その態度といい某慢心王の事が思い出されてしまう。
しかし、一つだけ気になる事がある。
「なあ、一つ聞いてもいいか?」
「なんだ、庶民よ。詫びの変わりに一つぐらい答えてやら無くもないぞ?」
「じゃあ、一つ聞くけど。」
「お前、腕いためてるだろ。」
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何なのだ、こいつは。
我の周りでもあまり知られていないはずのことを知っているのは。
今のS組でこれを知っているのは我が友冬馬ぐらいのはず。
「……確かに、我は腕を痛めているがどうして分かったのだ?」
それは純粋な興味。
この男が何であれ、何かしら大きな力を持っているはずだ。(英雄は百代との決闘を見ていない。)
「別に唯プロだからね。」
…プロか。それは医学関係なのか、それとも人体破壊からの知識なのか。
どちらにせよ、只者ではない。
「しかし、それがどうしたのだ?」
「ちょっといいか?」
その言葉の瞬間、目の前にこいつが現れた。
隣にいるあずみですら反応できていない。
ビキィッ!!
そんな音が響く。
首元を押され痛みが体を走る。
「英雄様!」
「ええい、何をするか!!」
我は全力で男を殴った。
全力で
「これは、いったい!!」
確かに今全力で腕を動かしていた。しかも痛みなどは無い。
「やはりな、藪医者というわけではないが、脊髄の歪みを完全に直せていない。それが原因で神経が圧迫されている。」
なんだと!!
「そんな、九鬼の技術は完璧のはず。そのようなミスがあるわけありません。」
「否、これは機械などで分かるものではない。本当に小さな歪みだ。もしもう少し大きければ腕が完全に動かなくなって、しかし歪みに気づけただろうに。」
腕に今までの感覚が戻る。
「そんな、九鬼の医術を超える医術があるなんて。」
「常識ではありえない事もあるという事だ。」
「一つ聞いてもいいか?」
どうしてもこれだけは聞いておきたい。
「この腕は元の状態に戻るのだろうか?」
「…直るよ、当然のように。俺的には普通レベルの問題かな?」
まさか、
「…もしも、野球をするというならどれ位持つ。」
「野球だと!!!とんでもない。」
ああ、やはり最後までは無理なのか。
「十二回の延長戦まで投げられるさ。」
……何故だろう。急に野球をしたくなった。
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「という事でさようなら~~」
メイドのほうにどのような症状か教えておいたから、あとはあっちで何とかするだろう。
流石にこれ以上時間をかけていると三時限目に間に合わなくなる。
「…………」
英雄は漠然とした感じで立ちつくしている。
そしてその場から猫を持って学園に向かう。
誰か飼える人を探さないとな!
あれ、何か忘れてないか??
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結局あの男はなんだったんだろうか。
最後は英雄様の怪我についても教えてくれたし。
感謝しきれないぞ。
「英雄様、そろそろお時間が。」
「……ああ、分かった。」
流石にまだ驚きを隠せないようだ。
もしもあの男に、もしくはあの男の師匠に会えていれば。
英雄様は今も野球を続けられていたはずなのに。
そうして学園に人力車を進めようとしたら道にかばんが落ちている。
大きめなそれを落として気づかないわけが無い。
…そういえばあの男、猫を持って学園に行ったな。
「―――英雄様、あの男の荷物どうしましょう?」
「…そうだな。礼にはならないが、我直々に持って行ってやるとしよう。」
という事で荷物確認。
一応危険物が無いか見ておかないとな。
そうして中を見てみると入っていたのは一枚の絵巻がある。
「英雄様、手荷物の中にこんなものが。」
「何、…絵巻ではないか。……!!!この筆使い、この品位。もしやあの男が。」
何か分からない。しかし、英雄様が何かを悟っていた。
「成程あの有名なあの芸術家なら…」
芸術家?あの男が?桃先輩とまともに戦うあいつが?
「急げ、あずみ。急ぎ確認するぞ。」
「!!はい、分かりました英雄様!!
急ぎ学園に向かった。
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やっちゃった。普通に考えてこれは無い、書きながら思ってしまった。九鬼の技術なら分かりそうだし、失敗かも。感想を見て消すか決める事にします。ちなみに今回戦闘は無し!!二話から戦闘を続けていましたが日常編を一つぐらい入れたくて書いてしまいました。次回は戦闘を書きたいとと思います。(もしかするとこの話が消えるかもしれませんが)
言葉使いがおかしい中最後までお付き合いありがとうございました。
2009/9/19