最初はこいつもだめだと思った。
我流Xのように自分と戦えるレベルではないと。
確かに奴は強いが川神院で言えばそうでもない。
ルー師範代なら圧勝できるだろう。
しかし、岳人の言葉の後の一撃は違った。
確かに、威力は必殺というほどではない。
しかし、あの技の真髄は連射にある筈だ。
事実、奴はその後同じ構えを取っている。
つまり、あの威力を連射できるほどの達人だといえるだろう。
やはり、世界は広い。
奴が此処に転入してきた事に感謝しよう。
そして私は奴の前に出てワッペンを置いた。
第六話 早すぎた再戦!?ゴメンどうしよう
岳人が保健室に運ばれていく。
やはりこのクラスを選んでよかった。
闘いの後俺を待っていたのは、畏怖などではなく称賛の言葉だった。
特に風間ファミリーからは文句を言われると思っていたが、いつも行動を同じにしているもの立ちからすれば女子から以外で倒したものを見たのは久しぶりだと、べた褒めだった。
ま、あの面子からすれば男子が弱く見えるのは当たり前だと思うし。
そして無事に俺はクラスから歓迎してもらったのだった。
そして、クラスに戻り授業が始まり、新しい日常を迎える。
筈だった。
「風林寺だったな。私は三年の川神百代だ。お前に決闘を申し込む。」
この一言さえ無ければ。
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「あほか、そんな事を言わずに授業に戻れ。」
わしは内心の動揺を見せないように百代を説得する。
此処に転入してきた以上、百代の名を知らないという事は無いだろう。
あれほどの腕前じゃ。神童などと呼ばれていてもおかしくないじゃろう。
そして、百代に挑戦したいと思っていても仕方が無い。
じゃが、今の百代は先日の勝負で戦いに飢えている。
表には出さないが、あのものとの再戦を心待ちしているのは良く分かる。
今の百代と戦って無事で済むわけがない。
例え、無事に済んだといっても骨が何本か折れることくらい間違いなくおきるだろう。
それだけは阻止したい。
せっかく、クラスに歓迎されているのに、入院などさせたくは無い。
そう思った。
「うるさいぞ、じじい。これは私と奴との問題だ。」
そう其処が問題だ。
この決闘が両者同意の下で行われる以上わしらが口を出せるのは決着がついてから以外にはない。
周りからも自分のことではないため戦えなどといった言葉が出始めている。
百代の実力を知っているのに、何故そんな事がいえるのだろうか。
ワシはは彼が了承しない事を祈っていた。
「いいでしょう。その決闘お受けします。」
……その祈りが届く事は決してなかった
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「本日の第三試合――――――川神百代対風林寺謙一の試合を始めます。両者前へ。」
ああ、自分でも馬鹿なことをしたと思う。クラスのみんな、もとい風間ファミリーでさえ止めても良いんだと言ってくれた。
相手が百代であるならば逃げてもしょうがないで済むかもしれない。
しかし、例え誰が相手でも絶対に逃げてはいけないときもある。今がそのときだ。そう思ったのだ。
この世界ではない、世界で行われている活人拳対殺人拳の闘い。そして百代の気は殺人拳のそれに近い。
もし挑戦を断り、何かのきっかけでその道に行ってしまったら自分に助ける事は出来ない。
善悪の問題ではない。其処に入ってしまえば、全てが変わってしまう。
自分に出来ることは、力だけが全てではない事を証明する事、意外にはない。
この勝負に負けは許されない。だから逃げなかった。
「はははっ。気分がいいな。」
「?どうしてですか?」
俺は気になって聞いてみた。
「私は、少し前まで世界に絶望していたんだ。だがある男との出会いが、世界の広さを教えてくれた。」
…意外と我流Xの影響は大きいようだ。
「そして、今日はお前に出会えた。こんなうれしい事はないだろう?」
「つまり、自分の評価は高いんですね?」
「ああ、高いぞ。」
此処がある意味一番重要だ。あのときみたいな答えなら…
「じゃあ、勝負したらどちらが勝つんですか?」
「そんなの決まっている。」
「いざ、尋常に始め。」
「私だ!!」
「そうですか、それが貴方の答えですか。」
力だけで勝てるほど武術の世界は狭くない事を教えてやる!!
神速の一撃をかわしていく。観客からはもはや見えていないだろう。
ときに捌き、ときには避け、距離をつめていく。
始まりは前回と同じ攻撃。しかし、今回は避けられた後も続いている事が前回と大きく違っていることだろう。
しかし、今回は最初から本気である。
まだジャブ程度の攻撃に当たるわけには行かない。
「いいな、お前。奴みたいに気が見えにくい上にいくつかの技が混ざり合った感じがする。」
「そりゃ、凡人が強くなるためには学ぶ事が必要だからね。同じ事をしても勝てないから。」
いくら才能があっても理解できなければ、意味が無い。故に、俺は鍛錬を欠かさない。
「……凡人が強くなるためにか…」
その言葉に百代は何かを考え込んだ。
しかしそれも一瞬。
「―――しかし、避けてばかりで私は飽きてきた。この一撃に対抗できなければ終わりなるぞ。」
そんな言葉をかけてくる。
放たれるのは先日の一撃。全ての気を集中させなければ受けきれないあの一撃だろう。攻撃を当てても生半可な攻撃では衝撃は殺せないし、打ち負けてしまうだろう。しかも、それでダメージを与えなければ意味が無い。勝負を決めるためにも。
そんな技があるものだろうか。威力負けしない程度の力があり、なおかつ負けているのに相手にダメージを与えるなんて技が。
しかし、その注文どおりの事ができる技を自分は使える。威力があり、相手の拳の勢いを殺し、なおかつ相手にダメージを与えることができる、ありえないような技が。
…まぁ、禁じ手に近いが百代なら大丈夫だろう。
「いくぞ!」
百代が声をかける
その言葉とともにためていた息を吐く。
「川神流 無双正拳突き!」
それはまさに神速の一撃。受けてしまえば即病院送りになるだろう。
しかし、
「ちぇす!」
放たれた一撃もまた必殺。
そして拳と拳が正面からぶつかり合う。
百代は半ば確信していた。いやそばで見ていた鉄心ですらも、ルーもそう思っていた。
放たれた一撃は確かに強かった。しかし、それは百代に及んではいなかった。
それが見えている者の視点であった。
普通に考えれば威力で負ければその分、吹き飛ばされる。
その瞬間で勝負が決まる。
それが結末。
そして拳がぶつかり、
「…不動砂塵爆。」
百代が大きく吹き飛ばされる。
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私はどうしてこうなっているのだろう。
確かに奴の拳よりも早い一撃を放った。
そして奴が吹っ飛び勝負が終わる。
そのはずだった。
しかし、自分はありえない衝撃を食らい吹き飛ばされている。
奴も飛んでいるが自分に比べれば少ないだろう。
なぜかは分からない。しかし此方の技が完全に決まる前に体にだけ衝撃が来た。
奴の拳に触れた瞬間、拳に衝撃が無いのに体だけが飛ばされた。
結果、威力を十分に出し切れず奴はまだ立っている。
しかも、奴のほうが一瞬はやい。
しかし、放たれた一撃は遅く簡単につかめてしまう。
「凄まじい一撃だったが詰めが甘かったな。これで終わりだ!」
そのまま、やつの懐に拳を入れようとした瞬間、
「残念。それはワザとだ。」
気づいたときには自分が投げられている。
「岬越寺無限生成回帰!」
奴から離れる前での一瞬に数回は投げられていた。
「これで終わりだ!」
その言葉とともに奴が突っ込んでくる。
まだ、完全に回復していない。ダメージと違い、意識を失いかけたことで失った空気は元に戻らない。結果、少し意識が朦朧としている。
ならば、
「―――――――川神流大爆発!」
自爆して奴を吹き飛ばす。
相当な威力を持つこの自爆技。しかしあの男なら、
その爆発の中、立っている男の姿を見つける。
ああ、やはりこんな技では倒れないか。
やはり倒しきるには全力の技をぶつけないといけないか。
ああ、楽しいな。
お前は本当に楽しませてくれる。
さあ、勝負を続けようではないか!!!!
「――――――――――この馬鹿たれが!!!!!!」
その言葉とともに頭を殴られる。
「何をしやがる、じじい!」
「何をとは、こっちの台詞じゃ!!こんな所でなんて技を使うんじゃ!」
…………………あ、
急いで周りを見渡す。グランドは半球状に穴が開き、ガラスは衝撃で全て割れている。
「決闘は中止じゃ。百代、お前は反省文を提出。あと小遣いもしばらくなしじゃ。」
ってちょっと待て。
「風林寺、お主は戻ってもいいぞ。ほかの者も授業を始めるから戻るんじゃ。」
って本当に待てよ。
「百代、とりあえず穴を埋めてから授業に出なさい。」
そう言うとじじいが去っていく。いつの間にか誰もいなくなっていた。
「何なんだよ~~~~~~~~」
結論 学校では自爆しない。
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どうも批判覚悟で投稿してみました。考えているうちにおかしな文章になっている感じがするのですが、投稿してしまいました。
少しだけ文章量を増やし、誰かをはっきりとさせてみましたけどどうでしょか?
今回少しやらかした感があったのですが、感想の多さに負け質よりも速さを選ぶ感じになってしまいました。
本当はもっと構成を練りたいのですが、書いている時間が二時間ほどしかなく急ぎ足の執筆になってしまいます。
この話の後ですが、日常編(プロローグの話)を入れてから選択画面(攻略のところ)に移るべきでしょうか?自分的にはルート固定を早めにしたいのですが、やはり流れも重要ですし…
とりあえず今回もお付き合いありがとうございました。
感想がある限りしばらくの間は頑張って続けたいと思います。
使って欲しい技などは参考になるので書いていただけるとうれしいです。
改定などは時間があれば連休中にしたいと思います。
2009/9/18