つまらない。不良たちを一瞬で片付けた後も残るものなどない。
最強であるが故の孤独。それは自分にしか味わう事が出来ない感覚。
いや、自分に共感してくれる人はいた。しかし今あの人はいない。
誰かこの渇きを静めてくれる人間はいないのか。
その出会いがすぐ其処に迫っている事に百代は気づかない。
第二話 中国拳法は強いかも?
そこには、黒髪の青年が立っている。
身長は、自分たちと同じくらい。見た感じは武術をやっているようには見えない。
しかし外見では判断できない事を仲間達が教えてくれる。柔道の道着、カンフーパンツ。さらに手にはバンテージが巻かれ中には帷子を着ている。
そして一番気になるのは顔にある祭りで見かけるお面だろう。仮面○イダーみたいな仮面をなぜか被っていた。
「誰だ、あいつ。変な格好しやがって。」
「しかもちぐはぐな胴着着てるぜ。」
ガクトと大和はすでに相手の事を唯の馬鹿と判断していた。百代に勝てるわけが無い、そう思って。
「失礼する。私の挑戦者とみて、間違いはないか?」
「……そうだ。あんたは、川神百代だろう?
今ここで、この瞬間、勝負を希望する」
ご丁寧に声まで変えてある、その人物を戦いの後、公衆の面前に正体をばらそうと考えている風間ファミリー達。
「良いだろう。すぐにでも始めようじゃないか」
まぁ、姉さんは異常なほどノリノリのようだが。不良たちの戦いだけでは満足できなかったのだろう。
(だめだ、こいつ。まるで草食動物を相手にしているような感じ。さっきの不良たちのほうがましじゃないか?)
最強の噂に自分が一番だと思い込んだ馬鹿が挑んでくる事がある。
こいつもそうか。と、せっかくの勝負に楽しむ時間が無い事にため息をつきそうになる。
しかし正々堂々と挑んできた相手にそれは失礼だ。
そう思うと拳を握り、
「―――――――仕掛けても良いだろうか?」
「どうぞ。好きなように。」
その言葉と同時に稲妻が駆ける。
手加減されているとはいえ最速の一撃。数多の挑戦者たちを葬ってきた必殺の一撃。
この一撃を見る事が出来る者は数少ない。
観客も自分自身さえ次の瞬間には挑戦者が吹っ飛ぶ姿を予想していた。
しかし、現実は、
「さすがに早いですね。」
完璧に攻撃を受け流し、その場に立っていた。
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百代side
(な、何だと!?)
あまりの事に驚きを隠せない。ありえない。ある程度実力を測ることが出来るはずの自分が今の一撃、並の人間には視認すら困難な一撃をさばく実力を持っている人間だと見抜けなかった事に。ある程度は仕方ない。しかし不良レベルだと思っていた相手に今の攻撃がかわされたことには予想外にもほどがある。
(……しかし、こいつの今の動き。確か"化剄"だったか?太極拳の?)
しかし頭の中では今の技から相手の武術を予測する。
見切りの速さ。それが若くして武神の称号を得た百代の武器の一つだ。
「まさか、今の一撃を防ぐとは思わなかったぞ。どうやら甘く見ていたようだ。」
「此方も貴方の事甘く見てた。手加減してあの威力とは恐れ入る。」
「しかし太極拳を使うとは。チャイニーズか?」
「いや、純粋な日本育ちの日本人だ。技術は本場のだが。」
日本においては健康体操などで行われる太極拳。しかし健康のためだけの武術がそんなに広まるわけが無い。
しかし本来は必殺の残酷な実践武術。それをあの年で極めている事に驚きを隠せない。
(もしかすると、こいつなら……いやそんなに簡単に見つかるものか。)
まだ見ぬ強敵になるかもしれない相手に百代は目が離せなかった。
「今度は此方の番でいいのか?」
「ああ、いいさ。好きなようにな。」
しかし防御は確かにすごいが攻撃は如何なのか?
相手の発言に好奇心を隠せない。こいつはどんなものを見せてくれるのか。
中国の武術家とは何度もやった事はあるが此処までの実力者とはいまだに無い。
ならばまだ見ぬ技があるかもしれない。そう思うと笑いが止まらない。
「――――それは余裕の笑みかい?」
「おっと、気分を悪くしたなら謝るぞ。久しぶりに楽しくてな。ここまで楽しい戦いは久しぶりだ。感謝する。」
本当に面白い。一般人のようでこれほど強い男に出会えるなんて。
「――――ならば此方も全力で攻撃いたそう。」
「――――来い!!」
男が構える。同時に呼吸法も変わる。
(何だ?あの呼吸は。……!!まさか!!)
一昔前、とある武芸者と戦ったとき、似た呼吸をした事があった。戦いの後、それが気になりたずねてみると、
「―――――――――雷声という秘法があります。土壇場なら出来ると思いましたが、やはり形のみの技が出来るわけ無かったのですね。自分の技で戦えばよかった。」
そう語った。まさかこんな所で使える奴に会えるとは。運命に感謝したいぐらいだ。
「行きます。」
その言葉と同時に百代の体は飛ばされていた。
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続きを書いてみました。意外と感想が多い事に驚きもっと構想を練ったほうがいいかと思いました。前の話も少しずつ直していきたいと思います。文章短くてすいません。ちなみにこの主人公FとSどちらがいいと思いますか?初めてなので中国三大武術からはいってみました。