この話は本編と関係ありません。作者の思いつきで書かれたものなので軽い気持ちで読んでください…
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ふとこんな夢を見た。
ある世界に迷い込んだ夢を…
(外伝)思いついたら書いてみた!?ある日の夢!ゼロの世界
『神の左手』ガンダールヴ。
その姿は勇猛果敢で、一騎当千。剣はその光輝く左手に、槍はその右手に持ち、あらゆる武器の悉くを例外なく使いこなすその様は、まさしく神の左手ガンダールヴ。
その力はなるほど神がかっており、千のメイジを相手にしたとしても決して負けることはなかったといわれるほど。
『神の盾』ガンダールヴ。
魔法を扱う人間すべからくの祖である、始祖ブリミルに仕えし四つの使い魔の一角。それは数多の武器を用いた必殺の剣であり、それと同時に万の危難から主を守る絶対の盾であったと言われた。
剣を片手に、戦場を駆けるガンダールヴ、それは比類なき敬愛を捧げる主のために。
何人たりとも主に危害を加えることは罷りならぬ、と。
ただ愚直に。ただ一途に。ただ一心に。迷うことなく。
それは単純であるがゆえに、最も判りやすい行動原理であった。
そして、それは単純であるがゆえに多くの者が出来ない、誰もが諦める道。
“すべては、己が主のため。己自身が、主のことを想うために”
それこそがガンダールヴの行動原理だった。
それだけが、ガンダールヴの心の力だった。
そして、それさえあればガンダールヴはガンダールヴたりえるのだろう。
どれだけの時を経て、仕えるべき主と使い魔自身が別の誰かになったとしても、
それだけが、ガンダールヴの証なのだから。
彼我戦力差ははっきり言って馬鹿らしいとしか言いようがない。勝つとか負けるとかそれ以前に、まず生きていられるかどうかすら疑わしい。
というより、誰もが口をそろえて言うだろう。
殺される、と。
しかし、それも当然だろう。
戦力差は七万対一。
これほど滑稽な戦場があるだろうか。
結果なんて火を見るよりも明らかで、希望なんて欠片も存在しない無慈悲な戦場。
敵は七万の兵。
怯えて逃げ出すことが最良の選択だと一目でわかる戦場。
しかし、そこにたった一人で向かう者がいた。
ルーンの光が輝く左手に、ただ一本の剣だけを友にして。
滑稽で無慈悲な戦場に、ただ一人向かう者がいた。
「――……あーあ。見ろよデルフ、なあ。七万だぜ、七万」
「ああ、そうだな相棒。七万だ。七万の敵だよ」
小高い丘の上に立ち、剣を片手に佇む男。
いや、年齢から見て少年と言ったほうがいいだろう。
髪質が固いのかツンツンと逆立った漆黒の髪に、同じく黒い瞳をしているこの世界では一風変わった風体の少年。青と白のパーカーと呼ばれる服を着て、左手に剣を下げた姿で眼下を見据える。
見下ろす先には、こちらへと着実に進軍してくる七万のメイジ。新生アルビオン軍、レコン・キスタ。
対してこちらは一人の少年と一本の剣。
平賀才人という名前を持つ少年は、極度の緊張感と死への恐怖心から、唾をごくりと飲み下して目の前の光景から目をそらした。
「……なあ、相棒。俺ぁよ、逃げてもいいと思うぜ」
僅かに気遣わしげに声をかけたのは、その手に握られた剣。
インテリジェンスソードの魔剣デルフリンガー。
六千年もの時を過ごし、かつてはブリミルのもとでガンダールヴが振るったといわれている伝説の剣。
時を越え、再びガンダールヴの手に握られた彼は、この相棒を気に入っていた。ゆえに。
「誰も責めやしねえよ。七万だ。逃げて当然だ。なあ、相棒」
逃げて当然、というくだりに才人はぴくりと肩を震わせた。
ぐっと腹に力をこめて、声が震えないように気をつけながら言葉を紡ぐ。
「……ダメだ。ダメさ、デルフ。ここで逃げちまったら、ルイズが危なくなる。俺が逃げたら、あいつらはきっとルイズの持つ虚無の力を使って足止めさせるに決まってる。……アイツを守るためなんだ。そのためなら……」
声を震わせることもなく言い切った自分に拍手を送ってやりたい気分だ。
しかしそんな余裕があるはずもなく、才人はそらした顔を元に戻し、目線の先も恐ろしい敵軍へと向ける。
その瞳には、怯える内心とは違って確固たる意志が宿っていた。
「……なあ、相棒。怖いんだろ? 手、震えてるじゃねえか。」
デルフリンガーの言葉に、はっとして才人は己の左手に目を向ける。
カタカタと剣の柄が揺れる音が絶え間なく聞こえる。
怯えと不安と恐怖。それらが入り混じり、本人が気付かないほどの深層意識下で死をイメージしていたのだろう。
震える手は、どれだけ力を込めても止まらなかった。
しかし、何てことはない。
ふとよく見れば、右手も、両足も震えているじゃないか。
は、はは。
乾いた笑い声が才人の口から洩れた。
「無理すんなよ、相棒。はっきり言ってやる。このままじゃ、お前ぇ死ぬぜ」
聞きたくなかった一言をはっきりと言われ、びくっと一際大きく才人の体が跳ねた。
しかし、それも無理はないのだ。
才人はほんの数か月前まで戦争なんて存在しない国である日本の、なんの力もない学生でしかなかったのだ。
事件に巻き込まれることすらほとんどない。命の危機なんて意識することのない豊かな国。朝起きて、学校へ行って、友人と笑って喋って、授業は寝て、先生に怒られて、授業が終わったら家に帰り、パソコンでネットサーフィンをして、夕飯を食べて、風呂に入って、寝る。
そんな生活だけを続けてきたのだ。変化はないけれど、それでも幸せだった今はもう夢でしかない世界。
そんな世界を生きた才人にとって、今の状況は理解に苦しむものでしかない。
死ぬかもしれない……いや、確実に死ぬのだ。
このままここに留まり、戦えば。
たとえ、ガンダールヴの力を持っていようとも。
死ぬのだ。間違いなく。
「……は。はっきり言うなあ、お前」
ひきつった笑みでデルフリンガーに答える。
死ぬ。
わかっているのだ、そんなこと。
けれど――、
「そんなことは分かってる。でも、ひけないんだよ、俺は…」
退くわけには、いかないのだ。
「デルフ……俺、さ」
「おう、なんだ相棒」
「俺、さ。アイツの使い魔になって、散々だったぜ」
思い起こすのは、この世界に来てからの生活。
波瀾万丈。変化なんていつでもどこでもやってきた。落ち着きのない、けれど飽きることのない楽しい生活。
「俺のこと犬って呼ぶし。言うこときかなきゃ鞭で叩くし。シエスタやキュルケと話してても叩くし。蹴るし。殴るし。……ホント、散々だった」
「そうか」
「でも、俺に二回だけだけど笑ってくれたし、俺が傷ついたら泣いてくれた。ゼロなんて馬鹿にされても、諦めずに誇りを持ってた。いい雰囲気になった時は、可愛く照れてもくれた」
「そうか」
才人の言葉にデルフリンガーはただ相槌を返す。
どうして才人がこんな話をしだしたのかは、わからない。
けれど、これは恐らく大事な儀式なのだと思えたから。
「……アイツ、俺と結婚したんだぜ」
「そうか」
「……あんだけ俺のこと嫌ってたくせに、結婚だぜ」
「そうか」
「――……なあ、デルフ」
「なんだい、相棒」
名を呼ばれ、デルフリンガーは応える。
気がつけば、才人の全身を覆っていた身体の震えは止まっていた。
「俺、アイツのこと好きなんだよ」
「……そうか」
震えが止まった左手が、力強くデルフリンガーを握る。
左手のルーンが一層強く輝きだした。
「だから、ひけないんだよ。逃げるわけにはいかないんだよ。俺が逃げたら、ルイズが死ぬ。そんなこと、絶対許さねぇ。俺が死んでも守ってみせる!」
左手の力は強く強く。
震えなんて気力で抑える。
恐怖なんて、幸せな思い出で忘れられる。
死ぬことなんて、アイツの笑顔を思えば何ともない。
アイツの笑っている顔が見れるなら、この命なんてくれてやる。
「何よりも、俺はアイツに好きだって言ったんだ。ここで逃げたら、嘘になる。アイツに好きって言ったこととか、アイツのこと滅茶苦茶好きなこの気持ちとか、全部嘘になっちまう」
決意は持った。
気持ちも固めた。
自分が一番望む大切なものも見定めた。
大好きな女の子。誰よりも愛しい女の子。
その娘を守るため。その娘を大好きだと思った自分を貫き通すために。
「――だから、戦うんだ! 好きな女の笑顔も守れねえで、何がガンダールヴだよッ!」
左手のルーンの光は最早直視できないほどの光を放っていた。
ガンダールヴの力は、心の力。
奮える心。猛る想い。それさえあれば、ガンダールヴは戦える。
伝わる相棒の心に、デルフリンガーも思わず声が大きくなる。
目の前には七万の敵。
死を覚悟して、駆け下りるようとする。
その時、
「始めから、死ぬ気で戦うんじゃない!!」
振り返れば其処には一人の男が立っていた。
「好きな子がおるのだろう?ならば生きて見せろ。例え泥まみれになろうとも、生きて見せろ!」
「あんたはいったい…」
サイトの目の前にはこの世界には無いはずの服を着た男が立っている。
「生きて生きて、生き抜いてみろ!」
「…出来るんだったらそうするさ!…でも、そんなことが出来るわけ無いじゃないか!」
七万の大群の前に一度飛び出せば、逃げることなど叶わない。
「あんたが誰か知らない。だが、俺の事に口出しするんじゃない!」
その言葉と同時に坂を駆け下りる、サイト。
「……やれやれ、夢の中か知らないが見殺しにしたら寝覚めが悪いだろ!!」
叫びながら、丘を駆け降りる。
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デルフリンガーの笑い声は変わらず続いておりルーンの光も相まって、アルビオン軍も丘を駆け降りてくる小さな影に気づいたようだ。
輝く光と笑い声をひきつれて、たった一人で向かってくる剣士。
軍の前衛部隊の騎兵隊が、金属音を鳴らして槍を構えた。
そんなことは気にせずに、才人はひたすら叫び続ける。
心の奮えを。猛る想いを。
ただ一心に。ただ愚直に。
迷いのない、想いを。
「…俺は守ってみせる。……俺は、ゼロの使い魔だぜ!!」
「わっははははは!! 最高だぜ相棒! なあ、ガンダールヴ!」
七万対一と一。
絶望的なまでに結果の見えたその戦いの火蓋が切って落とされた。
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次から次へ押し寄せる敵兵に終わりは見えず、まるで嵐の如く攻撃魔法が降りかかる。
「───ファイアボール!!」
「───フッ!!」
まだか……
まだなのか…………
いつになったら終わる?
いつまで敵を倒し続ければ終わる?
押し寄せる敵兵を次々に倒す才人ではあったが、徐々に体力が削られ、自慢のスピードに陰りが見え始めた。
「!危ねぇ!」
その言葉とともに降り注ぐ魔法。
「!ちっ。」
舌打ちとともにジャンプでかわす。
敵を飛び越え、敵の後ろに移動する。
「!馬鹿。そっちはだめだ!」
気がつけば回りは既に囲まれている。
「…………ル……イズ。」
攻撃魔法が準備されている。
矢を構えている。
魔法と矢の攻撃に隙間など無かった。
避ける事などできそうに無い。
「…………………………あ」
自然と目を閉じていた。
自分の戦いは終わってしまったのだと…
(ゴメン、ルイズ……)
そうして、ガンダールヴの戦いは終わった……
そのはずだった。
待っても衝撃が来ない。
目を開ける。
其処には傷つき、死にたいの自分がいるはずだった。
しかし、
「我が名は我流~~~~~~~~~~X~~」
先ほどの男が目の前にいた。
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手甲をはめ、準備を追えた自分の視線の先には、わずか一分たらずで数十人の敵を倒した男の姿だった。
(…やるじゃん。)
此処がゼロ魔の世界だという事は分かった。
つまり、彼は才人。主人公である。
知らん振りしても彼が生き残る事は分かっている。
だが、
「目の前にいる人間を助けないわけ無いだろ。」
活人拳である以上この理不尽すぎる暴力を見逃す事はできない。
走り出す。
その速さは先のサイトよりも早かった。
目の前には目を閉じ、諦めた顔をしたサイトがいる。
面を被る。
「地躺連環掌拳脚法!!!」
球のように回転しながら手や足を全方位に向けて高速でなおかつ連続で繰り出す。
突然の攻撃に多くの兵士が餌食になる。
包囲が崩れた。
サイトが目を開ける。
「我が名は我流~~~~~~~~~~X~~」
名乗り上げる。
突然の事に驚くサイト。
「お前の名前は?」
「…才人。平賀才人だ。」
それは確認である。
「ならば、サイト。行くぞ!」
大丈夫か?などとは聞かない。
この場において意味の無い質問である。
「!応!」
その言葉とともに戦いは再開した…
「人手裏剣!」
片手一本で軽々と兵士を掴み、そのまま振り回して手裏剣のごとく投げ飛ばす。
そうしてできた道を、サイトが走り出す。
「うおお~~~~~~」
周りの兵士を倒していく。
既に当たりは気絶した兵士で一杯だ。
「―――う、撃てえ~~~」
指揮官のおびえたような口調とともに繰り出される炎の魔法。
「フン!」
しかし、繰り出される拳の風圧にかき消される。
そして、
「真旋風残雲足登脚!」
一瞬の間に敵の近くに移動し、蹴りを繰り出す。
それは、鎧を着ている兵士にもダメージを与える。
「サイト!耳を塞げ~~~!」
その言葉と同時に、
「恐怖のマントラ!」
超音波のような奇怪な発声法によって、相手の脳を攻撃する。
周りの兵士は一斉に錯乱状態に陥る。
「いまだサイト!」
「……!!次はもっと早く言えよ!!」
耳を塞いでいたため何があったか分からないサイトだが、兵士達の様子に攻撃を再開する。
「…っひ!」
それは誰の声だったのだろうか。
既に倒れた兵士の数は数百にも及ぶ。
たかが二人でこれだけの被害に。
ならば自分達の向かう先には……
一人の兵士が武器を捨て走る。
その姿を見た兵士が武器を捨て逃げる。
それを見た兵士がまた…
自分の装備を捨て逃げていく。
「に、逃げるんじゃない!敵は二人だぞ。何故我らが逃げなきゃならん!」
その言葉に、
「お前が指揮官か?」
目の前には男が立っている。
「く、やらせはせん!やらせわせんぞ!!」
指揮官直属の兵士達が男に襲いかかる。十人以上の兵士が一斉に襲い掛かる。
「うおお~~~」
其処の攻撃をかわし、
「腕刀…足刀…」
何人かの兵士が吹き飛ばされる。
「コォォ………手刀背刀打ち!!」
「グワワ---」
その攻撃に残りの兵士達は倒れる。
「な、何なんだよ!お前達は!!!」
指揮官のおびえた声に、
「ただの正義の味方だ!!!」
「く!!死ねえ~~~」
その言葉とともに魔法が放たれる。
それは男に直撃した。
「…これで、終わったのか?」
あっけない幕切れに戸惑いを隠せない指揮官。
「まあいい。後はあの「危なかった~~」…何だと?」
目の前には無傷の男が立っている。
「それしきの攻撃で燃え尽きるほどやわな手甲ではない!!」
そして、
「チャイシュート~~~~~~~~~!」
男の蹴りに指揮官は遠くに飛ばされる。
突然の事に声も出ない兵士たち。
(今が好機!)
指揮官が消え、戸惑っている兵士達に、気当たりをぶつける。
その圧倒的な気の前に多くの兵士達が逃げ出した奴を追う。
まるで、エルフにあったかのように先を争うように逃げ出す兵士達。
周りには兵士の装備と気絶した兵士。
……致命傷ではないが大きな傷を負ったサイトが残った。
ほんの少し目を放した隙に、サイトが傷を負っていた。
やはり、未来を変えることは出来ないのかと、そう思った男に、
「…ありがとよ。これで守る事ができたぜ……」
満足そう顔をするサイト。
「あんたが言ったとおり、生きようとしたら生き残れたぜ…」
「……そうか。」
自分の荷物はない。
道具や漢方が無ければ助ける事は出来ない。
「俺達は勝ったんだよな?」
「ああ、そうだぜ。」
いつの間にか手についていた腕時計が音を出す。
「…行くのか?」
「ああ、本来此処にいるべきじゃないからな。」
本来いるべきは此処ではない。
自分にはやらなければいけないことが残っている。
そんな気がした。
「…本名を聞いてもいいか?」
その質問に、
「俺の名は……」
薄れ行く意識の中で、
「謙一。風林寺謙一だ!」
そう答えた…
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昔書こうとした事がある奴を編集しました。後、禁書目録、恋姫とかもあったんですがこれを書いてみました。
別に話が思いつかないからこれを書いたわけではなく、思い出したら書いてしまったネタです。気にしないでください。
次回は何時になるか分かりませんが、感想にあったキャラクターのかかわりについては考えておきます。
あと、大和のことですが、大和の話を書くとややこしくなりそうなので書かなくても良いでしょうか?その方が書きやすそうなので書いているうちに最初と違ってきてしまっているので何とかしたいのですが…
さて、次回はまだ続く日常編。日常は終わりに近づく。その時、彼は……
ではまた次回・
この話はネタなので細かい事は気にしないでください。
感想、ご意見、要望をお待ちしています。
2009/10/6