【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~~高順伝外伝 河北の王・袁紹伝~~~ 第8話あれから数日。公孫賛は陣を堅く守って打って出るような真似をせず、袁紹も出てこない相手に力押しをすることも無く、睨み合いが続いていた。何かあったか、と言えば・・・公孫賛の武将である王門が公孫賛不利と見て袁紹に内応を企てたところを沮授に見破られ成敗されたといった事だろう。袁紹としても「そんな事がありましたの?」と内実を知らなかったし、田豊も知らないようなので突発的な事態だったとはいえたかもしれない。王門自身が公孫賛の武将連中から疎まれていた事もあって、動揺も少ない・・・と両者の対陣にさして問題のある状況にもならなかった。そこに、大きな変化があったのは対陣から1月ほど経った頃である。公孫賛の陣にやけに大きな動きがあったのだ。「・・・出撃?」袁紹は物見の報告に怪訝そうな表情を見せた。はて、と袁紹は考え込む。対陣して一月。お互いの物資はそれほど消費しておらず、また兵の損失も割合から見て向こうのほうが大きい。なのに、向こうから有利な防衛戦闘を捨てて出て来る・・・?(乾坤一擲に賭けるのか、それとも・・・。)色々と閲してみたが、可能性として出るのは1つ。援軍の見込みがあったということだ。そうなると烏丸しかいないはずだ。袁紹は物見に公孫賛の陣営に増援があったかどうかを聞いたが、公孫賛の陣に兵が増えた感じはしないと物見は付け加えた。旗が増えたわけでもなく、ただ慌しく出撃の準備をしているように見えた、と。それなら、何故・・・? と考え込んでいたところで、顔良と文醜が「え、えんしょうさまー!」と陣幕に駆け込んできた。「何事ですの?」慌てるようなこともなく、袁紹は応対する。何かあったのは間違いないようだが、駆け込んできた二人は「あの、そのっ」と舌がもつれて上手く言葉に出来ない。少しして落ち着いたのか、顔良が息を切らせつつ報告を始めた。「ほ、報告です!この陣より10里ほど西に張旗! ・・・恐らくは張燕と思われます。その軍勢、騎兵が一万一千ほど!」「騎兵がっ・・・。高幹さんは何をしていましたの? ・・・いや、全兵に伝令。すぐに南に退きますわ、急がせなさい!」「え、下がるのですか? ここで迎え撃つ事は可能ですけど。」「下がりますわ。理由は途中で話します。」「は、わかりました・・・ほら、いくよ文ちゃん!」「ええー、でもここであたいが奮戦して追い返すって言う手も」「ほらほら!」「あ、ちょっと待てってばぁっ!?」顔良に急かされて、文醜は不満そうにしながらも一緒に陣幕を出て行った。文醜はきっちりと最後まで説明しないと納得してくれそうにないが、顔良はその辺り心得たものである。袁紹も慌しく兜をかぶって陣幕から出る。途上、田豊もやってきた。「ほっほっほ、少し予想が外れてしまいましたな。」「ええ、烏丸が来ると思っておりましたのに。まさか張燕のほうだとは・・・。」袁紹は少し忌々しそうに言うが、田豊は「何事も上手く行かぬもの」と冷静に返す。「高幹さんも何をしていたのやら。押さえ込むだけなら2・3万あれば・・・」「はぁ。まあ、突破されたのであれば仕方ありませぬ。もっとも、こちらとて向こう同様に仕込んでおるのです。決して負けませぬわ」「・・・ふっ、頼もしいですわ。」自信ありげに言う田豊を見て、袁紹は苦笑してしまっていた。袁紹軍は慌しく陣に炎をかけて、南へと向かいだし、公孫賛はそれを追いかける形で南下、張燕軍を迎えて兵力は袁紹軍を上回った。張燕自身が来なかったのは気がかりだが、代わりに派遣された男が何と言うかその・・・ __,,..、、- - - .、、...,,___ ,,、‐''"~ ̄  ̄``''‐、、 / \ / ヽ / ヽ / / ~~` '' ‐- 、、 ,,__ __ ,,..、、 -‐ '' "~~\ ヽ | / __  ̄ __ ヽ | .| { ´ ‐- ....__ __... -‐ ` } .| .| 〉,,・^'' - .,, ~ i ~ __,,.- ^`・、.〈 | ./ ̄| /,/~ヽ、 `'' ‐--‐ ,.| 、‐-‐'' "~ _ノ~\,ヽ | ̄ヽ | (` | / ヽ,,_____`‐-、_、..,,___ノ八ヽ___,,.._-‐_'"´___,, ノ ヽ .|'´) | | }.| ./' \二二・二../ ヽ / ヽ、二・二二/ 'ヽ | { | .| //| .| / | |. \ | |ヽヽ| .| .| | .| / | |. \ | | | .| |ヽ.| | / .| |. ヽ .| .|./ .| | .| | / | | ヽ | | / ←こんなん ヽ .| | / .| | ヽ | | / .ヽ.| | / '二〈___〉二` ヽ | |./ | | `-;-′ | | iヽ|. ,,... -‐"`‐"`'‐- 、、 |/i | ヽ /...---‐‐‐‐‐----.ヽ / .| | ヽ. ,, -‐ ''"~ ~"'' ‐- 、 / | .| ヽ ! ./ .| ,,| ヽ. | ./ |、 |\. ヽ / /.| .|. \. ヽ、____ ___/ / .| ' `  ̄ ̄ ´ ' であった。彼を見た武将は「えらく濃い顔だな・・・」と感じ、公孫賛は「・・・狙撃が上手そうだなぁ」と思ったとか。*ちなみに彼を忘れている99%の皆様へ。彼はゴルgいやそうじゃなくて張燕の部下である張楊です。張燕からの援軍が到着した事で再度出撃を決意した公孫賛だったが、彼女の動きより袁紹のほうが僅かに早かった。凄まじい速さで南へと退いていく。白馬義従に張燕が派遣した軽騎兵1万以上を編成し。元々の機動力に勝る公孫賛は追いすがる。かなり時間は経ったし、馬を飛ばしていて公孫賛自身も少し疲労が見え始めているが張郃・高覧・沮授もきっちりついてきている。袁紹軍の最後尾にもう少しで手が届くというところで、公孫賛は異変に感づいた。彼女は指揮官としても一介の武人としても、どちらかと言えば勇猛な性格である。追撃戦など、指揮官が矢のような勢いで兵を引っ張っていかなければいけない状況では率先して先頭に立つ。その公孫賛から見て、目の前にあるのは袁紹の最後尾・・・殿(しんがり)なのだが、その殿には袁紹の姿。「何だってわざわざ最後尾に麗羽が・・・って!」よく見たら、最後尾ではない。袁紹軍はすでに、逃げではなく迎撃のための陣を展開していた。袁紹の居る場所は最後尾ではなく、最前列・・・。総大将として、公孫賛に向かい合ったのである。その袁紹、見れば公孫賛に向かって手招きをしている。「来るなら来て見せなさい」とでも言いたげだ。「くっ・・・」公孫賛は思わず全軍突撃と叫びそうになるが、それは沮授に止められた。「殿、お待ちを・・・!」「な、何で止めるんだ? そら、兵は疲れてるかもしれないけどあいつらだって条件は同じだぞっ」「それはそうです。しかしあの余裕。袁紹は今までのような考えなしの馬鹿ではありません!」「むぅう・・・それはそうだけど。・・・。よし、一度距離をとろう、それかr「殿っ」何だよ!?」張郃の叫びに、思わず大声で怒鳴ってしまう。それでもあまり迫力が無いのは、彼女の普段の気さくさというか残念な感じと言うか、ともかく本気で怒ってもあまり怖くない公孫賛。「物見よりの報告っ!我が軍の後方から千から2千ほどの兵が幾隊にも別れ攻撃を・・・袁紹軍の別働隊と思われます!」「はぁぁっ!?」別働隊? どこから・・・いや、目の前にいる袁紹軍から部隊が離脱して行った様な事はない。先駆けをしていた部隊は隊伍を建て直し、そこに袁紹が向かい、反転したような感じでこちらに相対。そこに自分が追いついた格好になって、と考えればどう見ても袁紹側の部隊が此方の背後付近をつけるわけが無い。とすれば・・・?ここで沮授はチッ、と舌打ちをした。「殿、どうか撤退を・・・!」「て、撤退? 折角ここまで・・・。」「なりません、兵力を鑑みればこちらが不利です、何卒!」「だが、千か二千・・・はぁっ!?」ここで公孫賛も気がついたらしい。沮授は「まさかな」とは思っていたことだったが、それが悪い方向に的中したと見える。その「まさか」の内容、それは。「南皮に駐在していた兵力はどこに行ったのだ?」沮授はともかく、他の武将も、公孫賛ですら南皮に存在していた袁紹軍の兵は北上してきた袁紹本隊と合流したと思っていた。だが、もしもそうでなければ? 袁紹がこちらを引き込んで叩こうとした事。もしかしたら、同盟をしている烏丸か張燕の援軍を引き出すまで膠着状態を続ける振りをしていただけであったら。そして、南皮の兵力を分割して伏兵、或いは奇襲部隊として各地に潜ませていたのなら?一度合流はした可能性はある。そのときに指示を出し、食料を与えていたのかもしれない。何より、袁紹はまともになり、その傍らを支えるのはあの田豊。それくらいの小細工をしてくるのは在り得る。(くっ・・・まさかそこまで袁紹がまともになって田豊の策を受け入れたというのか)前回戦った時に「袁紹は随分まともになった」とは思ったが、ここまでになっていたとは。少しばかりか、これまで持っていた袁紹に対しての「無能」の考えは消したほうがいいらしい。公孫賛も馬上で冷や汗をかいて沮授に質する。「沮授、その2千っていうのは一部の部隊でしかないよな・・・?」「御意。恐らくは同規模の部隊が各地に。」「そう、か・・・」沮授の言葉に、公孫賛はガックリと項垂れた。ようやく張燕からの援軍を得て決戦に持ち込めると思っていたのに。いいようにあしらわれた・・・と言ってもいい状態だった。また、南皮はかなり大きい都市だ。そこを守っていた兵が1万以下のわけもない。沮授の言う通り、奇襲舞台はいくつも用意されているのだろう。「殿、落ち込んでいる状況ではありません、お早く!」「あ、ああっ。全軍に通達、反転し撤退だ。南皮を目指す。張燕殿から送られた部隊もだ、急がせてくれ!」公孫賛が撤退を決意したのと同じく、袁紹もまた立場が逆転したと感じた。すぐさま追撃を繰り出して追い立てていく。「撤退に移りましたわね。」「そうっすね・・・っていうか、何時の間に敵後方に兵を配置したんすか?」はてな顔で悩む文醜、その姿を見て(ちゃんと説明したのに・・・)と、溜息をつく顔良・田豊・審配。ともかく袁紹軍は追撃を開始。逃げる公孫賛の軍勢を押して行く。その途上で2千ほどの中規模部隊が幾度も公孫賛軍へと向かってくる。その回数、実に10度。逃げきったと思いきや絶妙なタイミングで横腹を突いてくる。そのせいで何度も足を止めていては、後方から追ってくる袁紹本隊の猛撃を受けることになる。まさに「十面埋伏」であった。被害など気にせず駆け抜けるしかない。だが、公孫賛側もただやられてばかりではなかった。特に張郃や高覧、公孫範など武将が直接指揮する部隊に向かっていった奇襲部隊は手痛い反撃を受けて退くばかりだった。また、優勢である袁紹も一度だけだがヒヤッとする場面があった。勢いに乗って攻撃を続ける袁紹だったが、何処かから飛んできた矢が袁紹の顔をかすったのである。流れ矢などではない、確実に自分を狙った一撃。これには袁紹本人、彼女の護衛も兼ねる顔良らも真っ青になって「ぱ、白蓮さんの部下に弓勢の達者な方いました・・・!?」と身震いしていたり。(この矢は張楊の放ったものだった公孫賛・張燕連合は多大な損害を受けつつも何とか南皮まで撤退。しかし、被害が大きすぎた。このまま攻めてくる袁紹本隊を現有戦力で支えきれず、また南皮も維持できないと感じた公孫賛はそのまま北平・薊(けい)に下がり、そこで防衛に徹する事を決定。張燕からの援軍も薊を経由して帰還させることも可能だ。沮授も「万以上の軍勢を失い、士気が低下・・・支えきれないと見た殿の見識は正しい」と撤退を支持。袁紹を見くびったせいでこんな結果になるとは。これ以降は自分達が積極攻勢に出れることは無いだろうと予見している。まだ烏丸が背後に控えているし、袁紹も易々とは攻め込まないだろう。即時滅亡は無いと踏んでいる。とはいえ曹操の動きも幾分読めないところはある。曹操が早く動く事に賭けるしかないか、と唇をかみ締めた。公孫賛が南皮を放棄した後、袁紹がやってきて同地を再占領。結果、界橋の戦いは公孫賛を主軸とした北方連合を撤退せしめた事で、袁紹の勝利といえる。袁紹から見ての問題は、兵力を減らす事に成功しただけで武将を捕縛する事が出来なかった事だろうか。そこまでやってようやく損害を与えた、という話なのだが。南皮に入城した袁紹だが、彼女はここで一度動きを止めている。兵が多少減っていた事が主な理由だが、そもそも彼女はこれ以上北上するつもりが無かったのである。審配や文醜、顔良までが「追撃一本槍で進むべきです!」と進言したのだが袁紹は「私なりの考えがありますわ」と兵を休息させることにしている。田豊は「ほっほっほ」と笑うだけだったが、内心では彼女の考えに感づいている節がある。さぁ、どうするべきかな? と考える袁紹だったが、そこで1つ不測の事態が起こる。狙い済ましたかのように、漢王朝・・・いや、曹操と言ったほうが正しいが、袁紹と公孫賛に対して使者を送り和睦を斡旋したのである。漢王朝を(今は)それほど重視していない袁紹だが、流石に会わないわけにもいかない。袁紹は使者を広間まで通し、礼を尽くし迎えた。その時の仔細は流すが、簡単に言えば「公孫賛と和睦しなさい」という内容である。曹操としてはまだ北の情勢は混沌となった状態が好ましい。袁紹が北方を完全統一すれば南へ向かってくる事は明白だからだ。どういうことか袁紹はあっさりとこれを受け入れた。顔良らは全員「ええええっっ!!?」とか思ったらしいが、袁紹は淡々と使者の言葉を受け、適当に饗応して適当に送り返した。あの感じだと、すでに白蓮さんのほうへも使者は到着してるのでしょうねぇ・・・と適当な事を考えている。使者がいそいそと帰っていくのを見届けた後、「評議をはz「「どーいう事ですかぁっ!」と袁紹の言葉を遮ってきた顔良らの言葉で評議は始まる。田豊以外が詰め寄るも、本人は涼しい顔をしてこう返した。「だって、利益がありませんもの。」「へ?」「考えてご覧なさいな。これ以上進めば間違いなく烏丸が出てきますわ。そうなれば苦戦・・・その隙を突いて曹操さんが出てくるでしょう?」「それはそうかもしれませんけど、ここまで来たのだから和睦なんて受けずに・・・」「無理ですわよ。これ以上進めば白蓮さんは烏丸のいる長城以北まで逃げますもの。北平を得る事と常に烏丸の襲撃に警戒しなければいけない事・・・どちらが重いと考えまして?」「むぅ・・・」そこで、田豊が進み出た。「しかし、このままでは常にここが公孫賛殿の攻撃に晒されますぞ。」「烏丸と相対するほうがよほど脅威ですわ。此度の戦いの被害で、白蓮さんは暫く攻勢に出られないでしょう。」「それを補填するために烏丸に救援を頼むことも考えられましょう。」「ふふっ。そうなれば篭城をしてしまえばよいのです。烏丸は堪え性がないようですから。何より、それだけの大軍を養っていくほどの余裕が今の白蓮さんにはありませんわ。」「なるほど・・・。」「こちらが攻め上らなければ、という条件付ではありますけど。白蓮さんには攻め込む戦力がありませんわ。これ以上は無駄ですのよ?」そこまで言われて、田豊は引き下がった。顔良や審配からすればもっと説得をして欲しいところなのだが、そもそも田豊が袁紹と同意見だったりする。烏丸と同盟しているといっても、その烏丸兵を食わせていく事ができないのなら公孫賛も派兵をしてくれと言わないし、丘力居もしないのだろう。これで北方は混乱どころか沈静化した、と袁紹は言う。言い分は解るのだけど・・・と、顔良や文醜は少し不満そうであった。袁紹がそこまで言う以上は彼女らも従うけれど「両面に敵を抱えるのは危険だと思う」とだけは発言しておく。解っておりますわ、とだけ答えて袁紹は評議を終了した。公孫賛は中々の人格者で将兵共に彼女を信頼しているし、支配下にある民衆も公孫賛の事を慕っている。ここで無理に進んでいけば討つ事はできるかもしれない。ただし、足元が一気に不安定になる。公孫賛の治世を慕う民衆がいて、その治世者を力で無理に討てば何処かで綻びが生じるものだ。労多くして益少なし。烏丸のこともあって、これ以上刺激をする必要が無いな、というところが袁紹の本心であった。~~~南皮、城楼にて~~~時刻は既に夜。そこに袁紹は1人、南の地を見つめていた。少しばかりの酒と肴を持って、ただぼんやりと。「んぐっ、む・・・はぁ~・・・。」酒を一気にあおって溜息1つ。「ほっほっほ、1人で酒宴ですかな。」「はい?」いきなり声をかけられたのだが、特に驚くでもなく袁紹は振り向いた。その先には、田豊の姿がある。彼も酒を詰めた瓢箪と僅かな肴を手にしてひょこひょこと歩いてくる。「あら、翁も酒宴かしら?」「いやいや、そういうわけではございませぬが。」田豊は袁紹の隣に並び立つ。君臣としてはけっこう罰当たりな行為の様な気もするが、そもそも袁紹がそんな事を気にしていない。「ふむぅ。何か見えますかな?」じぃっと南に目を凝らす田豊。別に何かを見ていたわけではありませんわよ、と袁紹は苦笑する。「では、何を?」「そろそろ華琳さん・・・曹操さんとの戦いが近い。そう考えていただけですわよ。」「成程。ゆえに南の地に在る曹操殿を睨んでいたのですな。」「・・・睨む、ってどんな視力ですの。」ほっほっほ、と田豊は笑うのみである。「ああ、そういえば。」「?」「翁、貴方・・・曹操さんと面識がありましたわよね?」「ほっほっほ。これまた懐かしいお話ですなぁ。おお、まさか・・・私が内通をしているとお疑いに。」「はい? 貴方が内通・・・ふふ、中々面白い冗談ですわ。」田豊の突拍子も無い言葉を一笑に付す袁紹。「そんなことで翁を疑ったりはしませんわ。ただ、中央にいた頃に面識があったな、と思っただけですわよ。」「そうですな・・・懐かしい話です。」田豊は、過去に中央政界に籍を置いていた事がある。順調に昇進をしていたが、宦官や外戚など権力者の腐敗と専横に嫌気がさして、官職を辞して郷里へと帰還していた。その中央にいた時代に、曹操との面識が出来たそうだ。「ちょっとした興味本位ですけど、翁から見た曹操さんはどのようなお人でした?」この質問に、田豊は髭をさすり、考えながら答える。「そうですなぁ・・・どこぞの人物批評家が彼女の事を「治世の能臣、乱世の姦雄」と評したそうですが・・・それとは少し違いますかな。」「と言うと?」「治世であれ乱世であれ、どのような時代でも一定以上の成果を出す。ふむ・・・時代を超えた傑物、ですかな。そして、覇者です。」「覇者、ね・・・。やはり、あの人は覇道を進むのですわね」「左様ですな。一度「仕えないか」と誘われましたがお断りいたしました。」「あら、初耳ね。」「どうも、覇道と言うのはあまり好みではありませぬでな・・・おお、そういえば殿も覇道をお進みなされるおつもりで?」この言葉に、袁紹は「ぷっ」と笑った。自身がここで覇道を進むといった所で田豊が離れていく事などないし、何より自分が覇者になれるはずも無いと思っているからだ。「んー・・・質問に質問で返しますけど。翁から見て、私のどこが曹操さんに勝ると思いますかしら。」「背の高さと胸の大きさですな。」「・・・殴られたいですの?」ていうか、そういうことを臆面無く言うなとか、先ず最初に出てくる言葉がそれか、とか何と言うか。聞きたいのはそういうことじゃないのに。「おお、いたいけな老人に暴力とは・・・」「踵で足を踏みますわよ!?」「ほほほ、ご勘弁を・・・そうですな、背と胸以外でいえば・・・申し訳ありませぬが、思いつきませぬな。」まだ言うかこのえろえろ爺、と思ったが、後半評は予想通りである。「でしょうね・・・私もそう思いますわ。その私が曹操さんと同じ覇道を進んで勝てると思いまして?」「無理でしょう。」これまたあっさりと答える。「素直ですわね。・・・だから、という訳でもありませんが、私はあの人とは別の道を進みますわ。」「王道、ですかな。」「ええ。消去法というか、意思が宙ぶらりんというか。ま、言の葉遊びと思えばいいですわ。」肩を竦める袁紹を見て、田豊は「そのような事はありますまい」と言う。武力・統率力・政治力・知略・・・そういった諸々を含めて、自分は曹操に勝てる要素が無い。そんな自分が同じやり方で張り合って勝てるはずも無い。だからこそ、自分は別の道を進む。力で時代を切り開く、という点ではそう大差ないのかもしれない。だが、曹操のようにそこに感情の入り込む余地が無い様に見えるやり方・・・。情理でいえば、情に動きがちな自分には絶対に無理だ。自分は歪であっても王道を往く。そこが彼女の考えで、そこにこそ北方をどう片付けるかの根底があった。曹操を降せば、公孫賛たちにはいよいよ打つ手が無くなる。そこで降伏を勧める。今はまだ無理だ。南北に敵を抱える今では向こうも納得できまい。だが、南をあらかた平定してから北を押さえる。そうすれば、後が無い彼女達も降伏してくれるだろう。袁紹は力で従えるだけではなく、「赦す」事で公孫賛を迎え入れるつもりだった。公孫賛も(昔は意識などしなかったが)袁紹にとってはかけがえの無い友人の1人なのだ。張燕も、烏丸も同じだ。今自分に逆らっても、降伏を受け入れるのなら全てを赦す。そうして、徳を施す事でこの戦乱を収束させて見せよう。そこが彼女の意思だった。・・・別に、自分が皇帝になろうとか、そういう意思を持つわけではない。自分がそういう立場にあるのが相応しいとかも思わないし、そんな事を考える余裕もありはしない。皇帝という存在は全てを束ねる至上の神、だそうだがそんなものは御免だ。自分は人であれば良い。「ま、覇者だの何だのと、今の段階で論じるほど偉ぶるつもりはありませんわ」「ほほほ、昔の殿を知る私としましては信じられん言葉ですな。」「・・・その話はしないで欲しいですわ。」「ほっほっほ。・・・こほっ」笑っている田豊が、小さく咳き込んだ。「あら。翁のような元気な人でも咳はしますのね。」「人の体を何だと思っておいでですか。このような弱い爺に。」言い置いて、また小さく「こほっ」と咳をする田豊。「風邪かしら。北の寒さにやられまして?」「むむぅ・・・」意地悪く言う袁紹。「ま、早く治す事ですわ。風邪をこじらせて大きな病気に、は笑い話にもなりませんわよ?」「そうですなぁ・・・では、酒で体を暖めてから休みますかな。」そうなさいな、と袁紹は笑い、酒を椀に入れて田豊に差し出すのだった。こんな流れで、北方戦線は一時の終結を見た。公孫賛はこれ以降、袁紹領へ攻め入る事をせず防衛に力を入れることになり、袁紹は曹操との対決に備えて動き出す。この後に官渡の戦いが始まるのだが・・・それはもう少し後のお話。~~~主要陣営やったと思ってたら忘れてたよママン編。馬騰さんの憂鬱~~~おま・・・いやおまけ。わーにんぐ! こっから先は作者の悪乗りと言うか下手すると18禁いけYOふ○っくゆー な展開です。苦手な方は飛ばしてください本当にお願いします。忠告はしましたからね?西涼、その実効支配者である馬騰。彼女は以前重い肺病を患っていたのだが、名医と名高い華陀の治療を受けて、たまに咳き込む程度にまで回復した。この病で死ぬ事はないだろう、とまで保証を受けているし病にかかる以前のように体が軽いので、本当に快復したのだろう。最初こそ、変な筋肉ガチムチ2人を連れてしかも体に鍼を打ち込むとか・・・と疑っていて、愛娘である馬超の推薦だし、これ以上悪くもならないだろう・・・と半ば投げやりな気持ちだったが、いやはや。そんな彼女は本当に久しぶりに風呂に入っていた。病にかかってからと言うもの、風呂に入ることなどできるはずもなく。いつも娘や近習が体を拭いていてくれたのだがそれだけではやはり不満だった。女性であることもあって、風呂はかなり大きく作成されている。(娘達が小さい時はよくいれてあげたものだけれど・・・はぁ、いいお湯・・・♪)と、過去を思い返しつつ久々の湯の感触を楽しんでいた。そんな馬騰、既に娘を三人生んでいるが、それを聞けば余人は「嘘だっ!」と叫ぶほどのプロポーションである。病だったせいで少しやつれているが、年齢などを全く感じさせない外見。胸は大きく、体つきも雌豹を思わせるほどしなやかだ。背も高ければ足も長い・・・この体つきは娘達にも大きく受け継がれている。服装は落ち着いたものが多く、馬騰の静かな性格を現しているといっても良い。少し話題が逸れるが、蹋頓に似ているといってもいいかもしれない。もっとも、蹋頓は遊女のような・・・というか、花魁のような艶やかな服が似合いそうで、馬騰は楚々とした着物が似合う風情であった。楚々とした着物であっても、胸の大きさはよく目立つところだろう。顔立ちなどは長女である馬超に良く似ているが、目鼻立ちなどは妙齢の女性らしく、すっきりとしている。馬超の目をもっと切れ長に、落ち着いた雰囲気と言えば解りやすいだろう。髪の色は黒く、普段はポニーテールにしているがそれでお地面に届きそうなほど長く、かつ美しい。娘達の髪は栗色で、髪型も同じようにポニーテール。馬家の女性はどうしてか全員同じ髪型である。(髪の長さや結び方などはめいめいによって違いはある。そんな事はともかく、彼女は風呂を楽しみつつもあれこれと思考していた。自分が知らぬ間に、曹操とか言う少女が皇帝を保護、勢力を拡大しているとか。それ以前にも董卓が敗北して滅びただの色々ある。特に、馬超が高順の事を気にしている事にも母として悩んでいた。心配をするな、とは言わないがああも連日「はぁ、高順今頃どこにいんのかなぁー・・・」と悩むのを見るのは辛いものがある。閻行からの便りも来なくなってしまったし、もしかして死んでいるのだろうかと思っていたが・・・華陀からの情報で、少なくとも高順は今のところは生きているらしい。聞くところによると、反董卓連合との戦いにおいても相当連合を手こずらせたとか、随分資金を貯め、異民族にも慕われているとか。それほどの器量を持っているのなら我が婿殿として申し分なし、と思うし馬超もあれだけ気にしているのだから好意を抱いていないわけが無い。時折冗談で話を振ってやると真っ赤になるし、妹の馬鉄・馬休に「いらないなら私達がもらいますよ?」「もらっちゃいますよ?」と言われ「誰もいらないとは言ってないだろ!?」と返すのがお約束。唯一、姪に当たる馬岱だけは面識が無いので「どういう人なのかなぁ」と興味を抱いているようだ。あれこれと考えていた馬騰だったが、少し長湯をしてしまったようだ。のぼせていると言うか少しフラフラする。不味いな、少し頭を冷やそう、と思って浴室から出ようとした瞬間。「義姉上ぇぇぇーーーーーー!」元気よく扉をあけて、馬騰の義妹である韓遂が乱入してきたのであった。「あ、ほ、蛍(韓遂の真名)・・・今から風呂に入るのね? ごゆっくr「さぁ義姉上、共に風呂に入りましょう!」え、私今から出る・・・って、引っ張らないで!?」言う事など欠片も聞かず、韓遂は馬騰の腕を引っ張って湯船に向かっていく。「あ、あのー・・・」「(ハァハァ)・・・あ、義姉上・・・か、体の洗いっこを・・・ハァハァ」ああ、またか・・・この義妹は(涙鼻息荒く迫ってくる韓遂に、馬騰は泣きそうになった。なんで、こう毎度毎度迫ってくるのだろうか。昔から女色の気があったし、何度も迫られ責められ・・・まぁ、何と言うか出来れば思い出したくないような行為まで色々あったけれど。病の時は流石に自重していてくれたようだが、その鬱憤を成公英にぶつけていたらしく、よく「しくしくしく」と泣いている成公英を見て不憫に思ったものである。そして今、馬騰の病が癒えた事で遠慮なく迫ってくる韓遂。「ああ・・・義姉上のこの穢れ無き肢体・・・玉露のような汗・・・こぼれんばかりのしっとり(流石に削除)ああ・・・ああああぁぁあっ!」なんか1人で悶えてる義理の妹。「あ、あの、やっぱり私は上がらせてもらいますから・・・それじゃ!」と思いっきり引きつつ逃亡を図る馬騰。しかし、韓遂は慌てず騒がず「そう簡単に逃がすとお思いですか!」と叫び・・・出口の向こう側にいる成公英に閉めさせた。「あ、ちょっと・・・英ちゃん!? 開けなさい!」「申し訳ありません馬騰様! ど、どうかお許しを・・・!」何とかして扉を開けようとする馬騰だが・・・その後ろには、既に韓遂の姿。「ふ、ふっふっふっふぅ・・・逃げられませんぞ、義姉上ぇ~・・・」「蛍・・・! って、貴方それ何持ってるの!? それに今気付いたけど何時の間にこんなに沢山の瓶を・・・」「ふっふっふ。これは我が甥になるであろう高順が土産としてくれたもの・・・そしてっ! その瓶の中にはとろっとろの蜂蜜が!!」韓遂が何時の間にやら所持していた・・・なんつーか、もう「アレ」としか形容できない何かの形をした張り形が「うぃんうぃん」と変な音を立ててぐりぐりと動いている。何がどうなって自動で動いているのか全く解らない。「高順くんって?! まま、待ちなさい蛍! 蜂蜜を風呂に持ち込む理由は一体何!?」「はぁはぁ・・・あ、義姉上の体に蜂蜜を・・・お、美味しく(またも削除)」「!!? 一体何を言って・・・や、辞めなさい蛍、これは命令ですよ!?」「そんな涙目で言っても可愛いだけです義姉上!」「可愛いって言った!?」「し、下の(添削)で口移し・・・あ、あそこに入れて「ほぉら、いやらしい(規制)」そして(PTA)一気飲み・・・ああ、さぞかし甘露な・・・ああぁぁぁ・・・良いっ!!」←最早何も聞いちゃいない韓遂「おおおおお、落ち着いて蛍! ねっ!?」思い切りたじろぎ、尻餅をついてしまう馬騰、その馬騰を追い詰めて(何か卑猥なものを持ち)迫る韓遂。そして・・・「いっ・・・いやぁぁぁぁあぁああぁっ!!?」馬騰の悲鳴が響き渡ったのであった(可哀想に・・・。~~~時間経過~~~「うぅぅ・・・ぐすっ。えぐっ・・・」「はぁ・・・いやぁ、良い汗をかきました♪」全身蜂蜜まみれにされ、さめざめと泣く馬騰に、何かをやり遂げた表情の韓遂。相反する態度である。姉としても主君としても悲しすぎる。しかもちょっと気持ち良かったし。そういった諸々の感情が涙となって出てきてしまう馬騰。毎度こんな感じで無理やり押し切られて関係を持つのはイケナイ事だと解っているのだが・・・。まさか、こんな訳のわからない趣向で来るとは思いもしなかった。よくよく考えたら、自分が相手をしない代わりに成公映が代わりに泣かされていたのだ。その苦労を思えば、少しだけ自分が我慢をすればよいだけか、と割と人のいい馬騰は思い直した。ところが、韓遂はそんな空気を全く読まなかったようで・・・「さぁ、義姉上! 第2戦開始ですよ!」「はぃっ!? ま、待ちなさい・・・今あんなにシたばかりでしょう!」「今まで延々お預けを食らっていたのです・・・今夜は寝 か せ ま せ ん!!」「ま、待って・・・お願いだから堪忍し・・・んくぅっ!」馬騰の太ももの間に湯とか蜂蜜とかでぬるぬるの腕を割り込ませて韓遂は邪悪かつ淫蕩な笑みを浮かべた。「それでは、第2戦・・・開始!!!」「やめ、お願いだからもう・・・ひぃ、ふぁ・・・ん・・・♡」病気が治ったとは言え・・・彼女の苦労はまだまだ続きそうであった。合掌・・・。~~~いやだから飛ばせって言ったよね! アテクシは悪くないよ編、完了。~~~~~~楽屋裏~~~うぶっ・・・気持ち悪くて頭が痛い・・・あいつです。久々に韓遂さんの出番つうかうんすまない、アレは見なかったことにして欲しい。エロ書きたくないからってこんな形でやらんでも・・・。さてさて、田豊おじいちゃんに解りやすいくらいのフラグを立ててみました。もう結果は解りきってるレベルですが・・・さて?・・・え? 張楊? だれそれ(こらではまた次回でお会いいたしましょう・・・はぅ、お腹がっ(吐血