【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第64話 三つ巴。その2。広陵の郊外。高順の治める地で、呂布軍三千と劉備軍四千が遭遇。即開戦とはならないが、微妙な睨みあいを続けていた。攻撃する理由がないものの、お互いの軍勢に「何をしにきた?」と疑念を抱いているのだ。軍勢が出陣するという事は一部の例外を除いて「戦闘があるかもしれない事」を前提としている。ために、両軍の兵は「こいつ等と戦うために?」と思うのだ。将官クラスならば、この出陣が「広陵の様子を見る為」のものと理解しているが、末端の兵士にそんな事情を説明しているはずが無い。だからこそ、お互いの兵は一触即発な雰囲気になっていた。~~~劉備側~~~「あうう・・・まさかこんな所で鉢合わせだなんてぇ・・・」どうしよう、と劉備は悩んだ。できれば戦いたくはない。ていうか確実に負けるし。何せ急な出陣だったので、それほど多くの人物を連れて来ていない。主だった人物では陳到(ちんとう)くらいしかいない。この陳到という人、陳登と呼びが一緒だからややこしいが、旗揚げから少しして劉備に臣従していた人物である。そういう意味では古参と言ってもいい男性武将だ。基本的に裏方をこなす事の多い彼だが、部隊を率いての戦いも個人の武勇もそこそこにあって、「目立たないがどんな状況にも対応可能」という人だ。彼がいれば、と思って関羽も張飛も、諸葛亮達すら連れてこなかった。本人達は「ついて行く」と申し出てくれたが、劉備は「情報収集くらいならだいじょうぶ!」と言って即時出撃できる部隊を引き連れてきただけに過ぎない。呂布側の武将は呂布1人のようだし、兵士もこちらよりは少ないけれど・・・呂布1人で兵士一万以上の働きをするのが解っている。また、不仲とは言え目の前で呂布と自分が叩き合えば、高順側としては呂布に味方をするだろう。向こうが動けばこちらも応戦せざるを得ないが勝ち目は零。早まっちゃったかなぁ、と思いつつ「どうしよ・・・」と劉備は考えていた。そんな時、彼女の側にいる陳到が遠慮がちに声をかけてきた。「殿、目の前には真紅の呂旗・・・間違いなく呂布です。いかがなさいますか。」「う・・・ん。」「攻撃をするべきではないと愚考いたします。・・・ご命令とあらばいつでも突撃いたしますが。」「だ、駄目だよ! ぜったい駄目なんだから! ・・・えと、様子見です!」「は。では、いつでも応戦できるように。伝令!」陳到は伝令を呼んで、各部隊に防御陣形を敷いて、相手に動きがあるまで手出しをするなと伝えさせる。・・・どっちが総大将なのやら・・・。~~~呂布側~~~劉備軍を補足し向かい合う前に、呂布は全軍を停止させて伝令を各隊に出していた。「動いちゃ駄目。でも、いつでも戦えるように」と素早く通達している。この辺りの速さは、劉備・呂布の力量と言うか経験の差だが、呂布からしても現状で劉備と戦うのが好ましいとは思わない。戦えば勝てるが、それをやると間違いなく向こうに名分を与えてしまう。弓を番え、隊伍を揃え、劉備軍と対峙する。両軍が緊張状態にある中・・・広陵の城門が開いた。~~~広陵城壁にて~~~「来ましたか・・・趙雲殿の読みどおりですね。」見張りの報告を受けた陳羣は城壁上に弓・弩兵部隊を展開させて、自身も指揮を取るためにその場所にいた。騎馬隊・歩兵隊は出撃準備を整えている最中だが、千ほどの部隊ならばすぐに出撃できる。両軍の接近を知っているのは陳羣だけではない。趙雲を筆頭に、全武将が知っていることだ。趙雲は情報を遮断すれば「どちらかは来る、あるいはどちらも来る」と予見していた。高順が倒れたあの混乱状態。それを素早く纏め上げてきっちりと即応状態で待っている辺りはさすがと言えた。ふと城門付近を見ると、趙雲・蹋頓が馬に跨って開門を待っている。その後ろには千ほどの騎兵。李典は投石器の指揮があって部隊を率いていく訳ではない。残り数千の兵を纏めているのは閻柔と田豫。もっとも、広陵軍は両軍を相手にするつもりはない。目の前の騒動を収めて劉備を追い返し、呂布を招き入れる腹積もりだ。今の状態で呂布を招くのは、ある意味で危険だが・・・どうしてもやっておかねばならない事があると言う。それが終われば広陵軍勢は呂布の下から離れる事になる。そのまま残っても戦えないし、攻め込んでくるであろう軍勢に持ち堪えられるはずも無いので選択肢としては「頃合を見て逃げる」しか無い訳だが。暫くして、西側の城門が静かに開いた。出陣の合図である銅鑼の音が鳴り響き、趙雲・蹋頓が駆け、騎兵部隊も後に続く。そして・・・軍勢の最後に在るのは。髑髏龍の鎧を着込み、三刃槍を肩に担ぎ、虹黒に跨る武者の姿。「うぇ!?」「・・・?」劉備と呂布、そして両軍兵士は不意に鳴った銅鑼の音に驚き、広陵へと目を向けた。そこには、「高」「趙」の旗印。広陵太守、高順の軍勢であった、数こそ少ないが、千ほどの騎兵が怒涛の勢いで迫ってくる。劉備は思わず高順隊へと部隊を向けようとするが、対して呂布は全く動じなかった。見ていると、先頭を走る趙雲が両軍の間に割り込むような位置で止まる。ある程度の距離で止まり、すぅぅ・・・と息を吸い込んでから「両軍へ告ぐ!」と大声を出した。「何ゆえ、劉備殿と呂布殿が兵士を率いて広陵まで来られたかは知らぬ。が、これ以上の騒動は無しにしていただきたい!」この言葉に、劉備は反論をしようと馬を進める。「ち、違います! 私達は争いに来たんじゃないんですよ!」「ならば何ゆえに事前の相談無く、しかも兵を率いてやって来るのか? 異心ありと見なされても仕方がありませぬぞ? 呂布殿は形式場主君であるゆえ、多少は構いませぬが」「あぅう・・・」実際のところは異心ありまくりなので上手く反論が出来ない。諸葛亮か鳳統がいれば上手く反論もするのだろうが、生来の性格が素直である劉備は言葉で言い負かすという事が基本、大の苦手である。「そ、そのー・・・高順さんが暗殺されたって噂がこっちまで流れて来てー・・・それで、いてもたってもいられなくて」「・・・。お心遣いはありがたいが、だからと言ってこの騒ぎ。感心は出来かねますな。」趙雲は「はぁ」と大げさに溜息をついて更に続ける。「これ以上騒ぎを大きくするのであれば、劉備殿・・・。我らは立場上、貴軍を鎮めなければなりませぬ。それに、高順殿はあそこに。」そう言って趙雲は馬首を返す。視線の先には、騎兵隊に守られるようにして佇む虹黒。その虹黒に跨った髑髏龍の鎧武者が見えた。見ていると、三刃槍を掲げて今にも振り下ろそうとしている。その姿に劉備は思わず「うわっ」と言ってしまったが、呂布は釈然としないものを感じていた。どうにも違和感がある、と首を傾げていたが劉備はそれどころではなく冷や汗をかいていた。(どどどどどどうしよう!? 何だかすっごいこっち睨んでるー!?)確かに、虹黒も、その上に跨る高順と思わしき人も劉備軍をじっと見据えていた。しかも開け放たれたままの広陵城門から、更に騎兵部隊が繰り出されてくる。「殿、どうなさいます。前面には呂布。横合いからは高順。どう見ても我が方に勝ち目はありませぬ。」陳到が正直な感想を口にした。劉備としてはアレが「本当に高順かどうか確認したい」と、ごねたい所ではあった。諦めが悪い、言い換えれば粘り強い部分のある劉備だが・・・流石に趙雲、高順、騎馬隊、そして呂布。話をするにせよ何にせよ余りに分が悪すぎる話であった。その上、両側からにらまれるような立場。これ以上ここに居ても得ることはない、と判断して劉備は「・・・帰還します」と、軍を纏めて下がり始めた。(うう、あたし何しに来たんだろ・・・情報集めと話し合いに来たはずが、いつの間にか呂布さんと高順さん、どっちとも関係が悪化するような流れに・・・)「一人(てか4千人)でお使いできるもん!」「が「出来ませんでした」だから、かっこ悪いことこの上ないが、仕方無い。愛沙(関羽)ちゃんか鈴々(張飛)ちゃん連れてくるべきだったなー、と涙目になりつつ彼女は割と素直に帰還していった。・・・本当に何をしにきたのやら。そうやって去っていく劉備軍を見つめ、視界から消えた頃に趙雲が「さて」と呂布の元へと向かった。「呂布殿、わが主が貴女に話があると申しています。このままついて来て下され。」「・・・兵は。」「食事と寝床くらいならばすぐに用意できます。参りましょう。」「ん。」そう言って両者は馬を進ませ、兵もそれに追随する。蹋頓は呂布の後ろに付くが、どうも怒気というか殺気のようなものを感じる。恐らくは高順暗殺に関係しているだろう。彼女の怒りは間違ったものではない。呂布はそう考えている。賈詡の暴走も、暗殺も止められなかったのは自分だ。勢力統率者としては「知らなかった」で済まされる話ではない。趙雲だって同じように考えているだろうが、そういった感情は今はまだ表に出していない。思いつつ、呂布は虹黒と、それに跨った武者の横を通り抜けていく。趙雲はそれを横目で見つつ、ふむ、と笑った。彼女に子供だましは通じなかったらしい。実は、かの武者は沙摩柯であった。沙摩柯と高順の背丈はそれほど変わらないし、彼女には虹黒が懐いていて背中に乗せるのを嫌がらない、という数少ない人である。あの重い鎧も違和感なく着こなして、同様に重い三刃槍を平然と担ぐ辺り、沙摩柯の膂力が知れる。虹黒も自然に広陵へと馬首を巡らせてゆっくりと歩き始めた。両軍が広陵に入城。すぐに政庁へと進む。それを見届けた陳羣は、兵の食事の用意をさせるために慌しく城壁上から下りて行く。沙摩柯は、と言うと政庁に到着したあたりで虹黒から降り、兜を脱いで「ふぅ。」と一息ついていた。重いことは重いらしい。虹黒がその汗にぬれた頬を「べろり」と舐めたので「えひゃっ!?」と素っ頓狂な叫びを上げたがそれはともかく。呂布や趙雲も馬から降りて、歩いていく。先導をするのは趙雲、従って歩く呂布。その後ろで呂布を警戒して見つめる蹋頓。そのうちに、とある部屋の前に着いた。コツコツ、と趙雲が扉を叩いて「呂布殿をお連れしました」と言ってから呂布に「どうぞ」と譲った。促されるように部屋に入った呂布の目に、寝台で楽進の治療を受けている高順の姿が映った。「・・・お、やっと来たか」遅かったねぇ、と高順は笑う。少しやつれた感じはするが、生気に溢れた表情であった。高順は寝台に寝ている、というよりも上半身を起こした姿で楽進の癒術を受けていた。上半身は裸で、胸に1つ、その胸から腹部にかけての傷が1つ。腕やら手の甲やらにも小さな傷痕が沢山あった。胸から腹部への傷が暗殺されかかったときについたものなのだが、これの治療が中々進まなかったようだ。「・・・特に驚かないな、んー。何か面白くない。」たちの悪い冗談だが、高順はそう言って笑った。面白いとかそういう問題じゃありません! と楽進に叱られて「ごめんなさい!」と謝ってる辺り、元気なのかそうでないのか。「・・・ごめん。」呂布はそれを見て、頭を下げた。「はは。これは・・・いや、あんたのせいじゃない、とは言い切れないし俺にも原因がある。謝るなら賈詡が一番に謝るべきかな。まあ、座ってくれ。」「ん・・・。」高順に勧められて、呂布は近くにあった椅子に腰をかけた。さて、何から話すべきかな。と高順は呟く。暫くして「・・・本当はこっちからいくか伝令を出すべきだったけどな。賈詡に握りつぶされる可能性もあったし、そっちから来てくれたのは都合が良かった」と切り出した。「俺が暗殺されかかったっていう話、どこまで伝わってる?」「暗殺されたらしい、だけ。犯人、画策した人物。一切が不明。」「そうか・・・まあ、結論だけ言うと画策したのは賈詡だ。・・・俺を暗殺したところで得るものがあるとは思わないけど。」この言葉に呂布は頷いた。逆に言えば、この状況で高順を暗殺しようと思う人物が賈詡しかいない、という意味でもある。「下手人も捕らえて・・・まあ、拷問にかけたらしい。その間俺の意識は無かったから、らしい、程度でしかないのだけどね。そいつが賈詡の名前を出したそうだ。」「そう。」「離間を狙う輩か、とも思ったが。劉備は俺とあんたの仲が悪いことを知っていても賈詡のことまでは知らんだろう。」情報を得たにしても、この短期間でそこまで他勢力の内部事情を知るとも思えない。あくまで消去法で実際のところはわからないが、ほぼ間違いは無いだろう、と結論付けた。彼女の処分をどうするのかは呂布が決めるべきで、この話はすぐに打ち切られた。「さて、本題に移らせてもらうかな・・・色々言うのも面倒だから率直に言わせてもらうけど。呂布、あんたの勢力はもう生き残れない。」これは楽進や趙雲、本人である呂布に言うべき事ではないと思うが、伝えておくべきだと高順は考えていた。「家臣の内紛、家臣同士で決着ができなかった事、暗殺・・・これだけ中身がズタズタだと、どうしようもない。」「・・・(こく」「すぐに曹操が、それにつられて劉備も攻めてくるだろうな。」(・・・華雄姐さん、張遼さん、干禁・・・呼び戻す時間はともかく、本人達が動かない可能性も高い。干禁は動くかもしれないが、時間が無い。)「こーじゅんは、どうするつもり。」「逃げる。」あっさり言う高順に、珍しく呂布が「ずるっ!」とこけそうになった。「俺は曹操にも劉備にも仕えたくないんだよ。今以上に苦労するのが目に見えてる。・・・一都市を預かる人間の手段としては最低だけどね。」自分のために都市を捨て、民を捨てる。だから、太守なんて無理だと言ったんだ、と自嘲の笑みを浮かべる高順。高順は兵と仲間を連れて南へと逃亡を図るつもりだった。当然、残りたいと言うものもいるだろうからそれは自身の選択に委ねる。「皆呼び戻して一緒に逃げたいけど・・・時間が足りないし、納得してくれない人のほうが多いだろうね。」だから、それなりの手は打つ、と言って高順は呂布に聞き始めた。西砦の事、曹操の軍勢がどれほどか。小沛の編成などなど。一通り聞いてから、高順はふぅ、と溜息を1つ。「・・・そうか・・・。じゃあ、そっちは問題ないな。」「?」「曹操は張遼さんも干禁も殺さずに迎えるって事。曹操って人は人材を集めたがる人でね。2人とも有能だから歓迎されるだろ。他三人は知らんけど。」「それなら西砦の人は」「ん、降伏さえすれば悪い扱いは受けないって事。小沛が攻められれば、援軍も出せないだろ。そっちはすぐ終わる。」「じゃあ、小沛に攻めてくるのは」「劉備だろうな。そこで最初で最後の献策かな? ある程度戦ってから降伏。」「・・・何故。」「劉備も人材不足で悩んでるからさ。」「???」「一筋縄じゃいかないよ、って事を解らせてやれば良い。軍師がいなくても、内部状況が劣悪でも、ここまで戦えるんだぞ、ってね。」「でも、降伏しても上手く行くとは限らない」「悪い扱いは受けないだろ。あんたは言うまでもないが華雄姐さんも相当な使い手。張済・張繍だってそうだ。」「ちんきゅと賈詡と董卓は?」「・・・。そこは何とも。陳宮はいいかもしれんが賈詡はこの騒動の発端だからな。劉備だったら殺すことは無いかもしれないが。」暗殺されかかった俺が心配をする必要は無いと思うけど、と前置きをして。「妥当に行けば斬るかそのまま市井の民として暮らすって所か。あんたが保護するって言うのもいいかもな。あくまで俺の妄想だけどね。」これはどちらかと言えば勝率の高い考えだった。董卓を殺すメリットは既に無い。むしろ、生かして呂布の忠誠を引き出すとか、その方面に価値を見出すかもしれない。それでは十侍寺と大して変わらないが、少なくとも人質生活にはならないだろう。現在の呂布軍の武将は一部除いて質が高い。兵士も勇猛な手合いが多いし、劉備・曹操ともに欲しくないわけがない。それの奪い合いで食い合う可能性もあるし、その中で命を落とす人が出るかもしれない。こればかりは高順にはどうしようもなく、今現状で多くの人が死なないで済む可能性を考えただけに過ぎない。どこかの勢力に武将として加われば、敵として見えることもある。もっと良い考えが、手段があるのかもしれない。干禁を、張遼を、華雄を見捨てずに済む、そんな手段が。だが、時間も何もかもが足りない。全てが後手に回りすぎた。楽進も李典も、干禁のことを諦めきれなくても半ば覚悟しているし、他の者も「いつかこんな日が来るのだろう」ということを覚悟しての戦である。高順にしても家族同然の付き合いをした人々ばかり、辛いに決まっている。それを理解するからこそ彼の決断に誰も文句を言わない。高順の言い方は割と軽かったのだが、この話をしているときは傷の痛み以外に何かを堪えているような表情をしており、相当に参っているのが呂布にも解る程だった。「ま、そんなところか。呂布、今日は泊まっていきなよ。あんたが大丈夫でも兵士が強行軍に耐えられない。」「でも」「こっちにも用意があるんでね。いいから休んどけ。」用意というのが良くわからず暫く迷ったが、ん、と首肯してから呂布は席を立った。趙雲が「部屋に案内いたします」と先導して共に部屋を出て行く。蹋頓はついていかず、楽進も話をしている間中ずっと呂布に背を向け続けていた辺り、複雑である。少し気になって、高順は2人に話しかけた。「・・・2人とも、そんなに呂布が嫌い?」『当然です!』(うわ、ハモった・・・)2人同時に同じ事を言って、怒りを露にした。高順が暗殺されそうになった事実を知らず、賈詡の暴走を止められる数少ない1人だったのに、それもできなかった。干禁・張遼・・・部下を守る方策も上手くできない呂布を、勢力を率いるものとして失格だと2人は考えていた。高順にもそれは解ったが、「それじゃ俺も失格だよな」と苦笑する。賈詡との折り合い悪く、暗殺されそうになっている事実が解らず、油断したせいでこんな状況だ。干禁らを取り戻す方策も立てられない。自分と呂布と何が違うのだろうか?勢力を率いるかそうでないか、と言うかもしれないが隊を集めて養っているのは高順だ。大して変わりない。その上、民も領地も捨てて逃げるのだから始末に終えない。だが、楽進達は別の方向で高順に怒りを向けた。「そもそも、高順さんのなさろうとしている事がわかりません。」「はい?」「ここまで来た以上、どうして呂布に献策など・・・干禁さんや華雄姐さんには悪いと思いますけれど、それを覚悟して、皆戦いに身を投じているのです。」どうしてそこまで・・・と、蹋頓は苦りきった顔をして呟く。蹋頓さん、華雄姐さんって呼ぶっけ? と思いつつ、高順も応えた。「今名前の挙がった人たちを生かすためだよ。ま、劉備も曹操もみだりに人を殺すと思えないから献策にもならないねえ」どちらにせよ、その時はすぐに来る。あくる日、広陵を発とうとした呂布とその配下だが、彼女らの目の前には夥しい数の輜重車が並べられていた。それを見て驚いている呂布の隣に、沙摩柯の肩を借りた高順が並ぶ。「これは。」「食料と飲料水だ。小沛にある分を含めれば2・3ヶ月くらいは保つだろ? 若干だが金品も積んである。持っていきなよ。」高順の意図が解らず、どうして? と首を傾げる呂布。「最後の献策に、最後の贈り物ってとこか。これを余らせるようにして降伏すれば、劉備だって悪く思わないだろう。」劉備は、州牧と言っても支配しているのは一都市、物資も不足しがちだろう。高順は「見切りよく降伏する事だな」と言って呂布を見送る。夥しい輜重を受け取った呂布は広陵の城門から出て行く。最後に高順へ振り返って「ありがと」と一言だけ残し去って行く。こうして、高順は正式に呂布の下から離れて、逃げる準備を始めた。商家を廃し、食料、金品を仕分け、運び出し。国庫に稼ぎの殆どを詰め込んでいた高順だが、流石に今回はそうは行かなかったようだ。それでも充分な量の宝物を国庫に残しておいて、都市経営に影響が出ないようにしている。船で逃げる事も考えたが、兵士5千前後と軍馬を輸送できるような船があるはずも無い。広陵で募集した兵が1千ほどいたが、彼らは残る事を選んだ。また、陳羣も残るつもりである。(仲間を捨て、領地を捨て、放浪を繰り返す。為政者としても武将としても最低。・・・俺も劉備と変わらんな。)思わず自嘲する。どうしてこんな奴に皆ついて来るのか、それも高順には解らない。このときの高順は精神的に相当に追い詰められていた、といっても良いだろう。小沛に戻った呂布は賈詡から軍師の権を剥奪、董卓同様余り表に出ない立場へと追いやる。残りの政務は陳宮が取り仕切る事になったが、それ自体は今となってはあまり意味の無い事である。賈詡を権力中枢から遠ざけたという事に意味があった、という程度だ。そして、呂布が帰還して僅か数日。曹操が州の境を越えて侵攻を開始、劉備もそれに追随するかのように小沛へと攻め込む為に兵を整えた。まだ劉備はきっちりと支度を整えておらず、慌てて軍勢を仕立てたという側面がある。広陵にも出陣するべきかな? と思ったようだが準備が整っていない状況で二正面行動は不可能と判断。曹操と協力して呂布を無力化することに決めた。広陵の戦力・兵力では援軍をするにしても篭城するにしても不足。そう読んだのである。その判断は間違いではないが、ある意味では間違いであった。高順は既に南へと逃げる準備を整えていたのだから。何とかして自分の、そして部下の生き残りに懸ける呂布。事態を引きずり回す曹操、自分の考えとは違う形で戦争へと進む羽目になった劉備。心ならずも自分の仲間を見捨てる決断をした高順。1つの地に幾つもの思惑を内包していた徐州の戦い。それも終局に向かっていた。~~~楽屋裏~~~グダグダだ・・・あいつです(汗主人公、何やかんやで、というかあっさり生きてましたねぇ・・・今回は史実と違う方向へ持って行きたい高順君のない知恵絞りでした。人材コレクターと人材不足の勢力内情を理解しているので気楽なものかもしれませんが、三人娘がこれで散り散りに・・・。これで、ようやくに格陣営に武将が配置され始める・・・かな?原作では蜀の武将が異様に多いので、ある程度バラけさせました。この駄シナリオでは「名前だけ武将」も出してますからそうとも言い切れないかもしれませんけど。で、賈詡と董卓は以降、まず出ません。名前くらいなら出るかもしれませんが、龐統(シナリオでは鳳ですが)とかいるのに出す理由も無いと思っていたり。諸葛亮だけなら出る余地もあったでしょうけど・・・え?コシャジどうなったって?・・・犬の餌にされたんですよキット次回は割りとあっさり終わらせたいと思います。負け描写を書くと酷い事にしかならないwではでは。