【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第63話 3つ巴。高順死す。そんな噂が徐州に流れたのは、高順が胡車児に襲われてから少ししてからの事だった。当然、呂布陣営にも、劉備陣営にもその話は知れ渡った。張遼や華雄は「・・・まぢで?」というような反応を示す。呂布や陳宮もどうなっているのか解らず混乱するばかりだ。この状況になって、呂布勢力内部の意見は2つに分かれた。高順に好意を向けている武将達は劉備と同じく「先ずは事実かどうかの確認をするべき」という意見。高順に疑念を向けていた賈詡は「すぐに兵を差し向けて劉備に先を越されないようにするべきだ」と主張している。また、高順隊の存在が宙に浮いてしまったような状態と考えたのだろう。魏続が「この私が高順亡き後の部隊を統率いたしますねん!」と挙手したが、張遼と華雄にぶん殴られた上に呂布から「あなたじゃ無理。」とあっさり無視された。さすがの賈詡も「あんた程度じゃ絶対無理・・・」と、こればかりは呂布に賛同していたが。呂布としては、親高順派・非高順派どちらの言い分も正しく思える。呂布はじっくりと考えた後「情報収集。軍も動かせるように」と結論を出した。賈詡は「今動かなきゃ劉備に先を越されるわよ!? 広陵を盗られたらそれこそ劉備に屈服しないといけなくなる!」とあくまで派兵を主張していた。呂布はこう言って賈詡の言葉を却下した。「こーじゅん以外に、趙雲達は使いこなせない。これで兵を派遣して彼女達を怒らせればそれこそどうしようもない。」と。それとも、こーじゅんが死んだと思える何かがあるの? と聞かれ賈詡は「う・・・」と言葉を詰まらせた。結局のところ、会議はこれで終了したが・・・親高順派の筆頭である張遼・華雄らは賈詡への疑念を更に強くした。呂布と高順の仲が、というより賈詡と高順の仲がもつれてしまっている事は気付いているし、高順を大事にしないことに、張遼らは強く講義をしていた。賈詡は「彼の強さと手腕は認めるけど、それだけで重用は出来ない」と相手にしなかった。元から呂布の部下ではない高順が日増しに勢力を強め、独立できるほどの威勢を持っていることに警戒をしているのは張遼達にも解っている。だが、理由も無く叛乱するような人でもないことは良くわかっている。「その強さと手腕が今一番求められとるんやろーが!?」と怒鳴ることも2度3度ではなかった。呂布も同意見で何度か賈詡に「仲直りしてあげて」と言っているのだが本人は頑として聞こうとしない。賈詡は、人間不信の気が強くなっていた。というのも、元々から董卓の部下であった李傕や郭汜といった連中が利に釣られて、あっさりと裏切った事が彼女の他者への不信感を募らせる結果になっていた。彼女の正確はお世辞にも社交的とは言えず、どちらかと言えば排他的なものである。だからこそ、余所者といえる高順一党に対しての不信感が強くなっていた。ただの「部将」であればともかくも、「武将」としても太守としても実力を示し、どのような形で自分と董卓の命を狙うか解らない高順。排他的な性格は、どうしても高順という存在に警戒を示していたのだった。ともかく、賈詡は焦っていた。劉備に先を越されるのも不味いのだが、高順を暗殺したはずの胡車児も帰ってきていないのだ。まさか、暗殺に失敗して自分が仕組んだ事だと気がついたか。それとも偽情報を流し、こちらからの動きを封じ着々と叛乱準備を進めているのか。さすがに呂布にすべての事情を明かすわけには行かないし、劉備に先を越されて高順隊と広陵を盗られるような事になれば。(胡車児が動いたのならば高順と劉備の接触があったはずだ。私以外に高順に暗殺者を仕向けるような物好きはいないはず・・・。)いるとすれば陳宮くらいだがあの娘には凄みと言うか、土壇場の胆力が無い。(・・・はぁ。仕方がないわね。まずは細作を放って広陵へ潜入。高順が生きているか否か・・・もしも生きていたら・・・最悪ね。)実際には、もうどうしようもない状況なのだ。趙雲達は、輸送を中止して胡車児を追求していた。蹋頓の手酷い拷問(あまりの凄まじさに検閲)により、胡車児は何もかもを白状していた。結果、広陵にいる高順一党全員は賈詡に激しい憎悪を抱く事となる。呂布に対しても「何をしているんだ」と疑いたくもなってくる。賈詡の動きに気付いていないのか、それとも呂布の許可を得て賈詡が動いているのか・・・賈詡の動きに感づいていないとしても、ここまで来て賈詡の動きに気付かない、ではどうしようもない。陳宮やらに知られずに静かに動くのは、ある意味でさすがと言えるが・・・。高順に非が無い訳ではない。暗殺と言う強硬手段に出るとは思いもしなかったが、ここまで憎まれているとは思いもしなかっただろう。広陵の民も「太守が死んだ?」という噂を信じ始めている。高順はある程度忙しくても、街の視察を怠らない人だった。太守が健在であるかどうか、というのは民衆にとって大事な事だったりする。この状況で街を治め率いる人間がいないというのもアレなので、高順の言葉通りに趙雲が一時的に統率をすることになった。怒りに任せて呂布に絶縁を叩きつけると思われたが、流石に彼女は冷静だった。いや、冷静の中に怒りを押し殺しているというべきか。蹋頓ならば間違いなく兵を動員して攻め込んでいただろう。趙雲が行なった事は、とにかく外部への情報の遮断であった。ひた隠しにしているが、噂はすぐに徐州全域へと伝わっていくだろう。賈詡か劉備が攻め込んでくる事もありうる、迎撃の準備だけはしておかねば、と趙雲は考えていた。この状態であれば呂布が四面楚歌のはずなのに、自分たちまで同じ状況に陥っている。趙雲にはそれが解っていたのだ。どちらの陣営が知っても、結果は同じ。この広陵の接収だ。誰がやらせるものか、と思う。自分達の怒りは頂点に達しているが、最終決定権を持つのはあくまで高順。望みが絶たれない限り自分から行動を起こすべきではない。趙雲はそう決めていた。それでも離反は、ほぼ確定的なことだ。~~~小沛・玉座の間~~~「んで? 自分は何も知らん。そー言いたいわけやな?」「当たり前じゃない。」張遼の質問に、賈詡はふてくされて応えた。もう何度目になるか解らない質問だ。「大体、なんであたしに言う訳?」「順やんが死んだか暗殺されたっちゅー話やからな。順やんと仲悪いあんたが疑われるんが当然やろが?」賈詡は「はぁ」と溜息をついた。「劉備が刺客を差し向けたとは思えないの? 確かに高順とは仲が悪いけどね。」「はっ。劉備みたいな乳臭い小娘にそないな大それた真似できるかいな。人に好かれる手合いらしいけどな、あいつがそんなタマやとは思えんわ。」張遼は、下邳で劉備と呂布が行った会談をその目で見ている。その時に印象全てで答えを出す訳ではないが、そこまでの胆力がある人物には見えなかった。関羽にせよ諸葛亮にせよ、それだけの凄みを感じもしなかった。「だからあたしを疑う・・・はは、解りやすいわね、張遼。」「あぁ?」「劉備でなければあたし、というのが単純なのよ。曹操の動きかもしれない・・・とは思わないの?」(・・・ちっ、賈詡め。)賈詡の言い分だが、曹操はこの所大きく動き始めていた。徐州と、曹操の領地である兗州の国境に、数万規模の軍兵が集結しているとの情報が入っているのだ。賈詡は曹操が攻め入ってくる事を予見して、小沛より西に砦を作って張遼・干禁。ついでに魏続・宋憲・侯成を派遣する予定である。守備兵は1万5千ほどを予定。小沛には残りの武将を配置して兵数は2万。これは劉備に、或いは高順に対しての備えである。当初はそれほどでもなかったが徐々に力をつけたことで警戒していたのだろう。それについては親高順派の人々が「あいつが叛乱などするわけない」と賈詡に幾度も言っていたのだが、それを聞くつもりはなかったらしい。そのせいで呂布軍内部の反目が深くなるという、どうしようもない状況だ。総大将である呂布も「こーじゅんはそんな手合いじゃない」と言い続けても、賈詡は疑いを解かない。その為に賈詡も多くの武将の反発を買っている。干禁や華雄などは、賈詡の命令を拒否するという事が2度3度あってその度に口論をしていたり・・・。そのせいで干禁止は何度か投獄をされ、また出獄してと言うことを繰り返している。何にせよ、呂布や董卓がどれだけ言おうと賈詡は言う事を聞かない。そんな彼女の態度に張遼らは限界を感じていたのだった。「ちっ・・・まぁええわ。でな、これからの方針やけど。」張遼は、呂布に視線を移して少し話を逸らした。「曹操が来るかもしれん言うてたよな。ほな、うちらは西砦に移らせてもらう。」「はぁ!? 待ちなさいよ、その前に広陵の状態を調べるのが先決よ!」「知るかんなもん。うちは順やんが死んだとは思うてへんしな。行きたいなら自分1人でいけばええわ。仲間を疑うような奴についてける思うな・・・ええやんな、呂布?」「・・・許可。」張遼の提案に、呂布はあっさりと乗った。現在、砦を守っているのは魏続・宋憲・侯成。彼らに任せておくのは正直不安でならない。賈詡の顔を見たくない、というのもあるが、それ以上に干禁の身を守るための措置だ。高順が心配なのは当然だが、とにかく干禁たちの身の安全のために賈詡から離れる必要がある。あとでこっそりと閻行夫妻を連れていく予定もあるが、これは張遼の事情も絡んでいる。残念ながら華雄は小沛守備隊なので連れて行くことは出来ないが・・・。「ちょっと・・・!」賈詡は引きとめようとするが、呂布はそれを制して首を横に振った。はん、と賈詡に侮蔑の表情を見せて張遼は退出して行った。恐らく、干禁を迎えに行くのだろう。(この場所に干禁はいなかった。「・・・ああ、もうっ! このまま劉備に広陵盗られたらどうすんの!?」「打つ手が無くなるだけ。」「それが解ってるならどうして・・・」「賈詡に打つ手がないだけ。私が行く。」「・・・は?」「賈詡の言うとおり、広陵の状態を調べる事は必要。」「だからアタシが行くって言ってんのよ。兵を貸して貰えればすぐに終わるわよ。」「無理。賈詡が行けばこーじゅんは態度を硬化させる。だから私が行く。」「むっ・・・」呂布は華雄と陳宮に「あとはお願い」とだけ言って走った。「解った、任せろ。」「なんですとー!?」正反対の反応をした2人。華雄も親高順派であり、彼の身を案じているが陳宮はどちらかと言えば反高順派。もっとも、賈詡のような複雑な意識は無く「呂布と仲が悪くない男性」だから・・・と子供の嫉妬のようなものに近い。「くっ」賈詡は追いかけようとしたが、それは華雄に止められた。「やめておけ、賈詡。」「華雄・・・あんたまで邪魔を」「するに決まっている。今まで散々好き勝手内側を弄繰り回したんだ。・・・少しは頭を冷やせという事さ。」「好き勝手ですって!?」「我々を後ろからきっちりと支援してくれた高順を冷遇して・・・証拠はともかく暗殺までしようとしたんだろ? これを好き勝手といわずに何と言う?」「だからあたしじゃないって言ってるでしょうが!!」「誰が信じる? まぁ、己の身から出た錆と言うことだ。これ以上ウダウダ抜かせば・・・叩き斬るぞ、小娘。」「・・・!」華雄も、高順に対しての冷遇に怒っている1人だった。賈詡を殺すか追放する、というのは呂布の方針ではないために、殺すつもりは無いが・・・それが無ければ、華雄も張遼もいつ賈詡に斬りかかるか解らないほどの怒りようであった。それを抑えているのは「今こいつを殺せば更に状況がおかしくなる」と解っているからだ。そんな華雄の殺気に当てられて賈詡はぞっとしてしまう。「・・・どうなっても知らないわよ」それだけ言って、賈詡は足を震えさせながら退出していった。「ふん。賢しいだけの小娘・・・め?」華雄が振り返ると、そこには・・・「あうあうあうあう・・・」賈詡同様、殺気に当てられた陳宮が涙目になりつつ、腰を抜かしてへたり込んでいた。呂布が賈詡を罰するつもりが無い、というのは単純に彼女の力量を評価しての事であった。下邳を取られたのは痛かったが、高順に物資を送るように強制していたのは高順の力を削ぐ、というだけのものでもなかった。徐州豪族をなびかせる為に大量の資金と食料は不可欠であったし、増兵も必要な事であった。それに、進めるはずであった袁術との交渉にもまた大量の財貨が必要とされるのも解りきった事である。高順の力を削ぐ、という側面があるにせよそれだけの事ではない・・・ということを呂布は理解していたのだ。徐州閥が(少なくとも)呂布治世下でおかしな動きを見せずに大人しかったのも、賈詡が上手く抑えていたからだし、高順に対しては悪手を繰り返しているがそれ以外ではきっちりと自分の仕事をこなしている。斬れば良いのかもしれないが、自身の責任を転嫁するようで気分が悪い。高順との確執は自勢力を崩壊させる原因となってしまったが、それを看過できない自分にも原因がある、と呂布は考えていた。ともかく、呂布は三千ほどの兵を伴って広陵へと進発。高順と賈詡の仲を取り持つ事も離反を止める事もできないが、直接矛を交えるような状況だけは避けておきたい。劉備とは事情も過程も違うが、その辺りの認識は同じである。僅かに焦りつつ、呂布は馬を急がせるのであった。さて、劉備達も高順が死んだかどうかを調べる事に決めたが、これはこれで困った・・・と頭を抱える人が多かった。劉備達は呂布勢力を上手く取り込んで曹操に対抗、できなければ武力で呂布を臣従させようとしていた。高順と呂布の仲が上手くいっていないので、そこに付け込む、ということもした。だが、この状況までは流石に読めなかった。この隙は自分達に取って好機かもしれないが、ここで動けば曹操も動いてくる。攻めるにしても、呂布と高順の仲たがいはあくまで別勢力内部の揉め事であって自分達の出る幕ではない。二者の不仲を理由に攻め入るというのは説得力に欠ける。高順から救援要請でも入れば・・・或いは呂布から攻めてくるのであれば別だろうが、それも無い。攻める理由がないが、攻めなければ徐州全域を得られない。攻めなくてもいずれ曹操が出てきて「ついでに」と自分達も攻撃される可能性が高い。曹操も劉備もお互いを「強大な敵」になると認識しており、現状では呂布という同一の敵性勢力があるから敵対をしていないだけに過ぎない。その緩衝材が無くなれば遠からず激突する。だからこそ劉備も呂布陣営と仲良くして・・・と思っていたのだが、こうなると自分達の行動が制限されてしまう。なりふり構わず行動に出るか、それとも運を天に任せてか・・・。考えた末に、劉備は4千ほどの兵を広陵への「援軍」と称して向かわせる事にした。呂布と高順の争いは不可避であると考え、自分達は徐州を騒がせる呂布を許さないよ、というポーズをとることに決めたのだ。諸葛亮も鳳統も、いずれは呂布を勢力下において使おうと思っていたが、高順に恩を売れば援助物資を貰える分そのほうが特だと考えている。当然、呂布を降せば次は高順を・・・ということでもある。諸々の考えを抱きつつ、劉備軍は出陣。広陵へと向かう。そして、数日後。呂・劉軍は広陵付近で遭遇する事になるが・・・。~~~兗州・許昌~~~許昌の玉座の間に、2人の女性武将・・・夏候惇とその妹である夏候淵が入室してきた。玉座に座る曹操の前に跪き、報告をする。「華琳様、徐州攻撃の兵6万・・・いつでも出撃可能です。」「そう、ご苦労様。」曹操はふっと笑う。これで準備は整った。輜重のほうは荀彧に任せており、心配は要らない。あとは仕上げを待つばかり・・・。劉備は自分を出し抜こうとしたようだが、それを許すほどに自分は甘くは無い。現状で曹操が掴んでいる情報は、下邳が劉備、小沛が呂布。広陵は高順が治めているという事だった。また、国境守備隊の報告で小沛の西・・・自分達から見れば東だが、そこに砦が築かれて「張」旗が立てられたという事も。他の小さな拠点も多くあるがそれは良い。まさかあの高順が太守になるとは思いもしなかった。そして、前から欲しいと思っていた張遼が国境守備に回されたことを知って、曹操の心は躍っていた。早く攻め入りたいが、「急いては事を仕損じる」と考えて少しだけ心を落ち着ける。曹操は、劉備の準備が整うまで待ってやる気は無い。劉備の要請が着たら動いてやるとは言うものの、その要請が来る前に動くつもりであった。既に筋書きは出来ていて、砦を自分達が落とし、小沛と広陵は劉備に攻めさせる。この時点では高順が暗殺されたらしい、という話は曹操陣営まで届いていないので、広陵も一応攻略拠点になる。或いは自身で広陵も一気に攻め取って、小沛を孤立させるという手を考えないでもないが・・・劉備に呂布を抑える力量があるかどうかが鍵になる。どうであれ、曹操軍が徐州へ向かうのも遠くはない。呂布・曹操・劉備の3つ巴が始まるのは、すぐそこまで迫っていた。~~~楽屋裏~~~めんどくさい人たちです、あいつです。趙雲は座して待つ・・・ではありませんが、現状では両陣営に関らないようにしたようですね。さて、呂布隊3千と劉備隊4千。戦う訳ではありませんがどうなる事やら。そして主人公(笑)は死んだのか生きているのか。張遼・華雄らは賈詡の言う事を聞かないでしょうね、戦争中であればともかく。既に呂布陣営は崩壊寸前、止めを刺すのは劉備か、はたまた曹操か・・・。ではでは。どうでもいい話ですが向こうも更新したDEATHよ。