【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第43話 洛陽的日常。その2高順、そして馬超。この二者が洛陽へ到着して1週間ほどが過ぎた。この時には楽進ら、晋陽居残り組も到着しており、何ゆえか上党にいるはずの味噌職人の人々もその道中に引っ付いて来ていた。彼らが言うには「置いてけぼりにされてはたまらない」ということなのだが、これからも色々と金が入用なはずの高順の元で直接働こうという意味もあったようだ。一応、楽進らの事も董卓に報告して高順・・・いや、この場合華雄軍だが、そこに所属する事になった。が、ここで張遼が異を唱えた。内容は「華雄のところばっかし増強されて面白ーない! うちとこにも武将配置して欲しいねんけど・・・」なのだそうな。確かに、彼女に言い分にも一理あるな、と董卓や賈詡も考え込んだ。1つの軍勢にばかり戦力が集中するのは・・・ということなのだ。呂布はあの通り、人を使うことは不得手だがその武威と力で万の軍勢に匹敵する。張遼と華雄は兵の使い方も上手く、自身の腕前も相当なものだ。同等の扱いをして欲しい、と言うことでもないが自分のところに武将配置が無いのは「えこひいき」だというのが張遼の主張だった。「華雄には李粛とか徐栄、4人がいるやん? そこに順やん部隊・・・えーと、9人やったっけ? 全員配置はきつぎますわ。2人や3人、こっちに回してくれてもええんとちゃいます?」「うぅん・・・張遼さんの言う事も正しいと思うのですけど。」間違った事を言ってるわけではないので、董卓も困り果てている。「せやろ? なら・・・。」「ただ、問題があるんです。」「問題? 何やの?」「・・・本人達が嫌がっているんです。」「・・・はぁ。」張遼は「はい?」と言いたげな表情だ。嫌がってるってどういうことやねん? と。「これまでも、張遼さんから何度も同じお話をされました。それで、私から打診してみたんです。」「結果が・・・全員に断られたってことかいな?」「はい・・・。」~~~その時の状況~~~政庁にて。「高順さん、一度決まったことを覆すのは心苦しいのですけど・・・張遼さんが武将を回して欲しいと仰っているんです。」「はぁ・・・。」「それで、高順さんは、呂布さんと張遼さんに思うところがあるのを承知で・・・私からもお願いしたいのです。」「・・・そりゃ、確かに思うところはありますけどね。」苦々しく呟いて、高順は自分と同じように呼び出された仲間達のほうへ身体を向けた。「と、董卓殿はこう仰ってるが・・・行ってもいいぞ、と言う人はいる?」『・・・・・・(無言)』誰1人応えない。蹋頓や楽進などはそっぽを向いてさえいる。「・・・らしいですよ、董卓殿。」「へ、へぅぅ・・・困りました。」董卓は自分の頬を両手で包んで本当に困っていた。3人娘・・・「だが断る。」沙摩柯・・・「私と蹋頓は高順の副官だからな。動くつもりは毛頭無いぞ。」蹋頓・・・「高順さんの下で働けないのなら暇乞いを・・・。」趙雲・・・「それがしも、気心の知れた方と働きたいですな。」閻柔と田豫・・・「うぅ、私達は趙雲様の副官っすから・・・。」と、にべもない。「・・・と、こういう次第でして。」「あ、あうぅ・・・うち、そこまで嫌われてるんかなぁ・・・。」とほほ、と張遼は肩を落とした。この時、張遼の下に着いている武将は誰もいない。張済と張繍は董卓の身辺警護と、代わりに軍を指揮する役目を負っているし・・・牛輔(ぎゅうほ)とかはいらんしなぁ・・・。「う~~~・・・、参ったなぁ・・・。」横で見ていた賈詡は、こめかみ辺りを押さえて「はぁ・・・」とため息を1つ。このまま董卓に任せてたら纏まるものも纏まらない。「あたしが独断と偏見で決めるわ。」と、大声で叫んだ。「へぅっ・・・賈詡ちゃん・・・。」「あんたはもーちょっと堂々としなさいよ・・・。張遼、2人ほどで良い?」「おお、賈詡っち! いけるんか!?」「あったりまえよ。それに、高順だって戦力が集中しすぎているのは理解してるみたいだしね。」その2人、というのは干禁と李典である。賈詡は高順一党と称される人々の観察を行って、その2人ならば何とかなるだろうという目星をつけていたのだ。高順という人間を信用している訳ではないが、このまま忠誠を誓うというならば・・・規模が小さくとも、独立した部隊を任せてやってもいい。特に趙雲は一番素質がありそうで、彼女は間違いなく一軍の長たりうる実力者だ。楽進は高順の下で働かせてやるほうが力を出しやすいだろう。沙摩柯・蹋頓は一軍の長としても高順の部下としても、どちらでも使えそうだ。そうなると消去法での事でしかないが、干禁と李典・・・ということになるのである。後日、高順は賈詡に呼び出されて事の次第を説明された。当然一軍の長云々は伝えられていない。不満が無いではないが賈詡や張遼の言い分は解るし仲間内で軋轢を作るのも良くない。「ま、これは董卓からのお願いではなくて命令なわけよ。 拒否するのは許されないわ。」とまで言われれば了承するしかなかった。その結果・・・張遼隊に配属されるのは、干禁と李典になった。ただ言われるだけではなく、高順としても条件をいくつか出し、賈詡との交渉をしていたが・・・。それを居館で聞かされた本人達は猛反発。「なんでやねん!?」「おかしいの!」と凄まじい剣幕で高順に詰め寄るが・・・。高順としても彼女達を手放したくは無いが、平均的な、つまりバランスを取るためには仕方の無い処置でもある。そしてこうも説明した。「2人はあくまで出向というか出張みたいな形でね。基本的に俺が2人にとっての指揮系統なわけだ。だから、俺が「2人とも張遼さんと一緒に戦って」と言えば2人はソレに従う。」「・・・なんや、ややこしいなぁ。」「つまり・・・高順さんが「一時的に俺の指揮下に入れ」と言ったら、そこに戻るの?」「大雑把過ぎるけどそんなところかな。張遼さんの命令よりも俺の命令のほうが優先度高い訳だ。んー・・・俺直属の遊撃部隊とか他軍への応援部隊ってところかな? 2人にも兵が配置されるしね」李典と干禁は、互いに顔を見詰め合っていたが・・・しばらくして「しゃーないなぁ・・・」と諦めた。「すまないな、2人とも。俺としても2人には一緒に戦って欲しかったのだけど・・・。」高順は済まなさそうに頭を下げた。「なはは、わーっとるって。高順兄さんも納得してへんみたいやけど。」「高順さんに頭を下げられたら断れないの。」「その代わりって訳じゃないけど、2人はここに住んでいても良いみたいだ。調練は張遼殿と一緒みたいだけどね。」「んなもん当たり前や。こっから離されるのだけは勘弁。・・・その前にな、高順兄さん。」「何だい?」李典は意地の悪そうな笑みで高順の顔を下から覗き込んだ。「出張っつーのはな、手当てが出るんやで。知ってはります?」「えへへー。そのあたりはちゃんと払ってもらうの!」「な、あっさり了承したと思ったらそんなこと考えてたのか!?」2人はけらけらと笑った。「あったりまえやがなー。高順兄さんに譲ったんやから、こっちも見返り欲しいのはごく当然の心理や思いますけど。」「・・・ぬぅう。」まあ、仕方ないか? と思う高順。色々と考えれば、楽進・李典・干禁は最初期からずっと高順と共に戦いを潜り抜けた戦友でもある。(虹黒もだが彼女達はずっと高順と共に戦うことを願っていただろうし、そもそも自分のせいで望みもしない場所へ行って、望みもしない戦いにつき合わされている。沙摩柯・蹋頓・趙雲・閻柔・田豫・・・彼女達だってそうなのだ。それに対して、自分が見返りとして用意できるのはお金だけ。何とも情け無い話であるが、彼女達が自分に向けてくれる信頼と引き換えに金を払っているようなものなのだ。高順はそれを恥じているが、本人達が聞いたら首を横に振ってこう応えただろう。「私達は私達の意志で高順に着いてきたんだ。」と・・・。こうして李典と干禁は張遼与りの応援部隊として派遣されることになった。洛陽での高順達の仕事は兵の訓練、華雄・張遼部隊との連携、警邏などになる。とは言っても兵士の編成をしなければいけないようで、それは高順達の仕事ではない。賈詡の仕事である。自分達に宛がわれる兵士の数もこの時では不明であって、上からのお達しを待つしかなかったのだ。現状でやる事のない高順達だったが、1つだけやりたい事があって、それを沙摩柯に頼んでおいた。支度金を用意するので武陵蛮を集めて欲しい。というものだった。武陵というのは沙摩柯の故郷で、その地に住む蛮族なので「武陵蛮」だ。高順以外の武将は漢王朝の兵士を与えられる事になっているのだが、高順の部隊は烏丸騎兵700が中核となる予定である。中途半端に異民族と漢土兵の混合部隊を作るよりはいっそ異民族一色にしたほうが良いか? という考えであった。その為、今は沙摩柯がいない状況になっている。高順と蹋頓は洛陽周辺にいる異民族に片っ端から声をかけて部隊に組み込んでいて、武陵蛮も含めれば・・・高順隊の最終的な兵士数は2000ほどになると予想されている。さて、他の者たちはと言うと・・・これが、本当にやる事がない。警邏などは直ぐに終わってしまうし、あとは自分達で居館の庭などで訓練をするしかないのだ。その日は、高順と蹋頓も訓練を行っていたのだが・・・そこで、ちょっとした出会いがあった。馬超姉妹・韓遂・成公英。彼女ら5人は高順を探していた。韓遂はともかくも、他の者達は洛陽に来るのが初めてであり、観光を兼ねてもいたのだけれど・・・。高順の住んでいる場所を知らなかったので、一度董卓なり賈詡なりに聞かねばならなかった。そして街の宿から宮殿に向かう途中の事。馬超をじーーーっと見つめる黒馬・・・虹黒がいた。「・・・何だろ、あの子。」一番最初に気づいたのは馬超だった。なかなか立派な邸宅があって、その庭部分から、自分を見つめている黒い巨馬がいるのだ。馬好きの彼女は思わず、そちらへふらふらと歩いて行った。「あ、姉上? どうしたの・・・うっわ、すごいお馬さんだぁ・・・。」姉がふらふらと歩いていく事に気づいた妹2人も虹黒を見て一緒についていく。「あ・・・韓遂さま。」「ん?・・・はぁ、馬超達の馬好きにも困ったものだな・・・。」そう言いながらも韓遂は成公英を伴って馬超らの後ろについていく。「・・・。」「・・・。」じぃ・・・っと睨めっこをする馬超と虹黒。目の前の馬は随分な巨躯の持ち主のようで、わざわざ馬超と目線を合わせるかのように首をかなり低い位置まで下げている。ふんふん、と顔を近づけて馬超の匂いを嗅いでいた虹黒だったが・・・不意に、馬超の顔を「ぺろっ」と舐めた。「えひゃっ!?」へんな叫びを上げる馬超に構わず、虹黒は更にべろべろと馬超の顔を舐める。「お、おいっ・・・あは、あはははっ・・・こら、ちょっと・・・ぬひゃっ!?」その叫び声が聞こえたのだろう。黒髪の青年が、「こらこら、何してるのさっ!?」と馬超達のもとへと走ってきた。「ぶるるっ・・・」「あ・・・。」その声に、目の前の馬は反応してそちらに歩いていってしまった。「ったくもー。虹黒、知らない人の顔舐めちゃ駄目だって言ってるだろー?」と馬にやんわりと注意しつつ、その青年(高順だが)は馬超らの目の前までやって来た。馬もその後をゆっくりとついてくる。「すいません、うちの家族がご迷惑をお掛けしたみたいで。」と青年は人懐っこい笑顔を見せた。その笑顔に、馬超はどきりとした。彼は馬超から見て割と好みの男だったようだ。「あ、いや・・・別にいいんだ。その馬・・・虹黒っていうのか? その子がじっとこっちを見てたからさ・・・。」「そうでしたか。本当に申し訳ない。」「いいなー、姉上だけあの子と仲良くしてー!」「いいなー!」「お、おい、お前らなっ・・・」「・・・はは、どうやら随分気に入られたようだよ、虹黒。」そんなやり取りをしている馬姉妹だったが、韓遂は青年を見つめて「ほう、なかなか・・・。」と心中で感嘆の声を上げていた。その青年の上着は、訓練でもしていたのか・・・汗で身体にびったりと張り付いていて、中々筋肉質である事が見て取れる。腕にいくつもの傷があるし、その青年の持っている武器もまた凄まじいものだ。槍のようだが、巨大な刀のようなものに見えるし長さも相当だ。これを扱えこなせるというのなら、大した膂力の持ち主と言うことだな・・・と、韓遂は油断無く青年を観察していた。さて、談笑をしていた馬超達だったが、思い出したのか目の前の青年に1つの質問をしていた。「あ、そうだ。1つ聞きたい事があるんだけどいいかな。」「はい?」「今、人探しをしているんだが・・・高順って言う男を知らないかな?」「・・・高順?」「うん、どうだろう?」「・・・どういう字です。「高い」に「順番」の順ですか。」「ああ、そうだが・・・知ってるのか?」青年は顎に手を当てて少し考えているようだったが、まあいいか、と呟いた。「人違いかもしれませんが、俺の名前も高順です。」「・・・なにっ!?」馬姉妹だけでなく、韓遂も少し驚いたような表情を見せた。馬姉妹に至っては顔が真っ赤になっている。「しかし、あなた方の探している高順が俺であるという訳では・・・。」そこで、「少しいいか?」と、韓遂が前に出てきた。「貴方は?」「ああ、そういえば我々の自己紹介をしていなかったか。私は韓遂。で、これらが馬超・馬休・馬鉄。私の後ろにいるのが成公英。」「・・・西涼の盟主、馬騰の一族と韓遂・・・って、まさか!?」「ふむ、どうも当たりの様だな。閻行は元気にしているか?」韓遂はにんまりと笑ってその名を出した。「・・・はぁ、確か母上のお知り合いでしたね。用件・・・は、いいか。しばしお待ちを。」高順はそう言って虹黒を伴って走り去った。少し経ってから高順は自ら韓遂らを居館の中へと招き入れたのだった。高順は馬超一行を居間に案内。居間には既に沙摩柯を除く全員(何故か華雄と張遼までいた)が集まっていた。閻行と韓遂の視線が重なり、2人はニヤリと笑みを見せる。高順は馬超らに席を勧めてから自分も着席した。一応、形式上ではあるが皆を紹介する。馬超は何故かむっとしていたようだが・・・。「さて、こんなところですか。・・・では、お聞きしますが俺を探してた理由をお聞かせ願えますか?」この問いに、韓遂は「もっともだ。」といいつつ高順に2枚の手紙を渡した。1枚は馬騰から閻行に宛てた物でもう1枚は閻行から馬騰に宛てた物。「・・・?」「閻行の書いたものから読むんだぞ。」「はぁ・・・。」順番に意味があるのかなあ、と思いつつ高順は手紙を広げた。そこには、簡単に意訳するとこう書いてあった。(意訳開始)「やっほー☆琥珀ちゃん(馬騰の真名)愛してる♪ 少し面倒だろうけどお願い聞いて欲しいなー。ちょっとうちの馬鹿息子に付き合って反乱かますんで、不穏な動きするだけでいいから支援して欲しいな。お礼に琥珀ちゃんの3人の娘の誰かと、うちの息子娶わせたいなーって思ってます。勿論3人全員でもいいよん☆」(意訳終了)・・・・・・何この心の底から殺意の沸いてくる手紙。こんな無礼な手紙送られて馬騰さん怒らないのだろうか。「よーし、母上ちょっとそこ座れ、むしろ正座。」「え、どうして!?」「どうして、じゃねええっ! こんな無礼な手紙良く書けますね貴方は!? しかも何ですか3人の娘と娶わせたい・・・え?」無礼千万な内容に気を取られすぎていたのか、ようやく高順は気がついた。娶(めあ)わせる? 娶わせるって結婚って意味ですよね?ちなみに、周りの人々は最初から理解しており・・・。3人娘の反応→楽進が何故か落ち込む。他2人はニヤニヤ。趙雲→ふむ、また恋敵が増えましたかな?華雄→まったく、閻行様の気まぐれかつ悪意無く他人を巻き込む癖はまるで変わっていない・・・。張遼→へぇ、西涼軍閥と関係あるなんて。やるやんか。蹋頓→あらあら、人気者は辛いですね、とにこにこしている。閻柔と田豫→おおぉ・・・い、一夫多妻制!?馬姉妹→真っ赤。この件については高順は一切悪くない事を理解してもいるようで、高順一党&華雄・張遼には悪意など欠片もないようだったが、本人にしてみればたまったものではない。「・・・ははうぇ~・・・。ど、う、し、て! 貴方はいつもそうなんですか・・・!」「あ、あの、順。落ち着きなさい、ね?」今まで感じたことの無い怒りに、さすがの閻行も焦っていた。冷や汗をかいてわたわたとしている。「高順。義姉からの手紙はソレに対しての返書だ。読んでみるといい。あと、誤解の無い様に言っておくが戦友ということもあって、その程度では義姉は怒りもしないぞ。」それは人として何か間違ってるような・・・と何とか怒りを押し殺しつつ高順は返書とされている手紙を開いてみた。「了承。」・・・ただこれだけが書いてあった。「え、これだけ?」「うむ、それだけ。」高順の疑問に韓遂と馬姉妹はうんうんと頷いて見せた。ある意味で「それだけで意思が通じる」という信頼の現われのようにも見えるし、「なんかもう面倒くさくなってそれでいいや」みたいな投げやりな反応にも思える。「・・・て、手抜きな回答だよなぁ。・・・え、ちょっと待って。じゃあ、晋陽の乱の時に西涼が動いたのって!?」「ああ、要請に基づいての事だな。行動に移したのだから返書は必要なかったのかもしれないけどな。」「・・・こんな訳のわからん内容の手紙送られて動く馬騰様って一体・・・。」高順はどこか遠い場所を見つめてぼやいた。韓遂は何も言わないが、馬騰にもきっちりとした打算がある。不穏な動きを見せた、とあるが馬騰らにとっての仮想敵は常に漢王朝だ。その仮想敵に対しての軍事教練、そして兵士増員をしたのみ。それだけで閻行に恩が売れるのならそれはそれで安いものだ、ということだ。そしてもう1つは、娘たちの事に関してである。下の娘2人はともかくも、馬超は少しばかり男勝りな部分があり。武勇もあることも手伝ってか少々扱いづらい面がある。親馬鹿なところがある馬騰は、ちょっと速いと思うが馬超の嫁の貰い手を捜していた。妥当なところで「関中十軍閥」と呼ばれる西涼の実力者10人の子弟などを思い浮かべていたのだが、全員が「恐れ多い」と辞退してくるし本人も「弱い奴は嫌だ」と興味も示さない。さあ困った・・・と思った頃に、閻行からの手紙が来たのだ。閻行の手紙の遣り取りはこれ一回だけと言うわけではなく、それ以前に何度もあったことで交流はきっちりと続けていた。なので、馬騰の娘が3人ということを閻行は知ってたし、馬騰も閻行に高順と言う息子がいることも知っている。内容は前述の通りで、馬騰はそこを利用するか、と考えたのである。あの閻行が自分の息子を鍛えない訳が無いし、娘にも婚約者ができて親としても安心が出来る。高順の人物も温和だと伝えられているのであとは会ってからということになるのだけれど。恩を売れる上に、上手くやれば高順一党丸ごと自軍に吸収して尚且つ閻行が戻ってくる可能性もあるのだ。軍事演習も兵力増強もそろそろ行うべきかな、と考えていた事もあって馬騰は閻行の要請を受け入れたのである。馬超は話を聞かされたときは乗り気ではなかったのだが、高順と言う男が中々の武勇の持ち主で馬術も巧み、と聞かされて少しだけ興味が沸いた。特に馬術が得意と言うところに魅力を感じた。馬超本人も乗馬が趣味であるし、婚約者云々は無いにしても話のあう友人くらいなら、と思うようにした。持ち前の気性の荒さと武勇、そして馬騰の跡取りということで、周りの男連中は馬超に遠慮をしすぎており本人もソレをなんとなく理解している。友人といえるのも同年代の成公英、あとは妹2人と従妹である馬岱くらいなもので、馬超本人の交友関係と言うのは本当に寂しい。馬休と馬鉄も何故か乗り気だし、一度会ってみたいものだと思っていたところ、馬騰から洛陽へ使者として赴くように命令をされ今に至る・・・ということだ。「一応言っておきたいのですが、俺、何も聞かされてないんですよね・・・。」高順は正座したままの母親を睨みつけながら言った。「どうして俺の知らないところで俺の人生に影響を与えるような事をしますかね母上は・・・!」「いやー、あはは。色恋沙汰に疎い息子のためにーと思って。あはははは・・・。」「・・・・・・。」すっげぇ冷めた視線で返事をする高順に、閻行は引きつった笑みを浮かべる事しかできなかった。「と、とにかく。いきなり婚約者云々言われても困ります。」「うん、そうだろうな。だが、こっちとしても約束を果たして貰わねば困る。そこで次善の策として・・・友人からでもいいから交流を持ってやってくれまいか?」「友人としての交流ですか?」「うむ、お前達からしても交友関係を広めるというのは悪い話ではあるまい?」この言葉には高順もある程度納得が出来る。常に追われ続けている立場であるし、これから先のことも考えれば馬騰との交流を持つというのはマイナスにはならないはずだ。「それはそうですけど・・・。馬超殿達はそれで良いので?」「え? あ、うん。別にあたしは・・・。」「構わないよー!」「なのですよー!」「・・・異論は無い様だな。では、姪たちを頼むぞ。それとな。」「それと?」「暫く我々をこの居館に住まわせて欲しい。お前達の相性が良いか悪いかをこの目で見ておきたいし、間違いが起こって・・・いや、むしろ起こせ。」「!?」こうして、訳のわからぬ展開になりつつ馬超と交流を持つ事になった高順一党。この流れで楽進が更に嫉妬の炎を燃やしたり、趙雲がよからぬ事を考えてほくそ笑んでいたり。酒を飲まされた高順が韓遂と凄まじい内容の会話を展開したり、他にも色々とある訳だが・・・。それがここで語られることはまずないであろう。馬超姉妹や成公英にとっては、この交流は悪い話ではない。婚約者は話が飛躍しすぎているのだが、友人として考えてみれば高順一党は良い付き合いの出来る人々・・・性格の良い人々ばかりだったのが幸いでもあった。彼らと何度も手合わせをして、高順の武勇が相当なものであることが解った。他の女性陣も高順より強かったり、高順とまで行かなくてもそれに追随できるほどの腕前だ。(楽進と趙雲も、変な気を起こさず普通に接している閻行は差がありすぎると言うか次元が違いすぎたと言うか、一瞬で半殺しにされかかって馬超姉妹にとって一生物のトラウマになったりしたのだが・・・。時折趙雲や蹋頓にからかわれたりもしていたが、気の良い人々ばかりである。馬超自身が不思議に思うくらいに、すんなりと皆の輪の中に溶け込んでいた。それに、食事が美味しいのもありがたい話だった。食べ盛りの彼女達にとって、高順の作った食事は本当に美味しかったらしく、また大人数で食事をするのも新鮮だったらしい。食べ過ぎて体重のことを気にしだす馬超だったが、その分、高順達との手合わせで脂肪を燃焼させていたし、このときは気付ける訳もないが栄養は全て胸に流れていて・・・何1つ不安に思う事もないのであった。~~~楽屋裏~~~インフルエンザって辛いんですね、あいつです(咳いやはや、これで3日ほど寝込んでます。寝込んでいるのに何故これを書いているのか良く解りません(駄目でも、3日目になると咳が酷いだけで割と何とかなるんですよ、自分の家で生活する分には(笑・・・馬超たちの設定があんな形になってしまいましたが・・・ちょっと安易過ぎましたかね。ただ、今の高順一党って(戦力的に見て)どの勢力にとっても凄い魅力的な部隊になってるんだと思います。作者の悪乗りが過ぎたとはいえ、かなり充実している布陣ですよ?それを迎えられるなら・・・と馬騰も考えたかもしれません。西涼ってあまり人材のいないイメージがありますし。どこぞのアレとかソレよりはまだマシなのですが。反董卓連合まではもう少し時間がかかるかな・・・?それでは、また次回お会いいたしましょう。