【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第33話 晋陽内乱、終幕・・・?晋陽城内にて、太守は部下に当り散らしていた。曰く「この役立たずが!」とか「お前達のせいなのだぞ!どう責任を取るつもりなのだ!」とか。自身の無能を棚に上げて喚き散らすばかりしかできないこの男こそどうにかして責任を取るべきだというのに。だが、それもあと少しで終わろうとしている。滑稽なのは自身の失策・失政のツケを己の首であがなう時がすぐそこまで来ていることに、全く気がついていないというところか。そして、その命を刈り取る断罪者は城門の直ぐ向こうにいるのだ。~~~城門・黒山軍~~~褚燕率いる軍は既に布陣を終えて攻め入る姿勢を見せている。既に部隊として攻め入る事ができるのだが、まだ「移動式木製階段」の組み上がりを待っている状況だ。それほど時間がかかるわけでもないが、やはり緊張をしている者にとっては長く感じるらしい。そんな中、褚燕本陣の陣幕では・・・。「ふわぁぁあぁっ・・・んむっ。」閻行が思い切り欠伸をしていた。別にだらけているわけではない。彼女なりに気合が入っているはずだ。うん、きっとそうに違いない。閻行のだらけきった用に見える行動を、褚燕は怒ることなく受け流していた。何せ1人で数百人と斬りあって平然と帰還してくるような人である。ああ見えて周りに注意している・・・はず。そう考えている褚燕の目の前で、閻行はもう1度大きな欠伸をした。「ふぁ・・・眠い・・・。」前言撤回。駄目だこの人。褚燕はこめかみ辺りに感じた痛みを何とか押さえるのだった。駄目かどうかさて置いて、褚燕は今回の閻行の行動を不思議に思っていた。昨日の戦いの勢いで、そのまま先鋒で攻めかかっていくと思っていたのだが急に「私、本陣守備に回ります。」と言いだしたのだ。閻行の言う事では「万が一援軍が来たらそれを止めないといけないでしょう?私はここで壁として残るのです。」とのことだった。だが、血気盛んな彼女が自分から残る、と言いだしたから皆「何を考えておられるのだろう?」と思う事しきりである。それが表情として表れていたのだろう。褚燕の顔を見た閻行がにわかに噴き出した。「くふふ・・・おかしな表情をなさっておりますね、褚燕さん。」「え?そ、そんな変な顔ですか!?」「あなたが変な顔なら世の中のほとんどの女性は変な顔ですよ・・・。そうではなくて。おかしなことを考えているのでは、と思いましてね。」「はぁ・・・。たしかに、解らない事を考えていればおかしな表情にはなるかもしれませんね。では、2つお聞きしても宜しいですか?」「答えられることなら、何なりと。」「この城攻めで、何故本陣守備に回られたのでしょう?閻行様ならば、先頭にたって戦うのだとばかり・・・。」褚燕の言葉に、閻行は「ああ、不思議に思われましたか。」と笑った。「そうですね。こういうことは若い者が率先してやるべきだと思っています。私のような老人がいつまでもはびこる訳には行きませんからねぇ。」どこか遠いところを見るような、そんな表情をする。「老人だなんて、そのような事は・・・。」「まぁ、若い者に楽をさせるな、と言うところですか。順達が今まで苦労をしていないとは思いませんけれどね。何度も老人に頼るな、と言いたいだけです。それに・・・。」「それに?」「あの子達ならやり通せると思っているのですよ、私は。ふふ、親のひいき目かもしれませんね。」これに関しては褚燕はその通りだろうな、と思っていた。高順が考え、李典達が組み上げて言った移動式階段、そして閻行の勇猛さに隠れて目立たなかったが昨日の戦い。高順は前に出会ったときよりも確実に強くなっていたし、彼の周りを固める人々も頼もしい存在である。彼らだけでは何も変わらなかったかもしれないが、彼らがいてくれたおかげで晋陽攻撃も成功しつつあるのだ。「では、あと1つ・・・。閻行様は何故、人の上に立ち乱を征しようと思われなかったのですか?」「人の上に跨るのは得意ですけど?」何の気なく、閻行は言った。だが、褚燕の反応は凄まじく冷たい。「・・・。」「・・・。」「・・・。」「・・・ごめんなさい。」果てしなく下ネタ。「駄目だこの人、早く何とかしないと・・・!」褚燕は心からそう思うのであった。そんなことを考えた瞬間、伝令が陣幕の中へ入ってきて攻撃用意が整った事を告げる。それを聞いた褚燕は伝令に「攻撃を開始します。銅鑼を鳴らす用意を!」とだけ言いつけて陣幕を出ていく。閻行には上手くごまかされたような気がしないでもないが・・・また余裕のあるときに聞けばいいだろう。陣幕から出た彼女の目に映ったのは、既に陣容を整えた自軍、城壁の上にびっしりと並んだ晋陽の弓兵。そして、移動している木製階段がもう少しで城壁に取り付くところであった。晋陽側としてはあんな馬鹿な代物を持ってくるとは思いもしなかっただろう。篭城を決め込んでいる晋陽側。この戦力差で打って出る事ができるはずもなく、城壁と同じだけの高さを持つ攻城兵器が組みあがっていくのを見ていることしか出来なかった。階段を移動させているのは人力である。彼らを守るために、破砕槌と同様、木で出来た厚い屋根がついている。当然、晋陽兵は弓を射掛けて何とか足を止めようとしているが、黒山兵も弓を射掛けて晋陽守備軍を威嚇、攻撃している。火矢を撃たれれば不味いが、外張りの木版は水で湿らせていて、最低限の処置はしてあった。兵士達がお互いに矢の応酬をしている頃、高順・趙雲・楽進・干禁は己の得物を手に息を整えていた。階段が取り付いたときに、彼らは一番に駆け上がっていく役目となっている。何故かと言えば、現状で一番強いのは間違いなく彼らであり、また城壁上部で戦う為の武器を持っているのが彼らのみであった、という事実だ。狭い城壁の上で戦う場合、長柄の武器を振るうのは少し難がある。楽進は格闘。干禁は2対の剣。高順と趙雲は、今は剣に持ち替えている。趙雲は長槍「龍牙」しかない筈なのだが、何故か青釭の剣・・・いや、形状からいうと刀だが、それを構えている。本来、その刀は高順の所持品である。丁原の遺した三刃戟、長刀。倚天の大剣、青釭の剣。ボロボロになって使用こそ出来ないが朱厳と郝萌の剣もある。高順の所持しているはずの青釭の刀だったが、戦が始まる前に前に趙雲に強請(ねだ)られて(?)しまったのだ。~~~その時のやり取り~~~「高順殿、そんなに多くの武器を所持していても使い切れないでしょうに?」趙雲の言葉に高順が「ん?」と返事する。「ああ・・・でも、俺ってこの中で一番弱いですからねぇ。これくらい武器を持っていないと不安d「そんなことはありますまい?」・・・あるんです。」「しかし、その鞘の青い・・・青釭の刀と申しましたか?一度も使用しているところを見かけておりませぬな。」確かに、高順は青釭の刀を一度も使用していない。抜刀術など使用できるわけでもないし、倚天の大剣のほうが性に合っている。丁原の遺刀は・・・なんというか、使用するのが恐れ多いと感じてしまう。それこそ、ここ1番で使用するべきだと考えているのだ。「武器とは使用してこそ価値があるもの。平和な時代であっても必要とされるものです。その刀、大した業物とお見受けいたしますのに・・・使わぬは勿体無いと思いませぬか?」「うーん・・・。」彼女得意の丸め込みに乗りたいわけではないが、言っていることは間違っていない。それに、趙雲と青釭は相性が良いはずだ。作り物の話である演義では、青釭は夏候恩という武将が曹操から与えられた武器。その夏候恩を戦場で倒したときに「これは良い剣だ!」とネコババして所持武器としてしまったのが趙雲である。今は高順の持ち物だからそうなる可能性はほとんどないはずだが・・・かの名将、趙雲が戦場で名剣ネコババ事件とかはあまりにダサすぎる。つうかネコババせず正面から「譲ってほしい」と言っているのだからまだ清清しい。このまま渋っても、結局口先三寸で取られるか、知らぬうちに彼女の物にされたり、とかされるような気がしてならない。(趙雲の性格を考えればそれは無いと思うが・・・)これから先、自分が使うかどうかも考えて・・・結局、高順は青釭の刀を趙雲に譲る事にした。このまま錆びさせるには惜しい名刀。青釭の刀にしても、趙雲にしても良い話だろう。「はぁ。解りましたよ。その代わり、大事にしてあげてくださいね?」「おお・・・言ってみるものですな。まさか本当に譲っていただけるとは。」高順は青釭の刀を趙雲に手渡す。趙雲は本当に嬉しそうに受け取った。「ふふ。高順殿、返してくれと言っても遅いですからな?」「言いませんよ。その刀にしても、趙雲殿の手元にあるほうが幸せでしょうしね。」高順の言葉に趙雲はにんまりと笑ってみせる。「当然。使いこなして見せますとも!」上手く丸め込まれたと思わないではないが、青釭の刀を手にした趙雲の喜びようを見れば・・・まあ、これで良いか、と思ってしまう人の良い高順であった。~~~回想終了~~~そんな訳で、趙雲が青釭の刀を所持している。決死隊の4人であるが、1番に突撃をするのは高順である。彼は片手に大剣、片手に木の盾を持っている。横からの弓矢は気にしなくて良い。階段の先にいる正面の矢だけを防いで城壁まで上りきってしまえば・・・後続で続いてくる趙雲たちもやりやすくなるだろう。彼女達の後に兵が続き、城壁の晋陽兵を駆逐していく。篭城を決め込んでいる兵士達は打って出る事は無い。むしろ、城壁守備に兵を回すと思う。そうなれば、城門を守備するための兵士は少しずつだが少なくなっていくはずなのだ。城壁から敵兵が来るとなればそちらに兵士を割くのは当然だと思うだろう。高順達が城壁で戦って敵をおびき寄せ、城門守備に隙が出来たその時。褚燕配下の「影」の出番だ。晋陽兵に混じっている彼らは、「時期を見計らって城門を内部から開けるように」と言う命令が下されている。城門守備兵が減れば、彼らも仕事がやりやすくなるだろう。そして、城門が開けば中衛として残留している沙摩柯と李典の出番だ。城門を突破し、彼女らの部隊が暴れまわる。そうすれば最初は辛いはずの城壁攻撃部隊への圧力が減る・・・はず。兵数もこちらが多いので楽ではあると思うが油断をするべきではない。突撃する順番としては、高順・楽進・趙雲・干禁といったところだ。こういった事態に慣れている前者3人はいいのだが、最初に敵と切り結ぶ、ということに慣れていない干禁は緊張しっぱなしである。「あうう・・・し、失敗したらどうしようなの・・・」と、弱気な事を言っている。「大丈夫だ、沙和。いつも通りやれば出来る。」「うう・・・凪ちゃぁ~ん・・・。」励まされるも、情けない顔をして楽進(凪)に抱きついてしまう干禁(沙和)。「お、おい・・・隊長も声をかけてやってください。心配するな、と。」困りきった楽進が助けを求めるように高順に向き直る。まあ、干禁の不安は解らないではない。今まで先陣をきって戦っていたのが高順や趙雲。李典や干禁はその後の掃討戦といった戦いばかりこなしていたのだ。李典にしても干禁にしても実力はある。一度乗り切ってしまえば、そんな不安も消し飛ばせるだろう。しかし、怖いものは怖いらしく情けない表情が今も続いている。高順は「あまり望ましくは無いけど仕方ないな。」と思いつつも説得にかかった。「沙和。ふと思ったんだけどさ。」「ふ・・・ふぇ?」「この頃皆に給金を渡すの忘れてたよね、俺。」「え・・・え?ええ?」高順の言葉に干禁・・・いや、楽進も趙雲も目をパチクリさせる。趙雲は別として、他の娘たちは立場としては全員「高順の私兵」である。今までは公孫賛の世話になっていたので忘れてしまっていた(彼女から給料が出ていた)ようだが、今の状況であれば高順が給料を出さねばならない。上党・晋陽のゴタゴタですっかり忘れ去られていたようだが、「給金」の言葉に干禁が目を輝かせた。「今まで皆に迷惑かけてたからなー。不払いも含めて・・・ちょっと色をつけちゃおっかなー。」「え!?多めに貰えるかもしれないの!?」干禁の言葉に高順は「うんうん」と頷く。「今回、頑張ってきっちり生き残ってくれたら他の皆の分も増やしちゃおうかなぁ。沙和が頑張ってくれた分上乗せって感じで?」「おおおおおっ!?燃・え・て・き・た・のー!!!」干禁、ボルテージMAXである。その様子を見て高順もやれやれ、と苦笑してしまった。なかなか現金な娘だ。さて、と城壁に向き直ろうとする高順だったが、途中で趙雲と目があった。「私は?」という・・・なんか自分もお零れに預かろう的な視線である。「・・・趙雲殿には無いですよ?」「はっ!?」「だって、貴女は俺の部下じゃないですし・・・。つうか、旅の途中で散々奢ってあげたでしょうに?」「う、うむぅ・・・。」実を言うと、趙雲の懐具合は割りと寂しいものであった。丁原の元で客将として資金を稼ごうと思っていたようだが、上党の件ではそれが不意になってしまった。旅の途中でも高順にたかって(何か間違っている気はする)節約をしていたのだが、それも底を突きかけている。「ま、お金なくなっても大丈夫。青釭の刀売れば良いですよ?」「はぁっ!?」「良かったですね、趙雲殿。その刀売れば相当な金額入ってきますよー。」「な、なんと!?まさかそのつもりでお譲りに!?」「さあ、どうなんでしょうねぇ?」ニヤニヤと笑って答える高順。「は、謀られた!?」「嫌だなぁそんな謀るなんて人聞きの悪いさあそろそろ攻めましょうよ(棒読み」いつもは丸め込まれているが、今回に限っては高順のほうが上手のようだ。2人の会話を聞いている楽進と干禁も顔を見合わせてクスクスと笑っている。だが、次の言葉でそんな余裕も全て吹き飛ぶのだった。「くぅぅ・・・仕方が無い。こうなったら・・・。」「こうなったら?」「高順殿!私を買って頂けませんか!?」「ぶふぅっ!?」×3「ちゃんと身体で稼ぎます故、どうか見捨てないで下され!」高順・楽進・干禁が盛大に吹く。誤解されかねない事を大声で言うものだから、兵士たちまでが「はい?」というおかしな反応を見せる。「だああっ!なんでそう毎回人聞きの悪い言い方しか出来ませんか貴女は!?」「しかし、私は身体でしか稼げませぬから!」趙雲は高順にしがみついて・・・というか、しなだれかかっていく。女性陣と旅をしてある程度こういった事に耐性ができた高順でも、こういうことをされるとてんで弱い。顔が真っ赤になっている。「わかりました!今回は払いますからやめてーーー!?」「いつまで隊長にくっついてるんですか!?」「うわっ!?凪ちゃんまでどうしたの!?」やはり、趙雲のほうが一枚上手だったようだ。もうあと少しで階段が城壁に取り付くのに何をしているのやら。趙雲は、なんというか素の行動がエロい。わざとやっているときもあれば、無意識にそんな行動を見せるときもある。スタイルがいいので、そういうことをされると高順としても大いに困ってしまうのだが。ちなみに、高順の知る中で一番エロくてスタイルがいいのは蹋頓だったり。彼女にも妙な迫られ方をしたことはあったが・・・どうして、皆そうやって自分をからかうのだろう?高順の悩みは尽きない。ついに、と言うべきだが階段が城壁にピタリと横付けされて彼らのお笑い小劇場(?)も終わる。階段の前に立った高順が、盾と倚天の大剣を構える。「皆、作戦通りに行くぞ。俺が何とか道を開くから、順番に突撃をしてくれよ。」高順の言葉に3人が頷く。同時に攻撃開始合図の銅鑼が鳴った。高順はすぅっ、と息を大きく吸い込んで「行くぞっ!」と叫んでそのまま階段を駆け上がっていく。階段を壊すか引き剥がそうかとしていた守備兵だったが、向かってくる高順に向けて正面から矢を射掛ける。「くそ、反乱軍が!」「殺せ!矢を射掛けるんだ!」「ちっ・・・!」飛んできた矢を盾で防ぐが、何本かが勢いよく盾を破って高順の身体に届く。届くのだが腕をかすったり、鎧に当たったりと言った程度。諦めずに矢を射掛けていく晋陽兵だが、高順の突進を止める事ができない。高順はそのまま階段を駆けていき、矢を撃ち掛けていた兵士数人を瞬く間に倒して城壁の上に躍り出る。階段の真正面にいた兵士は斬り伏せたが、左右を弓兵に囲まれてしまっている。そこへ、高順の後ろから走ってきた楽進が城壁に手をかけて乗り込んできた。その両腕が光っていて、気弾を発射できる状態になっていることがわかる。「はぁっ!」楽進は高順を囲んでいた左右の兵士達に気弾を叩き込む。その余波に巻き込まれた兵士が幾人かが叫び声を上げて城壁の上から転落していった。その状況にあっけに取られたのが運の尽き。更に趙雲・干禁も難なく乗り込んできた。高順・楽進組が右側(東)へ。趙雲・干禁組が左(西)へと攻め込んでいく。(褚燕達は南から攻めている。)不運なのは彼らを相手にしなければいけない兵士である。「ひ、ひええ・・・」「くそ、化け物め!味方を巻き込んでも構わん!弓矢で・・・。」この辺りを守る兵士長だろうか。指示を出して高順を止めようとするが、それは遅かった。彼らが反応する以上の速さで高順・楽進が切り込んでいく。大剣で斬られ、殴り、蹴り飛ばされていく晋陽兵。その逆側では趙雲が青釭の刀を振るっている。既に何人も斬り伏せており、青釭の刀の威力に驚いているようだ。「なんと、これだけ斬っても切れ味が落ちぬとは・・・。さすが名刀青釭というところか!」と感嘆の声を上げている。その傍ではいつも以上に張り切って双剣を振るう干禁の姿があった。趙雲や沙摩柯のような華やかさがなくとも、彼女も優秀な武将である。斬りかかって来る敵兵の攻撃をいなし、的確に1人ずつ討ち取っていく。「さぁ、どんどんかかってくるの!」彼女達の勢いは留まることを知らない。そして、階段を駆け上がって後ろに続々と続いていく黒山兵。高順・趙雲隊の攻撃は少しずつだが確実に城壁守備隊を駆逐していく。守備隊も溜まらず後退、城内の部隊に増援要請の伝令を送る。だが、伝令を待つまでもなく城壁へと登っている部隊が少数あった。残りの大多数はと言うといきなり城壁に現れた黒山兵に驚いて政庁まで逃げていったらしい。それを待っていたのだろう。どこからともなく「影」が多数現れて城門の閂(かんぬき)を開けにかかっていく。ごく少数残っていた守備隊が「影」を止めようと向かっていくのが城壁の上にいる高順達からも見えた。「ええい、こんなところで手間取ってる暇は無いのだけどな・・・どけっ!」「うああっ!」高順は行く手を阻む兵士をまた1人斬り倒す。まだ城壁を登り降りできる階段までは遠い。楽進も同じように、「影」に向かって敵部隊が動くのを見て取った。そのまま迷いもせず、城壁に足をかけて城内へと飛び込もうとする。「ちょ、楽進!?」なんという無茶をするつもりなのか、と見下ろしたが下に家屋がある。その屋根に飛び乗って、更に降りていこうという考えのようだ。楽進ほどの身体能力がない高順には無理な芸当である。「隊長、先に行かせて頂き・・・危ない、後ろっ!」高順の方へ振り返っていた楽進がいきなり叫ぶ。先ほど高順が倒したはずの晋陽兵が生きていたのだ。楽進の声を聞いて、高順は慌てて後ろへ向き直る。その瞬間、胸から腹部にかけて鋭い熱さが走った。「・・・ぐぅっ!?」鮮血が飛び散り、高順が膝を付く。その目の前には傷を負いつつも剣を構えた、勝ち誇った表情の晋陽兵。「死ね、化け物めっ!」勝利を確信して剣を振り上げる晋陽兵。その瞬間―――その兵士の首筋に矢が刺さった。断末魔の声を上げる事も無く、兵士は数メートルほど「吹き飛ばされた」。当然、そのまま城壁から転落。即死したのではないだろうか。「隊長っ!?」楽進が慌てて引き返してきた。好機と見て取った敵兵たちが殺到してくるものの、黒山兵が追いついてきて彼らに打ちかかって行く。楽進に肩を貸してもらった高順は一体誰が矢を放ったのか、と城壁から下を見下ろす。どうも矢を撃ったのは沙摩柯だったようだ。彼女は城門が開いたときに突撃を仕掛ける役目なのだが、城壁上の戦いを見ていたらしく高順が危機に陥った事を知ったのだろう。(そ、そういえば沙摩柯さんって弓の方も名手だったっけ・・・?つ、痛ぅ・・・)傷はそれほど深くないはずなのだが、切り裂かれた範囲が広いのか血が中々止まらない。(くそっ・・・ここで終わるのか?まだ死ねないだろう。皆に給料払うって約束したんだぞ・・・。約束も果たせずに死ねる訳が無い!丁原様の、皆の仇を討ってないのに死ねるものか・・・!)楽進が隊長、隊長!と呼びかけている声が何度も聞こえる。だが、意識が遠のいていく。周りの風景がぼやけていく。(く、っそぉ・・・。)ほぼ同時期に「影」が城門を内側から開いて黒山兵が城内へと攻め入ったのだが・・・それを見届ける前に、高順は意識を失った。~~~楽屋裏~~~母上には引っ込んでもらいましたあいつです。高順君が初めて重傷を負いました。ま、多分大丈夫だと思います。ここで死なれたら話になりませんしねぇ(w次回は多分ですが、晋陽制圧が終わった後に目覚める高順、という感じで話が始まると思います。さてさて、最初あいつは「この作品10話で打ち切るYO!」と言ってました。それが10話越えて「あれ?終わらない」 20話越えて「あ、あれ・・・?どうしたの?なんで終わらないの?」 30話越えて「あるぇー?(ry」全然先が見えないよどうしよう。年内で終わらせる予定だったのに無理すぎるorzなんというか、キャラがこちらの思う以上に一人歩きしすぎです。閻行さんとか出る予定すら無かった&こんな人になるなんて・・・。こっちのプロットをどんどん崩壊させてくれてます。信じられないだろ。30話で虎牢関終わって徐州へ言ってるはずだったんだぜ・・・。まだまだ(作者にも)どうなるか(本当に)解らないこの話ですが、願わくば最後までお付き合いくださいませ。それではまた次回お会いしましょう。