【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第32話 晋陽開戦。高順が褚燕の戦いに参加する事を決めて20日前後。彼らは今、晋陽へ向けて進軍していた。本来なら10日ほどで攻めていたはずだが、ちょっとした理由があり、褚燕に頼んで時期をずらしてもらった。かなり前の時点で他の拠点に収集をかけていたので部隊集合などは特に問題は無かったし、晋陽側では警戒をしているだろうが洛陽に増援を手配した形跡も無い。恐らく、黒山側の機密情報は「何1つ」晋陽側へは行き届いていない。それは褚燕の部下である「影」達の働きによる所が大きい。「影」は褚燕の一族に代々仕える・・・言わば隠密集団のようなものだ。暗殺などもこなせるのだが、諜報活動や同じ「影」を狩る所を最も得意とする。やろうと思えば晋陽太守も暗殺できるはずだ。だが、褚燕にそのつもりはない。民に重税をかけ、罪のない人々を殺し、父を殺した憎い相手だ。だからこそ、暗殺ではなく自分の、或いは民の手で裁く必要がある。影の努力もあって、晋陽への情報はほぼ全て遮断され逆にこちら側の偽情報を大量に流してもいる。部隊を集結させたくらいは知っているだろうが、黒山側にどれほどの兵力があるか詳しく掴んではいないだろう。さて、何故進軍時期を遅らたのか?それは閻行の言葉に端を発する。褚燕の居館にて、晋陽の見取り図を見ながらの会議。「褚燕さんの情報では晋陽の兵力は7~8000ほど。それを信じるとして、褚燕さんの兵力は4万弱。それも騎馬隊などが無く、農民兵主体の編成です。今回は城攻めが主な戦いになるでしょうから騎馬隊は不要といえますが・・・その後が辛いでしょうね。」「と、言いますと?」褚燕は閻行の言う事に首を傾げる。「間違いなく、洛陽から討伐軍が差し向けられるでしょう。数は・・・そうですね。向こうがこちらの兵数を把握していると予想して・・・最低でも6万前後はくるでしょうか。」「6万、ですか?それはちと数が少ないような。」「趙雲さん、先ほども言いましたがこちらの主力はあくまで民兵が主体です。その上装備も貧弱な物・・・。城攻めに必要な兵数は守備側の3倍以上とも言いますが、常にそんな状況とは限りません。」「そ、そうですか・・・。」閻行の言葉に恥じ入るようにして趙雲が押し黙る。彼女は常に乱の渦中に身を置いて官軍と戦い続けた歴戦の勇士だ。その言葉には実戦に裏打ちされた確かな経験が見え隠れする。「話が逸れましたね。さて、褚燕さん。これを打破するにはどうすればいいでしょうか?」「それは・・・数をもっと多く集めるとか、女子供にも動員をかける、とか。」「装備があればそれも良いでしょうね。問題はそこまで士気を高くすることが出来るかどうか、でしょう。」「装備、ですか・・・。資金はありませんから・・・。どうしたものか。」「そうですね・・・。現実的に行けば「晋陽をなるだけ無傷で」陥落させる。ですかね?」この言葉に、全員が「は?」という訝しげな表情を見せる。「ちょ、ちょい待ってぇな。晋陽を無傷て・・・そんなん、きつすぎまっせ?」「そうだな。いくら閻行殿といえ、そのような事が感嘆にできるとは思いますまい。」李典と沙摩柯が口を挟む。当然だろう。城攻めにはそれ相応の被害が出るのは常である。「私が言う被害、というのは兵の消費のことだけではありません。城・城壁・城門。それらも無傷で手に入れよう、という事です。」「そんなの、余計に難しいの・・・。」「難しい、と決め付けるのは早いですよ。むしろ、これを乗り越えられないようでは後に来る討伐軍を迎え撃つ事が難しくなるでしょうね。」「うー・・・。」ではどうすれば良いのか。皆の視線が閻行に注がれる。だが、彼女は目を瞑り腕組みをしているだけだ。「自分で考えてみろ」ということだろう。閻行の言わんとしたことを感じた皆が、隣にいる者と相談をし始める。その中で高順はじっと晋陽内部の見取り図を凝視している。(晋陽の城門はただ1つ。勢いに乗って攻めれば打ち破る事も可能、か。しかし、それでは城門の修理が間に合わないままで官軍を迎え撃つ事になる。褚燕様の言うとおりに援軍などが無いという前提での話・・・。)高順は見取り図から視線を外し、天上を見上げた。(城内から援軍を請う早馬が出る事もあるが・・・城門は1つ。そこからは出られない。残る可能性は城壁を飛び越えていく歩兵がいるかもしれないけど・・・。)母上は、城攻めがメインと言っていたが、向こうにこちらの兵数が少ないという情報を流しておけば「最初を野戦に持ち込める」のではないか?と考える。その野戦で勝利して、それに紛れて褚燕配下の影を潜り込ませる事ができれば、城攻めの際に城内を・・・例えば火事などを起こして混乱させる事も可能だろうか。それでは「無傷」という事にはならないし、褚燕の評判も悪くなる。影の人数がどれほどいるかは知らないが、城門を開けさせるという仕事は辛いかもしれない。野戦で勝利して迅速に攻めいれば早馬は出ないはずだ。問題はその後。そこに続いていく何かが足りない。城壁を越えるなら梯子を使うしかないのだが、梯子では1人ずつがちまちまと登っていくことになって矢で狙い撃ちにされる。梯子をかけたとして。その梯子を外される事も考えるべきだし、壊されることだってあり得るのだ。できるだけ多くの兵を安全に、一度に城壁を越えられるようにするには・・・?「あの、褚燕様。少し宜しいですか?」「はい?」「破砕槌(城門攻撃兵器)と梯子の数はどれほどあるのです?」「そうですね・・・槌は4、5ほどあります。梯子は100でも200でも用意できますけど。」「では、木材は豊富なのですか?」「豊富と言うわけではありませんが、この拠点ならばまだ余裕はあります。それが何か・・・?」木材はある、か。ちょっと不恰好だが・・・李典に手伝ってもらえばできるか。「褚燕様。もう1つだけ。出撃までの残り日数は?」「あと10日ほどです。」「・・・20日になりませんか?」「え・・・ええ?できなくはありませんけど・・・遅らせる理由があるのですか?」「少し時間と、人数を貸して頂きたいと思いまして。多分、後々必要になるのではないかとも思いますし・・・。」高順の言葉の意味が解らず、その場にいた(閻行除く)皆が全員首をかしげた。高順が作ろうと考えたのは外見で言えば「移動式木製階段」である。梯子でもいけるのだろうが、一度に移動できる人数が少なく、城壁から弓やら熱湯やらで迎撃されれば時間がかかる上に被害ばかりが出てどうしようもない。それならば、出来るだけ複数で移動できるような大きな梯子、或いは階段のようなものを作成してそこを駆け上がればいいのではないか?と思ったのだ。まず、野戦に持ち込んでから晋陽兵になりすまして晋陽まで撤退・・・の案もいいのだが、晋陽側が乗ってこない場合もある。最低限の保険をかけておくべきだと考える。階段を作り横からの矢に対して防御できるように其れなりに厚い木板(火矢を撃たれた場合に取り外せるように)を貼り付ける。車輪をつけて移動可能にした上で分解も可能、という冗談そのものな代物で汎用性は全く考えていない。というのも、晋陽城の見取り図だけでなく、城壁の高さ・その周辺の地理も褚燕の配下がしっかりと記録してくれていたからだ。特に障害物も無い平坦な場所で、城門付近に堀があるわけでもない。それを理解するからこその代物である。そもそも、今回の城攻めでは破砕槌が必要の無い扱いだ。1つだけ残して残りは他に転用してしまいたい。分解・組み立て式にすることにも理由がある。上手くやれば、小型ではあるが投石車にも転用できるのでは?と考えたのだ。晋陽を手中に収めれば中央の官軍が反応して討伐軍を差し向けてくるのは解り切っていることだ。それを迎え撃つために、ある程度の仕掛けを作っておきたい。幸いにもこういった類の技術に長けた李典もいるし、人手も多い。使用できるかの試験は必要だろうが、何とかなるだろう。使わないですむのなら、それはそれで良い。この案を伝えたところ、皆が怪訝そうな表情を見せた。やる気を出したのは李典だけである。移動式木製階段、というものを上手くイメージできないだろうし、投石車、というのもよく解らない物だっただろう。だが今回の戦いで破砕槌はあまり必要が無いということは理解してもらえたようで、後々のためになるなら・・・と褚燕は了解をした。ここから、高順と李典はほぼ眠らずに作製図版を考え、楽進達にも手伝って貰って骨組みやら何やらを設計・・・と、凄まじい苦労をする羽目になるが、それは割愛する。それから20日ほど後・・・つまり今だが、褚燕達はまず7千を率いて晋陽城へ出陣。後詰に1万(輜重含む)を配して出撃させる。戦闘要員は全て合わせて4万程だが、残りの兵は非戦闘員を守るために残している。晋陽側へも情報を流していて、内容は「黒山軍が蜂起、兵力は5千ほど。」というものだ。晋陽からも諜報員が何度か派遣されてきたが、それは褚燕の「影」が全て始末。そのせいで、晋陽側の掴んでいる情報は黒山側の兵数5千のみ、ということになる。ここで話は変わるが・・・晋陽太守は僅かに焦っていた。普通の考えを持つ人間なら情報が無い時点で警戒をして、増援を求めるなり何なりするだろう。しかし、これで彼は2度の失態を侵したということになる。最初は丁原の時であり、自身の失政のせいで官軍同士の戦争に発展した。2度目である今回も、失政の結果という意味で同じである。前回は賄賂をばら撒いて何とか誤魔化せたが、今回はそうもいかないだろう。私腹を肥やす事に夢中になりすぎて兵の増強を怠っていた事もある。今回ばかりは自身の戦力で何とかするしかない。彼にとって幸いな話は、黒山賊の数は少なく、賊であるゆえに装備も心許ないと思われるということ。そして黒山は西側にいるという3点だった。数は誤報だが、装備に関してはその通りだ。黒山側は歩・弓が主力で騎兵もいないし、民兵同然。方角は「西に向かわせた細作がほぼ全て消息を絶った」という事を鑑みて、である。情報が誤りで数が多少こちらより多いとしても、装備で勝る官軍がまず勝てる、という考えである。出撃していく自らの兵6000を見送る晋陽太守だったが、内心は不安で一杯だった。その考えはある意味で間違い、ある意味で正解だった。装備で劣っていても、兵の士気は高い。その上に指揮能力・武力に秀でた武将が数人ほど黒山軍にいる。それを知らないことが、晋陽太守の不幸であった。そしてもう1つ。この時点で高順や褚燕の読みは大きく外れている事になる。彼らの読みとしては「速攻で攻めて援軍を呼べないようにする」だったが、居場所自体は少し前に知られていたのだ。逆に、これらの事が褚燕側にとって有利に働く。晋陽から地理的に一番近いのは上党。その上党には呂布隊が駐在していたが、10日ほど前に代わりの太守代理が来たために洛陽へ帰還している。もし通常の予定通りに攻めていたら、呂布達と戦う可能性もあったのだろう。晋陽城より西に25里(約10キロ)。褚燕率いる黒山軍7000と晋陽軍5000が遭遇。間を置かずに一気に攻撃態勢に入った。黒山軍の先鋒を務めるのは高順・沙摩柯・趙雲・閻行。中衛に3人娘。本陣に褚燕。(閻柔と田豫は留守番)・・・とは言うものの、全員が徒歩である。彼ら以外、馬を持っている者がいないのでいざ突撃となると足並みが乱れてしまうのだ。晋陽軍がまず矢を射掛けてくるが、高順達は意に介さず進んでいく。そのまま進めば晋陽軍前衛の弓兵部隊とぶつかるのだが、そうはさせじと騎兵部隊が前へ進んでくる。それを見ていた高順達だが、それでも勢いを止めることなく進む。そこへ高順達の後方に控えていた黒山側の弓兵部隊が一斉に弓をつがえて矢を放った。弓兵部隊は歩兵部隊を盾にして前進していたが、彼らは騎兵のみを撃つ事に主眼を置いている。たちまちに乱戦となるが、先頭を進んでいる閻行が・・・なんと言うか、あまりに異常な強さを発揮している。彼女が本来使用する武器は大斧(ポールアクスと言ったほうが早いか)なのだが、今はそれを使わずに剣を振るっている。構わないのだが、戦い方が徹底して「確実に相手を殺す」形だ。相手の腕を斬って怯ませたり、などということは一切しない。常に相手の急所のみを狙って斬り、突き崩している。それ以前に振るう剣の斬撃が早すぎて鎧や兜そのものを叩き斬っているのだが。晋陽軍と直接ぶつかってからの閻行は、まるで散歩をしているかのように前進しつつ剣を振るう。その剣が振るわれるたびに晋陽兵の遺体が積み重なっていく。高順や趙雲、兵士達だって必死に戦っているのだが・・・味方である黒山兵も少し引いている。この人は敵だけではなく味方まで圧倒してどうするつもりなのだろう。ともかく、高順達も奮戦していた。今までは常に馬上で戦っていたので、普段と違う目線での戦いは少々おかしく感じるが・・・それでも一般兵士などよりは数段強い。向かってくる騎兵を三刃戟で馬ごと叩き斬り、敵に向かって投げ飛ばす。趙雲や沙摩柯も己の得物を振るって縦横無尽に駆け回り敵兵を寄せ付けない。黒山側の前衛部隊を突き崩せないと見た晋陽側は、即座に全部隊で攻勢に出た。晋陽軍の攻撃に、錬度の低い黒山側は一部恐慌状態に陥って浮き足立つ。戦いながらも、それが理解できた高順は舌打ちする。「慌てるな!敵兵1人に対して2人一組で当たるんだっ!・・・ちっ、なかなか思うようにはいかないもんだな・・・。趙雲殿、沙摩柯さん!はぐれるなよ!?」「解っている!」「それよりも、母上殿はどこだ!?」「・・・あそこ。」向かってくる晋陽兵をなぎ倒しつつ、高順は顎で指し示す。その先には相変わらず晋陽兵を畳んでいく閻行の姿があった。「この風、この肌触りこそ戦争よ!」とでも言いだしかねないくらいの勢いだ。突進してきた騎兵の繰り出した槍を平気な顔をして掴みとるわ、そのまま持ち上げて斬撃で馬ごと斬り倒すわ、奪い取った槍を投げつけて10人程の兵士を串刺しにするわ・・・。この母親、実にノリノリである。そして高順は思うのだ。「俺達、別に必要ないのでは・・・?」前衛部隊が苦戦を強いられ(若干一名除く)ている状況を見た褚燕も、中衛・本陣ごと前線に向けて移動した。楽進・李典・干禁は与えられた部隊を率いて、晋陽軍の横合いに回りこもうと迂回。矢を撃ちつつ時間差攻撃を仕掛けて晋陽軍を押し込んでいく。最初こそ晋陽軍に押されまくっていた褚燕軍だったが、前線で戦っている高順達(というか閻行)の奮戦もあり次第に押していく形になっていく。一番先頭を進み、敵陣のど真ん中で暴れまわっていた閻行に追いつくように高順達も進んでいく。この時点で、開戦から既に数時間が経っており両軍共に疲労しきっていた。そこに、後詰として遅れて出撃した黒山軍1万が来援。晋陽軍としては「話が違う!」と思わざるを得ない。敵の援軍を見て士気を喪失した晋陽兵は少しずつ後退し、ついには輜重をも捨てて逃げ出していった。そのあまりに鮮やかな逃げっぷりを見た褚燕は「罠だろうか?」と警戒しつつも追撃命令を出す。後で知ったことだが、先頭きって逃げたのは晋陽の将軍だったらしい。本気で逃げたということになる。そして、逃げていく晋陽軍の中には褚燕の手配した晋陽兵の鎧などで偽装した「影」が多く紛れ込んでいたのであった。この戦いでの褚燕側の戦死者は700ほど。晋陽側は追撃で討たれた分を含めれば1600ほどだ。負傷者を含めると両軍とももっと多くなるだろう。損害は軽微といえないが被害の割合を考えても、更に晋陽軍が放棄した食料・軍需物資を手に入れた褚燕軍にとっては勝利といっても良い戦果だ。・・・・・・ある程度苦戦していたはずなのにあっさりと戦況が覆った点について、高順は深く考えようとしなかった。(考えたら負けと思っている褚燕は、死傷者を後詰の部隊2000人を割いて処置させる事にした。本来ならばここで休息を取るべきだろうが、時間的な余裕が無い褚燕にとってはそうも言っていられない。兵士もそれを理解しているらしく、再編成もそこそこに晋陽城へと向かっていく。距離は大したことがないので1日とかからず到着したが、流石にこのまま攻める事は不可能である。晋陽側から早馬が出ないように完全に包囲し、兵に休息を取らせつつ日の出を待つことになった。攻撃側:褚燕率いる黒山軍。現兵力14000。先鋒に、高順・趙雲・干禁・楽進。中衛に李典・沙摩柯。本陣に閻行と褚燕。防御側:太守率いる晋陽防衛軍。残存兵力約5000。閻行が本陣守備に残るのは「もしも援軍依頼の早馬が出ていた状況」に警戒しての事である。武将一人が本陣守備に残ったところで何ほどのことも無いが、あの閻行である。現在の官軍で言えば呂布が本陣防衛に回った、と言えば解りやすいのかもしれない。そして、夜が明ける。~~~楽屋裏~~~だから自重しろと言っただろう閻行さん・・・風邪で3日ほど寝込んだあいつです(挨拶・・・なんというか、あまり出さないほうがいいのですよね、母上殿は。るろ○に剣心の比古師匠と同じく、「ジョーカー」そのものです。彼女関連で書きたいことはもう1つか2つくらいあるので、まだ無茶な暴れっぷりを見せるのでしょうねぇ(遠それと「移動式木製階段」ですが、これはイメージとしては・・・戦国無双2で出てきた小田原城などの城壁越え用のイベントで出てくるアレです。解らない人も多いかと思われますがwこんなもん出さなくても楽勝で勝てるとは思うのですが(理由:母上いるし・・・)投石車に転用できるならまぁいいか、と。悪乗りしすぎてますね。作者は自重するべきだと思います。それと、今回は随分駆け足な展開ですね。もう少し考えて投稿するべきだったか(もう遅いさて、次回は城攻めですね。多分それはあっさり終わって、ちょっと時間が経ってから討伐軍が来るという流れになると思います。さぁ、誰が派遣されてくるのやら。それではまた次回に。(^ω^)ノシ