【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第22話楼班を討ち、張挙・張純の首も取った公孫瓚は意気揚々と北平へ帰還した。公孫瓚はすぐに3者の首を洛陽へ送る。その首は「天子を僭称し後漢朝へ反逆した罪人」として晒し首にされるであろう。こうして、楼班・張挙の起こした乱は終結。僅かな時間ではあるが北平は平和を取り戻す。この乱を(武力を用いて)ほぼ独力で押さえた公孫瓚の声望は高まった。後漢朝は公孫瓚を中郎将に昇進させた上で都亭侯に任じてその功績に報いたのだった。~~~北平・政庁のとある一室にて~~~「えー、それでは。今回も無事に勝利して全員生きて帰って来れました。それら諸々を祝しまして・・・。」『乾杯!』杯を掲げて中に満たされている酒(高順や子供らは水)を飲み干す。その一室にいるのは高順・3人娘・趙雲・沙摩柯・蹋頓・丘力居・臧覇。そして閻柔と田豫も。彼らは戦勝祝いを行っていた。本来ならば酒場を借りたかったが、今頃同じように祝杯を挙げている兵たちに先を越されてしまい場所が無かった。そこで、無理を言って公孫瓚に全員が入れるような部屋を1晩だけ貸してもらう事にしたのだ。その公孫瓚は現在他の部屋で自軍の主だったものと宴会をしている。「遠慮せずに参加すればいいじゃないかー。」とぼやいていたが、高順らは客将という身分だし、蹋頓以外は主だった戦績を挙げているわけでもない。あれだけの戦力差に退かず、一人で何十人と打ち倒したのだからそんな事もないと思うが名のある将を討った訳でもない。何より、蹋頓や丘力居を連れて行くと王門が何をしてくるか解らない。(ちなみに王門は烏丸との決戦の折、突撃した瞬間に落とし穴に嵌って身動きが取れないまま戦が終わったらしい)そんな理由があって断りを入れていた。「なーんやぁ、高順にーさん・・・全然飲んどらへんなー。」「んー、お酒に弱いって前に言ってたの。」「そんなん関係ないない。飲んでしもたら・・・あれや、喉元過ぎれば何とやら、や!つーわけで、飲め。」「・・・何が何だか良くわからないよ、真桜。しかも何で命令口調?って、やめてくれ、俺酒駄目だから!」「そうですぞ、無理やりは良くありませぬな。自発的に飲むように追い詰めればよいのです。」「何か不穏な発言をしている人が!?」いきなり酒に呑まれて真桜は高順に絡みだす。思い切り腕を肩に回し、高順の杯に酒を注ごうとしている。別段悪気があるわけでもなく、単純に酔っ払っているだけだ。星は酔っているわけではないが、高順を弄る事が楽しいからか、こういった話題には自分から参加してくる。そんなやり取りを見て、凪がやんわりと止めに入る。「おい、真桜。隊長は酒が駄目だって前から言ってるだろう。沙和も見てないで止めろ。あと、星殿も!」「えー、面白いから止めたくないの。」「せや。酒っちゅーもんは飲んで呑まれての繰り返しで強くなるもんや。つうわけで飲めー。飲むんやジョー。」「・・・俺は下戸なの。つかジョーって誰だよ・・・。」はぁ、と高順はため息をつき周りを見る。閻柔と田豫は沙摩柯、蹋頓に異民族の話を色々聞いてるらしい。自分達の知らない文化を聞いて目を輝かせている。好奇心旺盛なのだろう。そして丘力居達は・・・。「にゃはははははは、丘力居ちゃんが6人いゆ~~~・・・。」「うふふふふう・・・高順にーちゃんが蹋頓おねーちゃんと・・・うふふふふふ・・・・・・。」完全に酒に呑まれていた。「おおおおい!誰だ、この子達に酒飲ませたのー!?」「うちが飲ませた(キリッ」「あほかああああっ!?」こんな感じで、割と楽しくやっている高順達であった。夜も更け、ほぼ全員が酒に呑まれて床で寝たり自室に引き上げていく頃・・・高順は蹋頓に誘われて「飲み直し」をしていた。蹋頓は自分の杯に注がれた酒をつーっと飲み干す。(この人も酒豪だよなぁ・・・。これで何杯目だろう。)高順の元には酒に強い人ばかり揃っていた。沙摩柯も異様に強いし、3人娘や趙雲、閻柔や田豫も相当なウワバミだ。自分一人が酒に弱い。そんな理由もあって、本来ならば「飲み直し」など絶対に受けないのだが、今回は受けるだけの理由があった。蹋頓と丘力居。彼女らと別れなければならない。理由など考えるまでもない。丘力居は次代の単干に。蹋頓はそれまでの中継ぎとして。彼女達は自身の責務を果たすために烏丸へと帰らなければならないのだ。今も烏延と難楼が蹋頓らの帰りを待ちわびている。本来であれば蹋頓らはそのまま残留するべきであったが、本人達と高順らの希望によって北平へ帰って来た。明日になれば、烏延らが手配した1000ほどの兵が迎えに来るだろう。公孫瓚との同盟云々はその後の話だ。今回の酒宴は蹋頓達の送別会、という側面があった。その為に付き合っているのだが・・・一向に潰れない。高順は果実酒を口にしているが、2杯ほどで酔いが回ってしまって上手くものを考える事ができない。「うーっ・・・よ、酔いが醒めない・・・。」「ふふ、本当に弱いですね。」「皆が強すぎるだけです・・・。」高順の言葉に笑いながら頷く蹋頓。「さあ、まだ潰れないでくださいね。この一杯が最後なんですから。」「うぇ?最後?」「ええ。最後です。」そう言って蹋頓は高順と自分の杯に酒を注ぎ始める。「これは誓いの杯。貴方達と私達がいつの日にか、再開をする。その約束のための誓いの杯です。受けていただけます?」「・・・。」そんなことを言われれば断れる訳がない。受けるのが筋と言うものだろう。高順も気持ちを切り替え、その杯を受け取る。「いつか必ず。」「またどこかで出会うために。」そう言って二人は杯を掲げて一気に飲み干す・・・はずだった。少しだけ酒を口に入れた高順が咳き込んだのだ。「うぉ、げほっ、げほっ!?こ、このお酒・・・老酒!?蹋頓さんこんなのをすいすいと飲んでたの!?」「・・・ぷは、あら、飲み干してないではありませんか?」少し不満そうな表情を見せる蹋頓。「こんな強い酒飲めませんよ!」「ふぅ、仕方ありませんね・・・。」そう言って蹋頓は高順の杯を奪い注がれた酒を口に含む。そして・・・高順に口付けた。「・・・!?」「んむっ・・・ちゅふぅ・・・」蹋頓は高順の頭を両手で掴み、逃げられないようにしてそのまま口移しで高順の口の中に酒を送り込む。何が起こったか解らない高順はそのまま老酒を飲み込んでしまい・・・すぐに昏倒した。「・・・あら?」「うゅぅうああ・・・さ、サボテンの花がぁ・・・うぐっ・・・。」「ここまで弱いなんて・・・。」これでは誓いの杯というか、誓いの口付けである。まあ、仕方が無いか。他にも色々と楽しみたかったのだけど。思い直し、蹋頓はまたチビチビと酒を飲み始めた。彼女は楼班のもとから脱出した後の数年間の事を思い返していた。幼い丘力居を連れて北平まで逃げ延び、そこで公孫瓚と出会った。そして徐州まで逃れ・・・地獄の日々が始まったのだ。異民族と言うだけで差別され、働く場所さえ満足に得られない。沙摩柯のように武勇を発揮できる場所で働く事ができればよかったのだろうが、その時はまだ丘力居が赤子である上、傍を離れにくい。もし自分が働けなくなるような大怪我を負ってしまえば・・・それこそ丘力居を養う事が不可能になる。いつの日か兄の仇を討つ。何があろうと、例え泥をすする様な真似をしてでも生き延びなくてはいけない。そして彼女は身体を売る事で生計を立てた。どうしても安く買われてしまうのは仕方が無い。だが、その7年間で心も身体も磨り減っていった。夜中に丘力居が寝付いた後、どうして自分がこんな思いをしなければならないのか、と涙を流す事も多々あった。売女と蔑まれ、石やら何やらを投げつけられ傷つけられる事だってあった。傷ついた身体を信念だけで引き摺って、ボロボロになっても彼女は働き続けたなんとか丘力居も自分も生き延びる事はできたのだが相当に無茶をしすぎたのか。蹋頓の身体は女性としての機能・・・子を成す能力を完全に失っていた。女性としての幸せを得る事もできないことを理解した蹋頓は自分の人生に絶望感を覚えた。近くに同じような境遇の沙摩柯がいなければ。彼女と友人になっていなければ蹋頓はもっと早くに潰れていただろう。高順達と出会うきっかけを作ったのも沙摩柯だ。廃屋で、文字通り丘力居と身体を寄せ合って過ごしていた蹋頓は「いつまでこんなことを続ければいいのだろうか・・・。」と、鬱々とした思いを抱えて眠りに着こうとしていた。そんなときに沙摩柯がやってきたのだ。「我々のような異民族でも差別しない奴がいる。お前の体のこともあるし、丘力居だってこのままでは死ぬかもしれない。騙されたと思って一緒に来ないか?」と。蹋頓はこの数年間で男性に対しては人間不信に近い感情を持っていた。自分の身体を壊されたのだから当然と言えば当然だ。しかし、沙摩柯の言う事も解らないではない。このままでは自分はともかく、丘力居がどうなるか心配だった。考えた末に、一緒に行く事を決めた。そして蹋頓は高順達と出会う。彼らとの暮らしは、蹋頓にとって久々の人間らしい暮らしだった。最初こそ警戒をしていた蹋頓も、彼らに悪意も邪気もないと理解してすぐに本当の家族同然の仲になっていく。誰も自分達を差別せず、同じように食事をして、肩を寄せ合って眠りに着く。たったそれだけの、人としての当たり前の生活。蹋頓はその当たり前を7年もの間、完全に忘れていた。丘力居も高順達によく懐いていたし、たまに高順の寝所に入り込んで彼を困らせたりと歳相応の少女らしい振る舞いをしていた。彼らと過ごした半年程度の時間は、彼女の人間らしさを十分に取り戻していたのだ。そして今、おかしなことに自分は大願を果たしてここにいる。形として高順らを利用してしまうような流れになってしまった事が心苦しい。考えつつ、蹋頓は酔いつぶれて眠ってしまった高順の髪を、何とはなしに撫でてみる。自分はよく高順に気があるような発言や振る舞いをして彼を困らせている。彼の初心な反応を見るのが好きだったし、それに反応する凪を見て楽しんでもいる。だが本当に彼に気があるのか無いのか?と言われればどうなのだろう?あるか、無いか。どちらと聞かれれば・・・恐らくは「ある」のだろう。彼のどことなく子供っぽいところや、普段は駄目な人なのに戦になると割と頼りになるところとか。そして、彼の優しさにも惹かれるものがある。ただ、内心で恐れるものがあってそこで踏ん切りがつかない。子を残す事ができない身体で彼と関係を持ったところで一体何がどうなるというのか。嫌われるのではないだろうか?どうもそんなことを考えてしまうのだ。だが、いつか自分で決めなくてはいけないときは来る。逃げる訳ではないが、まだ自分の気持ちは保留にしておこう。きっと、遠くない未来に彼らと再会を果たす筈だ。その時までに・・・自分の気持ちを整理しておこう。そう考えた蹋頓は、高順の隣に寄り添うような形で床に寝そべった。朝起きた時の高順の反応が楽しみだ。愚にも着かぬことを考えて、蹋頓は目を閉じて眠りについた。明朝、高順は蹋頓の胸の中で窒息死しかかっているのを凪に見つかり活を入れられていた。(云われない暴力的な意味で~~~北平、城門にて~~~烏延が手配した烏丸兵1000人ほどと難楼が蹋頓と丘力居を迎えに来ていた。高順達は勿論、公孫瓚まで蹋頓と丘力居を見送るためにわざわざ足を運んでいた。「元気でな、蹋頓。」「あなたも。高順さん達のことを頼みました。」「言われるまでもないな。」蹋頓と沙摩柯は拳を叩き付け合う。丘力居も臧覇とまた会う約束をしていた。3人娘も、他の皆も、気持ちは変わらない。そこへ、難楼が「お二人とも、そろそろ・・・。」と遠慮がちに言う。「ええ、解りました。・・・それでは皆さん。またお会いしましょう。」そう言って蹋頓は馬に乗り前に丘力居を乗せようとする。だが、そこで高順が「あ、ごめん。少しだけ待ってて。」と言い丘力居を呼び寄せる。「どうしたの?高順にーちゃん・・・?」「ん、これを渡し忘れたと思ってね。はい。」そう言って高順が手渡したもの・・・それは木で出来た剣。木剣だ。「前に買い物に行ったときに欲しがってたよね?それで買っておいたんだけど・・・渡そうと思ってて忘れてたんだ。」高順は丘力居の前でかがみ込んで同じくらいの目線にあわせる。元気でね、と木剣を渡して頭を撫でる。そこで、我慢していた糸がぷっつり切れたのか・・・丘力居はぽろぽろと涙を流し始める。「え、ちょっ!?なんで?何で泣いてるのー!?」「あー、高順にーさんが女の子泣かしたー。」「泣かせたのー。」「ふむ、かような幼子まで・・・罪な男ですな。」「お前ら・・・。」「解ってて隊長を困らせてるだろ・・・?」そんな周りの混乱など気にもせず、丘力居は高順に聞いてくる。「また・・・会えるんだよね?」「・・・。」この戦乱の時代。死はすぐ身近にある時代なのだ。無事でいられる保障など何処にもない。これに答えるのには相当勇気が要る。高順という人物の最後を知っているだけに、約束などしない方が良いのかも知れない。しかし。「うん、きっと会えるよ。」「本当に?」「ああ、本当だ。平和な時代になったら。必ずまた会える。」「・・・うん。約束だよ?」「ん、約束だ。」高順はもう1度丘力居の頭を撫でる。丘力居も、涙を流さなかった。こうして蹋頓達は自分達の居場所へ帰っていった。だが、彼女達の戦いはまさにこれから始まるのだ。烏丸を立て直すために。平和な時代のために。そして。約束を果たすために。蹋頓らと別れて数週間後、北平を訪れる集団があった。3人の少女を筆頭にした100人ほどだ。「ふぇ~、やっと着いたね~。」胸の大きさに比例して頭の軽そうな少女が呟く。信じられないが彼女がこの集団を率いているのだろう。「そうかー?けっこう早く着いたと思うのだ!」「早くかどうかはともかく・・・。公孫瓚殿にお目通りをしなくては。」それに追随する二人の少女。1人は・・・なんというか、普通のお子様だ。だが、その小柄な身体には不釣合いな大きな旗のようにも見える矛を抱えている。もう1人は美しい黒髪をポニーテールのような形で纏めており、手に持つ槍・・・いや、槍ではなく青龍刀だ。その青龍刀を握る手に力を込める。どちらかと言えば、この黒髪の少女のほうが統率者として相応しい気迫を持っている。「うん。白蓮ちゃん元気にしてるかなー。」「それも会えば解るでしょう。さ、行きましょう、桃香様。」桃香と呼ばれた少女の名は劉備、字を元徳。黒髪の少女は関羽、字を雲長。幼い少女は張飛、字を翼徳。後に多くの仲間に支えられ益州にて蜀漢を建ち上げる3人の義姉妹たち。そして正史では呂布に死刑宣告も出したも同然の・・・高順にとっては唾棄すべき存在。そんな彼らの出会いがすぐそこまで迫っていた。~~~楽屋裏~~~最初はただの弱気なお姉さんだったのに!明らかに性格変わってるよ!責任者出て来い!・・・本当に日曜日に1話UPしてしまったあいつです。今回は誰も「知りたくねぇー!」な蹋頓さんの過去話がメインでした。・・・・・・なんでこんなへヴィーな過去になってしまったか・・・あいつにも全く解りません。おかしいなぁ、なんか1人歩きしてるよ蹋頓さん。ですが子を残せないって・・・。正直、あいつは嫌な話が大嫌いです。からく○サーカスの作者様ではありませんが「嫌な話が書けない」のです。なので蹋頓には、どこかで、何らかの形で救済措置を・・・と考えています。・・・できるのかなぁ(遠さて、ようやく恋姫本編の始まり辺りまでやってきました。ちょっと時系列が狂っているかもしれません。もしかしたら本編よりも早く3姉妹が到着したのかも。このシナリオでは影響ないのですが。で、このときの公孫瓚の兵力は1万以上です。しかし3姉妹が到着した後の賊征伐では3千しかいませんでした。このあたりの統合性が取れていないのは不味いと思うのですが・・・連戦につぐ連戦で兵士が消耗していた→義勇軍微募→その兵力が3千でした とでも思ってください。本編に沿って兵力とか計算してたらそれこそ(ryそういえば本編で張飛の字、なんていいましたっけ・・・翼徳ですっけ。今回は益徳にしましたが「翼徳だろjk」になったら・・・まあいいや(おぃぃあと、高順のいう「前に買い物~」は、ゾウハと丘力居のことを忘れてたときの約束を果たすための買い物です。こんな伏線誰もわからないでしょうな。説明も無いですし(遠それではまた、次回でお会いしましょう。ノシ