【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第15話「高順お兄さん、これでいい?」「ん?おお、ちゃんと綺麗になってるな、偉い偉い。」高順が雑巾を持った臧覇の頭を撫でる。「あー、臧覇ちゃんばっかりずるい!わたしだって頑張ってるのにー!」「ほら、喧嘩しない。・・・丘力居ちゃんもちゃんとやってるな、偉いぞ!」今度は丘力居の頭を撫でる。「えへへー。」「さて、そろそろ弁当持っていくかな。2人もついて来る?」『うん!』「よしよし、じゃあ皆で一緒に行こうな。」2人の頭を撫でながら高順は台所へ赴いた。臧覇と丘力居は、高順たちの住処に世話になっている。蹋頓と沙摩柯もなのだが彼女達は今、凪たち3人娘に馬術ならびに馬上戦闘を教えている。臧覇と丘力居は住処の掃除やら、馬の世話をして貢献している。虹黒はどうも子供好きのようで、臧覇たちに身体を拭いてもらったりするのが楽しみらしい。あまり他の人は乗せたがらないくせに、臧覇たちはあっさり乗せたのである。その代わり、高順が一緒で無いと無理なようだが。沙摩柯ら4人が転がり込んで1ヶ月。この1ヶ月で高順らを取り巻く環境が少しずつ変わっていた。まず、高順。どういうわけか陳登や、その父親の陳珪から仕官を要請されていた。本来彼らの居場所は小沛なのだが・・・。虹黒が目立ちすぎたせいか、盗賊退治で頑張りすぎた結果なのか。それはよく解らないが、直々の要請をされていた。おそらく、武力に長けた人間が欲しいということだろうな。と高順は考えている。実際、史実じゃ戦闘力に長けた武将はほとんどいなかったし、武官として思いつくのが曹豹くらい、というのがある意味で終わってる。それは必死にもなるだろう。勿論、丁重に断った。陶謙に仕えてやるつもりは毛頭ない。そして凪たち3人娘。彼女らは高順が思った以上に頑張っていた。仕事もだし、馬術訓練も弱音を吐くことなく黙々とこなしている。蹋頓と沙摩柯の教え方も随分上手なようだし、なにより実戦形式で教えているのが大きいようだ。流石に街中では無理なので郊外まで出て行っての訓練になる。高順も修行をしなければ、と考え凪から「気」の練り方などを少しだが教わった。さすがに一朝一夕では無理なので簡単な呼吸法やら何やらだったが、凪曰く「飲み込みが早いから教え甲斐がある」だそうな。高順は自分の武の才能は母親の血が色濃く受け継がれたからではないか?と考えている。そうでもなければ気、というものなんて扱えない。最後に沙摩柯たち。彼女達の大きく変わった所といえば服装だった。臧覇と丘力居は子供用の服を。沙摩柯と蹋頓は・・・なんというか、スリットがすごいことになってるチャイナドレス。沙摩柯は黒、蹋頓は灰色。2人ともスタイルが抜群すぎるので高順曰く「あれは反則だ・・・」と言わしめるほどの破壊力である。夏侯姉妹もチャイナドレスを愛用していたが、あの2人よりも裾の長いものを選んだ。あの姉妹のはほとんど下着が見えてしまうようなもので、あれはあれで問題である。沙摩柯と蹋頓の場合は「刺青を隠す」意図もあったりする。ただ、服を選んだのが3人娘だったこともあり服屋で随分と弄られていたのか、げんなりした様子を見せていた。あと、彼女達の馬だが虹黒のような重種は売っていなかったので、中間種を2頭購入した。気性が穏やかで乗りやすく、すぐに沙摩柯たちにも慣れた。こんな生活をしていた高順達だったが・・・。意外にも早く、その生活は終焉を迎えそうだった。理由は・・・今度は陳登ではなく、陶謙から直々の仕官要請が来てしまったのである。使者からの言葉と手紙を受けた高順は(一応)恭しい態度で使者を見送った。そして居間に帰って来た高順はそのまま胡坐をかいて座り込んでしまった。「・・・ちっ。」高順が露骨に不機嫌になる、というのは珍しい。よほど気に入らないことがあった時にしかそんな表情も態度も見せない男だ。だが、他の人々より気が長いと言うか滅多に怒らない。部下である3人娘にからかわれても「まったく、あいつらは。」と苦笑して済ましてしまう。自分の上司をからかう、というのは本来やってはいけないことで、剣を抜かれても仕方が無いような時代である。もともとこの時代の人ではないから、という理由もあったが、その気の長さは周りに好印象で受けとられる事が多かった。そんな高順が見るからに不機嫌になっている。一体何があったというのだろう?と訓練から帰って来た3人娘と沙摩柯らは顔を見合わせていた。そこに、大人の空気など読めない少女二人が高順にひっついて行った。「ねー、高順にーちゃ?何かあったのー?」「なんだか、機嫌悪いみたいです・・・。」それを見た5人が一斉に青ざめた。(お、おい。なんて空気読めない行動を!)(しゃ、沙摩柯さん、止めてくださいよ!高順さんに叱られちゃいます!)(もう無理だ蹋頓!そういうのは凪達に言え!)(ええっ、うちら!?)(あれはいくらなんでも無理なの!)高順は尚も不機嫌そうにしていたがさすがに子供にあたることはできないと思ったようで「ああ、何でもないよ」と応えた。だが子供たちも納得しない。「えー、全然何でもないように見えないよー?」「き、丘力居ちゃん。嫌がってるのにあまり聞いちゃいけないような気がする・・・。」「う~~~。」「・・・ふぅ。」高順はため息をついた。この子達は、興味本位だけで聞いてるわけではない。普段あまり怒ったりしない高順のことが心配だったのだろうし、不安だったのかもしれない。それを思うと、さすがに怒りも収まってくるような気がした。高順は2人の頭をなでつつ「2人に教えてもちょっと難しい内容だからよくわからないと思うよ」と苦笑した。「え~・・・」「う・・・」少し落ち着いたのか、高順は普段とあまり変わらない様子で「悪いんだけど皆を呼んで来てくれないかな?」と頼んでみた。二人ともこくこくと頷き、居間を出て行く。しばらくして、皆が居間にぞろぞろと入ってきた。「よ、呼びましたか?」心なしか震えた声で凪はそんなことを言った。他の者もどこか落ち着かない様子だ。「・・・なんでそんなに怯えてるか解らないけど、皆に話したいことがあってね。」「話したい事・・・何やろ?」真桜の疑問に高順は先ほど使者から受け取った手紙を机の上に置いた。『???』「これを読めば解ると思うよ。」その手紙を広げ、凪はざっと見で内容を調べていく。「・・・これって、仕官要請状ではないですか?」「え?嘘!?見せて見せて!」そう言って身を乗り出してきた沙和に凪は手紙を渡した。「うわぁ・・・本当なの・・・。」手紙の内容を知らない他3人も、手紙の内容を覗き込んでいる。「これの何が問題なんでしょう?」「その手紙自体には何も問題は無いよ。問題なのは陶謙さ。」「陶謙・・・この徐州を預かる人ですよね?」「そう。」そこで一旦言葉を切ってはぁ~~・・・と高順はため息をついた。「沙摩柯さんや蹋頓さんなら知ってるかもしれないけど・・・。張昭って人、知ってるかな?」話を振られた沙摩柯と蹋頓は「張昭?」と聞いてしばらく考えていたが、思い当たる節があって「ああ、あれか・・・」という反応を示した。「何があったん?その張昭とか言う人。」真桜の質問に蹋頓が応えた。「少し前の話なのですが・・・陶謙はその張昭という人を茂才に推挙して、自分の家臣にしようとしたことがあったんです。」「あった・・・って?」「張昭という人はそれを断ったのです。そこで終われば良かったのですが・・・。それを恨んだ陶謙に張昭は投獄されたのです。」「・・・なんちゅうやっちゃ。」「それだけじゃないさ。自分の気に入った人材しか使わない。だから政治も刑罰も偏る。そのせいで苦しんだ人々も多い。」沙摩柯の言葉に高順は頷く。「そういうこと。だから、嫌なんだ。投獄されるのも困るしね。」それに、と高順は続ける。「もし俺が家臣になったとしよう。そんな性格の男だぞ?沙摩柯さんと蹋頓さんはまず追放される。異民族だから、ってね。」だからこそ、この街で差別される立場になってたんじゃないか、と憎憎しげに呟いた。「では・・・高順殿はこの話を?」「断る。当然だ。ただ、そうなると・・・」「・・・この街を出なきゃいけないの。」沙和ががっくりと肩を降ろす。凪も真桜も「そんな・・・」と呟く。それを見た高順も鬱々とした気持ちになってくる。(くそ、まだやりたいことはあった。皆もようやくこの街に慣れてきたっていうのに。)何故急に陶謙が仕官要請をしてきたかは解らない。一介の傭兵でしかない自分のことをどこで知ったのか。小沛にいるだけの男が何故?疑うとしたら陳登あたりなのだが・・・そんなことを疑ったところでキリが無い。「なあ、高順。」「はい?何でしょう?」「その。我々もついて行っていいのか?」「・・・はい?」「その、私達までついて行くのはご迷惑ではないでしょうか?」沙摩柯も蹋頓も少し不安そうな表情だった。彼女達の立場はあくまで高順に保護された、というものでしかない。彼が出て行く、というのならば自分たちが無理について行くのは・・・と、考えているのだろう。異民族の自分たちを連れ歩くのは・・・という、彼女らの自虐も含まれているかもしれない。「・・・怒りますよ?」「え?」「このまま皆さんを残したらそれこそ何をされるか解らないでしょう?嫌だと言っても首根っこひっつかまえて連れて行きます。」馬鹿なことを言わないでくださいね、と締めくくった。その言葉を聞いて3人娘は「さすが高順」とでも言いたげな笑顔を見せた。「さて、そうなると食料と水・・・。いや、臧覇ちゃんと丘力居ちゃんは・・・。」と、高順は独り言モードに突入した。しばらく時間が経ったが、考えを纏めたのだろう。真桜と沙和を見て「すまない、2人とも。ちょっと頼まれてくれるか?」「ん?」「2人には食料と水の買出し。あと馬車の車のほうだけ買ってきて欲しい。できれば大き目の奴を。」「了解や、じゃあ・・・うちが車のほう行ってくるか?」「じゃあ、私は食料?」「いや、まず2人で車を買って欲しい。勿論2人とも馬に乗ってね。帰りがけに食料を買ってきてくれ。ただ、ある程度の余裕は持たせてくれ。」こう言って高順は二人に資金を渡した。「解った!ほな行ってくるで!」「すぐに帰ってくるの!」2人は厩に向かい、その後馬を駆って市へと向かっていった。「沙摩柯さんと蹋頓さんは、この家の中の片付けを。必要最低限必要なものも揃えておいてください。人数分の毛布とか着替えを。」「解りました!」「ああ、臧覇と丘力居にも準備を手伝わせよう。」「ええ、できるだけ早く。俺と凪は・・・馬の準備かな。俺は仕事場に行って皆に謝ってくるよ。」「え?しかし、それは私が直に行ったほうが・・・。」「何かあったらまずいだろ?余裕があったら沙摩柯さんと蹋頓さんを手伝っておいてくれ!」「は、はい!」返事を返す前に高順は凪と真桜が働いている現場へと向かっていった。数時間後、全員自分に与えられた仕事をきっちりこなして集合していた。「馬車は!」「よし!」「馬は!?」「よし!」「食料品その他!」「よし!」「高順兄さん!」「いない!」・・・・・・。「何やっとんじゃ言いだしっぺはあああああっ!?」そう、未だに高順は帰還していなかった。馬車の用意も整い、臧覇も丘力居も既に乗り込んでいる。「ああああ、もう。早よせんとどうなっても知らへんでぇー!?」「落ち着け真桜。今騒いでもどうしようもないぞ。」「・・・ねえ、あれ。高順さんじゃないの?」沙和が指差した先には確かに高順がいた。走っている。そして、その後ろに・・・。凪達が世話になっていた仕事場の人々も一緒になって走っていた。「うぉ、あれ・・・仕事場の皆やんか?」「親方も一緒だ・・・一体?」「おおーい!待たせて済まなかったー!」高順が手を振りながら走ってくる。「遅いですよ、高順さん。」「そうだぞ、言いだしっぺが一番遅いとは。」「い、いや。すいません。蹋頓さん、沙摩柯さん。実は真桜と凪が世話になっていた仕事場の皆もお別れを、と言って・・・。」そう言って見つめる先では、凪と真桜が揉みくちゃにされていた。「ちょ、なっ!?何で皆ここにおるねん!?」「お前らが急に出て行くって聞いたから皆集めてきたんだよっ!」「こんにゃろぅ、短い付き合いだったけど楽しかったぞ!また来いよ!」「な、お、親方まで!?」「おう、凪!真桜!俺の教えてやった事忘れんじゃねーぞ!」「わ、解ってます!・・・誰だ今胸触ったの!?」「おい、これ持ってけ!餞別だチキショー!」「誰やケツ触ったん!?胸の間に野菜挟むなー!嫌がらせかー!?」「・・・賑やかですね。」「賑やかだな。」「賑やかなの。」「あー、皆さん。このままじゃ収拾つかないんで、そろそろ。」「お、おお。悪かったな、高順の旦那。あんたも、暇があったらここに寄ってくれよ。歓迎すっからよ。」「ええ、すいません、何分急なことで。」「いいってこった。あの嬢ちゃん達が来てから皆やる気になってたしなぁ。寂しくなるが、これで今生の別れって訳でもあるめぇ。」「ええ。またいつの日か。」「よし、出発だ!」高順の声に皆「おう!」と叫び、下邳の出入り口を抜けていく。たくさんの出会いがあった下邳。親方達に見送られて、凪も真桜も少しだけ涙ぐんでいた。僅か2ヶ月ほどの滞在だったが・・・多くのものを得られたと思う。馬車を操るのは蹋頓と沙摩柯。3人娘も馬に乗っているし高順も虹黒に乗っている。「で、高順さん?次はどこへ向かわれるのです?」「せや、うちもそれ聞きたかった!」「そうだな、北へ向かおうと思ってる。」「北・・・か。そうなると南皮か?」「いや、どうせなら北平か薊あたりまで足を伸ばしたいな。」「北平と薊・・・んー、太守って誰なの?」沙和の問いに、高順は陽が沈みかけた空を見上げて応えた。「公孫瓚。字を伯珪。」~~~楽屋裏~~~どうも、明日仕事だというのに1日で2話書いちゃったあいつです(挨拶こんな感じで徐州編が終わりましたがいかがだったでしょうか?戦闘が続いたのでこういった日常シーンを差し込むのはあれです。現実逃避です(何故この徐州編はどちらかといえば「幕間」になりますかね。次に向かうのは北平と薊、としていますがこの時代でのこーそんさんの居城は薊だったような気がしてすこしだけぼかしました。同じ幽州なのですけどねw蛇足ですが、沙摩柯さんと蹋頓さんに支給(?)された馬はハクニーとか思ってください。またしてもこの時代とこの国にいない品種の馬ですけどwWIKIで調べryさて、幾人かが「こーそんさん云々」と言っていましたが・・・見事に当たりましたねw実は誰かに言われたから、というわけではなく最初からこーそんさんの所へ行くのは流れとして決まっていました。おそらくこのまま黄巾の乱が起こるだろう、と思います。彼が上党に帰れるのはいつの日やらw今ふと思うと・・・十数話書いてまだ黄巾おきてないんですね(遠い目短い話でしたが本日はここまでです。それではまた!ノシ