【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第127話「はぁ…厄介ごとばかりだな。しかも総大将アレだからなぁ…」現在、高順は漢中より北西にある陳倉にいる。ここいらは西羌族の支配圏内から微妙に外れた場所にあり、襲撃される心配は現状では少ない。漢中奪取に成功した劉備は、あまり人の居なくなった周辺地域にも兵を派遣、支配地域に組み込んでいる。劉備・・・もとい蜀漢はここから街亭を狙って進撃するつもりである。また、漢中から五丈原方面に小規模ながら兵を出す。目を逸らすための出兵に過ぎないが、こちらには劉備や諸葛亮といった主軍が出て行く。その主軍が目逸らしなのだから、高順も「ずいぶん剛毅な事で」と思っている。長安攻めは主に街亭、並びに安定から軍を出す(漢中から出さないわけではない)なので、蜀漢としてはなるだけ得ておきたい要地である。(だからと言って孫家に援軍頼まんでも・・・周瑜殿の「泣いて嫌がる」仕事ってこれだったんだな・・・)孫権に「俺嫌ですから! 劉備の援軍って気は確かですか!?」と訴えても孫権は視線を逸らし「犬に噛まれたと思って諦めて」みたいな感じだった。ただし、無茶をさせられそうになったら自分の意思で帰って良いとは聞いている。「俺達を使い潰す気満々じゃないですかー!」「使いはするけど使い潰すつもりは無いわ。まあ・・・劉備軍の内情をある程度調べて欲しいのよ。盟を続ける価値があるかどうか、戦力的に大丈夫なのか」「だったら他の人でも良いじゃないですか?」「貴方達以上の攻撃能力を持つ部隊はそう無い。名目という形でも「ちゃんとした援軍」を送らないといけないのは解って貰えると思うけど?」「半端な真似と思われたくないから、ですか・・・ううう」「それに、劉備から無理を言われても貴方なら「だが断る!」と明確に意思を見せるでしょう?」「孫家としてはそれ不味くないですかね? 俺がそう上から目線で対するのは余り良くないと思うのですが」「向こうが皇帝を僭称して自身の立場が上だと勘違いしているのならそれはそれで良し。潰す名目を一つ増やせるわね?」「怖っ! 孫権殿怖っ!」「(聞こえないフリ)お願いね。」周瑜から言いつけられた罰則みたいなものだが、それでもいつ帰ってもいいと条件をつけたのはそれなりに温情があるわけだ。また孫家であれ曹家であれ劉備の持つ「人を惹き付ける魔性」に関しては凄まじい警戒心を抱いている。それを考えれば、その魔性が全く通じない高順を派遣するというのは間違いではないし、劉備を理解している高順であればおかしな事はすまいという・・・安心感のようなものもあった。それと、劉備と諸葛亮は援軍の内実を聞いた瞬間表情が引き攣ったらしい。高順の引き連れてきた数としては6千ほど。連れている武将は蹋頓と田豫以外。袁柔は来ているが、田豫共々本来は趙雲の副将であり、田豫が残されたのは趙雲の判断だ。別に戦力にならないとかではなく、何かあった時の為にという残り方なのだ。援軍が必要となった場合、彼女ならそつ無く状況を把握して最善の行動を取れる。麗羽まで来ているという布陣だから、高順も案外に気を遣っているのが解る。その上に「皇帝僭sy・・・就任おめーっす」とばかりに、贈り物(孫家+高順からも)を携えているので無碍に扱えない。しかし、漢中で顔を合わせ続けるのは互いに気まずい・・・ということで、劉備は高順隊を陳倉に送ったのであった。もう1つ、そろそろ孫策が決戦を見込んで戦力を集中的に集め始めている。高順が蜀漢と連動して動くというのはその一環で、西方が攻めている間に、孫策本隊が侵攻。孫権も軍を率いて西方戦線に参加。つまり、本気で曹操との雌雄を決する、という局面に入り始めている。余談だが、高順は漢中で馬良に「やっほー元気ー?」と個人的に色々と贈り物をしている。本人は「きぅぅぅぅ…」と困り果てていたが、無理やり押し付けた。そんな訳で劉備から距離を置ける、と高順にはありがたい措置(?)だが、ここにはそれと別の厄介事が待っていた。それは・・・「おい、高順! 手合わせしろ! 今度こそ私が勝たせてもらうからなぁー!」「朝からお盛んですねー魏延殿。これで何度目でしたっけ?」血の気の多い人が居た事だった。事の発端は、この地に魏延がいた、というそれだけの事に過ぎない。他に黄忠・厳顔・黄権もいたがしかし、その魏延が一番アレだった。劉備に対してデレデレというか劉備様命と言うか、それくらいぞっこんになってしまった劉備にとっての疫病神(お互い様だが)扱いの高順が気にいらず、喧嘩を吹っかけてきたのである。そこまで劉備に傾倒していない厳顔や黄忠にとっては「劉備や諸葛亮が凄まじく警戒する高順とやら、興味があるな」くらいの扱いでしかないのだが・・・その時の騒動は、このようなものであった。劉備軍の練兵を、練兵場の一角で「ぽけぇ~・・・」と見つめている高順。本来、他国者の高順が入って良い場所ではないのだが、高順隊の練兵も見られているので良いだろう、と開き直って見ている。高順から見ても蜀漢の兵は中々悪くない、と思うレベルだった。何より、兵士の武装率の高さに目が行く。孫家は水軍重視という性質上、鎧はあまり着用していない、そこまで重視していない者が多いせいか兵にきっちりと供給されていない。兜くらいは支給されていても鎧までは・・・という事だ。それはそれとして、ぽけぇ~っと見ていても、外見はあの鎧。しかも側に虹黒もいる。高順を良く知っている人々から見れば「ああ、だらけてるなあ」と解るのだが、それを知らない蜀漢兵士たちはすっげぇ重圧感を感じながら訓練をしている。そこに、ふと話しかけてくる人物が居た。「おーぅ、高順。」「何か珍しいものでもあるか?」「ん・・・? おや、厳顔殿に黄権殿。」厳顔と黄権。劉備陣営に属してからも、重用されている武将達だ。厳顔は目のやり場に困るような服装と、それに恥じない魅力ある女性なのだが、孫家の人々を見てからだと割と普通に見えてしまう。この場にはいないものの、彼女と仲の良い人物に黄忠がいる。黄忠も厳顔同様色気も魅力もある、しかも子持ちの未亡人。その上に二人とも酒好きときている。一度黄蓋殿に会わせてみたいなぁ、気が合うのだろうなぁ・・・と、そんな事を考えている高順である。黄権は男で、こちらは年齢が近い事もあり高順と馬があうのだろう。出会って間もないというのに一緒に行動をしている事が多い。お互いに「特に理由は無いが、いつの間にか仲が良くなっていた」というくらい、相性が良かったらしい。「いやいや、練兵を見ていただけですよ。見てても良く解らんのですが」「ほほー。しかしな、その鎧兜は何とかならんのか? 兵どもが怯えてしまっておるわ」「これですか? んー・・・」「そう言うな、厳顔殿。大体、これくらいで怯える様では先が思いやられるというもの。逆に心の鍛錬に良いくらいだ」「ワシらは怖くないにしてもなぁ・・・」ビクビクしている兵を見て、厳顔は嘆息。と、ズカズカと足音荒く近づいてくる女がもう一人。彼女は高順の側に寄るなり大声で怒鳴った。「おい、お前! 練兵の邪魔だ、消えろ!」「ごめんなさい」「前から言ってるだろ! まだ懲り・・・あっさり謝った!?」魏延である。彼女は、とにかく高順の事が気にいらない。前述の事もあるが、援軍且つ客扱いである事も勘に障るようだ。「ってそうじゃない! 謝罪はいいけどさっさと帰れ」「宿舎にですか? えーめんどいー。俺魏延殿をもっと見ていたいなー」「貴っ様あぁぁー!?」ところが、面倒な事に魏延が嫌っていても高順のほうが魏延を気にいっていた。そのためか、基本的に弱い高順が珍しいくらいに魏延を弄り倒している。魏延が怒れば怒るほど高順が面白がるのだから、いじめっ子に見えなくも無い。周りが魏延を説得しても意味は無く、おかげでどんどんヒートアップしていくのである。このままだと殺し合いになりはしないか、という懸念もあるが、厳顔はどうもそれを望んでいる節があって、強く咎める事をしていない。と言っても、殺し合う結果を望むのではない。劉備や諸葛亮がそこまで恐れる高順がどれほどの男か・・・という事を気にしている。諸葛亮曰く「本人は怖くない。本当に怖いのはその周囲を固める人々。高順という存在が居なくなった場合、とんでもない暴走をする危険性がある」との事だ。だが、怖くないと言いつつも妙に怖がっているのが丸分かりであり、そこまで恐れるという事は、諸葛亮が言う以上には強いと思われる。(漏らした原因だから、とは言えなかったらしい張任に負けたというのは知っているが、さて本当のところは? と思い放置している厳顔であった。それよりもいつも高順の側にいる女性連中・・・特に周倉がいつも魏延と張り合っている事も問題かもしれない。「おうテメェこら。うちの大将になんつう態度とりやがる。テメエその無駄乳へこますぞ!」「うるさい、貴様だって私とそう変らんだろうが!」「ハん。俺ぁいーんだよ。これで大将に悦んでもらってんだから。」「オイ何言っている周倉」「だいたい態々援軍に来てくれた大将になんつう態度してやがんだ? ああ? やんのかテメー」「何ぃ!」顔を合わせてはこうやって喧嘩する。そして、それを趙雲らが「おお、いいぞ。やれやれー」と無責任に囃すから始末に終えない。ほら止めないか、いーや止めんな大将、と言いあっていると魏延が「ぐぬぬぬぬ・・・我慢の限界だー!」と叫び出した。「おやおや随分沸点が低い。そんな怒ってばっかじゃ可愛い顔が台無しですよ」「うるさいうるさい! おい高順、私と手合わせをしろ!! その減らず口を二度ときけない様にしてやるからなぁっ!」「えーやだー何でー? そんなの面倒です」「ほーう? 陥陣営と呼ばれているにしては随分と弱気だなぁ? それとも私に勝てる自信が無いか? 随分と弱気だな、ええ!?」「うん、俺弱いし自信無いし。魏延殿に叩かれたら死んじゃうー」「ぐくっ、おのれぇぇぇ・・・」挑発しても全く効果が無い。どころか、逆に魏延が怒りを増大させている始末。だが、魏延はめげずに挑発を続ける。何とかして手合わせをさせる方向に持って行きたいようだ。「ふ、ふんっ! やはりその程度・・・桃香様が何故そこまで恐れるか全く解らん」「なんで彼女がそこまで評価されるのかが俺にも解らないです」「・・・(ぶちっ)」完全にブチ切れた魏延は、巨大な鉄棍棒・・・自身の得物である「鈍砕骨」(太くて長い黒光りするあんちくしょう)を構えて高順に向かって振り下ろした!「おどぉっ!? 何するんですかっ! そんな巨大な鉄棒で殴られたら死ぬでしょ!!?」「ふ、ふふ・・・ふっふっふっふ・・・コロスコロスブチコロスゼッタイニタタキコロシテヤル」間一髪で避けた高順に、ぶち切れ金剛状態の魏延。一触即発どころではない。(本気で沸点低いなぁ・・・やりすぎた?)でもからかうの楽しいしなあ、と何ら反省はしていない高順である。「あー、待て待てお主ら。ここで殺し合いは困る」「止めないでください桔梗様(厳顔の真名)! こいつゼッタイブチコロシテヤリマスカラミテテクダサイ」「少しは落ち着け、魏延殿・・・」流石にこれは、と思ってか厳顔と黄権が止めに入った。 それからも、挑発を繰り返す魏延とそれを適当にあしらい逃げの一手に徹する高順という光景。埒があかんのう、と思った厳顔は高順にこんな事を言ってみた。「なあ、高順よ。ちとあ奴と試合ってくれぬか」「えー・・・面倒ですし怖いから嫌です」まだギャーギャー喚いている魏延、それを諌めている黄権。二人の姿を見ながら「白黒つけろとは言わんが」と厳顔は付け加える。「いつまでも絡まれ続けるぞ。それはお主にとっても本位ではなかろ?」「うーん。絡まれるだけなら実害は無いのですが」厳顔の提案に乗り気ではない高順だが、ここで魏延がNGな一言を口にしてしまった。「黄権殿離してくれ! 異民族の女を囲うような奴に私が負けるかー!」「おい、それは言いすぎだぞ!」これには黄権も怒鳴るが、高順は魏延に背を向けたまま。「ふう。つまりあれか、西方異民族との混血である馬騰殿(馬超はクォーターになる)や俺の仲間も馬鹿にしているという事か」「え、馬騰殿って・・・そうなのか!?」「解った。今までのものは安い挑発だと思って受け流すつもりだったが、乗ってやる」厳顔からすれば望むシチュエーションになったが、高順側から見ればよい迷惑だ。(あーあ、あの無駄乳やっちまったなぁ)ま、いっか。大将が負けるわけねーし。俺知ーらね、とか思ってしまう周倉であった。~~~時間経過~~~あの後、魏延は「お前が得意としているらしい騎馬戦でやってやる」と上から目線で高順に挑戦状を叩き付けていた。場所は練兵所。高順隊の主だった面々も集まってきてしまったが、見ている者は多くない。高順一党に厳顔・黄権。そして警邏が終わってから来た黄忠。余談だが高順一党は彼女に初めて会った時「どことなく蹋頓に似てるなあ」と思ったものだが、実際に良く似ている。歳も然程変わらない(黄忠のほうが僅かに上だが)し、恵まれた体つき、物腰も穏やか。しかし怒らせると半端無く恐ろしい所までそっくりだ。彼女の娘である璃々(りり)も高順一党によく懐いているし、友好関係は築けている。「こーじゅんにーさん、頑張りやー」「おいおい、大将が負けると思ってんのかよ、李の字は」「んなわけないやん。なー、麗羽?」「ええ。最初から勝負が見えてますものねぇ」「麗の字も言いやがるなぁ。」「凪、どちらが勝つか賭けないか?」「星殿、人の勝ち負けで金を賭けるのは宜しくないと思うのですが・・・」「硬い事を言うな♪」「・・・なら、隊長に全額はりますか」「むぅ・・・それでは賭けにならんなあ」全員で床机に座って好き勝手に寛ぎながらこんな話をしている。(・・・こ奴ら、楽観しておるのぉ)高順に対しての信頼が高いという事でもあろうが、しかし魏延を甘く見すぎではないか?なにせワシが鍛えたのだ、弱いわけが無かろう。厳顔はそう思っているが、しかしこれほど信頼されている高順の力量にも興味はある。黄忠・黄権も同様に、愛馬に跨った二人を興味深そうに見ていた。(ふん、虹黒といったか。随分な巨馬だが。しかし、馬だけで全て決まるわけじゃない)陥陣営などという二つ名があるそうだが、そんな呼び名など自分は聞いた事が無い。それほど高名なら益州にだってその名は轟いていただろう。それを知らない人のほうが多いのだから、所詮その程度に過ぎん。恐れるに足りんと、魏延はそのように判断して馬を駆る。その手には巨大な鉄棍棒、鈍砕骨。そんなもので殴り飛ばされたら、無事にはすまないだろう。突進してくる魏延に反応して、高順、というか虹黒も駆け出した。流石に馬体の大きさに差があって迫力が違う。高順の手にはいつもの通り巨大な三刃槍。これもまた直撃すればただでは済まない得物だ。両者は得物を振るう。そして、その初撃で決着がついたも同然であった。「ちぃっ!??」グギィッ! と金属を叩き付ける音が響く。高順は、魏延が振り下ろそうとした鈍砕骨に対して攻撃を当てそのまま直進。馬の踏み込み、突進速度もだが、攻撃の速さ・威力・重さで高順のほうが勝っている。魏延は完全に圧され、得物を手にしている右手が痺れてしまうほどだった。(ぐくぅ! 何だ、今のは…あんなに重い一撃を繰り出してくるとは。だがまだだ!)まさかの一撃に驚きつつ。流石というべきか魏延はすぐに気持ちを切り替えて馬首を返そうとした。が、そこに厳顔の怒声が響く。「焔耶、何を呆けておるかっ! 後ろじゃ!!」「えっ…あぐっ!」 高順の柄での叩きつけが魏延の背中を打った。彼女が馬首を返すよりも早く、だ。そして、そのまま速度を落として魏延の右側で併走していく。(嘘だろ、こちらはまだ馬首を返してすらいないのに…!)なのに、向こうは既にこちらの後ろを取り背中を打ってくる。その上こちらと並んで出方を伺うだと?「このっ…舐めrうぐぁっ!!」怒りに任せ鈍砕骨を振りかぶるも、振りかぶった右腕をまたも槍の柄で打たれてしまい、鈍砕骨を取り落としてしまう。勝負あり、と誰もが認めるところだが魏延は諦めきれず腰から吊るした刀を左逆手で引き抜いた。「諦めないな…まだ続けるつもりかな」「当たり前だ!」言い返し、魏延は自分の馬の背中から跳躍。すぐ隣にいる高順に掴み掛かって同時に落馬した。「ッ!」「くっ」虹黒の背から鮮血が飛ぶ。魏延の持つ刀の切っ先が僅かに虹黒の背を傷つけたからだが、魏延にはそんなつもりも余裕も無い。しかし、虹黒が傷つけられた事を高順は見逃していなかった。組み合った状態で転げ周り、しかし最後に相手を組み伏せたのは高順だった。組み伏せたというより…魏延の右手を左膝、左腕を右手で押さえつけて左手の手甲を貫手構えにしている。殺る気だ。何とか振り解こうと足掻く魏延だが、高順と目が合ったとき背筋が凍るような怖気を感じた。ヤバい。こいつの目、人の死に痛痒を感じない。目の前で何が死んでも全く意に介さない。相手が同盟者だろうと何であろうと、殺す。後先考えずに、どころではなく後先考えてでも殺す。そんな手合い、そんな目だ。厳顔やら趙雲が「あ、不味いアレ洒落にならん本気で殺そうとしとるぞ」と石をぶん投げて高順を止めようとしたところ。はぷっ。「!」「…あ…?」虹黒が、高順の左腕に軽く噛み付いていた。これくらいの掠り傷で逆上すんな、何熱くなってんだお前。ちょっと頭冷やせよオイ。そう言いたげに高順を見つめる虹黒。高順は虹黒と魏延の顔を交互に見てから「ふむ」と頷き、魏延から離れた。槍を拾い「今日はここまでにしますかね」と言って、虹黒と帰っていく。趙雲達も安堵に胸を撫で下ろし「では、我々も失礼する」と厳顔達に挨拶して、解散となった。まだ倒れたままの魏延に、厳顔は手を貸し立たせてやる。「随分派手に負けたな」「…申し訳ありません」「何故謝る? それよりも、水浴びでもして体を休めておけ。気分を落ち着けてくるが良い」「はい…」魏延は馬を連れ黄忠・黄権にも頭を下げてからとぼとぼと歩いていく。それを見送り厳顔は再度床几に腰掛ける。「実戦であれば何度殺られたと思う」「4回かな」「4回かしらね。下手をすれば回数が増えたかもしれないわね」「ふむ、やはりそう思うか。初手で1、柄で打たれた2、後ろを取り続けることも出来たであろうに、それを捨ててまで焔耶の右側で併走…それでもなお焔耶には勝ち目無し、か…」「併走している間、何度でも討てたという事。彼女達は焔耶を軽く見ていたのではなく、正当に評価しながらも焔耶が負けると解っていた、という事ね」「あれほどとは思わなかったがの」黄巾を、北方異民族を、呂布を、反董卓連合を、それ以外にも数多の異民族を。更に高順は曹操・孫策・劉備…今、自らの国を作った者を全て敵に回し自分よりも強い者達と戦いながらも生き延びている。(諸葛亮め。何が「本人は然程怖くない」じゃ。充分怖いわい)人を見る目があるのか無いのかどっちかにせいよ、と悪態をつく厳顔であった。高順は、虹黒と共に厩に向かい虹黒の使用している場所に入ってから力なく倒れた。その前に虹黒がその場に座り込んだのでそこにもたれ掛ったと言うほうが正しいか。「…はは。やっぱ無理しすぎたかぁ。喀血は無さそうだが、体に力が入らんよ…」「ひひんっ」「大丈夫、心配するな。少し、休めば良くなるから」ふぅ、と高順は虹黒にもたれたまま寝入ってしまった。彼が目を覚ますのは、それから数時間後。(ぺろっ)「お…ん? んぁ」「ひひん」「うー…ああ、かなり寝てたのか…んー…」「何故にこんな所で寝取るんじゃ、お主」虹黒の行為は、厳顔という来訪者を知らせる為であったようだ。「あー…オハヨウございます」「夕方じゃ。」「…ところで、何か御用でしょうか」「ん、魏延の無茶に付き合ってくれた礼をしようと思ってな」そう言い厳顔は手にした徳利とツマミを持ち上げた。「気にしなくても良いのに。ああ、俺は酒駄目なんです。水のほうが良いですね」「そうか? 仕方ないのぅ…ほれ」「どうも」厳顔も座り、二人でツマミを口にしながら魏延についての会話をする。「のう高順、魏延と手合わせをしてどうじゃった?」「どうだ、と言われましても。あ、もしかして俺に実力の値踏みをさせるつもりでしたか?」「うむ。お主には悪いと思ったが」「道理でおかしいと思いましたよ。あの子が暴走するのをいつも止めているのに何で今回は…と」「と言いつつ、実は解って乗ってくれたのじゃろ?」「さあ、どうですかね」「あ奴に戦う術を仕込んだのはワシでな。妹、娘、呼び方は何でも良いがあれを育てたのもワシじゃ。馬鹿保護者扱いされそうなものだが、どうにも気になってなぁ」「俺ごときが評価していいもんじゃないと思いますけどね」「そう言うな。色々と聞いたぞ。孫家に、将来有望な者を幾人も推挙したとか、人材を見る目は確か、とな」「誰から聞いたのやら。じゃあ遠慮無しに言わせて貰いますがたいしたもんですね。彼女は間違いなくこれからの劉備軍を引っ張る武将になりますよ」「理由はあるのかの」「そうですねー…彼女、戦略や戦術に築城を盛り込んだりしません? あと、地図上だけの情報だけじゃなく、自分でそこらを散策したりとか」「ふむ? 確かに地理には詳しかったりするな。地図には載ってないような脇道を知っていたり…築城はなんとも解らぬが」「どこら辺にどれだけの勢を置けるか。ここいらは間道があって、とかも頭の中で把握しているんじゃないでしょうかねぇ。自分で情報集めしているみたいですよ」「あ奴、いつの間にそんな事を…」「防衛も攻撃もこなせます。戦略はともかく戦術では中々かと。ただ…問題が2つ。悲しい位に経験不足です。敵味方万を超える大戦なんて、孫家が攻めた成都付近の戦いが最初で最後でしょう」「う、うむ。少数の戦いなら幾度も経験しておるが…そうか、やはり経験が不足しすぎか。」「戦乱の時代に身を置く以上、時間が経過すれば解決できますけど、もう1つが問題でして。与党と言いますか、自分を支持してくれる基盤が無い、と見ますが如何です」「ぬぅ…痛い所を突く。確かに我々益州派は一部を除いて冷遇されておる。官職であれ何であれ、上位にあるのは殆どが荊州かそれ以前から劉備殿に仕えていた者ばかり」肩身が狭くてのー、と厳顔は溜息。「で、彼女は政治的な支持基盤とか無いでしょう。荊州以前からの臣と仲良く出来るならともかく、あの人誤解から嫌われるような感じで…どうせ、反骨だの言われて諸葛亮とか楊儀とか」「………確かに諸葛亮は魏延を反骨呼ばわりして嫌っておるし、楊儀などはあからさまに「この庸奴め」と馬鹿にしておる。じゃが、何故それを知っておるのだ」「そんな値踏みするような目で睨まれても困りますよ。俺だってそれなりに情報は収集してますよ? ま、このままでは凄まじく苦労するでしょうね」なんたって、ソース俺と言うか実体験ですし、とは言わない高順である。「そういう事にしておくか。しかし、意外にも評価が高かったの」「彼女は伸びしろでは劉備軍では随一ですよ。自分より強い相手との戦闘経験が足りないだけです。相手が欲しければいつでも言ってください。俺の回りにも話しをしておきますよ」「良いのか? 趙雲や沙摩柯にも相手をして貰えるのは有難い」「あの二人に勝ちたければ俺に勝てないと無理っぽいですがね。彼女ならすぐに俺を超えますよ」無茶が出来ない体なのに、高順はこんな約束をした。先が短いから、と自棄になったわけでも無い。何となく、だ。正史であれ演義であれ非業の死を遂げたという知識もあったし、からかい甲斐のある、放っておけない何かを感じている。おかげで、高順や趙雲は幾度と無く魏延に挑まれていたがその甲斐あって、彼女は少しずつだが力押し以外の駆け引き…別の言い方をすれば、戦う時に取り得る選択肢を増やしていった。後年、魏延は「腹立たしいが、アイツらが私を鍛えてくれたのは事実なんだよなー」と述懐している。時々高順隊を懐かしむ発言をしており、最初は悪い印象だったようだが年を経てそれも失われたようだ。「ま、それはともかく…街亭に向かうのはもう少し先になりそうですかね。総大将はどなたが?」「…えー、それは、じゃなぁ…」「厳顔殿でしょうか、黄忠殿でしょうか。兵数に不安はあるでしょうが、俺達も随行しますし」「…聞いても怒るなよ?」「はい?」「今はここにおらぬが、総大将は馬幼常。あんな幼い娘が何故に総大将なのやら…これだから諸葛亮は…」「………………」\(^o^)/馬幼常と聴いた瞬間「あ、もう帰りたい」と心の底から叫びたくなる高順であった。~~~楽屋裏~~~お待たせしました…PC壊れるの辛いですTT あいつです(挨拶PC変えたその日に垢ハックされてキャラ装備というか色々失うわドラゴンズクラウン発売されるわEDF4出るわゴッドイーター2発売日発表されるわ艦これで以下略まだアマゾンのレベル10くらいです。ハハハ感想などを見ていると、曹魏ルート希望みたいば声をチラホラ見かけますね。最初はどこの勢力でやるかは…曹魏・孫呉・途中から袁家も視野に入れておりました。今は丁原ルートも考えていますけど。蜀? んなもん思考の片隅にすらねえよ(素で、これはどこで書いたかは忘れましたが、私は「袁家ルート以外で高順は天寿全うできませぬ」みたいに明言しております。一応、魏と呉における終わり方はルート確定するまでには決めてあったのです。後出しの丁原ルートも長生きは出来そうですけど、魏でも呉でも長生きは出来ません。どころか、魏ルートだとかなり早死にするのが確定しています。官渡前後か最中ですかね。そこが魏ルート高順くんの死に場所となります。さて、山登りの結果はどうなるでしょうか。そもそも山登りにならないかもしれませんが…それではまた次回。~~~番外編・武陵的日常 「凄いよ! 罵倒…じゃない、馬騰さん! 編」~~~少し時間は遡って…武陵。この地は現在馬騰の支配領域として機能している。その地は高順も出入りしており、馬家だけでは処理できない案件があったりするとそれを手伝ったりと言う事も多い。馬家、と言うよりは馬超の手が回っていないと言い換えたほうが良いのかもしれないが、ともかく高順一党が滞在している事が多い。そして、高順の部屋に馬騰が「相談がある」と尋ねてきて…「資金を調達しても、開発に回せる人が足りませんか」「ふむ…こればかりは何とも言えませんね」二人は「はぁ~~~…」と溜息。別に変な事をしている訳ではなく、周辺地域の開発計画の見直しをしていただけだ。資金は問題無い。材料も買い集めるからそれも良い。しかし開発に割ける人の数が足りない。開発して街を広げても住む人がいない。この時代はとにかく人が足りない。異民族問題、終わらない戦乱。勢力がほぼ3つに絞られて小康状態になっているとは言え、人口問題はどうにもならない話だ。(しかし…馬騰殿って妙なお方だよなぁ)着物の上からでも解る「ぐらまらすばでー」をチラ見しつつ、高順は思っていた。貞操観念が強い、というのは以前のおっぴろげ事件(?)で…あれは単純に恥かしいだけの物でしかないが、多少は解っている。なのに、その貞操観念が発揮されない事がある。どうも、今は亡き韓遂の影響のようだ。韓遂の「ちょーきょー」のせいで、変に常識に疎いところがある。その最たる例が口づけという行為にあまり抵抗が無い。勿論、自身が信頼する者にしか行わないが、男女関係無くやらかす。これは気の摂取という問題があって…楽進も可能だが「経口摂取」を行えるというのが実情で、気が不足すると口づけして相手から吸収する。そんな変な癖が馬騰にはあった。馬超や馬岱もこれの被害者で、初接吻は全て馬騰に奪われている。亡き馬鉄・休姉妹もその範囲内である。潼関の戦いでそれをしなかったのは、回りも疲労している中でそれをやると戦力にならない、と理解していたからだ。前置きが長くなったが、ここまでが前提である。信頼している者には接吻吸収をする。となれば、高順一党も一部その範疇内に収まってしまう。そして、その被害者第一号。楽進。貴重な気の使い手、そして馬騰の領地に滞在していると組み手を行い気を消費する。その上信頼している高順一党。つまり、なるべくしてなった被害者、という事になる。楽進は接吻吸収された時に大混乱。馬騰は馬騰で「美味しかったです。ご馳走様♪」とご満悦。後に高順も接吻吸収されてエロじゃなくてえらい事になっている。馬騰本人は「信頼する人だけですが駄目だったのかしら…?」とよく解っておらず、不思議そうにしていただけだったとか。また、被害を被りかけた存在としては虹黒も入る。~~~厩にて~~~「はい、どうぞ」「♪ (もっしゃもしゃ)」馬騰が虹黒に餌を与えている。普段は高順が行うのだが、彼が忙しい場合は他の人が実行していたりする。虹黒がある程度懐いていないと不可能だが、馬家の面々に関しては高順と同じ匂いを感じ取っているのか、すぐに懐いている。今回はたまたま馬騰がエサやりをしていた訳だが、虹黒が嬉しそうに食べているのを見つつ、彼女はこんな事を言ってしまった。「虹黒さんって」「??? (もきゅもきゅ」「美味しそうですよね」←気の性質的な意味で言った「!!? (ビックゥゥゥゥゥゥ!!!」←馬刺し的な意味で受け取った「こーこくー? ご飯ー…あ、馬騰殿。」「あら、高順君。もう終えましたよ」「これはどうも。すこし腹ごなししようか、虹黒。遠乗りしよう…っておいどうした? 何で俺の後ろに回りこむのさ」ヒヒン…∈・`(・ω・;)ドウシタノ (´∀`* )アラアラウフフ虹黒さんが、馬騰さんに一抹の恐怖心を抱いたようです。~~~馬刺し編、完~~~やっぱりどこか変わってるんだよなー、とか思い出しながら話をしていると、不意に扉が「ズバーン!」と勢い良く開け放たれた。「え?」「はい?」扉を開けて入ってきたのは闞沢。普段着だが両肩に縄を何重にも回して、両手にはその先端、投げ縄状にしたものを持っている。どこのインディ・ジョーン○かと思う高順を他所に、彼女は口から「ごふー」と黒い瘴気…? ぽいものを吐き出して、部屋の中を見渡す。「失礼致しますぅぅぅぅ馬騰様ぁぁぁあ…あと、お久しぶりですぅ高順様ぁぁぁ………」「え、あの…うん。闞沢ちゃ…さん? その、どうかしたのかその格好。捕り物でもするのかい」「…闞沢ちゃん。まさか、娘が何かやらかしました?」「はいぃぃぃぃぃ…「また」「またァッ!!!」 仕事放っぽらかして逃げましてねぇぇぇぇっ」(うわー…)(あのお馬鹿娘…)「だからあれほど仕事を溜めないように、と何度も言いましたのにぃぃぃ…馬超様の居場所をお知りではないでしょうかー…匿っているのなら出して下さいお二人の為になりませんからねぇぇぇぇぇ」怖すぎです。腕白でも良い、逞しく育って欲しい。ではないがこれは逞しいという方向性からずいぶん逸脱してしまっている。「ここには来てないけど…馬騰殿は見かけ…あ」ふと、窓の外を見た高順。下では馬超がこっそりと厩方面に向かっているのが見て取れた。ここは城ではないが、政務を執る場所なので高楼造りである。そして、彼らの居る部屋は上階に位置している。「闞沢ちゃん、あれ」「!!!」高順と同じく、窓から下を見下ろす闞沢は「見 つ け た。」と呟いた。それと同時に先ほどと同様に扉が「ズバァンッ!」と勢いよく開け放たれ、文官連中が数人雪崩れ込んでくる。『はぁっ!?』と驚く馬騰・高順。そして平然としてそちらに向き直る闞沢。文官達はその場で膝を折り、拱手した。「失礼致しますっ! 闞沢殿ぉ! 馬超様が発見されたとの報告がぁっ!」「ええ、ええ。こちらでも確認しましたよぉぉぉぉ…それでは、馬騰様、高順様…続きを楽しんでくださいねぇ」「続きって…」「別におかしな事をしていたわけでは…」「無礼の段、お許しくださいねぇ…それではぁ」闞沢を先頭とした文官達が退出、扉が閉められたその瞬間。『シャオラァァァァァァァァァアァアアアアァッッッ!!!!!!』闞沢らの雄たけび(?)が響き渡り、轟音が…多分、走っていく音だと思うのだが…それがちょっと信じられない速さで遠ざかっていった。「まさか、今から捕まえに?」「間に合うわけが…って! 馬騰殿、あれ、あれ!」窓から下を見ていた高順の言葉に、馬騰も立ち上がって隣り合って確認する。「嘘…え、ええ? もう下に降りて…え?」「すげー…投げ縄で馬超殿捕まえて引き戻してグルグル巻きに縛り上げている…」~~~馬超視点~~~「うわあああああっ!? なんであの場所から届いてっ…」「さーぁ馬超様ぁ。もうどう足掻いても絶 望ですよぉぉぉ。お仕事が待っていますからねぇ、今回もきっちり終わるまでは何日でも部屋に篭っていただきますよぉ!!」「ひえええええっ!? 少しで、少しで良いから息抜きさせて「駄目です! そうやって何度逃げて何度同じ事を繰り返しているのですか!!!」「は、はうう」「他の皆様もお待ちですよぉぉぉさぁ一緒に帰りましょうねえええええ」闞沢と行動を共にしていた文官連中が、素巻かれた馬超を抱え運んで行く。~~~連行終了~~~「………」「………」頼もしくなったのか、なりすぎたのか。あまり考えたくない。~~~楽屋裏その2~~~えっと…うん、ごめんなさい(何この日常は127話より少し前のお話ですね。前に言った変な癖、をつけて見た訳ですが…どうしてこうなってしまったのか。最初は壊滅的な方向音痴、というお話から始まるはずだったのに…