【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第120話孫権・劉璋の軍勢の睨み合いは長く続かない。両軍、長期戦が出来ないか、或いはしたくない事情があるからだ。孫権としては長期戦を避けたい、という事。劉璋は劉備が来るまでの長期戦こそ望ましいが、長期戦に耐え得るだけの兵糧が無いという事。もっとも、兵を率いている厳顔の性格を思えば延々睨み合いなど出来よう筈がない。劉璋の動きが慌しくなってきた事、間諜からの報告などを鑑みて、孫権も「すぐに攻めて来る」と察知、好都合とばかりに全軍迎撃の指示を出した。その翌日早朝。ついに、両軍は戦端を開いたのである。が・・・既にこの日の戦いは終了し、軍を一時的に退かせた状況。しかもこの初日の戦で高順は重傷を負ってしまっていた。~~~陣幕にて~~~「くっそ、孫権殿がもう少し早く救援命令出してりゃなぁ・・・いちち」高順は、自分の陣幕で裂傷だらけの自身の体に包帯を巻きつけてもらっている最中であった。巻きつけているのは周倉で、楽進が癒術で傷を塞ごうとしているのだが、なかなか傷が治癒されない。「張任、つったっけ、あいつ。まさか楽の字と同じ気の使い手だったなんてな。なんだってんだよあのジーサン」「世界は広いからなぁ・・・馬騰殿もそうだし。いたたっ」「駄目ですね、どうにも治りが悪いようです・・・どうしたらいいのか」三者三様の反応である。「・・・紀霊殿を助けることが出来たのは運が良かったよ。何せあの厳顔・魏延・張任に囲まれた状態だったからなあ・・・」やれやれ、と高順は痛みを気にしながら沙摩柯の報告を思い返す。戦が始まり、右翼に配置された陳武・董襲と中央の孫瑜は最初から攻勢に出て、こちらは首尾よく劉璋軍を押していた。その代わりと言うべきか、ある一定の所までしか押し込んでいけない。理由は、劉璋軍の装備が思った以上に良い事だった。劉璋軍の兵の錬度はそこそこだが、数が少ない代わりに末端の兵にもそれなりの装備が行き渡っていたのだ。逆に孫家は陸戦も視野に入れているとはいえ、水上戦闘をメインにしているせいか兵の装備は軽装が多い。その為に兵士が苦戦してしまっている部分もある。そんな中、左翼に配置された紀霊隊の動きが思わしくない。これは紀霊に問題があったのではなく、紀霊が相手をした部隊が悪かったというほうが正しい。劉璋軍中央部隊に立てられた旗は「陳」で、右翼は「呉」。これを伝令から聞いた高順は、中央は陳式、右翼は呉蘭か・・・と、推察していた。ただし、左翼に配置された部隊旗は「厳」。この左翼こそが劉璋軍の主力と言うべきである。事実、紀霊隊は中央・右翼と違って攻めあぐねており、まごついている間に「魏」と「張」旗を立てた部隊に囲まれて苦境に陥ってしまった。それらを知った高順はすぐさま孫権に「紀霊隊救援許可・黄蓋隊前進」を求める伝令を送ったのだが、孫権は「左翼が苦戦していても、他の隊で穴埋めできるでしょう」と、微妙に乗り気ではなかった。後ろから劉備が、という事は解っていても、面子とかそういったものに振り回されやすい面のある孫権である。確かに、まだ戦が始まったばかりでそこまでの戦力を投入するというのは「焦っている」とか「余裕が無い」と敵に見られる可能性もあるのだが・・・孫権は敵の主力は中央に、と思っていたようで、当てが外れた皺寄せと言うべきかも知れない。その間に状況が悪化して援軍を待っているだろう紀霊隊を心配しつつ、孫権からの返事が遅い事に腹を立てた高順は再度伝令を送り「俺の隊は出ますけど良いですね!?」と自己判断での出撃許可を申請。返事を待ってる時間はない、と高順は趙雲と李典の部隊を残して進撃。(このせいで命令違反だの何だのと、難癖を付けられることになる)趙雲は中央部隊の押さえとして、李典はこの先行われるであろう成都攻城の投石機の調整やら何やら。投石器部隊は虎の子であるが、前線部隊が「どうしても」と言う場合は構わないから出撃しろ、と言ってある。右翼に関しては、特に心配をしていない。こちらはこれからを期待されている部将たちの混合部隊だが、皆戦功を欲しているし、何かあっても後陣の黄蓋がいる。兵力的に少々頼りないが、戦力的には他に負けていない。また、孫権が遊撃隊として張承・歩隲・諸葛瑾に兵を与えており、こちらは右翼を側面から突こうとしている。中央は孫瑜ら兄弟が率いており、兵数も多く騎馬隊も(こちらは少数だが)擁している。こうなると一番苦戦するのは紀霊だ、という事になるが、そもそも敵主力が中央に来るであろう・・・という予測が外れてしまった為で、これは誰かのせいと言うわけでもない。どちらかと言えば、孫権の反応が微妙だったことが状況を悪化させている感じだ。ともかくも、高順隊は左翼紀霊隊へと向かっていた。もっと言えば、紀霊隊側面に入り、中央部から送られてくるかもしれない敵援軍に対処できるように。送られて来ないのなら、そのまま紀霊隊に合力して対処すれば良いだけなのだ。邪魔無く行ければ間に合うか、と高順は大雑把に頭の中で計算していた。楽進は進撃中に「孫権殿は少々判断の遅いところがあるようですね」と、高順に愚痴を言っており、それはその通りだと高順も思う。「時間をかける事は出来ないと言っておいて、最初から全力を出さないというのは・・・」「相手の出方も気になるんだろうな。今ここにいる部隊は全員が全員孫権殿の子飼いじゃない、いわば借り物に過ぎない。黄蓋殿・甘寧・呂蒙殿・子飼い連中に孫家の面々はともかくも、他はな・・・」孫策と孫権のどちらを重んじるか、っていうところもあるんだよ、と高順は投げやりに楽進に答える。「ここでも派閥、ですか・・・鬱陶しい問題です」「だな。んなもん、天下統一なり何なりした後にやれば良いものを。」「けどさ、大将。そうなる前に自分の足場をきっちり築かねーと後々ヤベェって思ってる連中が多いって話なんだろ?」直ぐ隣を走る周倉が話に参加してくるが、高順はそれにも律儀に「そうなんだよなー」と返事をする。天下統一がいつになるか全く読めないが、そうなれば武官の大きな活躍所は外地の敵、異民族くらいしか存在しない。後は官吏、政治を出来る人々が活躍する時代になるから、それまでに・・・という気持ちは判らないでもないし、どんな時代でも組織に属する人々にとっては当たり前の感情だ。が、(んなもん考えるより目の前の事を何とかしてくれよ)と、高順のように不満を持つ者がいるのは、これもまた当たり前なのだろう。「なぁ、大将。大将もさぁ。その、そろそろ考えるべきなんじゃねーかな?」「急に何だ、周倉」「大将って、今でこそ重用されてるように見えるんだけどさ。周りから危ぶまれてるようにしか見えないんだよ・・・」「・・・ん」周倉の言いたいことは、高順にも楽進にも解っていた。孫策や孫権、上層部も部分的にだが高順には気を遣っている。その割に酷使されてる感じはするが、それでも外様という立場から考えれば信じられない大抜擢、そして発言力もある。高順も自身の立場とある程度の出世を考えないと、いつどんな事になるか判らない。周倉の言いたい事はこれに尽きる。「それならそれで良いけどね。そしたら遠慮なく隠居して静かに暮らすさ・・・あ、張遼さんとか華雄姐さんとか放って置くのは不味いか」「でもよー。どっちにしても周りが放っておかねぇよ。大将に復帰されたら困る輩とか、色々いるじゃん。兵を差し向けられたらどうすんのさ?」「そんな意見もあろうかと!」「わっ!?」不意に蹋頓まで話に参加してくる。「烏丸は皆さんを受け入れます。高順さんさえその気であれば丘力巨を娶らせて」「いやいやちょっと待って! それは話が飛躍しすぎですよ!!」「人質も同然の臧覇ちゃんに馬騰様、他の方々も拉tじゃない、連れて行きさえすれば憂いなど何1つありません!」「ありすぎだ!? 大体、そっから先はどうするんですか。それに、烏丸は今曹操の影響下にある筈」「ええ。それでも、この国の天下獲りに左右される事の無い自由な生き方は出来るでしょう。高順さんには、そちらのほうが似合っていると思いますよ?」「むっ・・・」「高順さんがその気なら、鮮卑を始めとした北方諸部族を一統してみますか?」私は構いませんよ? と蹋頓は笑って恐ろしい事を言う。「一統、ね。その後に遼東でも攻めて更にその南・・・高句麗にでも攻め入らせるつもりですかね?」「あら、良い提案ですね。まるで、この国以外の場所に天下を求めるような」「本気にされたっ!?」「・・・この国、以外」冗談のようなやり取りであるが、この国以外の天下、という蹋頓の何気ない言葉に、楽進や周倉が意外な反応を見せた。彼女達にとって、天下と言うのは漢帝国の範囲内のものだ。その範囲の外に天下を求める、という一言に、二人は軽いショックを受けたようだ。今までも似たような発言はあったかもしれないが、天下国家、というものを強く意識したことなどは無かった。「誰にも仕えなかった高順さんが、自分の国を立ち上げる為に一旗挙げる・・・ふふ、とても素敵」「あー、その・・・」「解っています。あと少しで紀霊殿の陣に到着、すぐに戦闘・・・留賛の面倒も見てあげないと」そう言って、蹋頓は馬の速度を緩めて高順の傍から離れて行く。「はぁ・・・蹋頓さんも、色々厄介な事を。・・・留賛も今回初陣だからな、無茶しなければ良いけど。さて、もう紀霊殿の陣が見えているな。皆、頼むぞ」「え? え、あっ」「う、ういっす!」「・・・。どうしたのさ?」どうも反応の遅い楽進と周倉であった。高順隊は紀霊隊右側面に到達するも、この時点で敵部隊によって紀霊隊は各所で分断。部隊単位を保てているかどうか、という状態に追い込まれていた。危機を理解した高順騎馬隊が攻撃を開始したので、劉璋軍が一部後退。ある程度の救出は出来たが、紀霊の兵を捕まえて聞いてみると、前線で紀霊本人が孤立してしまったのだという。そして、紀霊隊と対峙した部隊の旗は「厳」「魏」。それと敵本隊からこちらの側面に攻撃を繰り出してきた「張」旗。これを聞き、高順は魏以外の武将が何者かを直ぐに理解した。それらが相手ではさすがに紀霊一人では分が悪すぎる。(しかし、魏? 劉璋の部下に魏姓の武将が居たかね?)思い当たるのなら、魏続、魏攸、魏邈(ぎばく)だが、魏続以外は良く知らないし魏邈はもっと後の時代の武将だ。(となれば、紀霊殿を苦戦させるほどの魏姓。いや、まさかな)それだけの勇将猛将の類であれば、一人だけ心当たりがある、と高順は虹黒を急かして駆けさせた。その思い当たりとは、この時代には益州に居ないはずの魏延だ。当たらなければ良いが、これは不味いかも・・・と思ったところ、両軍入り乱れての戦場に、小柄な老人が見えた。その老人、鎧兜すらつけておらず、まるで散歩しているかのような雰囲気である。なんだってこんな場所に、と思いつつ高順は、その老人に声をかけようと虹黒を近づけさせた。「おい、そこのお爺さん、どっちの陣営か知らないが・・・」「ひょ? おお・・・敵将か」敵将? と聞き返そうとした高順の体が「ボウッ!」という音と共に後方に弾き飛ばされた。「大将!?」「ちぃっ!!」周倉が走り、地面に落ちる前に高順の身体を抱き止める。件の老人は、楽進が気弾で牽制して遠ざけており、この隙に親衛隊が付近の敵に挑みかかって時間を稼いでくれていた。「くぅ、あ・・・ゲホッ。今、何が・・・づぅっ」体の彼方此方が痛む。どうも、また傷が開いたらしい。しかも、高順の右肩部の甲冑に盾(ガンダムシー○ドっぽいアレ)も吹き飛んでいる完全には解らなかったが、地面から虹黒の上方に瞬時に飛んだ老人が、自分の右肩あたりを小突いた・・・ように感じた。鎧を通過して内部に攻撃を仕掛けるタイプの、気を使用した攻撃かもしれない。ぐう、と苦しむ高順を周倉が支え、すぐ傍に寄ってきた虹黒がその場でしゃがみ込む。乗れという事だろう。楽進も高順に癒術を施して止血を行う。「くっ・・・。すまんな、周倉、楽進。虹黒、お前もありがとう」「ういっす!」「いえ。しかし、右肩が・・・何とかしないと」「ひひんっ」虹黒にも礼を言ったのは、先ほどの攻撃の際に彼女が僅かに動き、そのおかげで完全命中とならずに済んだ。ともかくも、虹黒が動いてくれなければ、攻撃が胸に命中して死んでいたかもしれない。代わりに右肩に感覚が無い。衝撃の強さからして、関節が外れたか骨が折れたかしているだろう。しかも、胸の傷が右側から裂けて出血もしている。勝機と見たのか、先ほどの老人が「ヒョーホホホホホッ!」と笑いながら飛んできた。かなりの距離遠ざけたのに、それをものともせず。兵が矢を放って落とそうとするが、早すぎて当たらない。高順がこの部隊の長であると見て狙って来ている。「ヒョーヒョッヒョ! 弱すぎるのぅ! 貰うたぞ、小僧ー!」「化け物か何かか、あの爺さん・・・」周倉に抱きかかえられたまま呻く高順。見る間に近づいてきた老人は、高順に向かって飛び蹴りを仕掛けて行く。逃げるべきだが、虹黒と、高順を抱えている周倉も動かない。「弱い奴を集中して狙うのは常套だ・・・けど」逃げない高順達の両隣を一騎ずつ騎兵が駆け抜け、飛び蹴りを仕掛けてきた老人を鉄疾黎骨朶(てつしつれいこつだ)と矛で迎撃。弾き返す。「ひょぉっ!?」 その二騎は、沙摩柯と蹋頓。(こっちは、俺を守ってくれている人々の方が強いんだよ。)自身を除く将兵の強さ。あまり他人に誇れる事の無い高順でも、これにだけは絶対の自信を持っていた。飛び退く老人を見て、沙摩柯は不思議そうに呟く。「脚をへし折ったと思ったが、黎骨朶を蹴って退くか。随分硬い脚だ。」「楽進さんや馬騰様が使用する・・・硬気功でしたか? あれと似たような感じかもしれませんね。」「ふむ。どうする」「貴女は行ってください。ここに残るのは私と、与えられた勢で充分。」「なら、いつも通りだな。楽進と周倉に任せて・・・いや、今回は私が行くべきか。」「そうですね、高順さんは・・・退いて頂いた方が良いでしょう。あれではまともに戦えません」「しかし、お前はともかく娘の方は大丈夫か?」「留賛ですか? ・・・確かに未熟ですが、高順さんに「まずは無茶をせず、生き残ることだけを目標にしなさい」と言われていますし、大丈夫でしょう」「そうか。なら良いさ。では行くぞ!」沙摩柯の号令に従うかのように、隊は老人を無視して戦場を渡っていく。高順も虹黒の背に乗せられており、彼と配下の兵は逆送。それに続いて周倉らも走っていく。楽進は高順の隣で癒術を続けていたが、高順に「沙摩柯さんと行け」と言われて渋々そちらに向かった。突進を始めて直ぐに、沙摩柯の部隊が優勢となった。数の差もあって突撃を防ぎきれない劉璋軍が散らばって行くが、それでも数はそれなりにいる。紀霊の兵もいるから、両軍それほどの戦力差は無いが、残ったのは蹋頓とその配下、騎・歩の混合部隊。紀霊隊の残存兵と合わせて3千程度だろう。「むぅ、この張任を抜けると「思いますよ」ひょいっ!?」阻止しようと動いた張任だが、蹋頓がそれを遮り矛の一撃を繰り出す。「お、おっそろしぃお嬢さんじゃ・・・老人には優しくするもんじゃろう!?」「老人を主張したいなら、それらしくなされては如何でしょう? 全兵攻撃を開始、殺しなさい」号令と共に兵は攻撃を再開。その中には留賛の姿も在り、両手に短矛を持って突撃していく。片足が義足とは思えないくらい、軽やかな動きだ。それらを見届けて、蹋頓は落ちていた高順の盾を拾い上げて左手に構える。「楽に死ねるかどうかは、ご老体次第です。ま・・・四肢が無くなる位の覚悟をなさってください」「本当に恐ろしいのぉ・・・」張任は怖がっても居ない様子で構える。趙雲らのいる陣まで退いた高順は、何とか自力で虹黒の背から降りようとしたが、体が動かない。周倉に支えられ、ようやっと降りる事ができたが、その支えがないと一歩も歩く事ができない。趙雲や李典らも「何事か」と様子を見に来たが、高順が負傷した事を教えられ、陣幕まで連れて行き休ませる事にした。しかし、鎧を脱がせて傷を見た瞬間、「これは・・・」と誰もが絶句した。高順の思ったとおり、体にある古傷が開いている。それもかなりの数で。小さなものはともかく、胸の傷やら何やらが大きく裂けてしまっているのだ。今でこそ出血は少ないものの、癒術をしていなければ出血多量で死んでいたかもしれない。これでは戦闘続行不可能と判断されても仕方ないが、「皆が戦ってくれているのに、俺はここで何も出来ないのか・・・」と、高順は悔しがっていた。悔しがったが、出血のせいで意識が途切れてそのまま寝台行きとなってしまう。その後、目が覚めたのは戦闘が終わった夜。一通りの報告を受けたのが、つい先ほどという事になる。報告内容は、というと。・紀霊本人は無事。魏延相手に互角の戦いをしたものの、厳顔に追い詰められたところで沙摩柯が救援。紀霊は負傷しているがまだまだ元気だとか。・この時に兵を収容。厳顔は魏延を後方に下げて陣の強化を図る。 ・沙摩柯本人は厳顔と一騎打ち。ただし、勝負はつかず。・楽進隊が魏延を追撃・戦闘。だが、放った気弾が後頭部に命中したせいで魏延轟沈。楽進隊はそれを放置し後陣に襲撃を仕掛ける。・蹋頓は張任と決闘。硬気功での防御で手が出ないと思われたが、張任の頭を盾で殴り続けるわ、目に矛先を突き入れようとするわ、耳に指を突き入れるわのやりたい放題。・さすがに張任、びびって飛んで逃げたが、それに蹋頓が矛をぶん投げて命中。ただし尻に。蹋頓も傷を負うが軽症。・この後直ぐに両軍後退の銅鑼が鳴った為、撤退。・報告、そして回想。←今がここ。「・・・は~~~・・・俺が傷負ったくらいで済んで良かった。しかし、なぁ・・・・」自分達が挑んでいったのは、劉璋軍精鋭部隊である事は確実だろう。なのに、これくらいで済んだのはまだ幸運だったかもしれない。「あれ、何やらかしたのさ・・・?」「何、とは?」「いや、鎧とか武器とか兜とか。あれ、劉璋軍の軍需物資じゃないの?」高順が、陣幕の出入り口に目を向ける。松明で照らされているので解る程度の明るさだが、兵士が鎧やら何やらを担いで行き来をしているのだ。その鎧に見覚えが無い、というか孫家で採用されているのとは違うので一目で解るが、高順はそれを不審に思ったのである。「はぁ。その、蹋頓殿とその兵が持ち帰ってきたみたいです。「戦利品ですよー♪」とか」「なんという強奪。」そこらへん、異民族的な思考なんだよね・・・と、高順は溜息をつく。「戦利品はともかく、どうしたものですかね、あんなに。」「使える物は使えば良いんじゃないかな? 孫権殿にお伺いを立てないといけないだろうけど」「状態が良いのは持っていかれそうです」勝手に使えば色々誤解されそうですしね、と楽進が付け加える。「けど、状態が悪いのは勝手にしろ、と言われると思うんだ。それを李典に回してあげれば良いよ。彼女なら廃材でもちょっとしたもの作成しそうだし」「なるほど、確かに」「加工すれば投石器の強化材料にも転用できるかもしれないしね。あれって鉄製多いんだろう?」「ええ。劉璋軍は雑魚の集まりか、と思っていましたが・・・こちらが思う以上に装備供給が成っているのですね。一般兵ですら良い装備をしています」「まぁ、そこはな。ここいらは良質な鉱石資源があるみたいだから、そのおかげだと思うよ。成都奪えたら、その辺の権利少し貰いたいなぁ・・・と思う。」そしたら、もっと良い装備作成して皆に配布できるし、李典にも良い材料回せるかもしれない、と自分の体の事などお構い無しに考えてしまう高順である。この日の戦いはこれで終了。両軍被害は・・・孫軍 劉璋軍兵士:死亡千ほど。 兵士:死亡千数百。 負傷:その倍。(紀霊隊が多くを占める) 負傷:三千ほど(中央・右翼及び左翼陣被害)武将:死者無し。 武将:死者無し。 負傷:高順(重傷) 負傷:張任(尻) :紀霊(軽症) :魏延(後頭部にたんこぶ、あとプリケツ) :陳武ら(これも軽症)一応、孫家が若干有利であるが戦いは膠着しつつある。この後に行われる軍議で高順が後方に移動させられたりと色々あるのだが、ここらで2つの出来事が発生する。1つ目は、赤壁の負傷者治療が一段楽したので、戦の臭いのする益州へと華佗が向かっているという事。2つ目は。劉備が益州へ近づきつつあるという事。~~~楽屋裏~~~明けましておめでとう御座います石投げないで! あいつさん気持ちよくなっちゃうから! Mだからアへっちゃう! あいつです(挨拶ちゃんと書きたかったのですけどね、張任と蹋頓、厳顔と沙摩柯、楽進と魏延の戦い。ちなみに、魏延が無視された云々は、反董卓連合のときに無視された惇さんと同様の状態です。楽進が討たなかったのは、気弾一発で沈んだので「何だ、雑魚か」と無視されてしまったのでしょうwなんでこんなに時間がかかったのか白状しますと・・・ この120話、3回ほど書き直してます(吐血終わり方も全く違いました。紀霊戦死、高順も左腕を根元から失う重傷。とーとんねーさんが激昂して張任抹殺、とか。しかも高順が徐々に精神を病み始める、とか救いの無い話に(いつの間にか)なってしまったので「いやいやあかん、これあかんて!」と2回リテイク・・・。やっぱり、ご都合主義でも不幸な結末は無しにしたいというのが信条だったりしますが、このへん読者さんはどうなんでしょう?不幸な結末のほうがいいって人も多いかなぁ・・・あと、高句麗云々の話は「いらねーよ」で続きが無くなった袁紹伝でちらっと出てきたであろうネタを、こちらに転用したものです。こちらではこれ以上深くは関わらないのでご安心(?)を。~~~ちょっぴり番外~~~高順の陣幕にて。治癒が終わった翌日の事である。陣幕には高順、楽進。そこに、蹋頓が「高順さん、お怪我の具合は如何ですか?」と尋ねて来たことで話が始まる。「ああ、蹋頓さん。ついさっき終わりましてね。痛みはありますけど」包帯を再度巻き、鎧を軽装鎧に変えてる高順は寝台に座ったまま答える。傷は上手く塞いだものの治りは悪い。それは伏せたまま・・・というか、言うほどのことでもないと思って言わないが、ともかく。「どうかしましたか? 報告ならさっき沙摩柯さんに聞きましたよ?」「ええ、それが・・・少し困った事に。留賛の事でして。」「? あの子がどうかしたんですか? ・・・まさか、大怪我したとか!?」立ち上がろうとした高順だが、それを楽進「はいはい、座っててくださいね」と抱きかかえて、座らせようとする。「違いますよ。怪我一つありません。むしろ、敵兵士を何人か倒して無傷ですよ? 良い働きだったと思います」「そ、そうですか・・・怪我がないなら良かった。出来れば従軍なんてさせたくなかったくらいだからなぁ。」怪我が無いならそれで良いよ・・・と、高順は安心して座った。「って、じゃあ何が困った事になったんだよ? 無事なら何も困り事にならねぇと思うけどな」「周倉さん? 娘は、今回の戦が初陣なんですよ?」「初陣?」意味が解からなさそうな周倉だが、高順と楽進は合点がいった様で納得して頷く。「ああ・・・成程。」「あー、そっか。そりゃあ困ったな・・・すっかり忘れていたよ」「ええ。困っています。」「え、何が? 何が困ったんだよ?」「あのね・・・ま、そこは楽進が説明してくれるよ」「え、私ですか!?」「(無視)でも、何で俺に? 蹋頓さんなら解決できると思うのだけど」「(無視)色々と慰めてみたのですが、あまり芳しくなくて。それに、あの娘は私よりも高順さんを慕っているようですから」「あの、初陣で何が困ったんだ・・・? わかんねーんだけどさぁ」「(無視)ただ、お体の具合が良くないのなら・・・無理をして頂く訳にも」「(無視)いや、俺が行きます。」「良いのですか?」「良いも悪いも無いでしょう。少しくらいなら大丈夫ですよ。」そう言って立ち上がった高順、鎧の上に外套を羽織って陣幕出入り口へと歩く。「そうですか・・・あの娘は自分の陣幕のすぐ近くにいると思います。頑張ってくださいね、お父さん」「ええ。でも、貴女ももう少し頑張ってくださいね、お母さん?」「・・・あら、私とした事が。言い返されてしまいました。」蹋頓はふふ、と嬉しそうに笑い、歩いて行く高順の後ろ姿を見送った。『・・・(じー』そんな高順と蹋頓に、僅かな嫉妬を含んだ視線を向ける楽進と周倉である。~~~余談~~~高順と蹋頓のやり取りは、高順の周りの女性が「すぐに」知るところとなった。当然この話は黄蓋にまで及び、女性陣が軽く嫉妬する事となる。後々の話だが、とある日、この時に嫉妬した女性陣全員(筆頭は黄蓋)が高順の寝室に襲撃を仕掛け、「高順! 子作りじゃ! by黄蓋」「!?」なんとも男前かつ直接的理由で来たものである。そして、違う意味で高順が(何度目になるか解らない)死の淵を彷徨う事となるが・・・本気でもげろ。~~~余談終了~~~「さて、留賛は何処に・・・聞いた話じゃ、ここら辺なんだけどなあ」流石に、親子(?)間の話であり自陣内なので、周倉の護衛は不要と自分だけで探す高順である。兵達に聞いて居場所は解ったのだが、似たような風景が多くて微妙に解りにくい。「陣から僅かに離れた場所にいるって話だけど、えーと、確か岩場があって・・・あ。」岩場より少し向こうに、僅かに木々が生えた場所があり、留賛がそこにしゃがみ込んでいるのが見えた。声をかけようとした時に幾つかの気配がふぅっ、と消えたのが解る。(こっちに解るように気配が消えた・・・? ああ、「影」の連中か。見てくれてたんだな)彼らにも苦労をかけているな、今度ボーナスに色つけるか、とか考えながら、今度こそ高順は留賛に声をかけた。「おーい、留賛。そんなところで何してるんだ?」「・・・ぇあ? お、おやじ!? 何でも無い、何でも無いよ。すぐ帰るから・・・」「ほほう、何でも無いか。そうかそうか」来て欲しくない理由など解っているが、高順は素知らぬふりでずかずかと近づいていく。留賛は顔色も良くなく無理をしているのが丸解りだ。「いや、だから」「で、こんな所で何をしているんだ? 絵でも描いてるのか?」「んなわけないよ! う、うぷ・・・」「そーかそーか、ははは」留賛の隣に座った高順は、留賛の肩を抱き、鳩尾の辺りを手のひらででぐいぐいと押し込む。「うヴぇ!? ちょ、やめ・・・」「我慢せず出しなさい。そのほうが楽になる」「おぅ、やめ、ほんとヤバイって・・・う」~~~食事中の皆様、大変申し訳ありませんが留賛がAUTOで嘔吐しますた。寛大な心で見逃してあげてください~~~「おー・・・。豪快だな」「おぅぅぅ・・・ぐずっ、酷いよおやじ・・・」「何が酷いもんか。水で口をゆすぎなさい」ほら、と高順は留賛に水筒を渡す。「ううーっ・・・」留賛は言われたとおりに水を口に運び、ゆすぎ始める。しかし、すぐに気持ち悪くなったのかまた「うぇー・・・」と吐き出してしまう。「出せるものは全部出してしまったほうが良いぞ。遠慮なく吐きなさい。よしよし」少しでも気分が和らぐように、と高順は留賛の背後に回り背をさすってやる。彼女の調子が悪いのは、明らかに「自分の手で初めて人を殺した」からだ。戦の最中は興奮して気付かなくても、それが終われば、人を斬り、突き殺した感触を思い出して気分を悪くする。自分から志願したとは言え「戦に出すのは時期尚早だった」と高順は娘に同情してしまう。そういえば、と昔の自分と今の留賛の姿を重ね合わせて、ふと思い出す。(俺も同じように吐いたな。あの時は彼女が俺の世話を見てくれたんだっけ。)高順は、死を看取る事すら出来なかった少女の事を思い浮かべる。(いつの間にか、俺はお前より年上になっちまったよ・・・時間が経つのは速いな、郝萌)まだ苦しそうにしている留賛の背をさすりながら、高順は二度と取り戻す事のできない人の事を想った。高順は多少元気になったらしい留賛を伴い、跛行している彼女の歩測に合わせてゆっくりと戻って行く。留賛の陣幕は蹋頓と兼用・・・特別扱いは好ましくないが、蹋頓の希望もあり、それこそ戦を教える役割でもあるので仕方が無い。「なあ、おやじ」「うん?」「人を殺すのって、嫌だね」「ああ、全くだ」「・・・おやじもさぁ、その。あたいみたいに、人死なせて吐いたりした事ある?」「あるよ」「え、嘘ー!?」「嘘、って、俺はどんな人間と思われているんだ・・・俺も、戦で初めて人を殺した時は、さっきの留賛以上にがっくりしてたんだぞ」「そっかぁ・・・おやじも、そうなんだ」「ああ、だから恥ずかしがる必要も無い。あれは普通の反応だから。けど、人を殺すのが嫌だ、とかそんな気持ちを持つのは悪い事じゃない。不味いのは、そんな気持ちも無くす事さ」「不味い、って?」「留賛も好き好んで人を殺したりしないだろう。生きる為に、死なないために戦ったんだよな?」「そりゃそうだけど・・・」「そんな気持ちも無くせば、タガが外れて暴走する羽目になる。俺みたいにな。」「へ? おやじが?」本当に意外そうな表情の留賛に、高順は「気持ちが直ぐ顔に出るな」と少し笑ってから答える。「俺は江州で何千と言う兵士を戦で殺し、生き残った者も一人余さず処刑した。お前達が辛い思いをしたと知った時、俺は間違いなく暴走していた。生きるとかそんな理由も無く、自分の憎しみを消す為だけに」「・・・・・・・・・」「お前達は俺みたいになるんじゃないぞ? お前達は、父親だけは絶対に見習ってくれるな。良いな?」「・・・あたい、わかんないよ。おやじは、みんなの為に怒ったんだよな? だから・・・」「今は判らなくてもいいし、無理にそうする必要もないよ。けど、ちゃんと覚えておくんだ。」あと、こんな話をしていたって周りに言っちゃ駄目だぞ? 叱られるの俺だし。と笑って高順は娘の頭を撫でるが、留賛は面白くなさそうに頬を膨らませる。「うー! 子供扱いすんなよぉ!」「でも、俺と蹋頓さんの娘だろ?」「・・・そうだけど」「じゃあ、子供扱いで十分だ」更に頭をぐりぐりと撫でる高順。「あう~~~・・・色々とはぐらかされたような気がする・・・」「親にとって子はいつでも、いつまでも子なんだ。甘えられる内は素直に甘えておけ♪」「う~・・・」頬を膨らませながらも、留賛はされるがまま頭を撫でられている。「はっはっは。子供は素直が一番だぞー」「はっはっは、じゃなぁーい!」「・・・ふぉっふぉっふぉ(V)oo(V)」「なにそれ!?」血の繋がらない、年もさほど離れていない親と娘の他愛の無いやり取り。~~~再び楽屋裏~~~遅れた侘び・・・ではないですが、こーいうお話も盛り込んでみました。留賛の強さはどんなもん?と質問がありそうなので答えておくと「一般兵」よりは強い程度ってところです。イメージとしては短矛を2つ持ち、片方を地面に突き刺してそこに脚を引っ掛けて回転攻撃、とかそんな感じですかね。ポールダンス?(違)ただ、片足義足という事もあって重い攻撃を受け止める事が出来ないというハンデもあります。惇さんレベルの相手だと、踏ん張ろうにも義足壊れて足重傷ですね。義足に刃物仕込んであったりするので、やりようによっては・・・なレベルでしょうか。まだこれから、という力量です。