【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第112話。~~~桂陽、高順の部屋~~~「ふむ・・・解った、ありがとう」「はっ」高順の労いの声と共に、姿を消す「影」。全く、厄介な奴らだね、と、高順は劉備の手際と言うべきか・・・裏での動きっぷりに苦笑やら何やらが入り混じった笑みを浮かべる。ふーん、と高順は手にした書簡を机の上に投げ置いた。桂陽を陥落させて以降、高順は一応の仮住まいという事で城の中の部屋を貰っている。そこで寝泊りして、時折馬超の政務を助けたり、という事をしているのだが、それ以外の仕事がある。高順は桂陽を陥落させてすぐに「影」を南荊州の他郡、つまり零陵・武陵・長沙方面へと派遣し劉備軍の動向を探らせていた。報告によれば、関羽・張飛を主軸とした劉備軍は既に零陵と長沙を陥落させて、支配力を強めているらしい。武陵に対しての軍事行動を起こすのも近いだろう。こちらも手をこまねいてる事は無く、桂陽周辺の村落に兵や代官を配置して守りを固める・・・だけではなく、東の零陵方面へと兵を繰り出して、零陵側であった村落もこちら側として組み込み始めている。名目は「盗賊退治及び治安維持」で、これも桂陽を陥落させて直ぐに行ったわけだが、発案は闞沢。彼女が言うには「零陵は交州の北に位置します。攻められても直ぐに救援できる程度までは我々の勢力圏としておかないと」と、実効支配地を広げる策に出たのである。馬騰は「文句を言ってきても「え? 劉備さんは赤壁にいますよね? 何で貴女方がここにいるんです? 逃げてきたのですか?」と、劉備お得意のおとぼけで返して、しらばっくれてやれば良い」とまで言っている。同盟してる意味なくね? と思いはするが、高順にしても劉備の思惑通りにいくのは癪なのでGOサインを出している。その結果、かなりの勢いで領土を東に広げているが・・・まあ、劉備が文句言ってきても「お前達が文句を言える立場か?」で済みそうではある。こちらもこちらで出兵準備は進めているのだが、占領してすぐに大規模出兵できる余裕は無い。桂陽の兵を組み込むなど、軍の再編成をしなければならないし、住民を帰属させる為に一時的な税率変更などもしなければならない。強力かつ多彩な家臣団を持つ曹操や孫策ら一国の君主とは違って、高順にはそれだけの手数が無い。馬騰家臣団など、闞沢を高順から取り上げた(?)とはいえ人材的意味合いでは更に悲惨なのだ。しかも、武陵攻めでは馬超と闞沢はいない。二人は桂陽の守備と政務で残らなければならないのだ。さて、どうするかねー、と高順は腕を組んで悩むのだが、そこで誰かが扉をノックした。「・・・おろ? どなたですか?」「楽進です。入っても宜しいですか」「あいあい、どーぞー」「失礼します。・・・いつもながら随分と殺風景ですね」そういった所に、もう少し気を遣って欲しいとばかりに楽進は溜息を吐く。「いつも通りならそれで良いと思うのだけど。それで、用事は何ですかね」「はあ。先ほど劉備軍から使者が書状を携えてきまして。」「・・・はい?」書状って、いつそんなのが来たのだろうか。ああ、そういや太守は馬超殿だからそっちに話が行くわけか、と高順は楽進に続きを促す。「我々が東へと領土を広げたのが気に入らないようです。「そちらのやっている事は不当な侵略行為だから、奪った土地は全て返せ」とか」「ふぅん。で、誰が何て答えたのさ?」「応対したのは馬超殿と馬騰殿ですが、二人のお返事は要約すると「そんなもん知るかボケ。さっさと赤壁行け」でした」「・・・。」「使者は馬騰殿の殺気に充てられて泣きながら帰って行きましたが、良いのでしょうか、これ」「いや・・・あからさまに宜しくない態度だとは思うけど、赤壁に主力を送らないのはどういうことだ、って意味でもあるから・・・まあ、劉備の実情ならそうする以外ないとは思うけどね」劉備は文句を言える立場でも無いんだけどねー、と高順は他人事のように言う。「・・・? あの、隊長」「はい?」「前から思うのですが、隊長は劉備嫌いなのに、時折彼女を擁護するような態度を取ったりしますね。何故でしょうか?」この尤もな疑問に、高順は困ったように頭を掻いた。「あー。いやね、公孫賛殿の所で一時的にあいつらと一緒だったでしょ?」「ああ・・・そういえば」「その時にね、もう少し悪どくやりなさいよ、って言ったことがあってね。自分の発言が原因の1つでそう動くことになってたなら、俺としては全面的とは言えなくてもある程度理解してやらにゃならんわけだ」「その為にご自身が暗殺されかかったり追い出されてしまっては意味が無いと思いますが?」「うくっ、痛い所を。」がくっと肩を落とす高順に、楽進はくっく、と笑う。「何にせよ、彼女達の狙いは南荊州全郡の奪取です。少なくとも桂陽はこちらが奪いましたし、完全とは言わずとも劉備の目論見は崩れています」「そうだけどな。しかし、こっちもまだ動けない。向こうも同じだけど、どちらが先に動くかだねえ。」どうしたら良いかなー、と悩む高順。これについては後に(周りも考えた結果)案が出るが、それはもう少しだけ後の話。馬超の補佐、馬騰の行う部隊編成、練兵などを手伝ったりしつつ、高順は自身の鍛錬を行っている。城の中庭に鍛錬場があるが、今回は周倉と蹋頓が相手だ。流石に両方同時は無理なので一人ずつであるが、二度と体が万全の状態に戻ることの無い高順にとっては凄まじく辛い相手である。「くうぅ・・・や、やっぱ駄目かぁ・・・ぐふっ」地面に仰向け大の字になって、高順はぐったりとしている。周倉も蹋頓も少しやりすぎた、とばかりに互いの顔を見合わせてから高順を抱え起こした。「大丈夫かよ、ご主人」「せめて大将言って・・・」「あーはいはい。んじゃご主人は閨の時だけな。しっかし、随分弱くなったよな」「そうですね、閨では更に強くなりましたのに」「・・・・・・・・・(ぜはーぜはー」蹋頓の冗談に、文句を言うことすら億劫になるほど疲労している高順。(これは本当に疲れきっていますね・・・)と、蹋頓は周倉と共に高順に肩を貸して、近場の川へと歩いていく。案の定ズタボロにされ、一度も勝ちを拾うことも出来ずに力尽きている高順であった。周倉は勿論、蹋頓も相当な強さを誇る。手加減しているのかどうかは知らないが、蹋頓は高順相手に本気で戦っているそぶりは見せていない。余裕綽々とまでは言わないが、全力を出しているようには見えないのだ。兵を率いることについても同様で、高順は彼女に一隊を率いてもらいたいのだが、本人は「嫌です」と拒否している。高順の副官として戦い支える、というのが言い分だが、確かに蹋頓は高順と息をぴったり合わせて兵を動かしてくる。事前の相談も無しに高順の動きに追従してきたり「今ここで横合いから衝く部隊が欲しい」と思った頃に、敵軍の横腹を突いていたりもする。蹋頓は戦の最中の高順が「兵をこうやって動かしたい」というのをなんとなく察知できるらしい。「それじゃ蹋頓さんとやりあえば確実に負けるじゃないか」と高順は凹んだが、本人は「いえ、条件次第で決まります」と平然としている。「大多数、10万という大多数での戦いなら私が勝てるでしょう。しかし、数百や数千という条件であればまず私が負けます」と言う。蹋頓の評価では、高順は「大多数を率いる事は苦手で少数から中規模の勢を率いることに長ける」なのだとか。大規模な軍勢では彼の持ち味を上手く活かせず、逆に少数規模ならば自分が知る中では一番鋭い騎馬突撃をして、かつ生還してくる。この生還してくる、というのが一番恐ろしいところだ・・・と思っているが、そこまで言えば高順は複雑な気持ちになるだろうから、そこまでは言わない。現状、高順の才覚で率いる事が可能な兵数は多く見積もっても一万といったところだ。それを趙雲や楽進らに振り分けているので、それ以上でもまだ余裕があるだけの事でしかない。更に言えば、高順の人柄や財力を背景にして、という前提での一万と言う数。これは、それ以上に増えると賄いきれないという意味も含まれる。あまりに肥大化しすぎると統率しきれない。だから一万だ。ただ、蹋頓は高順を他の人々とは違う、成長型の手合いであると考えている。最初から強靭かつ強力な関羽や夏侯惇、生まれついての才覚を持つ曹操や孫策などとは、別の手合い。むしろ、高順はこれからが楽しみなのだ。まだ若く然程名の知られていない現状では無理でも、年を経て名が知れ渡り、その名声と実力に見合う重さが加われば、高順は更に強くなる。孫家の重鎮、名のある将軍としてどっしりとした腰の重さを加える、と言い換えても良いだろう。年を経ていけば少し頼りない性格も円熟したものになり、年相応の重厚さも加算されて今以上の武将となり重きを成すだろう。そこまで生きていてくれれば・・・と思わずにいられないが、そこまで生かし、その先に生かすことが自分のやるべき事、と蹋頓は高順の顔を見つめて思い直した。高順を手頃な岩にもたれさせてから、蹋頓は手ぬぐいを水に浸す。清水を含んだ布をきゅっと絞り、蹋頓は汗に塗れた高順の身体を丁寧に拭いていく。「あー・・・・・・」ひんやりとした冷たさが、火照った身体に沁み込んで心地よい。もう動くだけの気力も無いようで、蹋頓に拭かれるままだ。この間、周倉は高順の身の回りを守る為に警戒しているが、すぐに気配に気付いて近くの茂みを睨みつけた。「おい、いるのは解ってるぜ・・・出て来いよ」斧を構える周倉に、同じように茂みを見つめる高順と蹋頓。「わわっ、に、睨まないでよぅ」と、茂みからガサガサと葉と枝を掻き分けるようにして出てきたのは馬岱。「なんだ、馬岱かよ。何やってんだ?」敵ではないと解って、周倉は斧を下げた。高順らも安心したか、すぐに警戒を解く。「えへへ。高順さんが二人に連行されていくのが見えたから何するつもりなのかなー、って後を尾けて来ちゃっただけだよ」「なんもしねえよ。鍛錬で大将がへばっちまったからさ。休憩だよ」「傍目から見れば、二人に拉致されていくようにしか見えなかったよ?」馬岱の言葉に、周倉はむぐっ、と唸る。確かに、両脇だか肩を抱えて引っ張られるのを見れば、事情を知らない人からは拉致されるように見えるのだろう。馬岱は「高順さん大丈夫ー?」と能天気に覗き込むが、その表情が厳しく、いや、僅かに苦しそうなものを含んだものに変わった。「・・・前は気付かなかったけど、凄いね」「何がです・・・?(ぜーはー」「傷。体中傷だらけ。」前、というのは蹋頓に連行されて閨まで連れて行かれた事を指す。あれのせいで、高順以外にまで気持ち良くされてしっかり「女」にされてしまった馬岱だが、その時には高順の体の傷に気付くほどの余裕など無かった。改めて見ると、本当に高順の身体は傷が多い。馬岱が見ているのは上半身の前面と側面だけだが、背中にも傷はある。身体を横一文字に引き裂いているような胸の傷。腹部、横腹、肩、腕、左手、顔、見えないが背中・・・。服を着ている下半身もどこかしら傷があり、これだけ見ると、どれほど多くの戦場を駆け、どれだけの戦を生き残ってきたのか、と思ってしまう。まだまだ若いのに、歴戦の勇将のように見られても仕方が無いほどの負傷っぷりだ。傷の一つ一つが高順の勇猛さ、戦を兵士・配下任せにせずに自身が前に出て、危険な場所に身を晒し続けたのかの証左とも言えるのだろう。これを痛ましく思うのは馬岱だけではなく、周りの人々も同じだ。蹋頓も高順の身体の傷が増えるのを見て「更に男が上がりましたね」と冗談を言ったりするが好ましくは思っていない。今は傷と言うよりも、鍛錬で打ち据えられて体中が真っ赤になったり腫れ上がったり、が多いのだが。「いちちっ。」「あら、やはり痛みがあるようですね。」うぅん、と悩み、蹋頓は高順のズボンを脱がしにかかる。「な、なにを!?」「体中真っ赤になっていますし、このまま川に入ったほうが早いと思います。」よいしょ、と蹋頓は高順の身体を簡単に抱えあげて川の中へと一緒に入っていく。水底は浅いので、別に問題は無いが、高順は下半身まで水浸し状態である。「うわ冷たっ!! ・・・あーでも少し気持ち良いような」「痛いのが気持ち良いだなんて。また新しい趣味に目覚めました?」「またとか言わないで(つんっ)痛ぁっ!?」文句を言おうとした瞬間に、腫れ上がってるところを突っつかれて悲鳴を上げる高順。「あら・・・ここが腫れ上がっていますね。緊急かつ迅速に腫れを抑える必要が」「何処触って言いますk(つん)のぉぉぉぉぉっ!!!!」「雄は命の危険を感じると子孫を残そうとする欲求が高まるそうですよ?」「それと今の状況は何1つ関係が無い!」蹋頓の本気とも冗談・・・9割がた本気かもしれない言葉に、周倉と馬岱も高順の傍に寄ってくる「へぇー、どこが腫れ上がってるって?」「へへー、あたしも興味あるー♪」二人とも、川の中に入ってきて・・・何と言うか。水が服を濡らして、身体にぴったり濡れ濡れスケスケ。「くふぅ!?(鼻血」高順のどこぞの反応に、3人は嬉しそうだ。「あー、高順さんの3本目の足が腫れ上がってる♪」「あら、これはまた・・・♪」「こんなに腫れてたら気の毒だよな。しっかりと収めてやるから安心しろよご主人♪」「ま、待って! こんな状態でヤられたら死ぬ! 俺が死ぬ!!!」「大丈夫です。天にも昇る気持ちになるだけです」「ぎゃあああああ殺されうぶっ!」悲鳴を上げる高順と、それを口付けで(強制的に)黙らせる蹋頓。そして高順にじりじりと迫る馬岱と周倉。ここに、問答無用のデスマッチ・・・いや、デスエッチが開催された!「ご馳走様でした♪」by蹋頓「ごちー」by周倉「ふぁぁ・・・もう、お腹いっぱぁい・・・」by馬岱「いつの時代も男の子が犠牲になるんですっ・゜・(つД`)・゜・。」(ry休憩に来たはずなのにヘトヘトになってる高順と、つやつやになった3人。対比すると先ほどまでと全く変わらない状態でしかない。何があったかは親御さんに聞いてください。・・・やっぱり聞かないでください。アホの子達は放置するとして、馬騰・馬超は武陵攻略の為の兵力編成を行っている。各地に配備した・・・盗賊退治などの名目で派遣された兵士はほとんどが趙範の兵なので、攻撃戦力は目減りしていない。しかしながら、武陵を攻めるとなると。「三つ巴、となるかもしれませんね」これが一番の懸念であった、自分達が攻めかかれば、金旋は篭城なり迎撃をしてくる。これは間違いない。そして、両方が疲弊した所を狙って劉備軍が横から出てきてかっさらって行く。普通に想像できる程度には心配どころである。馬騰は腕組みをして悩んだ末、高順を呼んだ。自分達の中で一番劉備と戦ってきたのは彼だ。彼なら劉備軍がどう動き何を狙っているか、それが良く解るだろう。馬騰に呼ばれて、政務室に入った高順は前述の事で意見を聞かれ即答同然で「横から美味しいとこを総取りに来るでしょうね」と断言した。これに馬騰は「根拠は?」と聞いてきたが、(そりゃ、南郡のこともあるしなぁ)とは言うに言えない。「まあ、予感ですよ。あれら相手に甘い顔すると確実に隙を突いてきますから。適当な事言ってはぐらかして、それが通じると思う連中ですよ」高順は困りきったように肩を竦めた。「成程。彼女達ならありえます」馬騰もうんうん、と頷く。(納得されちゃったし・・・馬騰殿の中では、あの人たちってどこまでも印象が悪いんだなぁ)一体何を言ったらここまで嫌われるのやら、と少し気になる高順であった。この政務室、普通に馬超がいるし、他にも高順同様に呼ばれた超雲・李典・沙摩柯などもいる。金旋・劉備・自分達の三つ巴となると、戦力・兵力共に厳しい。金旋はどうにかなるとしても、劉備軍はこちらが疲弊している所を狙ってくるだろう。一応の同盟はしているので一方的な攻撃は無いと思うが、自分達が戦っている間に「待ってました」とばかりにするりと入城することは大いに有り得る。さあどうする、という会議なのだが、ここで沙摩柯が「少し良いだろうか?」と手を挙げた。「どうぞ」「大量の食料か、金子か・・・どちらかが必要だが、それなりの策はあるぞ策? と首を傾げる馬騰に、ああ、と頷く沙摩柯。~~~2ヵ月後、武陵~~~武陵を目前にし、龐統は「おかしい・・・」と考え込み始めた。「えー、何がおかしいのだー?」「既に孫家の方々が攻め込んでいて良い筈なんです。なのに・・・」張飛の質問に答え、再び武陵を見つめる龐統。状況を見るに、攻められた様子は何処にも無い。進軍する前から、そして進軍中でも何度となく間諜を放ち南荊州攻略を目指す孫家別働隊の行動に探りを入れていたが、動いたという話は聞いていない。さすがにもう動くだろう、と見切り発車のようなもので出撃した龐統だったが、武陵をいつでも攻められるほどの至近距離まで近づいたに関わらず孫家の動きが無い。いや、あるにはある。孫家軍も劉備軍に遅れて桂陽を出陣したのだが、その報告が龐統にまで来ていないだけだ。ともかく、このままでは、自分達が先に攻めてしまう構図になってしまうが、それならそれで構わない。武陵を攻めるにあたって、龐統は既に金旋配下の武将である鞏志(きょうし)を抱き込んでおり、内応させる準備は整っている。こちらが攻め込んだ後に金旋を出陣させて、城門を閉ざして再度入城できないようにする。野戦であれば必ず勝てる編成だし、内応が失敗しても金旋を見限ってこちらに通じようとする者は出てくるだろう。それが続くように揺さぶりを掛ければ金旋本人も疑心暗鬼に陥るだろうし、士気の低下も免れない。自分達にとって好都合だ。「それでは、いつでも攻撃を開始できるように準備を!」龐統は命令を下し、そして金旋に対して降伏勧告の使者を送り出した。数時間後。武陵城内では金旋が、劉備などなにするものぞ、と息巻いている。使者の口上は「自分達は漢王朝復興の為に戦っている。それを邪魔するものは皆等しく逆賊である」という意味で、金旋は「貴様らが言うな、貴様らが!」と怒鳴り、使者を追い返していた。金旋の息子、金禕(きんい)という名であるが、息子も漢王朝に仕えている。その息子からの手紙で、劉備が董承と組んで曹操を暗殺しようとして失敗し、帝を見捨てて逃げたという事実も知っているのだ。祖先・・・金日磾(きんじつてい)より代々漢王朝に使える名家で、馬騰などのように忠誠篤い金旋は、帝と同族でありながらあっさりと見捨てた劉備を内心毛嫌いしていた。孫家が降伏勧告をしてくるのならまだしもだ、と怒りを抑えられない金旋だが、兵の準備が整ったという報告に「出撃だ! 漢王朝の名を辱める逆臣を成敗してくれるわ!」と、自身が真っ先に駆けて出陣していった。劉備軍と内通している鞏志は「留守はお任せくださいウヘヘヘヘ・・・」と揉み手をして見送り、ニヤニヤとほくそ笑んでいた。~~~赤壁~~~曹操(と言っても曹操は不在だが)侵攻水軍相手に、有利に戦っている周瑜の元へと、一報がもたらされた。内容は曹操が本隊を率いて赤壁へと向かっている、というもの。幕舎にてそれを知った周瑜は「ついに来たか。勿体ぶらせたものだ」と呟きつつ、水軍を一時的に退かせろ、と伝令を走らせる。少数とは言え曹操水軍の軍船を拿捕し、東南の風が吹くであろう日時も近づいている。「こちらも主君のお出ましをお願いする場面だな。これでこちらの手札は揃った、か。」あとはその日を待つばかり、と周瑜は腕組みをする。曹操、というよりは荊州水軍だが、こちらは特に問題はない。あるのは北方から従軍してきた、江南の風土に慣れていない兵士達だ。これらは慣れていない気候、慣れない船上での生活を強いられて、病を得ている者が少なくない。更に、その疫病が蔓延して本来の能力で戦うどころではない者ばかり。こちらにとっては有利だが・・・そして、と周瑜は劉備が布陣している場所に目をやる。馬騰殿からの伝令で、馬騰・高順隊が桂陽を落としたと聞いている。あとは武陵だが・・・はてさて。劉備軍が絡む南荊州の動向はどう進むかな?周瑜があれこれと考えているこの状況で、劉備も僅かな画策をしていた。孫家軍よりも曹操軍に近い場所に、しかしこっそりと布陣している劉備。その時に孫家に先んじて、ここ一番の状況で自分達が突撃をする。孫家の軍勢を率いているかのように見せかけて、だ。当然、自分は安全な後方から行く。もし負けそうでも自分の後ろにいる孫家軍に任せて逃げれば良いし、勝てそうならそのまま追撃に入るだけだ。(今まで機会に恵まれなかったけどやっと舞台が回ってきたなぁ。よーし、頑張らないと!)気合を入れて曹操軍の大船団を見やる劉備だが、この規模の大きさに「・・・大丈夫なのかなぁ」と、どこか不安げである。劉備の画策が成功するかどうか。それは誰にも解らない。~~~楽屋裏~~~どっちかといえば桂陽的日常の延長ですねあいつです(挨拶武陵攻略は次回に回りました。今回、武陵攻略に乗り出した劉備軍は名前が出ている二人と関羽、陳到あたりでしょうね。兵力も少し増えて1万5千とかあるかもしれない。他は占領都市で治安活動とかしてるかと思われます。馬騰側ですが桂陽にも馬超と闞沢が残りますから、微妙に戦力が低下しているような。それと、恋姫原作に出ているキャラは基本死なないといったが・・・嘘を吐いて悪いがアレは嘘だ(何1人か2人くらいは死ぬかもしれません。主に劉備とか(!?で、こんな事ばっかり言っていると「そんなに劉備が嫌いかこのアンチめ!」と叱られそうなのですが、私は蜀漢が嫌いと言うわけではありません。あんまり好きじゃないだけです(ぉぃ費詩とか雍茂とか張裕とか大好きですし!蜀漢末期であれば羅憲とか霍弋(かくよく)とかが好きですね。他にも2世武将が次々と滅亡に殉じていくのも悲壮感がありすぎて逆に好きです。しかし諸葛瞻と張紹、てめーらは駄目だ。後者は張飛の子孫、つまり劉禅の外戚に当たります。にも関わらず黄皓を(諸葛瞻同様に)野放しにしている辺り・・・本当にコイツらは・・・まあ、諸葛瞻は戦って死んでるからまだマシかな?さて、赤壁どうなるのでしょうね。