【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第96話、前編?曹操は、不思議に思いつつも砦を半包囲していた。北側に夏侯惇・公孫賛。東には自分自身。西には夏侯淵。南はもぬけの殻。南を空けている・・・これにはそれなりの理由があった。まず、馬騰か或いは韓遂か。この2人の思考がなんとなく読めないのである。脱出を狙っているのか、それとも玉砕覚悟で篭城をしているのか?それにしては、西の砦に馬旗を掲げた一部隊を向かわせたようだし、そこから先の動きが無いので「何を考えているのやら」と少し警戒心が出ている。西涼に帰還しようとしているのか? それとも、まだこの砦内にいるのか? と曹操は目の前の砦に眼を向ける。帰還されれば厄介。必ず勢力の巻き返しを図るだろう。乱の中に身を置き続けた西涼・馬家の力を曹操は軽視していないのだ。それならば、包囲を緩めて「西涼に帰還させないように」どこかへ逃がすほうがいいし、逃げ場所さえ作っておけば死力を尽くして向かってくることもあるまい。南の地、たとえば劉表などは自分と敵対したくないという理由で、馬騰が頼ってきても協力はしないだろう。もしかしたら捕らえてこちらに突き出してくるかもしれない。そうなれば馬騰も諦めて臣従してくれるかもしれない。曹操が知る限りでは馬騰らは西涼以外、行き場所が無いはずなのだ。西の砦にも兵は配置してあるし、そこに逃げ込むことはできはしない。主導権はこちらが握っているのだ、慌てることもない。「・・・ふむ。」既に日は沈んで夜になろうとしている。西涼側も曹操側も篝火を焚いて、いざ戦闘となった場合の用意も出来ている。まあ大丈夫だろう、と曹操は自分の陣幕に戻っていく。(・・・それにしても、あの春蘭がね)成公英を討った、という事と、その成公英に左目を奪われたという報告が来たときは、伝令に向かって思わず「は?」と聞き返してしまった。成公英が討ってしまった、というのは状況を聞く限りではどうしようもなかったと思う。が、春蘭が左目を失う大怪我をするとは思いもしなかった。しかも、自分の左目を奪った成公英を「丁重に弔いたいので許可を頂きたい」とまで言ってきた。白蓮に怠慢であった訳でもなく、かといって春蘭が油断をした訳でもない。自分の部下であり愛人である春蘭を傷つけられたことには多少腹を立てたが、春蘭本人が気にしていない言い方だった為、それ以上の追求はせずに弔う云々も許可を出した。これに関してはむしろ秋蘭のほうが怒るんじゃないかしらね? とか思っていたりする。「よくも私の姉者をぉぉぉぉをぉぉ!!!」とか。~~~西涼軍、砦~~~「そうか、戦死したか。・・・あの夏侯惇を相手にな・・・」陣幕で成公英戦死の報告を聞いた韓遂は、眉1つ動かさない。だが、内面では大いに悲しみその死を悼んでいた。(あの馬鹿娘、私より先に逝くとは。私が切り開いた道を、若いお前たちが進むべきだというのに・・・いや、私のせいだな。)追いぼればかりが生き残ってしまったか、と韓遂は嘆息した。さて、と韓遂は少し気持ちを切り替えて後ろにいた2人の老人へと振り返る。「楊秋、侯選。覚悟はできているか?」呼ばれた二将・・・男だが、ニッカリと笑う。「おぅ、聞くまでも無い」「おおよ、あの気弱娘ですら立派に散ったのだ。わしらが後れを取るわけにもいかんわ。」「良いのか? 曹操に降る選択肢もあるんだぞ。」韓遂の言葉に、楊秋と侯選は顔を見合わせてから声を上げて笑い出した。「・・・笑うところがあったのか、今の?」「はっはっは。・・・馬玩やら程銀やら、みーんな死んじまいおった。わしら2人だけ生き残っても何も面白うないわ。貧乏籤じゃのぉ。」「そうさなぁ。それにわしらみたいなのを、あの曹操が欲しがるわけもなかろうよ。」ま、わしらなどお呼びでないわ。と侯選は言った。「何よりな、韓遂。我らは嬉しいのよ。」「嬉しい、とは?」「時代は移ろい変わってゆく。外交というもんが幅を利かせ、戦う前から勝敗が決まってしまうような時代に変わりつつある。」「そんな時代に遅れ取り残され、手元にあるのは個人の武のみ。ただ静かに死ぬるだけかと思うておったところに、あの曹操を相手どった「おおいくさ」ときた。」「わしらのような時代遅れの爺共に、最後に舞台が回ってきた、ということじゃな。この死に場所が有難くてたまらんわ。」これから死にに行くというのに、いい表情をする老人2人に韓遂は思わず苦笑した。何度も肩を並べ戦ってきた間柄であるが、確かに・・・ほかの10軍閥も内政とか外交が重視される時代になってきたことを感じて、もう我々の出番など無いのだなぁ・・・と溜息をついていた。黄巾の乱が勃発し、また戦乱へと戻るか!? と期待するような血の気の多いジジィやババァばかりであったが、曹操に挑んで死ぬ事を彼らは晴れがましく、心嬉しく思っていたのだ。「それにじゃな。」「それに?」「馬騰たんハァハァ・・・あの物憂げな表情・・・! 辛抱たまらんですたい!」「ハァハァハァ、馬騰たん・・・うッ(ビクンビクン」「・・・・・・」せっかく感心したのに、なんかもう台無しだった。「ゴホン・・・義姉上が魅力的なのはともかく。確認はしておくぞ。まず・・・」楊秋は西門、侯選は東門から部隊を率いて打って出る。韓遂は一番戦力が高い北部隊、つまり夏侯惇・公孫賛部隊を相手にする。そして、曹操軍の注意がこちらに向いたところを見計らい、馬超率いる逃走部隊が一気に駆ける。「簡単ではあるが、以上だ。」「ぉう。」「さぁて、わしらも配置に付くかのう。」「うむ。頼んだぞ、お二方。」「ははっ、任せておけぃ。見事討ち死んでやるわい。」」「達者での、韓遂。」そう言い残して、二人の老将は陣幕を出て行った。もう、生きて会うことも無いのだろう。あの二人は自身で言ったとおりに死ぬまで戦い抜くに違いない。それは私自身も。後は・・・すでに別れを終えた馬超らが上手くやってくれれば良いのだが。そこだけが少し心配だ。二人を見送った後、韓遂も北へ向かい始めた。その道中で、曹操がうまい具合に引っかかってくれて助かったな。と思いを巡らせていく。もし完全に包囲されていたら全軍で南に穴を開けて馬騰を逃がすつもりであったが、その南をがら空きにしてくれている。追い詰めて行き場所を失わせようという腹積りなのだろうが、そう上手くいくものか。韓遂は北門へと到達し、残された全軍の配置完了を待つ。それから時間は過ぎ、伝令が「全部隊所定の位置に付きました! いつでも出撃できます!」と報告をしてくる。少し遅れて西・東の部隊からも同様の伝令が来る。弓兵部隊も砦壁上に、南門には馬超が。これで準備は整った。(さぁて・・・せいぜい付き合ってもらうぞ、曹操。我々西涼軍の意地にな。)一方、曹操軍。北・東・西に軍を展開した曹操側だが、主だった武将は西涼側の何らかの動きを察知していた。壁上の弓兵が慌しく動いている。すでに弓をこちらに向けている者もいる。曹操も慌しい動きを察知、陣幕から出て行き砦側の動向を見るために移動している。「まさか、夜間に出てくるつもり・・・?」と訝しむが、既に向こう側の戦力は少ないはず。なのに打って出てくる・・・まだ戦力を隠していた?いったい、どういうつもりで―――そう考えたところで、伝令が息せき切って走ってきた。それと同時に、こちらの前衛部隊が交戦を始めた空気を感じ取る曹操。「報告いたします! 馬騰軍が篭っている砦の・・・南を除く門が開門! 打って出てきました!」「何ですって・・・?」視界の悪い夜間なのに、本当に出撃してきた?「こちらには誰が出撃してきたの? 馬騰か馬超? それとも韓遂?」「は、この暗がりゆえ明確には解りかねますが・・・旗は侯一文字」「と、いうことは侯選、かしらね。報告ご苦労、下がって良いわ」ははっ、と拱手をして去っていく伝令兵を見送り、曹操は自分の目で確認しようと前線へと向かっていく。「・・・苦戦している、か」曹操が陣幕を張った場所は前衛に近く、いつでも自分が切り込んでいけるようにしている。総大将なんだから自重しろ、と言われそうなもので、というか言われたことは多々あるが、政治家であり一介の武人でもある曹操は「うるさいわね、却下」と意見を一蹴するのでもう誰も何も言わない。(時々油断して大ポカをやらかすこともあるが ともかく、自軍の前衛が少しばかり苦戦していることを察知した曹操は素早く騎乗して更に前進していく。前衛には徐晃が配置されているが、それでも苦戦するというのは・・・馬騰軍は戦力を温存していたようだ。東側だけでなく、西・北も同様に馬騰軍の全力攻撃に押されていた。曹操軍は馬騰軍に比して4倍以上の兵力であるが、夜間であることと「昼間に合戦があったから夜中に大々的に攻めてくることは無いだろう」というちょっとした油断が重なり合った結果だ。夜襲くらいは想定していても、後先を考えない全力攻撃を繰り出してくるとは思っていない。将兵が一体となって、死を恐れずに突き進んでくる。最初から生還することを考えていない彼らの勢いは、曹操軍を怯ませるに十分だった。それと同時に、西砦に「別働隊」として入っていた龐徳が呼応するかのように砦内から出撃。さしたる将のいない西砦包囲軍へと向かっていく。結果、夏侯淵が楊秋を、徐晃が侯選を討ち取ったものの、手こずった上に両者共に負傷し、また兵も多数道連れにされている。こちらの被害が10とすれば馬騰軍の被害は6か7ほど。割合だけ見ればとんでもない話だ。それ故に、絶対数の少ない馬騰軍はほぼ全滅状態に陥っている。だが、それすらも無視して生き残った兵が進んでいき、殺し、殺されていく。曹操本人も何人もの敵兵を屠ったが、彼らの意図がまったく掴めない。(こんな特攻を仕掛けて・・・馬騰、韓遂は何を考えている)砦南の門が開いたのは、曹操がそんな疑問を持ったのと同じ瞬間だった。~~~北側~~~「そぉいっ」「ひぎぇ!」韓遂は無骨な長大剣・・・見た感じではグレートソードとかツヴァイハンダーみたいなもんだが、自分に向かってきた騎兵を馬の頭ごと斬って捨てた。この剣は切れ味など二の次で叩き潰すような使い方になるが、剣速の速さで補い斬っている。韓遂の周りには数多の曹兵の死体。韓遂側で生き残った兵は殆どいないが、韓遂はたった一人で夏侯惇・公孫賛部隊の中枢まで突き進んでいたのである。どれほど斬ったかなどは最初から数えていない。向かってくる兵を斬る。矛を突き出してきた兵がいれば、矛の柄を握り兵ごとぶん投げる。矢を射られれば、転がってる死体を盾にしてそこらに転がっている剣や矛を投げつけて殺す。無茶苦茶だが馬騰とは違う方向で人を殺す技術が高く、化け物である。今また向かってきた兵の首を跳ね飛ばしたところで・・・誰かが「待て!」と叫んだ。んぉ? とそちらに目を向ける韓遂。見れば兵が声を上げた誰かのために道を開けて下がっていく。「しょ、将軍・・・」「お前らでは勝てん。何百何千かかってもな。手出しはするなよ」「ほぉ・・・?」兵を制し現れたのは、羽を開いた蝶の形をあしらった眼帯で左目を隠した夏侯惇であった。「ははん、ようやくお出ましか。」「ああ、お前の部下につけられた傷のせいで少し時間がかかった。私が相手だ、雌餓鬼呼ばわりしたことを後悔させてやるぞ、韓遂!」「ハハッ、いい気迫だ! まぁ、末期の相手としては不足だが・・・悪くも無い。相手をしてやる! っと、その前に一つ聞いておく。」「? 何だ」「成公英を討ったのはお前だと聞いた。」「ああ、私の左目を道連れにされたよ。それがどうした?」「あれは、苦しんだか?」それを聞いた韓遂は少し苦しげであった。だが、どうしても聞きたかったのだろう。表情は真剣そのものだ。「・・・さぁな。本人じゃない私には苦しかったかどうか解らん。だがな。」「だが?」「好い顔だったよ。」その一言を聞いた韓遂の口端が、一瞬だが綻んだように見えた。「・・・。・・・そうか。いや、感謝する。」「かまわんさ。さて・・・」「ああ」二人は得物を相手に突きつける。『始めるか』~~~砦南~~~開かれた扉から、一斉に七千ほどの軍勢が飛び出した。先頭には、いまだ眠り続ける馬騰。その体を抱えて馬を駆る馬超。その傍には馬岱の姿もあった。馬鉄と馬休は軍勢の中ほどか後方付近にいる。編成としては全て騎兵だが、輜重部隊も混じっている。逃げるにせよ何にせよ食料は必要だからだ。ただし、そのせいで速度は遅くなりがちだし、馬騰と馬超を同時に乗せる馬にも負担がかかり、やはり普段より足が遅い。曹操も、僅かに遅れて南門開放の報告を聞いた。(南側に軍勢を派遣していないだけで間諜くらいは放っている)それを聞いて「・・・不味った」と確信し、状況を整理する。何故、完全に追い詰めていないのに纏まった数の軍勢が逃げる? 最初から逃げるつもりだったからだ。どの隙を狙った? 私たちが目の前に突撃してきた部隊と戦っている隙だ。では、誰が逃げる? この状況で「私にとって」一番逃げられたくない存在は?・・・馬騰だ。追い詰められて、やむなく逃げる、と、最初から南を目指して逃げる、では意味合いが違いすぎる。最初から将兵全てが囮となり、今までの行動全てが馬騰を逃がすためだけの布石だとしたら。「・・・っ。流琉、季衣っ!!」「え、ひゃいっ!?」「はひっ!!?」いきなり大声で呼ばれた典韋と許緒は(何か怒られるようなことしたっけ!?)と思いつつ返事をする。「軽騎兵をできる限りの数で出しなさい! 南へと逃げた馬騰軍「本隊」を追撃するっ!!」「え、・・・えっ!? 本隊って・・・? まだここの制圧・・・」「徐晃に任せるわ。彼女なら大過なくこなせる。あと、秋蘭・春蘭・白蓮に制圧を急がせなさい、早く!!!」『はぃぃっ!!』返事が返ってくる前に曹操は馬を走らせ、ただ1人南へ向かおうとする。親衛隊は主のいきなりの行動に混乱するが、自分たちの役目を考えれば付いて行くしかない。(郭嘉や程昱は戦闘ができないので後方にいるちなみに、いきなりそんな事を伝令に伝えられた徐晃は「・・・無茶振り」と、げんなりしていたそうだ。(最初から南を目指して逃げるということは、何か当てがある、ということ・・・その当て。心当たりは)馬を全速で走らせつつ曹操は思考する。張魯・・・まず無い。ここからは西だ。南に向かった後に北西へと戻ることになる。そんな面倒なことはしない筈。劉表・・・これもない。劉備は同姓同族なので受け入れたのだろうが、馬騰を受け入れてまでこれ以上の厄介ごとを増やそうとは思うまい。劉璋は・・・論外だ。どう見ても馬騰を扱える器ではない。そうなると。孫策? 確かに彼女の元に逃げ込まれれば大いに厄介だ。騎将の少ない孫家でならば、馬騰ほどの勇将なら歓迎もされるだろう。しかし、孫策と馬騰をつなぐ物に心当たりが無い。頼るのなら孫策くらいしか思い当たらないのだが、頼るのなら何らかの繋がりが・・・そう思ったところで曹操は、はっと気が付いた。(そういえば、ずっと前。侯成ら、徐州で配下にした者たちが言っていた。馬超と高順が婚約をしていたとか・・・)どこでどうやって侯成たちがこの話を知ったのかは謎だ。恐らくは賈詡あたりだろうが、曹操がそれを知っているわけが無い。この話は、侯成らが信用できないので「ふぅん」と話半分に聞いていたが・・・。郭嘉らも、あまり信用ができないと判断しており干禁に確認を取ってみたりしたが、知らないという答えしか返ってこなかった。この話が本当だったら、高順は南の、しかも孫策のところに流れ着いていたとなる。高順は馬騰同様に、劉璋や劉表が扱えるような男ではない。勿論、これが事実であるという確証も、それを証明する何かがあるわけでもない。ただ、現状で一番その確率が高く、事実としたら一番厄介な状況に、という事は解る。そうなると周喩は嘘をついていた? もしかしたら、あの時点では本当に知らないという事もあり得るけれど。何にせよ、こうなった以上は追撃をするしかない。千、二千と増えていく、自分の後に続く軽騎兵の数を確認する暇も無く、曹操は進んでいく。「くそっ、やっぱり速度は落ちるか・・・」思うままの速度が出せない事に、馬超は苛つく。だが、それは馬のせいではない。つい先ほど「曹操軍がこちらに気付いた模様、追撃されています」という報告を聞いた。気付かれるのが早かったのだ。このままでは、いずれここまで追いつかれる。そうなれば、皆の犠牲が無意味となる。なんとかして逃げ延びなくてはいけない。どうする・・・と焦り後方を振り返る馬超だが、不意に速度を落とし隊列から離れていく兵が現れだした。「ちょ、おいっ・・・」逃げるのか? と思った馬超だが、そうではないようだ。離れていった兵士、およそ千数百ほどであろうか。彼らは一箇所に集合し、こちらに対して拱手をした。その中には妹である馬休・馬鉄の姿もある。そして、彼女たちは馬首を返して、追撃してきた曹操軍へと向かっていく。「・・・っ!!」馬超は思わず手綱を引きかけたが、傍らの馬岱が「駄目っ!」と叫んでそれを制した。「蒲公英?(馬岱の真名)」「振り返っちゃ駄目だよ、姉様。振り返って止まったら、皆がやろうとしている事の意味がなくなっちゃう!」「で、でも・・・あいつらだけで止められる訳」「止めようなんて思ってない。足止め・・・それだけだよ」「足止めって・・・あいつら、死ぬ気か!?」「うん」はっきりと返事をする馬岱。とても冷たく、はっきりした肯定の言葉。「・・・最初から、こうしようって3人で相談して決めてたの。最初はあの二人が。それでも無理なら次は私。おば様と姉様だけでも脱出できるように、って・・・」実を言うと、脱出する彼女たちは最初に韓遂から「曹操が追いついてきたのなら、輜重隊の運ぶ食料やら荷物やらを投げ捨てていけ」と指示されている。輜重隊自体が切り離されること前提の隊列なのだ。中には空の荷台を引いている馬もあり、このあたりは完全に切り捨て前提。荷台を転がして障害物にするための存在だ。さすがに曹操から無傷で逃げられるとは思っておらず、輜重隊は保険のようなものだ。だが、食料は必要だし、物資も売れば資金となる。これからの逃避行に、食料も金も無い、では余りに心許ない。そこで、馬岱達は馬超に内緒で話を決めた。そのまま逃げ切れるなら良し、追撃をかわせない場合は・・・口減らしも兼ねて、踏みとどまると。それを聞かされた馬超は怒った。「ばっ・・・ふざけんな!」「ふざけてなんか無い! 私たちの役目は最初からそれなんだよ? 姉様だけだと割りと普通に心の底から不安だけど・・・おば様が健在ならなんとか」「いやお前今すごく酷いこと言わなかったか!?」「(無視)後ろを振り返らないと見えないものもあるけど、振り返ってるだけじゃ前に進めない。姉様の役目は何なの? 前に進むことじゃなかったの?」自分たちは覚悟を決めて、己の役割を果たすのだ。そんな強い意志の篭った瞳に見つめられ、馬超は視線を前へと戻した。「・・・くそっ。私には何もできないのかよ」逃げ延びる為に必要とはいえ、大切な妹たちを盾にして、大切な仲間たちを見捨てて。失われていく命の重みを背負って、それでも進んでいかねばならない。馬超は、涙を流しかけて上ずった声で叫ぶ。「全軍、進め!」と。馬休・馬鉄は千五百ほどの兵を率いて、追撃してくる曹操軍を相手に陣取る。その数、およそ五千ほど。時間が経てば更に数が増えるだろう。まだ距離はあるものの、すぐに交戦状態となるだろう。「ね、馬鉄」「何ですかー?」「残ったこと、後悔してない?」「しまくってますよー!」気の抜ける答えに、がくっとずっこけそうになる馬休。「あ、あんたねぇ・・・」「もう皆に会えないわけですからー。」「そっか・・・そうだよね。私もちょっと後悔してるけど・・・へへ、馬家には臆病者しかいないのか、って言われるのも癪だし? 曹操に取っちゃその他大勢の私達でしかないけど、でも、ここで足止めして吠え面かかせて見せるわ」「ですねっ」「ただ・・・。」「ただ?」「もう一度だけ・・・高順さん達に会いたかった・・・かなぁ。」「・・・ですね。」馬休の言葉に、馬鉄は深く頷いた。洛陽で過ごした時間はさほど多くない。高順をはじめ、趙雲、楽進。他にも個性的な人ばかりであったが、あの少ない時間は良い思い出となった。にっと笑った馬休は槍を掲げて振り下ろす。それを合図として、この場に踏みとどまる決死隊が曹操軍に向かって突撃を開始した。~~~砦北側~~~「どうしたどうした、そんな事では疲れきっている私一人倒せんぞ! 足を踏ん張り腰を入れぃっ!」「ぬぐっ・・・ぅう」韓遂の繰り出す斬撃を受け止め、時にはいなしている夏侯惇。だが、その動きは普段に比べて鈍い。上手く感覚を掴めず、間合いの計りが僅かにずれている。左目を失った、ということが響いているのだ。成公英の執念はきっちりと後に繋がっている。韓遂が繰り出す上段からの一撃を避けて、夏侯惇は距離を取り、息を整える。「ふぅ、ふっー・・・」「こんな程度で音を上げるか? ・・・ならば、次で終わりにしてやるか」「ちっ・・・」不味いな、と夏侯惇は焦るが、それは無理からぬ話だ。前に韓遂に挑んだ時もあっさりとあしらわれ、今回は・・・相手は疲労しているが、こちらも負傷している。元々不利な状況であることにはまったく変わりが無いのだ。周りの兵も、2人の戦いが凄すぎて手出しができない。援護しようとした兵もいたが、戦いの余波で吹っ飛ばされてしまっている。(武将、たとえば公孫賛などであれば問題は無いのだが。韓遂が止めとばかりに剣を構える、と同時に。矢が二本、韓遂へと放たれた。「おっ?」「何・・・?」韓遂はそれを難なく避け、夏侯惇と同時に矢を放った人物―――二人いる、を見た。その二人は兵の波を静かに掻き分け現れる。一人は女性、一人は男性。男性はごく普通(?)だが女性はなかなかに目立つ外見だった。両者、弓を手にしているが女性は背に自分の背丈の倍以上はある大槍を背負っている。「お前ら・・・」「夏侯惇将軍は大殿にとって不可欠。今ここで討たせるわけにはいかん」「そういうこった。卑怯は承知だが、うちの殿(公孫賛を指す)の胃の為に手出しさせてもらうぜぇ?」男の名は高覧、女の名は張郃。かつて、公孫賛配下として、袁紹軍相手に勇名を轟かせた二将。~~~楽屋裏~~~・・・一話で纏めようとしたら無理だったんだ、すまない。あいつです(挨拶全後半で分けます・・・XXX板の更新ですね云々、という話を感想で見ましたが【ありません】年を越したお年玉とかも【必要ないですよね】全て、皆様の脳内光景で答えをお出しください(ぁぁあと、干禁が婚約を知らない云々とありましたが、あれはシラを切っただけです(ぉ~~~また番外編~~~*これは、馬超らが逃走戦を展開した翌日のお話です。高順さんは自室に帰って来ました。疲れすぎて早く寝たいようです。プルプル(((;´×`)))キノウハヒドイメニアッタ・・・アレ? ダレカイルノ?「ようこそ」by周倉「えろえろな楽園へ」by李典 「歓迎いたしますわ、性 大 に !!」by麗羽工工エエエエエェェ(;´д`)ェェエエエエエ工*これはやっぱりイメージです。 モウイヤァァァア【イヤァーン】【ニュプッ】(;゜Д゜)【ジュプッ】【ヴビュゥッ】 コロサレルゥゥゥ*これは(以下略アーッ*翌日、3人の女性に寄り添われたまま寝床で真っ白に燃え尽きつつ、それでも【ピー】おっ勃てる高順が発見された。見つけたのは蹋頓で、死に掛けている高順を慌てて華陀のもとへと運んだそうな・・・。もげろ。~~~楽屋裏~~~【書きません】多分、ご無沙汰で欲求不満に陥った3人が廊下で出会って乱戦に持ち込んだとかそんなもんだと思ってください。私は知りません。収拾もつきません。XXX? 何それ?(ォイッ