【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第10話陳留にての一コマ。虹黒という心強い仲間(?)を得た高順はそのまま洛陽を出て陳留へ向かっていた。別段陳留に用事があった訳ではない。むしろそこは中継地点でしかなく、目的はその隣の徐州である。余裕があれば曹操とか見てみたいな、くらいは思っていたが考えてみれば自分を処刑する人間である。考えるのは実際に町に入ってからでいいかな。と思い直す高順だった。「いやぁ・・・これは凄い。」陳留に入っての高順の第一声はこれだった。洛陽ほどの規模ではないものの、それでも賑わいがある。洛陽はどちらかというば雰囲気が重い都市だ。それは年代を重ねた独特のもので・・・日本で言えば京都とかに近いかもしれない。その点で言えば陳留は活気に溢れている。その活気は年代を経た重みではなく、新興都市にある軽やかで新しい何かを感じさせるものだった。昔の陳留がどうだったかなどは知らないが、もし一代でこれだけの都市に仕立て上げたのだとしたら・・・曹操という人間はとんでもない存在だ。「超世の傑と呼ばれたのは伊達じゃないってことか・・・。」やはり、一番気をつけるべき存在だな。・・・まだ性別知らないけど。高順はその時何も考えていなかったのだが、今の高順は良い意味でも悪い意味でも目立っていた。理由はただ1つ。虹黒の存在である。2メートルほどもある、ほとんど見たことのないような巨馬。それに跨ってる高順。ありとあらゆる意味で目立ちまくっているのだが、当人は洛陽で慣れてしまっていたのかそのあたりに全く気がつかない。行きかう人のほとんどが「何あの大きな馬・・・」みたいな目で見ているし、声を潜めて色々と話もしていたのだが・・・全く気がつかない暢気な高順だった。勿論声をかけてくるような者など誰もいない。しかし・・・だからだろうか。空気を読まず声をかけてくる者がいた。「おい!そこの男!」声が聞こえてくる。明らかに女性の声だ。誰のことを呼んでるのか知らないが、名前くらいは言ってやるべきじゃないかなー。高順は自分に言われた言葉だと全く気がつかずこんなことを考えていた。「おい、聞こえてないのか!?おいっ!」まったく、天下の往来でそんな大声出して。やるなら他でやってほしいなぁ。←まだ気づいてない。「あーーー!聞け!て言うか止まれ!お前だ、そこの巨馬に跨ってる奴!」ここまで言われて鈍い高順もやっと気がついた。「へ?俺?」「そーだ!もっと早く気がつけこの馬鹿!」いつの間にいたのか、すぐ近くに紅いチャイナドレス、体の右側を覆うような紫色の鎧を着た女が立っていた。右の肩に髑髏をモチーフとした肩鎧をつけている。髪はオールバックにしているのだが、前髪を一筋だけピンと三日月のようにして垂らしている。スタイルも抜群で・・・美女、と言っても差し支えない。髑髏は悪趣味だと思うけど。「ああ・・・どうも申し訳ない。全く他人事のように思ってまして。」そう言いつつ高順は虹黒から降りる。「で、何の用でしょう?」「あ、ああ。」んん、と軽く咳をして少女は続ける。「その馬。私に売ってくれないか?」いきなり何を言ってるんだ?と高順は思った。外見を見れば自分が商人では無いことくらいわかると思うのだが。「・・・駄目です。」「何故だ、金なら出すぞ?」女は不満げに言う。「いや、金の問題ではなくてですね。この子は俺の相棒みたいなものなんです。」「相棒、だと?お前も金を払ってその馬をどこかから購入したのだろう?それ以上の金は払ってやる。」「確かにその通りですが・・・困りましたね。まだ出会って日は浅いですが俺にとっては家族も同然なんです。家族を売ってくれ、と言われてわかりました。と売らないでしょう。」「むう・・・。」高順は無意識のうちに虹黒の首を撫でていた。虹黒も気持ちよさそうに眼を細める。「ううっ・・・ど、どうしても売って貰えないか・・・?」「ええ、こればかりは。」「な、ならば・・・!」「はい?」「私と勝負しろぉっ!」女はどこからか禍々しい形の刀を持ち出してきた!「はああああっ!?何でそうなるの!?あとそんな馬鹿でかい刀どっから出した!?」「うるさいっ!私が勝ったらその馬を寄越せ!お前が勝っても寄越せ!!」「何その俺様理論!?どっちにしてもあなただけが得をする流れじゃないですか!?」「私はチマチマとしたことが大嫌いなんだ!素直に売ればこうはならなかったというのに!」そう言って女はどでかい刀を思い切り上段に構える。「チマチマした部分がどこにあったと!?万人に理解できるように説明を求めますよ可愛いお姉さん!」「!!」・・・何か動きが止まった。上段に構えたままピクリとも動かなくなる。「か、かかかっ可愛い!?なな、ななななな・・・何を言い出すのだ貴様!?」「いや、実際俺の主観からすれば普通に可愛いですからって何言わせるんですかあなた!?とにかくその物騒な物しまって下さいって!」高順もテンパっているためか、自分がおかしなことを言ってるのに微妙に気づかない。変な雰囲気で一触即発。周りにいた住人達も不安そうに・・・一部野次馬と化している者もいたが、見守るだけしか出来ない。だが、刀を振りかぶったままの女と高順の間に割り込んでくるものがあった。虹黒である。「な、何・・・?」「お、おい。虹黒!?危ないから下がってて!」後ろから高順の声。そして目の前には刀を振りかぶった女。虹色は下がらない。殺気を篭らせた眼でじっと女を見据える。女も予想外のことに驚きを隠せない様子だった。(な、何だ・・・?馬だぞ?たかが馬なのだぞ!?それが・・・自分から主を守るように立ちはだかるとは。しかもこの殺気は・・・!)本来、馬というのは臆病なものだ。体の大きさに似合わず、優しい部分がある。主人が未熟だとからかったりもする茶目っ気のあるものもいれば、本当に気性の荒いだけの扱い辛い馬だっている。だが、総じて言えば臆病な馬のほうが多い。それを理解しているからこそ主人のために立ちはだかるこの巨馬に女は驚き、畏怖を覚えたのである。「・・・。」「虹黒、下がるんだ!大丈夫だから!」それでも虹黒は下がらない。「おい、そこ!何をして・・・ん、姉者?」そこに人ごみをかき分けて誰かがやってきた。「あ、秋蘭・・・。」「・・・?」む、また美人さんが来ましたよ。今度やってきた人は青いチャイナドレス。今目の前にいる女とは対照的に理知的な感じのする女性だ。ただ・・・この人は今まで一触即発(?)状態だった女とは逆側のほうに鎧を着けている。髑髏の肩当も反対の左方向だ。左右対称、という言葉がしっくり来る。あと、両者共に胸まあいいか。しかし・・・髑髏が流行ってるのだろうか?「なんだ、姉者の起こした騒ぎだったか。」「な、なんだとは何だ。私は悪くなどないぞ。」弁解する女を横目に青いチャイナドレスの女性が高順の下までやってくる。まだ殺気をみなぎらせている虹黒を見ながら「随分と立派な馬だな。・・・怪我は無いか?」「え、はあ。ありません。」「そうか、それは何よりだ。どうせ、姉者が無茶を言ったのだろう?「馬を寄越せ、今すぐ寄越せ!」とか。」「その通りです!」「なんで解るんだ・・・?」「ははは、本当にすまない。許してやってくれ。・・・ほら、姉者も謝るんだ。」「おい、秋蘭!私は何も悪くないと・・・!」「ああ、解った解った。しかし、本当に立派な馬だな。姉者が欲しがるのも頷ける。」「うむ、その通りだ!」褒められたわけではないのに姉者と呼ばれた女は胸を張る。「はぁ・・・。姉者?頼むから厄介ごとを増やさないでくれ。ああ、申し送れた。私は夏侯淵。字を妙才という。先ほど姉者が呼んでいたのは真名でな。」「か、かこーえん!?」この人が?WHY?じゃ、向こうの人・・・夏侯惇???(ああ、やっぱり女性ですかそうですか。有名武将もいいとこの夏侯淵もやっぱり女性ですか?もう慣れましたとも。・・・うう、男の武将はいないのですか?少しくらい出て来てくれてもいいじゃん?俺、なんかどんどん肩身が狭くなってくよ・・・。)「お、おい。どうしたんだ?」夏侯淵が心なしか心配そうに見ている。「いえ、何でもありません何でも。は、はははははは。」「何でもない割には随分疲れているように見えるが。」「気のせいです。・・・じゃあ、あちらのおっかない人は夏侯惇殿?」「なっ!何故私のことを知っている!?」夏侯惇と呼ばれた女性は肩をいからせ高順に詰め寄ろうとするが、また虹黒に阻まれた。「あうっ・・・。」「はぁ。諦めろ姉者。どう見ても非はこちらにあるのだ。大人しくしていてくれ。」「そ、そんなぁ。しゅうらぁ~~~~ん・・・」「情けない声を出さないでくれ。・・・ああ、すまない。しかしな。何故姉者の事まで知ってるのだ?」うわ、しまった。またやっちゃったよ。知識があるから無意識にやってしまう。悪い癖だよ。言い訳ならある程度は思いつくが、さて。「そりゃ、有名ですもの。夏侯姉妹あっての曹猛徳。曹猛徳あっての夏侯姉妹、とか。外見までは知りませんでしたけどね。」「ほう、そうか。ふふ、その言葉を言ったのが誰かは知らないが中々の慧眼だな。ところでお前の名を聞いていないのだが。」「いや、俺の名なんて。耳汚しでしかないですよ。」「謙遜するな。この馬・・・虹黒と言ったか?これほどの馬にあれだけの覚悟と忠誠を抱かせるのだ。お前が只者ではない、ということくらいは解るさ。」「いや、本当に只者ですよ?・・・・・・まあいいか・・・。俺は姓を高、名を順と申します。」「高順、か。ふむ、覚えておこう。・・・ほら、姉者。何をぼーっとしているんだ?早く仕事に戻るぞ。」「え?し、しかし。馬・・・お、おい引っ張るんじゃない!?」「姉者も見ただろう?あの馬と高順の絆を。姉者がどれだけ脅迫しようとどうしようもないさ。ではな、高順。」妹に首筋をつかまれずるずると引きずられていく夏侯惇。「きょうはく・・・難しい言葉で言われてもわからんぞっ!おいっ、高順とか言ったな!私は諦めないからなー!おいこら、いい加減放せ秋蘭ー!?」そんなやり取りを見て周りの人だかりも少しずつ消えていく。一部「なんだ、つまんねー」という雰囲気で去っていく者もいたが。いつか泣かす。・・・しかしながら、まさに台風一過。あーいうの見てると丁原様とか朱厳様を思い出しますね。元気でやってるのでしょうか?「ぶる・・・。」「お、虹黒。悪かったな。」頭を撫でてみる。「命を助けてもらったなあ、今日は奮発しよう。リンゴたくさん買ってあげるからなー。」「ぶるっ!」こうして、一時だけのものではあるが、陳留での騒動は一旦幕を下ろす。高順は何の因果か後に夏侯姉妹と激戦を繰り広げることになるが・・・。それはまた、別のお話である。~~~楽屋裏~~~番外編その2です。やっぱり短いです。私の中での魏の扱いはこんなものですあいつです(どんな挨拶ですかやっと出てきましたね、魏武の人々。このシナリオでの曹操は現状は敵なのであまり扱いが良くないかもしれませんね。さて、次は除州に向かいます。その前に高順もそろそろ(人の)仲間を迎えたいところですね。次あたりに出るでしょう。先ほど誤字修正したのですが「あまり」を「あまち」て。死にたい(恥それではまた。