【習作&ネタ?】真・恋姫†無双 ~~陥陣営・高順伝~~ 第9話どうも皆様、高順です。今俺は洛陽にいます。洛陽。皇帝の済む中華最大の都市であり、首都。「うぁー・・・すっごい人の数。上党はやっぱり田舎だよなぁ・・・。」思わずこんな感想が出てしまうほどの人、人、人。都市の規模、人の数、店の多さ。何もかもが上党とは大違いだ。この地にはおそらく呂布や張遼がいるのだろう。だが高順には会う気はない。少なくとも今は。「あれから1週間か・・・皆元気にしてるかな?」彼が上党を出たのは1週間ほど前。丁原に願い出て職を辞してきたのだ。(丁原様には叱られるし、郝萌には泣かれるし、それを見た周りの方々からはニヨニヨされるし。散々だったよな。)何だかんだ言いつつも丁原も朱厳も郝萌も「無事に帰ってこい」と言っていたし、非番の兵士もけっこうな人数で見送りもしてくれた。両親を説得するのが辛いな、と思ってもいたが案に相違してあっさりと了承された。「お前が外の世界を知るべき時期が来たということだろう。」と。本当にいい人たちだ、と思う。(そうさ、いつか帰るさ。目的を果たしたら。)心に誓う高順だった。さて。高順が洛陽に来たのは理由がある。洛陽の場合は知り合いを増やす、ということではなく「この時代で一番賑わっている土地」であることが理由だ。味噌が流行るかな?もしかしてもう誰かが作ったのかな?というのを見極めたいというのがあった。幸いと言ってもいいべきかどうかは解らないが、やはり味噌はまだ自分(と作成協力してくれた職人)以外には作ることが出来ないようだ。実はこの職人達も高順の旅に同行したい、と言いだしていた。それを説き伏せるのにも随分と苦労したものだ。余談ではあるが、味噌作成は今のところ上党以外では行われていない。この時代、情報というものが周りに伝わる速度が極端に遅い。一般レベルでは旅人が「あそこでこのようなことがあった」とか、そんな程度。それも伝聞なので不明瞭なことこの上ない。正確な情報、というものが正確なまま伝わるかが怪しい時代なのだ。味噌自体、上党で浸透するのもまだ多少の時間は必要だろう。富裕層には人気があったらしく、相当な額で買い込んでいく人も多々見受けられた。量産体制があまり整ってないこともあり、作れる数にも限度があったせいで相当な値段設定だが、それでも買って行く人が多いのでよほど美味しいと思われているのだろうか。何人かが「味噌の作成方法を教えて欲しい」と頼んできたこともあったが・・・それを一蹴したのは味噌職人達だった。「俺達だって味噌作りを極めてねーんだ!そんな半端な技術を他人に教えられるかぁ!」と、こんな感じで。彼らは自分たちに作成方法を教えてくれた高順に感謝しているらしく、常々「いつか最高の味噌を作ってみせまさぁ。そんときゃ高順の旦那に一番に食ってもらいてぇ。」とまで言ってくれていた。だからこそ旅に同行したいと言ってくれたのだ。彼らにも家族があるし、またいつか帰ってくるから待っていて欲しい、と説得して何とか納得したもらえた。将来は不安そのものだったが・・・自分の周りには気のいい人ばっかりで、そこは幸いではあるな、と思う。そしてもう1つの目的。これは彼個人の欲求でしかないが・・・「良い馬が欲しい」というものだった。母親から贈られた馬も割と良い馬だったが、どうもこの頃疲れやすくなっていた。購入した時点で相当な年齢だったらしいし、それを思えば本当に頑張ってくれた、とも思う。その為母親に世話を頼み、軍馬からは引退させていた。今まで十分頑張ってくれたのだ。あとは穏やかに暮らして欲しい。そんな理由もあって、この旅では馬を利用せず徒歩で洛陽まで来た。相当高順に懐いていたので連れて行って欲しかったようだが・・・あまり無理をさせるのも気の毒だ。この洛陽は現在は商業都市としても一番賑わう場所だ。交易で取引される馬にもきっと良い馬があるはずだ。ただ、呂布たちに出くわしませんように・・・と内心ビビリまくってる高順だった。「うーん・・・良い馬・・・いないもんだなぁ。」馬を扱う店を何軒も見て回ったが中々いい馬が見つからない。何と言うかポニーとか軽種とかに近いものばかりだ。それも体格があまり良くない。実を言うと、高順が欲しいのは速度重視の軽種ではない。重種か中間種の体格の良い馬だ。別に史実に沿って、とかまでは考えていないがいつか屈強な騎馬隊を持ちたいなあ、と考えているので軽種では少々心許ない。重武装させてもまったく問題ない、という手合いの馬が欲しいのだ。(やっぱこの時代じゃ重種いないのかなぁ・・・よし、今度は交易品を扱うとこへ行ってみるか。)その後数日間探すが、やはり良い馬が見つからない。軽種か中間種で妥協するしかないかな?と思ったその時。ある一頭の馬が高順の眼に留まったのだった。交易店、と言ってもそれは様々なものだ。ちゃんとした建物を店として使用もしていれば、バラック小屋のようなちゃちな建物を使用している場合もある。その馬のいる店は「露天」であり・・・屋根も何もない野ざらしの店だった。そこに一頭の馬がいたのだ。体躯が凄まじく大きい。一目見た瞬間に(黒○号?)と思うほどの大きさだ。恐らく2メートル前後はあるだろう。体毛の色が黒・・・というか、青毛というべきか。日の光を浴びた部分が虹色に輝くかのような美しさだ。高順は脇目も振らずその馬のもとへ歩いていく。「はぁ・・・。」目の前で間近に見て高順は思わずため息をついてしまった。遠目から見ても相当大きいのに間近で見るとその大きさに圧倒されてしまう。馬のほうもじっと高順を見つめいていたが、すぐに興味を失ったのか、ふい、と視線を逸らしてしまった。「ふぇっふぇっふぇ、兄さん。この馬に目が留まったのかぇ?」「へ?」声の聞こえたほうを見ればすぐ近くに小柄な老人がいた。外套を被っているので良くはわからないが・・・声からして男性だろう。しかし、いつの間にいたのか。まったく気配に気づかなかった・・・。「ふぇっふぇっふぇ。そう警戒しなさんな。しかし、兄さんもお目が高いねぇ・・・。」「この馬、爺さんの店の売り物?」「おお、そうともさ。しかしなぁ・・・相当に気が荒い。今まで何人も買い求めに来たが。ふぇっふぇっふぇ。こいつは誰も背中に乗せようとせなんだわ。」馬は馬なりに人を見るってことかいな、と呟いて近くのゴザのようなものがひいてある場所に腰を下ろした。「兄さんもやめといたほうがええぞ。目の前まで近づいて頭突きを食らわなかったのにゃあ驚いたがの。」「頭突き・・・って。」「ふぇっふぇっふぇ。今まで買取に来た奴は全員頭突きを食らっとったわい。後ろから近づけば蹴られる。警戒し続けてずぅっと立ったまま寝てるでな。」ま、諦めたほうが身のためじゃて。と言ったまま会話が途切れてしまった。高順もしばらく考えていたが・・・。「な、爺さん。」「ん?何じゃ?」「それでも、この子を売りたいんだよな?」「そりゃあそうじゃ。高い金払って買い取り、ここまで連れて来たんじゃ。売れなくては困る。じゃが・・・半分諦めとるがな。」「買うよ、俺が。」「・・・ほほぅ?高いぞぇ?危ないぞぇ?」「ああ、構わない。それだけの価値があるんだ。惜しくないよ。」「ふぇっふぇっふぇ。ならば商談といくかいの?」それから高順は老人と幾ばくかの話をした。齢、病気などを持っていないか、等。結果、まだ若く、病気も怪我も無い。気性が荒々しい。そして性別が雌、この中国の馬ではない。ということも解った。そして値段であるが・・・これまた老人の言うとおり相当な高値であった。移送費や餌代、買い取った額も相当にかかったのだろう。正直に言うと、この国でも良質と思われる馬の十数倍はかかる。それでも高順は買った。その場で全額を支払ったのである。老人もまさか本気で全額を出すとは思わなかったらしく、絶句していた。「い、いや。兄さん。これは貰いすぎじゃ。まさか本気で全額出すとは思わんかった。この7割でええ。からかって悪かったの」と言って3割を返してきた。高順からすればまだ多少の余裕はあったのだが内心、肥料とか味噌作っておいて正解だったな、と考えるほどの額ではあった。さて、問題はこの後だ。どうにかして馬に認めてもらわなくては。とりあえず、目の前まで近づいても頭突きをされないということだけは解った。後ろから近づくのは・・・まだ危なそうだからやめとこう。うん。考えつつも、「体を触らせてもらえないかな?」と体を撫でてみようとしたのだが。手を噛まれました。「ぐぬうううう・・・ま、まさか噛まれるとは。」「ふぇっふぇっふぇ。いきなり体を撫でようとしてもそら無理じゃて。しかし・・・今まで来た奴は全て頭突きで追い返したというに。それだけで驚きじゃわい。」「むぅ・・・。」「まだ警戒しとるっちゅーこった。人間とて同じ。見知らぬ存在には警戒するのは同じことじゃな。」「・・・それだっ!」「んん?」「爺さん、今ので解った!どうすれば良いのか!」「ほ、ほお?」そうだ、簡単なことじゃないか。ついこの間まで俺は自分の馬・・・いや、購入したのは母上だけど。世話してたんじゃないか、自分の手で。こんな簡単なことに気がつかないなんてどうかしている。「爺さん、この子の好物って何だ?馬草(干草)?」「そうじゃな、馬草しか与えとらんでよく知らんが・・・人参はどうじゃ?」「よし、買って来る!」「え、おい、兄さん・・・。行っちまったよ。」そんなやり取りをして人参と馬草を買いに走った高順を横目で見つつ、青毛の馬は「ぶるる」と短く鳴いたのだった。~~~30分ほどして~~~「た、ただいま・・・ぜはー。」息を切らして高順が帰って来た。手にはざるの様な物とそこに乗せた一杯の馬草と人参、あとリンゴもあった。「なんじゃ、リンゴまで買ってきたんか?」「え、ええ。うちの子も好きだったので。」「うちの?なんじゃお主。馬飼ってたのか?」「ええ。最初から俺に懐いてくれていましたし、ここまで大変なことにはなりませんでしたけど。」「大事にしとったんかの?」「そりゃもう。俺にとっては家族ですよ。もう老齢なんで、実家で世話してもらうことになりましたけどね。今まで無理させた分、これからは静かに暮らして欲しいなーと。」「ほほー。」なるほどなぁ。馬を大事にしてたってことか。そういう何かを感じてこの馬も頭突きせんかったのかもなぁ。「さ、飯だぞー。」高順は馬の口当たりのとこまでざるを持っていく。青毛も警戒して匂いをくんくん、と嗅いでいたが、しばらくしてもそもそと食べ始めた。人参も食べたがリンゴが好みだったらしく、すごい勢いで食べきってしまった。体が大きいのでかなりの量を買って来たのだがあっさりと。だが、満足したらしい。それから、高順と馬の奇妙な共同生活が始まった。食事の世話は勿論、糞の処理などもする。(前の馬でも同じことをやっていたので違和感なくこなしていた。最初は嫌がられたが水をかけて体を拭く、ということもしてみせた。その甲斐あったのか、3週間ほど経過した頃には体を触られてもまったく嫌がる素振りを見せなくなっていた。老人は直ぐに「次の取引にいかなきゃならん」と西方へ旅立ってしまったが最後に「兄さんならきっと認められるさ。がんばりなよ」と言ってくれた。そして1ヶ月。高順は胸の鼓動を抑えつつ、青毛の背に鞍を乗せてみた。嫌がられない。手綱をくいくいと引っ張って歩行をさせてみる。これも嫌がられない。ならば、と後ろに移動してみる。蹴られない。もしかして、いける?乗せてもらえる?青毛の隣まで移動して首や体を撫でてみた。「ぶるる」と鳴きつつ気持ちよさそうに眼を細める。「・・・よし。」高順は意を決して背中に乗ってみようと青毛の体に手をかけてみた。すると、青毛は自分からしゃがみ込んだのである。「あ・・・。」やった。認めてもらえた。相棒として認識されたんだ。「な、涙が出そう・・・。」感激のあまりそんな言葉が出てしまう。青毛は「どうしたの?」みたいな眼で高順を見ていた。「よし、乗るぞ・・・。」そのまま鞍の上に腰をかけてみる。やった、乗れたよ。乗れたよ俺!自分で自分を褒めてあげたい。そのまま青毛がすっと立ち上がる。「お、おおっ・・・?」世界が高い。いや、広い。今まで見えることの無かったものが見えそうな気がする。今まで行けなかった場所でも簡単に行けそうな気もする。普通に乗る馬であればここまで高い視点になることはないだろう。今まで感じたことの無い開放感・・・いや、高揚感というべきだろうか?そんなものが高順の体の中を駆け巡っていた。「すごいな・・・これは。よし、少し歩いてみるかな?」街中なので流石に駆けさせる訳には行かない。手綱を握り、少し歩かせようと思ったが青毛は自分から歩き出した。高順は前に進もう、と思っていたが、自分から前に向かっていく。じゃあ今度は右に、と思ったところで右に方向転換して歩き始める。まさかとは思うが俺が進みたいと思った方向に・・・俺の意思を読んでるのか?「お前・・・○風か何かか?」「ぶるる?」よし、一度街の外へ出よう。そして広い場所で思い切り駆けさせよう。この子だって今までずっとこの場所につきっきりだったんだ。少しくらいは走り回りたいだろう。「な、ちょっと外に行って駆けようか?」「ぶるる。」かまわない、と言った感じの返事だろうか。「ん、そうだ。そういえば名前をつけて無かったよな・・・。」どんな名前にしようか。黒・・・いや、そこから王とかつけちゃ駄目だよな、うん。高順は考える。黒い体毛、そして光を浴びると虹のように輝く。・・・黒い・・・虹。「そうだな・・・ちょっと格好つけすぎかもしれないけど。虹黒(こうこく)としよう。」「ぶるるっ。」その後、虹黒と名づけられた青毛の馬は常に高順を背に戦場を駆け抜けることになる。虹黒は高順の人生の中、彼に仕えた将の誰よりも早く、誰よりも長く側にいたという。虹黒の忠義は誰もが認められるところであり、高順が死して埋葬されたときに、虹黒の遺骨も共に埋葬されるほどのものだった。だがそれは、まだまだ後の時代のお話・・・。~~~楽屋裏~~~どうも、あいつです。ようやく高順くんに背中を預ける馬が出てまいりました。モデルはいわずと知れた黒○ですねwそして、馬の種類ですが・・・この時代にはいないはずのペルシュロンという種類の馬です。WIKIなどで調べれば早いでしょうwさて、この旅編はあまり長くしないようにしたいと思います。最初の晋陽編だけでも8話いっちゃったので;さてさて、次に高順君が向かうのは何処でしょう?どうぞ、お楽しみに・・・。あと、1日で2話更新するのは無茶。(ぁ