アルカです。只今初等部五年生。
　
身長も150まで伸びました。子供のうちは女子の方が成長早いようです。
　
そんな私ですが現在怖いお兄さんたちに囲まれています。
　
第三話
　
話は一ヶ月前まで遡る。
　
　
最近、クルスの様子がおかしい・・・。
ぱっと見はいつも通りだけど、たまに酷く暗い表情になる。
この状態になったのは進級して二年生になった頃から。
新しいクラスになじめていない・・・？それとも・・・
　
とにかく、様子がおかしい。
今だって普段なら片付けるランドセルを置いて自分の部屋に行ってしまった。
・・・とりあえず、このランドセルを片付けるか。
　
ランドセルを持ち上げる。
そうすると、きちんと閉めていなかったのか中身が散乱して教科書やノートが変な形に開いてしまう。
　
「あ」
　
その教科書の内容が見えて・・・・頭の中が真っ白になった。
問題の教科書を持ってクルスの部屋へ向かう。
　
バタンッ！
　
「クルス！！」
「姉さん！？どうし、た、の・・・」
　
ドアを乱暴に開けて怒鳴り込んで来た私に驚いた様子のクルスだったが、私の手の中のものを見ると青ざめた表情になった。
　
「どういうことだ！これはっ！！いつからだ！」
　
私もかなり混乱している。クルスを怒鳴ってどうする。
　
小学生が思いつくような悪意ある落書きが書かれた教科書。
それが今、私から余裕を失わせている。
『おかま』『ちび』『ばか』『うんこ』『山田』などなど・・・他の教科書やノートも似たようなものだった。
これは、どう考えても虐めだ。
　
「ごめんなさい・・・ごめん、お姉ちゃん・・・」
「いや、いきなり怒鳴りつけて悪かった。
話してくれるか・・・？」
　
それから、クルスはぽつぽつと話し始めた。
　
クラスが代わってすぐにあった授業参観に親が来なかったことから、両親がいないという話になったこと。
それを面白がったガキ大将みたいな奴が、仲間と一緒にちょっかいを出し始めてきたこと。
クラスの皆は、ガキ大将が恐くて見て見ぬふりをしていること。
最近はエスカレートして持ち物を隠されたり、落書きされたり・・・・。
　
私に迷惑をかけたくなくて、話せなかったこと。
　
　
私は今でもクルスと一緒に風呂に入っている。だが、傷などを見た記憶はない。
暴行を受けてないのは幸いか。
いや、何が幸いだ！
私はクルスがこんな目にあってるのに気付けなかった！
原因になった両親と加害者の糞ガキどもと自分に殺意を覚える。
クルスは今、泣いている。
今まで我慢してきたけど、もう限界だったようだ。
「ごめんなあ、クルス。でも、これからは言ってくれれば私が助けてあげるから・・・・」
　
しばらくは、二人で泣きながら抱き合っていた。　
　
次の日、早速校長室に証拠品とクルスと一緒に突撃した。
「失礼します。校長先生！私の弟が虐められてます！」
「は？」
　
最初はポカンとしていた校長だが、頭に私の言葉が染みわたると話を聞いてくれた。
　
そして今、呼び出された三人のガキ供と校長室にあった机を挟んで向かいあっている。
　
「オレたちじゃねーよ」
「そうそう。自分で書いたんじゃねーの？」
「じゃあこいつら嘘つきじゃん」
「「「ぎゃはははは」」」
　
「きんたま燃やすぞ糞ガキ供」
「「「・・・・・・」」」
　
おっと、いけない。
初潮がきてからというもの、感情の振れ幅が大きい。
びーくーる、びーくーる。
　
とにかく！こいつらから言質をとらなきゃいけない。
今の私の発言で一番びびった奴に狙いをつける。
　
「ねえ、本当に君たちじゃないのかな？かな？」
「ち、ちがうよ、ぼくたちじゃ、ないよ」
「嘘だっ！！！」
「ひいっ！」
「ねえ？どうして嘘つくのかな？かな？」
「ごめんなさい僕たちがやりましたごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」
　
ちょろい。
ちょっと殺気ぶつけただけで白状するとは。
ん？クルスと校長がなんか引いてるな。
　
言質もとれたので、そのまま親呼び出し。
この麻帆良では寮暮しの学生が多いが、初等部のうちは親と生活している学生もいる。
相手の三人もそのタイプだったようだ。
三人の親は、こっちが引くくらい謝ってくれた。
こいつらは帰ったら死ぬほど説教されるのだろう。
ざまあ。
　
この時、ガキ大将（笑）が私のことを睨んでいたのに気付いていれば、あんなことにはならなかったのかもしれない・・・。
無駄に不安な感じにして見たが、気付いていても大して変わりなかった気もする。
　
三日後、帰宅途中の私の前にガキ大将（笑）と中学生ぐらいの男が立ちはだかった。
高学年になってからは授業が終わる時間が噛み合わないので、クルスとは別々に帰っている。
「兄ちゃん！こいつだよ！オレ、こいつに虐められたんだ！」
「おうおう、よくもオレの弟を虐めてくれやがったな」
　
はあ？
もしかしてそれはギャグで言っているのか。
　
「違います。私はガキ大将（笑）君を虐めていません。
というか、そのクズがうちの弟を虐めていたんです」
「人の弟をクズ呼ばわりすんなあ！」
　
駄目だ、話聞いてない。
というか、こいつらすっごいニヤニヤしてる。
全部わかった上で仕返しに来たのだろう。
兄の方も私を見る目付きから、ゲスな気配を感じる。
　
なんだろう、腹立ってきた。
本当なら消し炭にするところを親にチクるだけで済ませてあげた寛大な私に対してこの態度はなんだ。
今日は『あの日』でお腹痛いのに！
　
「「ぎゃあああああああ！！！」」
　
一般人に能力を使うわけにもいかず、普通に倒す。
身長が伸びたおかげで、化け物な身体能力を活かせるようになっていた。
　
それからというものガキ大将（笑）の兄が仲間をつれてきて、それを粉砕。
その次は、そいつらの先輩連中を玉砕。
そのまた次はそいつらの(ry
　
そんなことを繰り返すうちに、この麻帆良で最大最強の不良グループ『BLACKSPOT』に目をつけられ冒頭に戻る。
　
・・・・ねーよ。
なんだこれ。前世でリアルホーリーランドやってた時でさえ、ここまでとんとん拍子じゃなかったぞ！
と、いうより
　
「女子小学生相手に、得物を持った不良が50人。
恥ずかしくないんですか？」
「ふん。この麻帆良にはお前みたいな化け物が度々現れるんだ。
そういう化け物を、まだ小さいうちにシメるってのもありだと思ってな」
　
リーダーっぽいヤツに話しかけたが、返答はそんな感じ。
見た目を利用した訴えは通用しないらしい。
　
「はあ、じゃあ、ひとつだけ言わせてください」
「なんだ？」
「私が勝ったら、貴様ら全員私の下僕だ」
「「「「「！！！」」」」」
　
今の私の発言に( ﾟдﾟ)ﾎﾟｶｰﾝとなった近くの間抜けを三人ほどぶっ飛ばす。
　
そしてぶっ飛んだ奴らに視線を向けた奴の急所を蹴り上げる。
　
「はははははっ！」
　
私が目立ってきたのは分かってきていたが、たかが小学生にムキになる奴なんていないと思っていた。
だが、麻帆良は普通ではなかったらしい。今更だけど。
そこでピンときた。
私が悪童のトップに立てば、迂闊にクルスには手を出せないのではないか？
こういうのもなんだが、クルスは虐められっ子なオーラを出してる。
今回は解決したが、また同じことが起きかねない。
それに、私も正当防衛とはいえ敵を増やしすぎた。
そいつらがクルスに牙を向けないとも限らない。
だから、この『BLACKSPOT』の襲撃は渡りに船だ。
このグループのトップになれば、ほとんどの不良を私の傘下における。
　
「うらあっ！」
「遅い！」
　
ナイフを向けてきた男の顎を砕く。
　
「これでぇええ！！」
「効かん！」
　
後ろから鉄バットで後頭部を殴られたが、デスメガネの居合い拳を受け続けた私がそんなものにやられるわけがない。
　
「ふふふっ！はははっ！」
　
昔は複数に囲まれたら何もできなかった。
　
「私は！」
　
だが、今は体も大きくなり前世のように、いや、それ以上に動ける。
　
「今！」
　
そして屋敷での訓練、高畑との喧嘩、最近の不良どもの襲撃、前世の『俺』、全ての経験が
　
「この瞬間にも！」
　
懐かしい路地裏の空気で混じり合い
　
「強くなってる！！」
　
覚醒した。
　
　
　
　
　
　
ほとんどの奴らは片付いたか・・・・。
八割は入院コースだと思う。
　
「くそがあああああ！！」
　
まだリーダーが残ってたか！
あれは・・・気？
　
「リトルボーイ」
「ぐはっ！！」
　
思わず能力を使ってしまったけど、まさか気を扱えるとは。
　
「惜しかったな」
「てめえ・・・なんだその炎は！」
まだ喋れるなんて・・・タフだな。
「お前だって『気』を使えるんだろ。麻帆良なら不思議じゃあないさ。
まあ自分以外全員倒されるまで使わなかったところを見るに、隠す気はあるらしいが」
「・・・・」
「私のも黙っててくれ。たとえ喋ったとしても、信じる奴がいるかは分からないけどな」
「・・・わかったよ。
俺たちはこれからお前の下につく。
だから、もう許してくれ」
「駄目だ」
「なっ！」
　
まだ必要な作業が残ってる。
　
「私はな、甘く見られたくないんだ」
「なに・・を・・」
「何か策を使えば勝てるんじゃないか、とか、いつか下剋上してやる、みたいな反乱の芽は潰しておきたい」
　
クルスに手を出す、とかな。
　
「だから、これからお前をぐちゃぐちゃにする。一番強かったお前を見せしめにして、全員に恐怖を植え付ける」
「や、やめ」
「安心しろ。死にはしない。ちょっと熱いけどな」
「あ、あ、あ、ああああぁぁぁああああ！！！！」
　
前世以来、初めて感じる恐怖と畏怖の視線が、心地よかった。
　
　
　
　
　
　
「アルカ君！・・・・これはっ！」
「遅かったな、デスメガネ」
私が不良グループに連れられたのを見た誰かが通報したのだろう。
だが本当に遅い。不良は全員ノックアウトされてる。
「・・・・やりすぎじゃないかい？特に、今、君が持ってる、その男は」
「痕は残るだろうけど、日常生活には支障ないさ。
それより、今の私、凄くいい気分なんだ。
遊ぼうよ」
　
そう言って飛び掛かる。今なら負ける気がしない！
　
　
　
　
　
その日の拳は、今までで一番痛かった。
多分、叱ってくれたんだと思う。
　
Side：タカミチ
アルカ君が、僕たちの敵と似た目をしていた。
力に呑まれたもの特有の、濁った目。
だから、全力で潰した。
彼女はまだ、間に合うと思うから。
　
それにしても、送るって言ったのになあ・・・
　
Side：アルカ
「ぐすん、ごろず、ひっく、ごろじでやるううぅぅ」
あやうく前世の『俺』に戻るところを正気にしてくれたのには感謝する。
　
『私』はクルスのために生きるんだ、暴力は趣味ではなく手段。
　
だが、全裸だ。
昔とは違う。生理も経験したし胸も膨らんできた。
既に女性としての羞恥心を身につけている。
また見られた・・・お嫁にいけない。いく気はないけど。
「ごろずころずごろすころすぅぅぅ！」
全裸の上に煙草臭い上着を羽織り殺すと呟きながら泣く少女。
見つかったら社会的に死にそうだ。主にどこかのデスメガネが。
　
＜続く＞
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