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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第六話 「神の国 スカイピア」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:be9c7873 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/15 17:29
  
 “特急エビ”に連れられ、一味は帯のように空中に敷かれた雲の河を抜けて最高層の“白々海”へ突き進んだ。
 胸を燻る期待と、僅かな不安。風を切りながら駆け昇るメリー号の一味の気持ちは一つだ。
 やがて長い雲のトンネルの向こうに光が差し、メリー号は光差す雲の向うへと抜けた。
 そしてそこにあった風景に一味は喜びの声を上げる。


「島だ! 島があった!! 空島だ~~~~ッ!!」


───神の国 スカイピア

 そこはまさに人々が描く“天国”のような島だった。
 太陽に恵まれた陽気な気候。
 雲で出来たビーチには緩やかなさざ波がうちよせる。
 その奥には南国風の植物が並び、中央には舗装された白石の階段が島の中心街に向かって続いていた。
 白石の階段は島中に敷かれ、雲による起伏の上には白で統一された家々が立ち並び、中には宙に浮かんでいる雲の上にも家が建てられている。
 島の北東には、絡み合う巨大な二対のツタの中心を帯状の雲の河がアーチを描くよう流れ、通る船は無かったがどこか別の場所へと繋がっていた。
 一味は意気揚々とメリー号をビーチに向けて進めた。


「うほー! この島、地面がフカフカだ!!」

「うおおお!! こりゃスゲェ!!」

「空島ぁ~~~~!!」


 ルフィ、ウソップ、チョッパーの三人は待ち切れずにビーチへと走っていく。


「おい、錨はどうすんだ? 底がないんじゃないのかこの海?」

「いいんじゃねェのか、降ろしたら。あいつ等を見てるとどうやら足がつくみたいだからな」

「なるほど。……しかし、たまげた光景だな、まるで夢のようだ」

「確かに……言えてるな」


 錨を降ろしながら会話を交わすゾロとクレスに、ズボンのすそを折っていたサンジが、


「全く、あいつ等のはしゃぎ様と言ったら……ひゃっほ~~~う!!」

「おめェもだよ」


 バク転しながら島へと降り立ったサンジ。


「痛い、痛いっ! ごめん、ごめんって!!」


 甲板ではナミが暴れるサウスバードを逃がしている。
 上の服を水着に替えたナミに、サウスバードがささやかな仕返しをしていた。


「……空島か」


 クレスは空島を見渡して、頬が緩むのを自覚した。
 雲に囲まれた島。子供にペンを持たせ、空に浮かぶ島を描かせたら同じような情景が浮かぶかもしれない。そんな夢のような島だ。
 

「ねぇ……スカイピアって」

「ええ、ルフィが持ってきた地図の中にあった名前よ。 
 空から落ちて来たガレオン船は本当に雲の上を200年も漂っていたのね。あの時は、正直こんな空の世界なんて想像できなかったけど……」


 ナミは笑み浮かべ、メリー号から空島に向かって飛び降りた。
 雲の地面に降り立ち、雲の水が緩やかに跳ねる。


「ほら!! 体感しちゃったもの!! 疑いようがないわ!!」


 ナミは晴れ晴れとした表情で、騒いでいるルフィ達の下へと向かって行った。


「そうね……昔は航海や上陸が冒険だったわね」


 その様子を眺めていたロビンが誰に言うでもなく呟く。


「何言ってんだ。そんなもん気持ちの持ち方一つで変わるもんだよ」

「……大人になると少しずつ薄れていくものなのかしら?」

「どうだろうな……今はどんな気分だ?」

「どうかしら?」

「そうか……なら……」


 クレスはロビンに向け手を差し出した。


「行けば分かるさ」

「そうね」


 腕を引き、クレスはロビンと共に空島に降り立った。
 雲の地面は柔らかく、雲の水は陽気な気候との対比で冷たく心地よい。
 クレスはロビンに問いかける。


「どうだ?」

「さぁ……どうかしら?」


 ロビンは穏やかに微笑んだ。


「ロロノア! お前は行かないのか?」

「お前……そりゃ行くけどな。ハァ……あーもういい、先行ってろ」


 ゾロはめんどくさそうに頭をかく。
 クレスは首をかしげながらもロビンを促した。


「そうか、じゃあ行くか」

「ええ」


 クレスはロビンと共に雲の感触を楽しみながらビーチへと向かう。
 向かう途中で、ロビンと手をつないでいるのを見つかりサンジとの乱闘が勃発したが、一味的には特に問題は無かった。
 空島はどうやら地上とは全く異なった世界を形成しているようだ。植物なども種子が風船状だったりと特殊であり、ナミとチョッパーは雲を加工して作った椅子を見つけた。


「クレス~!! これどうやって食うんだ?」

「ん、どうした?」


 カボチャのような果実を抱えたルフィが食べ方が分からないのかクレスに問いかけた。
 クレスはルフィからその果実を受け取り調べていく。ヤシのような木に生っていたもので、軽く振ってみると中で液体が揺れる音がした。
 ココナッツの様なものかとクレスは判断し、とりあえずナイフで比較的軟らかかった裏面に『コ』の字の切り込みを入れ、ふたを開けるように固い皮を開けた。
 そして中に入っていた透明な液体に指をつけ、舐めとった。


「お、甘くて美味い。
 ココナッツジュースみたいなもんか……特に問題もなさそうだし、これでいいだろ。クルマユにストローでも貰ってこい」

 
 クレスはルフィに果実を手渡した。


「んんんめェええええ!!」

「クレス! おれのも開けてくれ!!」

「いいぞ。……オレも後で取ってこよう。甘いし、かなり気に入った。シロップでも混ぜよっかな」

「……おれのには入れんなよ」


 そんな時、雲のビーチにハープの美しい旋律が響き渡った。
 一味は音の方向へと目を向ける。サンジがハープを持った人物を指差した。
 背中に天使のような白い羽のある女性だ。透き通るような金髪は後ろで編まれ、髪を触角のように二つ立たせてその先を丸くまとめていた。
 女性は一味に振り返り、くすりと微笑んだ。


「へそ」


 女性は一味に向けそう言った。












第六話 「神の国 スカイピア」












 にこやかな笑みを浮かべながら女性は一味へと歩み寄った。
 するとゾロが見つけた狐のような白い毛の小動物が彼女の下へと駆けよっていく。
 女性は白狐をやさしく抱きとめ、一味に向け口を開いた。


「青海からいらしたんですか?」

「うん、下から飛んできたんだ。お前ココに住んでんのか?」

「はい、住人です。ココはスカイピアの『エンジェルビーチ』。
 私の事はコニスとお呼び下さい。そしてこっちは雲ギツネのスーです」


 コニスと名乗った女性はルフィ達が持っている果実に目を向けた。


「コナッシュを飲まれているのですね。もしかしてココへは何度か来られた事が?」

「いや、初めて来た」

「そうでしたか。ココナッシュの飲み方を知っていらっしゃるからてっきり」

「いや、あんた達が言う"青海"ってとこにも、似たような果実があんだよ」

「そうでしたか。初めてでしたら、何かとお困りでしょう。よければ何か力にならせて下さい」

「あ……それじゃ、君の視線に心が火傷をおおおおおッ……ナミさん痛い」

「邪魔」


 耳を捻りサンジをどけるナミ。
 コニスの口ぶりからすると観光目的の人間も多いのだろう。


「助かったわ。知りたい事がたくさんあるのよ。とにかくここは私たちにとって不思議だらけで」

「はい、何でも聞いてください」


 ナミはいくつか気になった事コニスに問いかける。
 コニスはナミの質問に丁寧に答えて行った。


「おい、海からなんか来たぞ?」

「ナメクジか?」


 そんな時、海から猛スピードで乗り物に乗った男がやって向かって来た。


「あ、父です」

「コニスさん、へそ」

「ええ、へそ、父上!」

「いや、何言ってんだおめェら」


 男はコニスの父でパガヤといった。
 パガヤはコニス達に手を振りながら、バイクにも似た帆のない船を操っている。
 コニスの説明によると、"ウェイバー"という空島独自の乗り物らしい。


「はい、すいません。止まりますよ」


 そう言ったものの、操作を誤ったのか、バガヤは盛大にビーチに向けて突っ込んだ。
 近くの樹木に頭から激突し、よれよれの状態で、


「みなさんお怪我は無いですか……」

「おめェがどうだよッ!!」


 コニスから一味の事を聞き、取れたての空の幸をごちそうすると言って、パガヤは一味を家へと招待した。
 一味は喜んで了承し、ナミはウェイバーの事が気になったのかその仕組みをパガヤに問いかけた。
 

「まぁ……“ダイアル”をご存じないのですか?」

「何だそれ?」


 ダイアル。
 クレスとロビンは過去にそんな言葉を聞いた事を思い出した。


「なあ……もしかして“ダイアル”って貝みたいな何かか?」

「ええ、そうです。貝の死骸を使ったものですね」

「えっ!? クレス知ってんのか?」

「昔、ロビンとグランドラインからの品を横流ししている店に行った時に見つけたんだ。
 あの時は確か、スイッチみたいな殻長を押した時に風が吹いてびっくりしたんだが、もしかして同じ原理か?」

「その通りです。“風貝(ブレスダイアル)”といって、ウェイバーはコレを動力にしているんです」


 ルフィはウェイバーが気になったのか、早速乗ってみる事にした。
 だが、ウェイバーは風貝(ブレスダイアル)の動力を生かすために船体が軽く作られていて、僅かな波にも舵をとられる。
 動かすには、波を予測できるくらい海を知っている必要があり、なおかつ繊細な操作技術が求められる。
 ルフィには乗りこなせる乗りものでは無かった。波に弾かれ、海に投げ出され、沈んで行く。
 空の海でも能力者はカナヅチのままのようで、下に突き抜ける寸前でサンジとゾロに助けられた。
 対照的に海を知りつくしたナミは、ウェイバーを完璧に乗りこなしていた。ルフィが嫉妬して「沈め」と毒づいたが、サンジに殴られて舌を噛んでいた。
 ナミはもう少しウェイバーに乗って遊ぶらしく、一味はナミを置いてパガヤの家へと向かった。
 





「みなさんは空島は初めてなのですね」


 パガヤとコニスは家に着くまでの間に空島に関する説明をおこない、一味の質問に答えた。
 空の生活は『雲』と『貝(ダイアル)』を基盤とした文化だ。

 雲に関しては、普通の雲とは異なり、凝結核に海楼石に含まれる成分“パイロブロイン”と呼ばれるものが関係している。
 雲で出来た地面と海をパガヤは“島雲”と“海雲”と呼んだ。角質の粒子であるパイロブロインが水分を得た時、その密度の差によって二つの性質に分かれるらしい。
 また、雲はある程度人工的にも加工する事が可能で、一味も通った雲の道“ミルキーロード”や雲の椅子などはその一種であった。

 貝(ダイアル)に関しては、パガヤの家で実物を見せてもらい、説明を聞いた。
 空で取れる貝の死骸はそれぞれに特徴があって、光、火、風、音、映像など様々なのもを“蓄える”事が出来る。
 空の人間はその性質を“ダイアルエネルギー”として利用し、生活をおこなっていた。

 雲と貝(ダイアル)どちらも地上に比べて資源に乏しい空の生活には切り離せないものであった。


「さァ出来たぞ!! “空島特産フルーツ添えスカイシーフード満腹コース”だ!!」

「んまほ~~~~!!」
 

 パガヤの家で一味はサンジが腕をふるった空島料理を心から堪能する。


「おい、ナミさんはどこへ行ったんだ?」


 サンジは一人ウェイバーで遊んでいるナミを呼ぼうとしたのだが、エンジェルビーチにナミの姿は無かった。


「いるだろ、海に」

「いや、いねェ」

「じゃ、ちょっと遠出でもしてんだよ。ほっとけって」

 
 楽観的に構えるゾロ。
 だが、コニスとパガヤの顔には焦燥が生まれていた。


「父上……大丈夫でしょうか?」

「ええ、コニスさん。私も悪い予感が……」

「なんだ? どうした?」


 スカイロブスターを頬張りながら二人に問いかけるルフィ。
 コニスは目を伏せながら口を開いた。


「このスカイピアには何があっても絶対に足を踏み入れてはならない場所があるのです。
 その土地はこの島と隣接しているので、ウェイバーだと直ぐに行けてしまう場所で……」

「絶対に足を踏み入れちゃならない場所って何だ?」

「聖域です。───神が住む土地『アッパーヤード』」


 コニスの言葉に一味は皆箸を止めた。


「“神”がいるのか!? 絶対に足を踏み入れちゃいけない場所に?」 

「はい、ここは“神の国”ですから、全能の神<神(ゴッド)・エネル>によって治められているのです」

「へェ~」

「ちょっと待てルフィ!! お前今何を考えた!! 
 絶対に足を踏み入れちゃならない場所ってのは、絶対に入っちゃなんねェ場所って意味なんだぞ!!」

「そうか……絶対に入っちゃなんねェ場所かぁ……」

(((……絶対に入る気だ)))


 上機嫌なルフィ。
 ロビンのグラスにコナッシュのワインを注いでいたクレスが口を開く。


「それにしても……自称か名称か知らないが、“神”称号を持つとは、とんでもない野郎だな」

「あ、あの! くれぐれも神への冒涜はおやめ下さい。……神は全能なる力をお持ちなのです」

「ああ、すまん。別にアンタ達の神にケチをつけようってワケじゃないんだ」


 本気で焦った様子のコニスにクレスは発言を訂正する。
 だが、コニスの様子にクレスはただならぬ想いを感じていた。
 コニスとパガヤが言う“神”がどれだけの力を持つかは知らないが、碌な人間ではなさそうだ。
 口ぶりからすると“神”というのは統治者の称号に聞こえるが、コニス達がその者に抱いているのは尊敬などでは無く、間違いなく恐怖だ。
 

(……案外、まともな国じゃないのかもな)


 いろんな国を旅して回ったが、統治者の名前に恐怖を思い浮かべた国がまともな国だったためしがない。
 クレスは空島に潜んだきな臭さを感じ始めていた。






◆ ◆ ◆






───同時刻 アッパーヤード


 ウェイバーでの水上ドライブを楽しんでいたナミは巨大な植物が生え茂る密林の、雲では無く土で出来た島にやって来ていた。
 そびえ立つ樹木はどれも樹齢は1000年は超えているだろうと予測できるほど巨大で、地面にまで現れた根が小山のように盛り起っている。
 『リトルガーデン』の太古の密林にも入った事のあるナミだが、その景観にはしばし圧倒された。
 その時だった。


「な、なに!?」


 森の奥からミシミシと言った何かが軋む音と、悲鳴が聞こえてくる。
 その音はウェイバーに乗り島を眺めるナミのすぐ傍までやって来ていた。
 森では一人の男が追われていた。
 追手は三人。それは凄惨な狩りであった。
 一人は、サングラスにスキンヘッドの男。指笛を鳴らすと巨大な犬が追手に襲いかかった。
 二人目は、火を吹く怪鳥に乗ったヘルメットとゴーグルの男。怪鳥を駆り、獲物に食らいつこうとしていた犬を蹴り飛ばした。
 三人目は、玉のように丸い胴をした男。二人目が得物にランスを突きたてようとしたのを、ボールのように軽快に跳ねながら邪魔をする。
 

「え……っ」


 茫然と立ち尽くすナミ。
 その背後で不気味な装填音がした。
 バッと後ろを振り返る。そこには一味を襲ったゲリラがバズーカ砲を構えている。
 引き金が引かれ、轟音と共に三人の中心に破壊の花が咲いた。
 わけのわからない状況にうろたえるナミ。そんなナミの前に追われていた男が息も絶え絶えに這いつくばりながら助けを求めた。
 ナミが混乱した頭で何かを言おうとした時、急に空が輝き眩しいくらいに明るくなった。
 そして逃げる男に向けて、圧倒的な熱量と光が轟音と共に、大地を砕く鉄槌となって叩きつけられた。
 思わず目を覆うほどの閃光が消えた時、そこに男の姿は無かった。あるのは真っ二つに裂かれた大木と削り取られたれた大地。そして雲に空いた奈落のような穴であった。


(なにコイツ等……ヤバい……)


 咄嗟にナミは島の影に隠れた。
 肩で荒い息を制しながら、見つからないように息をひそめる。
 島では四人目の男が姿を現した。蜘蛛の足のような髪の奇妙な男だ。
 男は腕を組みながら何故か白目で他の三人に向けて口を開いた。ナミはそっと聞き耳を立てる。


「───次の"不法入国者"がすでにこの国に侵入している。青海人8人を乗せた船だとアマゾンのばあさんから連絡が入った」

(うそ……青海人8人って私たちの事?)


 一味は神の国において犯罪者となっていたのだ。






◆ ◆ ◆






 行方不明のナミを探すために一味は早めに食事を切り上げてメリー号へと戻っていた。
 ルフィだけはビーチで、エンジニアだったパガヤに沈没船で拾ったウェイバーを手渡している。パガヤの好意で修理を引き受けてくれるそうだ。
 そんな彼らにほふく前進で近付く白いベレー帽を被った集団があった。
 <ホワイトベレー部隊>隊長のマッキンリー率いるスカイピア警察の一団だ。彼らは機敏に立ち上がり、敬礼。そして一味に向けて毅然と声を張り上げた。


「あなた達ですね!! “青海”から来られた不法入国者8名というのは!!」


 こう言われて戸惑うのは一味の方だ。
 

「なんだよ不法入国って?」

「入国料10億エクストルだったかしら……確かに払ってないものね」

「でも、それでも『通っていい』って、あのバアさん!!」

「確かに言ってたが、……実際、通っちまったからな。この国で正しいのは向う側だ」


 なんとなくそんな気はしていたが、面倒な事になったものだ。


「言い訳はお止め下さいまし」


 マッキンリーは一味に向け、『天の裁き』の第11級犯罪にあたる不法入国の説明をおこない、罰として入国料の10倍の値段を支払う事を求めた。
 ベリーでの値段を聞いた所、一味全員で800万ベリー。とても払える額では無かった。
 ホワイトベレーは一味が沈没船で拾ったウェイバーにも難癖をつけ始めた。とても相手にする気になれず、一味は立ち去ろうとする。


「ちょっと待って!! その人たちに逆らっちゃダメよ!!」

「ああっ! ナミさん無事だったんだね!!」


 探しに行こうとしていたナミがウェイバーに乗って猛スピードで走って来る。







「逆らうなって、……じゃあ800万ベリーの不法入国料を払えんのか?」

「……よかった、罰金で済むのね。……800万ベリー」


 ナミはホッと息を吐いて、アクセルを全力で踏み込み、


「───高すぎるわよ!!」


 そのままウェイバーでマッキンリーを轢き飛ばした。
 マッキンリーは錐揉みしながら雲のビーチを転がって、後方の石壁に叩きつけられた。


「はっ! しまった、理不尽な多額請求につい……」

「オイ」


 ナミはウェイバーをパガヤに返し、手短に礼を言ってルフィの腕を引いてメリー号まで逃げる。
 マッキンリーは怒りに震え立ち上がる。ナミの行為は公務執行妨害の第5級犯罪。島流しの極刑に相当した。
 島流しとは、身動きのできない小さな雲の上で永遠と空を漂い続ける罰。つまるところ死刑だ。空から突如船が落ちて来たのもこれが原因だった。


「ひっ捕えろ!!」


 マッキンリーの号令の下、部下達が一斉に弓を構える。
 ルフィはナミを先にメリー号に行かせ、ゾロ、サンジ、クレスは甲板を蹴った。


「雲の矢(ミルキーアロー)!!」


 引き絞られた弓から一斉に矢が放たれる。
 だが、ただの矢では無い。矢の先端には“雲貝(ミルキーダイアル)”が取り付けれており、矢の通った軌道に雲の道を生んだ。
 ホワイトベレーの隊員達はその上をスケート靴型のウェイバーに乗って滑走。取り出したナイフでルフィに襲いかかった。
 だが、ルフィはゴムの腕を伸ばし易々と隊員達のナイフを避け、目を見開く隊員達を“ゴムゴムの花火”によって一斉に殴りつける。
 ルフィが打ち洩らした隊員達はゾロ、サンジ、クレスの三人が的確に片付けた。


「ところでナミ……ウチの船の経済状況は?」

「……残金8万ベリー。クレスが時々食料を調達してるから、マシにはなったんだっけど」

「8万? そんなにねェのか?」

「そうよ、もって二日三日」

「何でそんなに貧乏なんだ!! 船長として一言言わしてもらうけどな、もうちょっと金の使い方ってもんを……」

「お前の食費だよ」


 ホワイトベレーは全員倒され立ち上がる者はいない。
 倒れ伏したマッキンリーはくぐもった笑いを上げた。マッキンリーは一味に指を差し宣告する。


「バカどもが……大人しくしていればいいものの……。
 貴様等はこれで第2級犯罪者……!! 泣こうがわめこうが、“神の島”の神官たちによってお前達は裁かれるのだ!! へそ!!」


 呪いのように言い残し、マッキンリーは意識を飛ばした。
 

「これで立派な2級犯罪者だな」

「ハッ、中途半端なこった。いっその事、第1級になっちまうか」

「空でも追われる身か、それにしても“神の裁き”か……気になるな」


 追われる身になった一味はとりあえず身を隠すことにした。
 “雲の果て(クラウド・エンド)”と呼ばれる東の果てに青海へと戻る道はあるらしく、ナミはそこを目指すことを提案する。
 しかし、肝心のルフィが"神の島"に行こうとウズウズしていて、冒険する気満々だった。
 ナミはむくれたが、ルフィ、サンジ、ウソップの3人は準備のため一端パガヤの家によるらしい。残りのメンバーはメリー号の出発準備を進めた。

 一味が第2級犯罪者となって僅か数分。
 この時既に“裁き”は始まっていた。






「アイツ……!! もう、本気で行く気でいるわ」

「お前だって知ってるだろ、ああなりゃ止まらねェよ」

「ホントに怖いのよ!!」

「おれはどっちでもいい……おれに当たるな」

「チョッパー、アンタは私の味方よ……ね゛ェ?」

「え?」ビビるチョッパー。

「……脅すな」

「ロビン、……二人でルフィを倒さない?」

「何がしたいんだ航海士」


 船に乗り込み、クレス達は三人の帰りを待っていた。
 そんな時、メリー号が浮かぶ雲の海に黒い影が差す。不意にメリー号を激震が襲った。


「なに!?」

「船の下だ!!」


 現れたのは“白海”で見たのと同じ“特急エビ”。だが、その大きさは段違いだ。
 “白々海”名物“超特急エビ”。供物を運ぶ神の使いであった。
 メリー号はその巨体の上に持ち上げられる。そして後ろ向きに進み始めた。


「どこかへ連れて行く気だ!! おい、全員船から飛び降りろ!! まだ間に合う!!」

「だって船は!?」

「心配すんな、おれが残る」

「……いいえ、そんな事も出来ないようにしてあるみたい。大型の空魚達がほら……口を開けて追って来るわ」

「あの群れじゃ……戦うのは無理か」


 高速で進む超特急エビの後ろには大型の空魚達がついて来ていた。
 海に飛び込めば間違いなく襲いかかって来るだろう。
 ロビンとチョッパー、能力者を二人抱えた状況ではクレスも戦えない。ロビン達を“月歩”で運んだとしても、どちらにしろ何か手を打たれる可能性がある。


「エビをやっつけたらどうだ?」

「無駄だ。見たところ船の両端に大穴を空けられてる。……エビを倒せばこの船は沈む。たぶん何をしても手遅れだ」

「……おそらくもう始まってるのよ」
 
「『天の裁き』か、……追手を出すんじゃなく、おれ達を直接呼びよせようってわけだな。横着な野郎だ」

「じゃあ、またあの島へ!?」


 神の使いによって、メリー号は禁断の聖地『アッパーヤード』へと誘われる。
 彼らは“供物”。試練を受ける者達にとっての人質であった。











あとがき
神の裁きスタートですね。クレスは人質ルートです。
次もがんばります。ありがとうございました。


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