『ジャヤ』という島の西。
そこは夢を見ない無法者たちが集まる政府介さぬ無法地帯。
人が傷つけ合い笑う、夢に破れた落伍者とリアリスト達の楽園。
───夢を語る事無かれ。そこは嘲りの町『モックタウン』
ジュー=ウォールの航海日誌
第二話 「嘲りの町」
永久指針(エターナルポース)の示すとおりにメリー号を進め、一味は『ジャヤ』と呼ばれる島に辿り着いた。
西側の港町へと入り、競い合うように立ち並ぶ船を横目に抜け、比較的人目につかない位置に停泊する。
島の外からはリゾートのような雰囲気に見えた島であったが、町に近付くにつれその空気は消えた。
一味を迎えたのは殺伐とした怒声。町中では誰かが殺し合っていた。だが、周りを見渡してもそれを咎める様子は無く、むしろ手を打ち囃し立てている。
「……や、ヤバそうな町だな」
「おれ、今日は船にいるんだ」
「そうね、賛成」
無法者の町。
ウソップ、チョッパー、ナミは速攻で町に入るのをためらった。
「何だかいろんな奴がいそうだなこの町は」
「楽しそうな町だ」
逆にルフィとゾロは意気揚々と町へと歩を進める。その様子にナミ達は泡を食った。
この町に寄ったのは空島への情報を得るためだ。だが、あの二人ならばこの無法者たちが集まるこの町で問題を起こさないわけがない。三人の中では限りなく不可能に近いと答えが出ている。そうなれば情報を得られず、空を指し続けるだけの方位指針に一味は立ち往生するしかないだろう。
「それじゃダメなのよ」
「あっ、ナミ」
ナミが意を決したように立ち上がり、船から降りて先に行くルフィとゾロを追い掛ける。
ウソップとチョッパーは心配ではあったが、ルフィとゾロがいるため大丈夫だろうとその後ろ姿を見送ることにした。
「何だよ、ナミさんが行くならおれも行くぞ」
突然落ちて来たカモメを調理していたサンジがキッチンから顔を出した。
ナミを追うように船を出ようとするサンジにウソップとチョッパーが全力でしがみ付く。
「お前は行くなァ!! お前まで行っちまったら……も、もし、この船が襲われたら……ど、どうすんだ!!」
「行かないでくれよォ!! サンジ~~~!!」
「……わ、分かったよ……離せ!!」
涙目で迫って来た男二人をサンジが引きはがす。確かに二人が言っている事も的を射ている。サンジまで町に出れば船に残る戦力は激減するだろう。
「ん? そういや……」
サンジは船の中を見渡した。そして、新たに仲間となった二人を探す。
「ロビンちゃんとパサ毛は?」
「ホントだ……いねェ」
「二人なら町に行くって、クレスが言ってた」
「何ィ~~!? 二人でだァ~~~ッ? フザケんなァ!! やっぱりおれも行くぜ!!」
「ぎゃあああああああああ!! 止めてくれェ!! 行くなァ!! 行くなァ!!」
◆ ◆ ◆
モックタウン 町中。
ガヤガヤと騒がしい町中をクレスとロビンは進んでいく。
「モックタウン……嘲りの町」
「碌でもない場所だ」
クレスはため息交じりに町を眺めた。
強烈な酒気の漂う、枯れた木板の敷かれた道路の退廃的な町だ。
町には、酒におぼれ道中で平気でいびきをかく者、殴り合う者、女を巡ってのトラブルで殺し合う者、それを囃し立て賭けまで始める者、そんな碌でなし達がそこら中にいた。
町を歩く二人の前に酔っ払いらしき男が現れる。
クレスは正面から肩にぶつかるように歩いて来た男を避け、懐に伸ばされていた男の腕をとった。男の方を向く事も無く、腕を捻り上げ、男が苦悶の表情を作った瞬間にクレスの裏拳がその顔にめり込んだ。一瞬で意識を飛ばして男は倒れ込んだ。
「まったく……碌でもない」
ロビンの方に手を伸ばしていたら今の百倍は痛い目を見ただろう。
「取り合えず服の調達をしたいんだけど」
「そうだな、オレも買っとくか。後は……まぁ、『空島』の話でも聞いてやろうか」
「空に浮かぶ島。……ふふふ、ロマンね」
「しかし、空島か……。与太話にしかならないレベルだけどな」
「ダメよ、そんな事言っちゃ。あの子達は本当に空に行くつもりなんだから」
「わかってるって、そういうのは無粋だしな。それにしても……あるのかねぇ、『空島』」
「もう、クレス嬉しそう」
「そうか?」
「そう」
クレスは手ごろな店がないか辺りを見渡しながら歩いた。
リゾート地として開発されたこの島は意外にも店は多い。集まる人間が海賊達でなければもっと違った街並みとなっただろう。
暫く歩き、クレスが思い出すように口元をほころばせた。
「まったく……面白い奴らだよな」
「あの子達の事?」
「ああ、普通はコンパスが上を指したら、指針を戻すように考える。空に島があったとしても、そこに行く手立てが未知数じゃ行きようがないからな」
「そうね。現にこうやってこの島についても空に行く事だけを考えてる。安全に前に進もうとするならこの島のログに変更したらいいのに、あの子達はそうはしない」
「あいつらみたいなのを世間では"バカ"って言うんだろうが……」
クレスは隣を歩くロビンを見た。
「オレは嫌いじゃない」
「私もよ」
ロビンはやさしく笑って同意した。
二人は当初の予定通り、服を始めとした必要用品を買い込んだ。
ロビンの服はナミの借りものだったため、買ったものに着替え、現在は白地のシャツと落ち着いた色のレザーのジャケットとパンツに同系色のテンガロンハットを被っている。
クレスもまた痛んでいた上着を取り換え、ラフなジャケットを羽織った。
その後、二人はこれからの事を考え情報収集のために目に着いた酒場に立ち寄った。
店内はわりとマメに清掃されているのかそれなりに清潔なのだが、昼間だというのに酒を求める大勢の客でごった返していた。
クレスとロビンが店内に入った時の反応も酔っている為か露骨で、ロビンを見て口笛などで囃し立てる者、隣のクレスを見て聞こえるように舌打ちする者もあらわれた。
酒場などではそれなりによくある反応なのでロビンは淡く笑って受け流し、クレスはピンポイントで殺気を飛ばし黙らせた。
二人はカウンター席に着き、適当に注文して時間を潰す。店主とそれなりに会話を交わして打ち解けた時に、ふとロビンが切り出した。
「この辺りで『空島』について何か知っている人っているかしら?」
ロビンの問いに店主は眉根を寄せ、盛大にため息を吐いた。
「やめときな、ねぇちゃん。ここいらでそんな与太話持ちだすもんじゃねェよ。下手したら町中の笑いもんになるぞ」
「ふふ……そうね、気をつけるわ。でもね店主さん、そんな話でも少し興味があるの」
「興味……? もしかして『金塊』のことか?」
「どうかしら? でも、面白そうな話ね。よかったら話していただけるかしら?」
店主の問いに、ロビンは意味ありげに笑った。
情報を得る際は相手に想像させる事も重要だ。そうすれば相手はこちら側の立場を推測して自分たちが知らない情報を話してくれる。
店主の言った事は初耳だったが、なかなか興味深い内容だった。
「飲みに来た客が何人か言ってたんがな、何でもこの一帯の深海で『金』が採れるらしいんだとよ。
過去の文明がどうだかとか言ってたが、たまたま聞いた話しだからな詳しくは知らん。だけど、探すのは止めた方が良い。この辺は<大猿兄弟>の縄張りだからな」
「なるほどね、興味深いわ」
ロビンが得た情報から憶測を立て、次に必要な情報を得ようと問いかけようとした時。
「その話ならオレが知ってるぜ」
ドカリと客の一人が乱暴にロビンの隣の席に腰かけ、卑下た視線でロビンを舐めるように見回した。
クレスは速攻で男を殴り飛ばしたくなる衝動を抑え、男の周り探った。
テーブル席には仲間と思われる者達が座っており、同様に卑しい視線をロビンに向けている。海賊か何かなのか、店の半分以上をこの男のグループが占めていた。
「そう? よかったら話していただける?」
特に気にした様子も無くロビンが男に問いかける。
「いいぜ。だが、タダってわけにはいかねェだろ?」
───あ~ヤベ、コイツ殺してぇ。
だが、クレスは何とか今は自制した。今は情報収集中だ。
「あら、おいくらかしら?」
「う~ん……そうだなぁ……そっちの兄ちゃんをほっといて、オレらに少し付き合ってくれたら考えてもいいぜ」
男の仲間と思われる者達が数人立ち上がり、クレスをロビンから遮るように取り囲んだ。
クレスのこめかみがヒクついた。青筋が浮かび上がる。
───よし、殺そう。
だが、無理やりに無表情を張り付けて、クレスはロビンの判断を待った。
「そうね……なら、先に何か情報を頂ける?」
「いいぜ!! じゃあ、まず一つ。モンブラン・クリケットという男がいくつかの情報を持っている」
「その先は?」
「この先はねェちゃん次第だってことだな。ぎゃはははは!! よーく考えた方が良いぜ?」
「そう……どうやら少しは知っているようね」
ロビンは薄い笑みを浮かべた。
魔性とで言うべきか、その笑みは神秘的でありながらもどこか酷薄であった。
その意味を男達は直ぐに理解することになる。
「クレスを置いてあなた達に少し付き合うんだったかしら?」
「そうだ!! なに、直ぐに終わるって。どうだ? どうするんだ?」
ロビンは足を組み、告げた。
「いやよ。ありえないわ」
「は……?」
男が疑問符を浮かべた瞬間、クレスを囲っていた者達が一斉に吹き飛んだ。
その者達はそれぞれが的確に男の仲間と思しき者にブチ当たり、重なるように壁や床に叩きつけられた。
クレスは呆然とする店内の中でゆっくりと立ち上がる。今のクレスは戒めのとれた狂犬だった。
「さて、何から始めようか。取り合えず喋れたらいいか?」
言うなり、クレスは男に一瞬で詰め寄って男の足を払った。そして、男が宙に浮いたと同時に万力のような力で男の頭部を握りカウンターに叩きつけた。その威力にカウンターが陥没する。
己を襲った事態が理解できず、男はただ訪れた壮絶な痛みに苦悶の声を上げるしかない。通常ならば意識を飛ばしてもおかしくは無い攻撃だったが、クレスの力加減は巧みで男は意識を残されていた。
「ダメよ、クレス、あんまり乱暴しちゃ。その人にはいろいろと聞きたいことがあるんだから」
「了ー解」
茫然としていた男の仲間たちだったが、目の前の事態に一斉に浮足立った。
それぞれに武器を取り出し、クレスとロビンに襲いかかろうとしたした瞬間───その者達にいくつもの腕が咲いた。
腕は的確に首の骨を極め、一瞬でその者達の意識を落とした。
「邪魔しないで」
ロビンが倒れ伏した者達を一瞥し、冷たい目でクレスに拘束された男に問いかける。
「そのクリケットという男の居場所を教えなさい」
「早く吐いた方がいいぞ。引き延ばしたところで意味は無い」
冷たい視線を向けるロビンとクレスに、男は口内がやたら渇いていくのを感じた。
男から情報を絞り出して、クレスとロビンは店内を後にした。
店主には後腐れがないようにある程度の金を握らせたが、どうやら店が壊されるのは日常茶飯事のようであまり気にはしていなかった。
情報をもとに島の地図を購入し、対岸の東に印を付ける。そこにクリケットがいるらしい。
二人は用事を済ませたので船に戻った。だが、少し中の様子がおかしい。ルフィとゾロがボロボロでナミが怒り狂っていた。
「ずいぶん荒れて、どうしたの?」
「何かあったのか?」
帰って来たクレスとロビンに尻尾を踏まれた猛獣のように怒り狂っていたナミが矛先を向けた。
「ロビン!! クレス!! あんた達が『空島』がどうとか言いだすからこんなことになったのよ!! もし在りもしなかったら海の藻屑にしてやるわ!!」
「いや、理不尽すぎるだろ」
「あ……今はそっとしといてやってくれ、って言うより近づかねェ方がいいぞ」
喧嘩かと思ったが、この島にいる海賊のレベルでルフィとゾロをココまで傷つけられる人間がいるとも思えなかった。
ルフィとゾロは過去の事と割り切っているのか特に気にした様子もないが、居合わせたナミだけが傷ついた本人たち以上に激怒しているといった状況らしい。
二人は取り合えず理由を聞いた。
◆ ◆ ◆
───数十分前。
クレスとロビンと同じく町に出たルフィ達は海賊に喧嘩を吹っ掛けられた。
彼らは『空島』を求めるルフィ達を笑い、嘲り、侮辱した。
空島など夢物語だ。追いかけるなどくだらない。この世にある幻想の全てがバカらしい。海賊が夢を見る時代は終わったのだと。
自身の夢を一方的に貶されたルフィはその喧嘩を───買わなかった。
それは狂気の沙汰といってもいい。罵倒され、殴られ、酒をかけられ、唾を吐かれた。だが、ルフィとそれに付き合ったゾロは無防備に立ち続け何もすることは無かった。
相手の気が済むまで殴られ続け、店中の嘲りの中を後にした。そんなルフィ達に声をかける者がいた。
「空島はあるぜ」
黒い髪と黒いひげの巨漢。
買い込んだチェリーパイにかぶりつく歯はいくつも欠け、服の間からのぞく無駄毛如が何にも無精ったらしい。
一件浮浪者見えそうな男だが、野獣のような瞳が黒い炎のように鈍く燃えている。底知れない闇のように、どこか不吉な雰囲気の男だった。
「今の喧嘩はそいつらの勝ちだぜ。お前の啖呵も大したもんだったぞ、肝っ玉の座った女だ!! ゼハハハハハハ!!」
男は体中を血と酒で汚し道端に倒れ込んだルフィとゾロを『勝者』として称賛する。
ルフィとゾロが汚れを払いながら立ち上がる。ルフィは麦わら帽子をかぶり直し、ゾロは男に視線を投げかけた。
男は酒瓶を傾けて酒をあおり、ルフィ達に向けて口角を釣り上げた。
「アイツ等の言う“新時代”ってのはクソだ」
そして男は両腕を広げて語る。
「海賊が夢を見る時代は終わったって? えェ!? オイ!!」
それは誰に対しての言葉か、男の言葉は意志を持ち、世界に対し宣戦するかのように高らかに響く。
それは欲望の肯定だった。夢というのは誰もが一度は見る己が掴もうと願う野心。男はそれを歓喜し歓迎する。
男は酒を呷り、また大笑。
そして、島全体を振るわせるような勢いで手に持った酒瓶の底を地面に叩きつけた。
「─── 人の夢は終わらねェ!!! ───」
男が叫んだ瞬間、世界は男とルフィ達を残して停止したかのように感じられた。
「そうだろ!!」
ルフィとゾロは何も言わなかった。
突然叫び出した男に一瞬唖然となった町中だったが、直ぐに元の喧騒を取り戻す。通行人はすれ違いざまに次々と男を嘲笑する。
だが男はその嘲笑の中でなお語り続ける。
「人を凌ぐのも楽じゃねェ!!
笑われて行こうじゃねェか。"高み"を目指せば出す拳の見つからねェ喧嘩もあるもんだ!! ゼハハハハハハハ!!」
正面から真っ直ぐに男はルフィ達を覗きこむ。男にとってはそうやって正面から語り合う資格があったのかもしれない。
ゾロは「行くぞ」と二人を促し、ルフィは静かに男と視線を交差させる。
「オオ、邪魔したみてェだな。先急ぐのか?」
座り込んでいた地面から男が立ち上がる。
そしてルフィ達に背を向けた。
「行けるといいな、『空島』へよ」
振り向きざまにそう言って男は喧騒の中に消えて行った。
ルフィもまた男の行き先を追う事なく歩き出した。
「ねェ……あいつ『空島』について何か知っていたのかも……何者かしら?」
「さァ……それに"あいつ"じゃねェよ」
「あいつじゃない? じゃあ何?」
ルフィの言葉の意味が分からず、ナミは問い返す。
そんなナミに前を歩いていたゾロが額から流れる血を拭う事も無く答えた。
「“あいつら”だ。……たぶんな」
それきりルフィとゾロはさっきの男に着いて口を閉ざした。
次に会うときは敵同士。そんな気がしていた。
◆ ◆ ◆
「なるほどな……喧嘩を買わなかったのか。バカだなお前らも」
「フン……もう過去の事だ」
「やっぱり“バカ”だよ、お前ら」
「うるせェ」
ゾロからある程度の事情を聴きだし、クレスは納得し笑みを作った。
それは誇り高い喧嘩だったのだろう。相手の海賊とルフィ達では戦うべき理由がなかった。
相手は自分たちの前に立ち塞がった訳でもなく、ただ横から笑っただけ。そんな相手を倒したところで仕方なかった。
「で? そのクリケットとか言う奴はそこにいるんだな?」
「ああ、夢を語り町を追われた男らしい。このまま進めばその内つくだろうよ」
メリー号はクリケットという男に会いに行くために東の対岸へと進んでいる。
モンブラン・クリケット。その人物の事をクレスはどこかで聞いた事がある気がしていた。
当然、クレスはクリケットという男に会った記憶は無い。だが、頭のどこかでその名に似た人物の事が引っ掛かっていた。
そんな時、双眼鏡を覗きこんでいたウソップが声を上げた。
前方には船がやって来た。オラウータンの顔をした船首の中央に大きな樹が生えた船だ。
「何だァ? ありゃ?」
「そう言えばこの辺は<大猿兄弟>の縄張りだとかって言ってたな」
クレスはめんどくさそうに息をついた。
目をつけられたのかオラウータン顔の船はメリー号の前までやって来ていて、船の上からオラウータンに似たやたら髪の長い男が専用の椅子に腰かけながらこちらを観察している。
ショウジョウ海賊団大船長<海底探索王ショウジョウ>。懸賞金3600万ベリーの賞金首だ。
「フン……まったく、何処の誰かと思ってハラハラしたぜ」
「思い切った顔してんなぁ……何類だ?」
「人類だバカヤロー」
ルフィは気楽に、無意味にハラハラしていたショウジョウに話しかけている。
「何やってんだあいつ?」
「知るか、ほっとけ」
その後、ルフィとショウジョウとの間で意味のない話がしばらく続き、ショウジョウがルフィに『ココはおれの縄張りだから通行料を払え』という事となった。
縄張りという言葉に、ルフィがマシラを思い出し、ついでに蹴り飛ばした事を告げると、マシラの兄弟だったショウジョウは怒り狂った。
「マシラの敵だァ!! 音波!! 破壊の雄叫び(ハボック・ソナー)!!」
ショウジョウはマイクを握り締め熱唱する。
その声は破壊のノイズ。超音波のように物体に浸透し、破壊する。
だが、その攻撃は近いものから順に効果を表すようで、ショウジョウは自身の船を盛大に壊していた。部下が止めるように懇願しても自身の声が大きすぎて聞いていない。
一味は怒りを発散しきり元に戻ったナミの指示によりショウジョウの船から離れることにした。
迅速にショウジョウの船から離れる一味。だが、声はやがてメリー号まで破壊をもたらし始めた。もともと険しい船旅で満身創痍に近いメリー号は修理個所から壊れて行く。
「ヤバいな……このままだと沈むぞこの船」
「オイ!! クレス、ぼさっとしてねェでそっちの帆を引っ張れ!!」
「ああ、わかった」
“嵐脚”を飛ばしての妨害する案も浮かんだが、今は逃げる方が賢明だろう。
一味はショウジョウの声から逃れるために一目散に逃げ出した。
あとがき
結構さらりと進めましたが、黒ひげの部分だけ書かせていただきました。
次の話でおそらく空島まで行きます。
次もがんばりたいです。