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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第三部 プロローグ 「コードネーム」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/11 11:13
───アラバスタ王国


偉大なる航路上のサンディ島にある砂の王国。
首都はアルバーナ。ログのたまる期間は5日以内。世界政府加盟国。

グランドライン有数の文明大国と称され、人口は1000万に至る。
国王のネフェルタリ・コブラは善政を布いており、国民の生活は安定している。
街には活気が満ち溢れているが、その一方街の外には広大な砂漠が広がり砂嵐などの災害が猛威を振るう。
また、砂漠気候のため慢性的な水不足が発生している。



厳しくも豊かなこの国が後の事件の舞台となる土地である。













第三部 プロローグ 「コードネーム」













「良い国だな」

「そうね、とても賑やか」


クレスとロビンはアラバスタのギャンブルの街レインベースの一角にいた。
辺りはロビンの言う通り賑わいを見せている。
人々の表情は明るく、生き生きとしている。

二人は人込みの中を歩く。
通り過ぎる人々には二種類の人間がいた。
平然と歩く人間と、暑さに耐えかねた様子の人間だ。
前者はこの国の人間で、後者は外来の者なのだろう。

アラバスタの日差しは強い。
この地に住まう人々には日常ではあるが、初めてこの島に訪れる人間にとっては一種の脅威だ。
暑さに辟易する人間も多い。

そんな中でクレスとロビンの表情に変化は無かった。
この国の気候に対し、不平を言うことも無い。

二人はこの地を訪れるまでに様々な気候の土地を旅してきたのだ。
砂漠に出れはまた別であろうが、我慢できないレベルでは無かった。


「やっぱ、この国じゃ水が高いな……。
 この様子だと、飲食店でも水はサービスしてくれなさそうかも」

「それは仕方がないんじゃないかしら? この国じゃ水は何よりも貴重でしょうし」


簡単な経済の話だ。
需要量が大きく、供給量が少なければ当然値段は上がる。


「まぁ、水に関してはしょうがないか。そう言えば、何か買うものってあったっけ?」

「いつものように、必要なモノはだいたいそろえてあるはずだから大丈夫の筈よ。
 宿もさっき部屋を取ったし、やらなくちゃいけない事はだいたい済んだわ」

「そっか、なら問題は “コレ” か……」


クレスは腰元に下げたウエストバックに目線を落とした。
狩り道具を中心として様々なものが納められたその中に一通の手紙があった。






“歴史の本文” というものがある。
世界中に点在する、歴史を示した石碑だ。
決して砕けない硬い石に特殊な古代文字で歴史が刻まれていて、その文字は古代文字の知識を持つ者にしか解読出来ない。
そしてそれらは “空白の百年” と呼ばれる歴史上の謎を解く鍵だとされている。
ロビンとクレスはこの石を求めて世界中を旅していた。

しかし、世界政府は “歴史の本文” の探索および解読を死罪と定め禁止している。
そのために、旅路は困難を極め、個人レベルでの探索では難しいと考えた二人は組織力を求めた。

二人は過去にもいくつもの組織に所属してきた。
しかし、所属した全ての組織は二人の “オハラの悪魔” と言う忌名に耐えきれずに壊滅していた。
故に所属する組織は慎重に吟味した。
直ぐに潰れてしまうような弱い組織では意味がない。しかし強大すぎる敵の前では、強いだけでも意味がない。
最適なのは大きくも隠遁性に富んだ “秘密結社” とも言うべきそんな組織だ。



手紙を受け取ったのはそんな時だった。

手紙には差出人などの表記は一切なく。
文面にはただ、



────── “オハラの悪魔達” 諸君らの力を借りたい。



それだけが書かれていた。

届け人は手紙と共にアラバスタへの永久指針を手渡すと、二人の前から直ぐにその姿を消した。






「場所はレインベースのカジノ “レインディナーズ” だったかしら?」

「……ああ、港でまた手紙を渡されたしな」


二人は前方にそびえたつ、バナナワニがシンボルのピラミッドのような建物を見た。
この街においても一際大きな建造物。そこが二人の目的地だ。


「それにしても……アラバスタとはな」

「心配?」

「ああ、この辺ははよりにもよって “七武海” の縄張りだろ。
 ……わざわざ自分から敵の口の中に飛び込んでいくってのもな」

「……情報によれば、これから行くレインディナーズのオーナーでもあるものね」

「何が出てくるかねぇ……。
 そんなとこを選ぶとは、よほど自信があるようにみえるけどな」

「もしくは逆なのかも……」

「と言うと?」

「そこが一番安心できる場所だと言う事」

「……なるほどな」


ロビンの言うことには一理ある。
何らかの交渉や相互利益によって、不干渉または庇護下にでもあるのかもしれない。
七武海は政府の犬などと呼ばれていても、もともとは凶悪な海賊だ。
裏でそのくらいのやり取りがあっても何ら不思議は無い。
もしその推測が正しければ組織としての大きさはかなりのものになるだろう。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「まずは接触してからね」






 ◆ ◆ ◆






レインディナーズはカジノの街と呼ばれるレインベースの中にあるカジノで最大級のものだった。
クレスとロビンが以前までに所属していた組織のゆうに倍以上はある。
豪奢なカジノでは幾人もの人間が賭博を楽しんでいた。
カジノにいる人間の身なりを見ればどうやら上流階級向けだけでは無く、一般の人間にも手広く開放しているようだ。


「さて、いつになったら迎えが来るのかね?」


そう言ってクレスは目の前にあるスロットのボタンを押す。
軽やかなリズムで叩き込まれた文字は全て 「7」 スロットは壊れたようにメダルを吐き出した。
そして、クレスのそばに新たな箱が積まれる。
クレスにとってはスロットの数字を合わせることなど、そう難しいことでは無い。


「そう、焦らないの」

「それもそうだな、まぁ気長に待つか」


ロビンがクレスにグラスを手渡す。
その瞬間に周りにいた男たちが残念そうに舌を打つ。
ロビンに声でもかけようと思っていたのだろう。
それを受け、クレスはロビンに見えないように男たちに睨みをきかす。殺気も飛ばした。相当本気だった。
男たちは青ざめたように目線を反らす。全員が身の危険を感じていた。

そして、何事も無かったようにクレスはロビンからグラスを受け取った。
発泡酒のように見えるが実は炭酸のジュースだったりする。


「……虫のように湧きやがって」

「?」


ロビンから受け取ったグラスに口を付け、クレスはまたスロットに向かう。
叩き潰すような勢いで弾かれたスロットは悲鳴のようにコインを出し続けた。

その後もクレスとロビンはカジノで賭場を楽しんだ。
二人はカジノで働いていたこともある。
その経験を生かし、クレスの動体視力にロビンの能力を加えれば、荒稼ぎも可能だ。
その気になれば小さなカジノなら破産させることも出来る。
だが、二人は力を押さえ純粋に楽しんだ。
余りに荒稼ぎしすぎると、店の人間に目をつけられたりするものだ。
それでも他の客から見たら十分な勝ちを上げている事には変わりなかったのだが。


そんな折に二人は店の支配人に声をかけられた。
マネージャーはしきりに恐縮した様子で二人を先導し、VIPルームへと続く道へと案内する。


「わ、私はここまでお連れするようにオーナーに申しつけられましたので」


時間にしてちょうど二時間たってからの呼び出しだった。
予測できた展開だが、やはり先の展開に不安が募る。
しかし、それを顔に出すことは無かった。


「御苦労さま」

「あ、あの……どう言ったご用件で?」


七武海のオーナーに直接呼び出されるなどただ事ではない。
そう感じたのか、支配人は不安を隠しきれない様子で尋ねる。


「さぁ? 直接聞いてみたらどうだ?」

「め、めっそうもございません」

「なら、この辺でいいな。案内ありがとよ」


マーネージャーを残し、ロビンとクレスはVIPルームへと続く赤絨毯を踏みしめた。

二人並び奥へと続く道を進む。
扉までの道のりがやたら長く感じられた。

クレスはこの先にいる人物に緊張を感じずにはいられなかった。
マネージャーはオーナーからの呼び出しだと言った。
そうなればこの先にいる人物はおのずと絞られる。
罠で無いという保証は無く、交渉の結果次第では戦闘にもなりかねないのだ。
もしも、この先にいる人物が最悪の想像の場合は、生半可な覚悟では逃げる事すら難しい。
クレスは幼少時に青キジによって世界レベルの強さと言うものを見せつけられている。
当然、警戒姿勢にもなった。


二人は二択の分かれ道を越え、VIPルームへと通じる重々しい扉の前に辿り着いた。
そして、そこで立ち止まる。


「この先か……」


クレスは巨大な扉の前で呟く。
この扉をくぐればおそらくもう戻れない。
これから接触する組織がただの営利団体だとは思わない。
組織の形態からして、企んでいることはただ事ではないだろう。


「今ならまだ戻れるぞ」


クレスは隣に立つロビンに問いかける。


────── “オハラの悪魔達” 諸君らの力を借りたい。


書面にはこう書かれていた。
これを読み解けば、 “オハラの悪魔達” としての自分たちの力を欲しているのだ。
一般に古代文字の解読を政府が禁止しているのは歴史の本文に記された “古代兵器” 復活の可能性の為だ。
そんな力を持つ人間を必要として招き入れるとは、まともな組織では無い。


「 “大丈夫” ……夢を叶えるにはこの道しかないもの」


様々思いが込められた「大丈夫」だった。
今まで生きるためや自分たちの為に様々ことに手を染めて来た。
そして、求める道はこれしかないのかもしれないのだ。


「……そうか、今更だな」

「クレスの方こそ戻るのなら今よ」

「それこそ今更だな」


クレスは困ったように答える。
まさか自分の心配をされるとは思っていなかった。
自分は進んででこの道にいるのだ。戻る気など無い。


「じゃあ、行くか」

「ええ」


二人はその重く高い扉を確かな意志を持って開いた。


扉の先は広々とした空間だった。
エントランスを抜けた先には大きな階段がありそこを降りると広いホールとなる。
そこは、長く大きなディナーテーブルを始めとした豪奢でありながらも品の良い調度品が並べられている。
しかし、それでありながらどこか冷たさを感じさせる空間だ。


「地下の一室か……」

「水槽の中みたいね」


部屋にある窓の外に広がる光景は巨大なバナナワニが水中を泳ぎ回っているという光景だった。
レインディナーズの周りは湖ようになっていた。
どうやら、この部屋はカジノの下に造られているらしい。


「誰もいないのか?」


広々とした空間にはクレスとロビン以外誰の人影も見当たらなかった。
それは流石におかしい。
だが、クレスの呟きをよそにその声は二人に届く。


「──────ようこそ わがカジノへ。ギャンブルは楽しんだかな?」


部屋の隅に設置された執務の為のテーブル。
今までそこには誰もいなかった空席の筈のそこからその声は聞こえた。
その瞬間、部屋の重力が倍になったかのような圧迫感を受けた。
異様なまでの存在感だ。


「「!」」


何も無かった筈の空間に、サラサラと砂の粒が風に運ばれるように集まり、その姿を形作る。
原型を留めぬ能力は悪魔の実の中でも一際その存在を異にする “自然系” の能力だ。
この地に乗り込むにあたって当然、敵となる可能性のある人間の能力は調べた。
悪魔の能力は唯一無二。ならばこの人物は一人しかいない。


「よく来た “オハラの悪魔達” 
 ニコ・ロビンにエル・クレス、諸君らを歓迎しよう」


分厚いロングコートを羽織った、顔に横一線の大きな傷跡がある男だ。

その男はゆっくりと葉巻を燻らる。
辺りに男の吐き出した煙が広がった。


「こりゃ、まいったな」

「……ええ」


反射的にクレスの身体がロビンの前に出た。

考えれば当然の帰結でもある。
何らかの形で関わって来るとは思っていたが、こう来るとは思わなかった。


「まさかこんな形でお目にかかれるなんてね」

「ああ、出来れば会いたく無かったよ。
 “七武海” サー・クロコダイル…………!!」


二人の反応を見てクロコダイルは笑う。
重くのしかかるような声だ。


「クハハハ ……自己紹介は不要のようだな。
 では単刀直入に言おう。

 ────────── “歴史の本文” を読めるらしいな」


威圧感を持った笑いを浮かべながらクロコダイルは言う。


「何が目的だ? 古代文字なんか読めたとしても大した得にはならないぞ」

「ただ興味がある。
 そこに記された古代兵器と言うモノにな、そしてそれを手に入れたい」


一撃で島一つを吹き飛ばすと言われる古代兵器。
確かにそれは存在する。確固たる事実だ。


「……やはりあるのね、この国に」

「ああ、確実に存在するだろう。その在処を記した歴史の本文と共にな」

「それはどこ?」


急性なロビンの質問。
やはり、歴史の本文が絡むとどこか冷静さが欠ける。
しかし、それを責めるのは余りに酷だ。
絶望的だった手がかりがそこにあるのだ。


「なに、そう急ぐ事も無いだろう。
 だがその前には、重要な確認が必要だ」


クロコダイルはその底の知れない視線で二人を見た。
それは過去に二人が受けた視線の中で最も強いものだった。


「───貴様らは、おれに従うか?」


重要な確認と言いながらも絶対の有無を言わせぬ物言いだ。
実際、否定した瞬間には間違いなく命を奪いに来るのだろう。

ロビンの肩が僅かに震えた。
この男に従う。
それはつまりは片棒を担ぐと言うことだ。
その全容は分からないが間違いなく碌でもないことだ。
大勢の人間を巻き込むことになるだろう。

クレスは全ての判断をロビンに任せる事にしていた。
ロビンの好きにさせる、この選択はロビンにとって重いものだ。
二人で旅をしているものの、歴史の本文を真の意味で求めているのはロビンだ。
クレスは自らの願いをロビンに重ねているに過ぎない。
歴史の本文を求めての選択ならばロビン次第なのだ。

クレスはロビンが選んだなら、どちらに転んだとしても良かった。
彼にとって一番はロビンだ。それは何においても優先される。
無責任だとも思ったが、その代わりにその責任は全て負う覚悟はあった。

僅かな沈黙の後にロビンは答えた。


「ええ、従うわ」

「……なら、オレも構わない」


クロコダイルは口元に形だけの笑みを作る。


「いいだろう、ならば諸君らを迎え入れよう。
 おれの初期段階の目標は達成された。これで本格的に計画を実現に移せる」


これだけの力を見せつけておいて、初期だとは皮肉以外の何物にも感じない。


「おれはこの国を根幹から潰す。
 さすれば諸君らが求めるモノの情報も得る事は容易いだろう」

「……わかったわ。
 ならば私達を歴史の本文があるところまで連れて行きなさい、そうすれば兵器の情報は貴方に譲ります」

「いいだろう。
 おれにとっては歴史なんぞ無価値にも等しい、欲しいのは世界最悪の “軍事力” これだけだ。
 これからはおれの下で働くことになるだろう。存分にその力を振るいたまえ」


ここに一つの協定が成立した。
全ての始まりとなる協定だ。


「一ついいか?」


不意にクレスが発言する。
クロコダイルが眉をひそめる。
ロビンも僅かに困惑した。
この場面でのクレスの発言はいささか異様だった。


「……不服か? エル・クレス」

「そう睨むなって、不服なんか無い。
 お前の下に付くことはオレ達にとっても有益だ」


クロコダイルも元につけば、安全面でも最大限の保証がされるだろう。
別にその事自体に不満は無く、むしろ喜ぶべきことだ。


「別に今交わされた協定を反故にする気なんて無い。……オレが言いたいのは個人的なことだ」


そう言ってクレスはロビンの頭に手を置いた。
大人が子供に対してするような、優しいものだ。


「オレとしてはコイツが心配でね。
 お前の下で働くことは構わないが、オレの位置図けはロビンの私兵って事にしてくれないか?」

「何が目的だ?」


一触即発のような空気だ。
クロコダイルの眼光は強まり、ロビンも僅かに硬直していた。
クレスはそんな空気を打ち払うように息を漏らす。
争う気は始めから無い。


「目的と言っても大したものじゃない。
 さっきも言った通りコイツが心配なだけだ。
 オレ達の立場を考えればおのずと理由も分かるだろう」


幼少時に賞金首となり、そこからずっと政府の目を流れ続けて来たのだ。
クレスの言葉も筋が通っていた。


「……過保護なことだな。いいだろう、お前の条件を認めよう。
 ただし、妙な真似をしたら、ニコ・ロビンの方から殺すぞ」

「ああ、分かってるって。
 オレとしてはロビンのそばにいれればそれでいい」


クレスとクロコダイルの間で視線が交差する。
お互い何も話さない。ロビンですらも息苦しさを感じる、そんな沈黙だった。


「……フン、まぁいい。
 今日はこれで終わりだ、詳細については後日に書状にて伝えよう」


クロコダイルは興味を失ったようにクレスから視線をそらした。






 ◆ ◆ ◆






「どうして、あんな事言ったの?」


ロビンがクレスに詰め寄る。
クロコダイルとの面会を終え、二人は取っておいた宿に帰っていた。
しかし、この宿も今日限りだ。
明日からは組織の方で高級ホテルの一室を手配してくれるらしい。
クレスはどちらかと言えば庶民的な方が好きなので少し残念だった。


「何の事だ?」

「今日の最後の事よ」


クレスのごまかしもロビンには通用しない。
相手を考えれば最悪の場合交渉は決裂していた可能性もあった。


「別に他意は無いよ。
 それよりもあの男を見たか?」


また誤魔化すような口ぶりにロビンは怒りそうになったが、クレスの言葉が気になった。


「どういうこと?」

「恐らく、アイツは自分以外の人間を一切信頼して無い。
 不要になれば、誰であろうと迷いなく切り捨てるだろう」

「……そうね」


それはロビンも感じていたことだった。
傲慢で自己中心的な人間には過去にも出会った。
クロコダイルはその中で最も強大な存在だった。


「気をつけろ、あの男の下で働くと言うことはそのリスクを背負い続けることになる」

「……分かったわ、注意する」


クレスがロビンの私兵となることを望んだ一番の理由はクロコダイルを警戒してだった。
正式な部下となればどうしても融通が利きにくい。
いざという時にロビンのそばに立てないかもしれない。
しかし、クロコダイルもクレスの考えを読んでいるだろう。
読んだ上で条件をのんだ。ならば、クレスが不利益を引き起こせば間違いなく殺しに来るだろう。


「……それにしても今日は疲れた」


クレスは安物であろう硬いソファーに転がった。
そこから見えるのは低い天井だ。


「……もう」


ロビンはそんなクレスを見てため息を漏らした。


日も既に傾き空を闇が覆う。
砂の王国の夜は空気が澄んでいて幻想的だった。

クレスはゆっくりと目を閉じた。
早いが眠るのも悪くない。

だが、そんなクレスを邪魔するかのように宿のドアから一通の手紙が差し出された。
ロビンがそれを拾い読む。
このタイミングで来るのは間違いなくクロコダイルからの書状だろう。


「あら……」

「どうした?」


ロビンはクレスに書状を放る。
クレスはそれを寝たままの状態で受け取った。


「見ての通りよ」


ロビンの言葉に従いクレスは書面に目を通す。
簡潔な事務的な報告。
クレスはそれを読み終わった瞬間に小さく笑った。


「はは……コードネームか」


クロコダイルが考案した組織形態は徹底した “秘密結社” だった。
クレスとロビンを傘下に加えたことによってその組織を本格的に立ち上げるらしい。
それに先だって、クレスとロビンにコードネームが言い渡された。

クレスはその名前を見て笑った。
クロコダイルがどう言う意図でこの名前を自分に与えたは分からない。
だが、どうせ碌な理由では無いことは確かだ。

クレスは立ちあがりそしてロビンに向き合った。
そして、冗談めかしてその名前を呼んだ。


「これからよろしく。
 “副社長” “最高司令官” のミス・オールサンデー」


ロビンもそんなクレスに倣いその名を呼んだ。


「こちらこそよろしく。 “副社長秘書” “私だけの兵士” の……」


クロコダイルがこの名を与えたのは強烈な皮肉だろうとクレスは思った。
組織の男性幹部は社長であるクロコダイルが持つ、“0” の数字に近い程にその地位を約束されるらしい。
幹部の枠は “1” から “13” トランプの数字と同じだ。
ならばこの名前はどうだ? クロコダイルが名づけたなら皮肉としか取れない。


「……Mr・ジョーカー」


トランプにおいてジョーカーは全ての数字に変化出来る万能の切り札だ。
しかし、そんなジョーカーにも出来ない事がある。
ジョーカーは存在しない数字には化けられないのだ。


「いいじゃねぇか……その名前、謹んで拝命しようじゃないか」













あとがき

始まりましたね、第三部。今回からアラバスタ編となります。
あの壮大で偉大な話を私ごときが書くことに、ものすごい不安を感じています。

クレスのコードネームはMr・ジョーカーとしました。
自分で考えておいて恥ずかしいです。

これからもがんばっていきたいです。
よろしくお願いいたします。


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