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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第十五話 「オカマと友情」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/20 01:02
「いい加減に……死ねぇ!!」


マ―ルックは苛立たしげに腕を横に振るった。
自由自在に曲がる、針金の身体を生かしての攻撃。
鞭のようにしなり、軌道の予測しにくい攻撃をクレスは潜るようにして避けた。


「ふんっ!!」


避けたクレスに対し、マ―ルックは振るった腕をさらに折り曲げ、変形させる。
横に振るわれた状況からの急激な縦への軌道変換。
不意を突く、予想外の攻撃の筈だ。

しかし、当たらない。
クレスは直前に横に地面を削るようにしてまた、避けた。
そしてその勢いを殺すことなく、稲妻のようにマ―ルックに迫りマ―ルックの足を払う。
刈り取るような一撃にマ―ルックの身体が宙に浮いた。
足もとから吹き飛ぶような衝撃だったが、マ―ルックは足を曲げ衝撃を殺す。


「沈め」


足が折曲がり、マ―ルックの身体が地面から離れた瞬間に、クレスは巧みにマ―ルックの体制を崩す。
襟元を引き、強引に身体を引き付ける。
そして、姿勢を崩したマ―ルックの頭部を握り潰さんばかりに、鍛え上げた指で掴んだ。
悲鳴を上げかねない、クレスの握力。
しかしマ―ルックの全身の硬度は “鉄” クレスの握力など、ものともしない。
マ―ルックは頭を掴まれた状況から身体を折り曲げる。
緩やかなアーチを描いた身体はクレスを襲う。


「───三輪咲き」


しかし、クレスを突き刺そうとした身体はその直前でロビンの腕に阻まれる。
ロビンの腕はマ―ルックの身体をクレスから引きはがす。
そして、そのままマ―ルックの身体を固定しにかかった。
マ―ルックはその瞬間、全身を波のように曲げる。
魚のようにうねる鉄の身体。
ロビンの腕はマ―ルックを抑えきれずに花が散るように消えていく。
しかし、ロビンの絶妙なサポートによりクレスは十分な時間を得た。
クレスは沈み込むかのように全身の体重を下へと移動させる。


「───六式 “我流” 寝頭深!!」


クレスは掴んだ頭部を強引に地面に叩きつける。
一切の慈悲の無い、地面ごと叩き潰すような攻撃。
その衝撃は、整備された街の道路を割り、マ―ルックの頭部が地面に潜り込んだ。


「……無駄だぁ!!」


その衝撃を受けてなお、マ―ルックは立ちあがった。
その身に傷は無く。口元を曲げ、顔の周りに着いた土を悠々と払う。


「ちっ、曲がら無ければ、多少は効くと思ったんだけどな」

「……呆れた頑丈さね」

「グニャニャニャニャ!! 言っただろオレの身体は “鉄” だってな。
 打撃はオレに関しては完全に無効だ。そろそろ諦めたらどうだ?」

「アホぬかせ、
 生憎と “諦め” なんてのはこの世で一番嫌いな言葉でね」


クレスは再びマ―ルックに対して構えた。


「へらず口を……」


無傷のマ―ルックに対して、深くは無いものの手傷を負ったクレス。
そして後方でクレスのサポートに徹するロビン。
この状況はこれからも変わらない。
むしろ、クレスとロビンに関して言えば、このまま状況は悪化する一方だろう。

マ―ルックの “グネグネの実” の能力は強力だった。
この能力は攻撃よりもむしろ防御にこそその真価が発揮される。
身体の硬度は “鉄” と同等。
しかし、それだけでいて全身のいたるところが柔軟に曲がるのだ。
クレスとロビンにマ―ルックを傷つける術は無かった。
先ほどの一撃もそうだ。

───六式 “我流” 寝頭深。

先ほどの技は本来、足を払い宙に浮かびあがった相手に対して、
足払いの勢いを殺すことなく、掴んだ腕によって勢いを倍増させ地面に叩きつける技だ。

しかし、それもマ―ルックの特異な身体の前に阻まれた。
ロビンのサポートがあったものの完成には遠く、十分な威力が伝わらなかった。

だが、絶望的な状況な筈なのにクレスとロビンの表情に悲壮感が現れる事は無い。
目の前の勝利を信じて疑わない、そんな印象を受ける。
むしろ、表情のみで言えば、圧倒的優位に位置するマ―ルックの方が優れない。



マ―ルックは苛立っていた。

うざったくてしょうがなかった。
傷は受けない。当然だ。
自分は針金。この能力を手にしてから今までに傷つけられたことは無い。
しかし、ここまで一方的に攻撃を受け続けるのは初めての経験だった。
対峙する、クレスと名乗った男のの動きは異常だ。
急に身体が硬くなったり、一瞬で移動したり、空中で跳ねたりと訳が分からない。
だが、様子からしてみればどうやら悪魔の実の能力者では無いようだ。
苛立たしい力だが、そこはあまり問題では無い。
問題なのは、変則的に繰り出す自分の攻撃を次々と避け、反撃してくることだ。
ありえないと思っていたがどうやら攻撃が見切られているらしい。
そして徐々にその猛攻は一方的になりつつある。これも、始めての経験だ。

そしてなお苛立たしいのは、後ろの女だ。
この女さえいなければあるいはもう決着はついていたのかもかもしれない。
見切られない不意を完全に突いた筈の決定打に限ってこの女がいちいち邪魔をする。
周りを飛びまわる小蝿のような男を叩き潰す機会をおかげで何度も逃した。
それだけでは無い。男との息の合った連携は何度も何度も自分を阻む。

そして、最も苛立たしいのが二人の表情だ。
負ける可能性など全く考えていない互いを信用しきった表情。

負ける気は全くしなかったが、何故だか勝てるビジョンが薄れていく気がする。

苛立たしい。

苛ついて、
いらついて、いらついて、
苛ついて、苛ついて、苛ついて、
いらついて、いらついて、いらついて、いらついて、
苛ついて、苛ついて、苛ついて、苛ついて、苛ついて、
いらついて、いらついて、いらついて、いらついて、いらついて、いらついて、
   
          どうしようもなく苛つく。


故に曲げたい。
捻じ曲げたい。
歪み曲げたい。

あの信頼しきった、表情を絶望で染めたい。
男を殺し、悲しみにむせび泣く女の表情を見たい。
女を殺し、己を痛ましい程に呪う男の慟哭が見たい。

マ―ルックは興奮する己を自覚した。
表情を変える。
裂けそうそうなほどに、口元をゆがませる。


「さぁ………お前らも曲げてやるよ!!」














第十五話 「オカマと友情」













「!」


クレスは対峙するマ―ルックの変化に敏感に反応した。
今までよりもさらに深い、全身にまとわりつくような殺気だ。

───これは、本気で怒らせたようだな。
───まぁ、それならそれで良いんだけどな……

怒りと言うのは潜在能力を引き出す代わりに、冷静な思考を奪うことが多い。
安全装置を破壊するようなものだ。
性能は上昇するが、歯止めが効かない。
己では止められない。
故に御しやすい。


「まずはてめェからだ “男” !!」

「………そりゃ、どうも」


マ―ルックは全身を弓なりに曲げる。
そしてその体制から全身をしなりを生かし、伸び上がるように飛んだ。
マ―ルックの身体はどんどんと高度を上げ、空高くまで舞い上がる。
その高さはクレスですらも驚くほどだ。


「グネグネドリル!!」


空中にあるマ―ルックの身体が変形する。
足を槍のように尖らせ、そこを軸にして胸元まで身体を曲げ螺旋を描く。
腕は関節を完全に無視して曲がりプロペラとなった。
その姿は不細工な独楽のようだ。

変形が完了し、マ―ルックは全身を回転させた。
クルクルと徐徐にスピードを上げる、
それはやがて猛烈なスピードで回り、滅茶苦茶な回転数を叩きだす。
そして、そのままクレスに向けて、流星のように降下する。


「デタラメなのもほどほどにしとけっ!!」


さすがのクレスもマ―ルックの攻撃をまともに受けようとは思わなかった。
恐らく “鉄塊” で受けたとしても弾かれる。
下手すれば掘られる。それはまずい。

一直線にクレスに向けて降下するマ―ルック。
小癪なことに、腕で作ったプロペラが推進力を生みだし自由に方向を変えられるらしい。
クレスが避けようとしても後を追いかけてくる。
追跡式のミサイルのようだ。


「グニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャニャ!!」


マ―ルックの勘に障る笑い声。
最高潮に達したスピードでクレスに迫る。


「くっ!!」


凶悪な回転物体を、クレスは間一髪のところで直撃を避けた。
接触の瞬間に “剃” を使って距離を取った。

地面にブチ当たるマ―ルック。
回転する身体はいともたやすく地面をバラバラに破壊する───

───かに思われた。

マ―ルックが地面に触れたた瞬間にマ―ルックの脚がグネリと曲がった。
曲がり、今までの衝撃をキャンセルし、ありえないことに地面を蹴った。
そして今度は腕を先端として変形し、方向転換を果たす。
今度は足が推進力のプロペラだ。


「おいおいおいおいおい……!!」


マ―ルックは再びクレスに迫る。
回転の余波に巻き込まれた地面や障害物を弾き飛ばし、執拗に何度もどこまでも追ってくる。
格好としては、珍妙で締まらないが高速で回転する身体には手が出せない。

クレスは “剃” を使ってジグザグに移動しマ―ルックを撹乱する。
しかしそれもやがては追い込まれる。
正面には市街地の壁。
後ろには迫るマ―ルック。
それを見て、クレスは迷わずに壁に向かってスピードを上げた。


「らァ!!」


一足飛びで壁を蹴る。
そしてその反動で後ろへと大きく飛んだ。
緩やかな浮遊感を一瞬だけ味わい、
クレスは “月歩” を使い今まさに壁に向かうマ―ルックに迫った。

クレスを追いかけるとするなら、
マ―ルックの行動予測は先ほどのように壁を蹴り方向転換を果たす筈だ。
ならば、その瞬間には必ず回転数が落ちる。
クレスはそこを狙いマ―ルックに向かい拳を繰り出した。

しかし、その攻撃はマ―ルックに当たることは無かった。
マ―ルックは正面の壁をそのまま、身体の回転に任せぶち抜いたのだ。
ゴリゴリと、何の抵抗も感じさせることなく大穴が空く。
マ―ルックはそのままいくつかの壁に穴を空け続け緩やかに迂回する。

一種の削岩機と化したマ―ルックは相変わらずの回転数でクレスに迫り、

何故か、クレスの横を通り抜けた。

特にクレスの姿を見失った訳でも無い。
しかし、確固たる意志を持って進んでいた。


「お前っ!! 待てコラァ!!」


マ―ルックの狙いに気づいたクレスが全力でマ―ルックを追いかける。
その方向はまずいのだ。


「グニャニャニャニャニャニャニャ!!!
 止めだ!! 止め!! もういい、曲げる!!
 てめェは後回しだ “男” !! まずはお前からだ “女” !!!」


マ―ルックは標的をクレスからロビンに変えた。
そしてその選択は正しいと言えるだろう。
身軽で素早いクレスを捕まえるよりも、
能力者ではあるが遠距離攻撃を基本とするロビンを捉える方が簡単だ。
そして厄介種であるロビンの能力も高速で回転するマ―ルックには手が出せない。


「曲げちまったな!! 良いねぇ!! やっぱり最高だぁ!!」


マ―ルックの気分が高揚していく。
余裕ぶっていた男の焦る声。その声が聞きたかった。
そして、これから女を殺す。
そうすればどんな顔を見せてくれるのか。
早くその顔を捻じ曲げてやりたい……!!
マ―ルックはこれから殺そうとする女の顔を見た。


「!」


そして、愕然とする。
女はまるでその表情を変えていない。
まるで迫りくる死の危険を感じていなかった。


「大丈夫。
 ……だって、クレスがいるから」


ロビンに激突する直前に、高速で回転するマ―ルックの後ろにクレスが追いついた。
そして両腕を “鉄塊” で硬め、推進力を生みだしている足を掴んだ。
クレスの腕に千切れそうな程の痛みが襲う。
無理もない。高速で回転する歯車を無理やり止めたようなものだ。
しかし、その痛みをクレスは歯を食いしばり耐える。
弾かれそうな指に力を込め、そのまま全力で回転とは逆の方向へと捻った。

マ―ルックの身体に歪な変化が生まれた。
先端と末端で真反対の回転が起こった為に中心からほつれるように捻じれていく。
そして錐揉みするように回転が止まりマ―ルックの進行も止まった。


「はぁっ!!」


クレスは痛む腕を無視してマ―ルックを放り投げる。
投げられたマ―ルックは頭から街の建造物に激突し叩きつけられる。


「ありがとう」


微笑むロビン。


「当然」


クレスはそれに言葉通りに、当たり前だといった様子で答えた。



「ぐがあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


マ―ルックが瓦礫の中から立ち上がった。
その姿はもはや異形と言うほかない。
あちこちを無茶苦茶に曲げられた為に、そこらじゅうが捻じれている。
そしてクレスによって叩きつけられたために不気味に身体が二つに折れている。
しかし、本人にはダメージが無い。
全身をゆっくりと元の身体の形へと戻していく。
もはや、バカバカしいまでのの頑丈さだ。


「許さん!! 絶対に許さん!!
 必ず殺す!! 絶対だ!! 絶対にその顔を曲げてやる!!」


殺気を放つマ―ルックをクレスは先ほどよりも冷静になって見つめた。


「とっとと諦めやがれ!!
 お前らではオレには傷をつける事すら出来ないんだよ!!」


その通りだ。
試行錯誤の結果、
恐らくクレスとロビンにはやはりマ―ルックを傷つける術が無いことが判明した。


「……そのようだな。
 残念だが、現状オレ達にお前を傷つける術は無い」

「なら、とっとと……」

「───だが」


クレスはマ―ルックに、それがどうしたと言わんばかりに言った。


「お前に勝てない訳じゃ無い」


傷をつけられない。
確かに絶望的な状況だろう。

───しかし、それだけだ。

傷つける方法と勝利と言うのは絶対の方程式によってつながりはしない。
要は勝てばいいのだ。


「なら、やってみろ!!」


マ―ルックはクレスの言葉を張ったりだと斬って捨てる。
傷つけずに勝つ?
面白くも無い冗談には失笑こそがふさわしい。


「まぁ、見てろって……」


クレスは腰元に下げたサイドバックに手を伸ばす。
クレスが普段から携帯するこの鞄には主に携帯用の狩り用具が入っている。


「ふふっ……なるほどね。
 なら、サポートは任せて」


ロビンはクレスの動作だけでクレスの考えを読んだ。
確認の必要は無かった。

クレスは “剃” によって高速で真っ直ぐに移動する。
直線距離の移動はクレスの速度を最も生かす。
マ―ルックには目視不可能なスピードで迫り。
地面を軽く蹴った。


「?」


クレスはマ―ルックの上空ギリギリを飛び越えた。
疑問思うマ―ルック。
しかし、その答えは直ぐに表れた。


「ぐおっ!!」


鈍く光る、鉄線。
それがマ―ルックの上半身を捕らえた。
マ―ルックの身体が後ろに反らされる。
しかし、それは今までのまき直しだ。
マ―ルックの身体はグネリと本のように折り曲がる。
鉄線はマ―ルックを抜け後ろに流れた。

その瞬間、ロビンの腕が咲いた。
ロビンの腕は、後ろに流れた鉄線を掴む。
そしてその鉄線で二つに曲がったマ―ルックの身体を縛り始めた。
驚愕するマ―ルック。
直ぐに身体を戻そうとするが、現れたクレスによってまた身体を曲げられる。
そして、曲がったところをまたロビンが鉄線で縛った。
それが連続で行われる。
クレスは片っ端からマ―ルックを殴りつけ折り曲げる。
ロビンはそれを決してほどけぬように固く縛った。
満足な反撃も出来ず、マ―ルックはその暴挙に晒されるしか無かった。


マ―ルックの能力には弱点と言うべき性質があった。
本人でも気付いていない性質だ。
マ―ルックの身体は “針金” マ―ルックはもちろんそれを自信が望むように曲げられる。
しかし、この身体は衝撃の度には反射のようにマ―ルックの意志とは関係なく曲がる。
この性質がマ―ルックの対物理防御を強固なものとしているのだが、
つきつめれば、本人の意思とは関係無く、より強い力に従うと言うことになる。
クレスはその性質に勝機を見出した。


やがって曲げるような箇所も無くなり、マ―ルックは歪な形状となった。
しかし、これでも彼には傷は無い。
その点では驚嘆に値するが、それゆえのこの姿はいささか滑稽だった。


「よっと、完了」

「これからどうしようかしら?」


ニヤリと、マ―ルックにとってはこれ以上無い程の悪魔の笑みをもって二人は笑う。
全身に絡みついた鉄線はいたるところで複雑に絡み合っていて抜け出すのは不可能だ。


「まっ、待て!! オレが悪かった。
 今決めた!! 曲げる!! お前達を殺すことは止める!!
 この島からも撤退する!! だから……!!」

「助けてくれなんて、カッコ悪い事言わないよな?」

「ふふふ……酷い人ね」


と言いつつも、ロビンも見逃すつもりは全く無い。


「曲げる、曲げたと、そう何度も自分を曲げんのもカッコ悪いだろ?
 だからせめて、最後ぐらいは真っ直ぐと自分を貫けや」

「あなたの主義には反するかもしれないけどね」


マ―ルックが悲鳴を上げようとした瞬間。
地面から港の方向に向かってロビンの腕が咲き乱れた。
それはまるでレールを敷くようであった。
港までは一本道。
遮るものは何もない。


「───百花繚乱 “大飛燕草”」


ロビンの腕がマ―ルックを掴んだ。
そして地獄へと誘うかのようにマ―ルックの身体を運んでいく。

クレスが走り出す。
ロビンの腕で運ばれるマ―ルックよりも僅かに遅れて、
徐々にスピードを上げて並走する。


「良い旅を、針金男さん」


レールの端でロビンがマ―ルックを放り投げた。
宙に舞うマ―ルック。
そこに並走していたクレスが現れる。


「六式 “我流” ──────」


前方には遥かに広がる青々とした海原。
能力者にとっては共通の弱点だ。

マ―ルックの悲鳴を無視して、
クレスは空中でロビンが放り投げた勢いを殺すことなく、
両足に彼を乗せ、全身を使い、投げると言うよりも吹き飛ばすと言った威力で振り抜いた。


「─── “焔管” !!」


空中での急加速を受けたマ―ルック。
針金の全身も拘束されたために、満足に衝撃を逃がせない。
為す術も無く、マ―ルックは澄み渡る海原へと飛んでいく。
その姿はやがて、クレスとロビンの視界から消えた。


「有言実行。まぁ、こんなもんだろ」


軽やかにクレスは地面に降り立つ。


「お疲れ様」

「お互いにな」


そしてロビンと共に勝利を分かち合った。






クレスとロビンがマ―ルックを、ベンサムがルラージュを倒したことによって街に残っていた海賊達は海へと逃げ帰った。
海賊達は奪った金品を船に積み込むことなく、
港の広場に山積みにしたまま逃げ出した為に街の人間は胸をなでおろした。
街では海賊達にあらされた街並みの復興が進んでいる。
元通りの活気が戻る日も近いだろう。

しかしこの島の住人達は知らないままだった。
誰もが思う疑問。
海賊達を追い払ったのは誰かということだ。

皆が対岸へと避難したために目撃者はいなかった。
憲兵達も全員意識を失っていたために分からないと言う。
そんな中で一人の子供がオカマに助けられたと主張するが、それを真に受ける者は少なかった。



「お前まで付き合うこと無かったのに」

「気にすんじゃなーいわよう!!
 戦ったのはあちしだけじゃないんだから、
 あんた達が秘密にしたいって言うならあちしもそれに倣うわよう!!」


クレスとロビンは立場上、海賊団を打ち払ったことを伏せていた。
そこでベンサムに手柄を譲ろうとしたのだが、ベンサムはそれを拒んだのだ。


「まぁ、お前がそれでいいなら良いんだけどな……」

「あんた達の方こそ本当によかったのう?
 船長を倒したんだったらきっと名も上がるんじゃない?」

「私達は荷物さえ取り返せたらそれでいいの」


クレスとロビンとベンサムは港へとやって来ていた。
もうそろそろ事後処理のためにやってくる海軍が到着するだろう。
そうなれば、クレスとロビンはこの島にはいづらくなる。

船は荒らされていたが、幸い内装だけだった為に運航は可能だった。
ログポースは新たな島を指し示し、旅の準備も整えた。
二人はこの島から出ることを決めた。


「見送りありがとう」

「がーっはっはっはっはっはっはっは!!
 当然じゃない。ダチを見送らずはオカマに非ずよう!!」


ベンサムとはこの島で別れる事になった。
何でも向かわないといけないとこがあるらしい。

だが、それで良いのだろう。

クレスとロビンには二人の道が、
ベンサムにはベンサムの道があるはずなのだ。



「ありがとうオカマさん」

「世話になったな、ベンサム」


クレスとロビンはベンサムへと向き直った。
なんだか照れくさい。
二人にとっては誰かに見送られるのは初めての経験だった。


「なーによう改まっちゃって!! 
 あんた達元気でやりなさいよう!! また会いましょうねい!!」


クレスはベンサムに向けて手を差し出した。
なんとなくこうするものだと思った。
ベンサムはその腕をゆっくりと震えるように取った。


「これが……友情の果てに咲く、友の花!!
 あちし悲しい!! でも泣かない!! だって必ずまた、あえぶぼの……!!!」

「のあっ!! 鼻水っ!! ハンカチ貸すから顔を拭け!!」

「ふふっ……クレスも少し涙ぐんでる」

「なっ!! そ、そんなはずは無い!!」


ベンサムを港に残し、二人は船に乗り込んだ。
頬に当たる風が冷たくて気持ちいい。
空を見れば雲が穏やかに流れていた。


「さよならは言わないわよう!! 
 仲良くやりなさい!! クレスちゃん!! ロビンちゃん!!」


錨を上げ、船がゆっくりと港を離れていく。
港では相変わらずベンサムが大声で腕を振っていた。
この海を渡って行けば、いずれきっと再開できる。
そんな気がした。


「ああ!! お前も元気でやれよ!! そして、いつかまた会おう!!」

「オカマさんもお元気で」







風は南南西。
船は二人を乗せ順調に前に進む。












あとがき
これで中編は終了です。
いやぁ、ボンちゃんは書いていて楽しかったですね。
ちなみに、「寝頭深」は「ねずみ」「焔管」は「えんかん」です。

実はそろそろ第二部も終わりです。
それに準じて浮かび上がってきた問題点を修正してい来きいと思います。
更新スピードは落とさないように心掛けたいです。
ご迷惑をおかけするかもしれませんが、
これからもどうぞよろしくお願いします。


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