<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[11290] 第九話 「選択と不確かな推測」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/05 19:31
“偉大なる航路”に常識は通用しない。


これは比喩だとかモノの例えだとかそう言った意味合いでは無い。
まったくもってバカらしい事に言葉通りの意味なのである。
グランドラインの海は異常だ。
記録指針──ログポースの示す方向へと向かい船を進める内に否応なしにその事を理解させられた。

春が来た。夏が来た。
秋が来た。冬が来た。

快晴だった空が嵐に変わり、
嵐が突然雪へと変わり、
そして雪は突然春風へと変わる。

風向きは気まぐれに変化し、あり得ないような波が船を襲った。

リバースマウンテンから始まる初めの航海は特殊だと聞いたが、ここまで異様だとは思わなかった。
海を渡るだけで春夏秋冬全ての季節を体験してしまったのだ。

クロッカスの言う通りだった。
この海に常識なんて全く通用しない。
一本目の航海はそれをオレ達にありありと見せつけてくれた。


「なんて海だ……」

「さすがに疲れたわね……」


目的地に近付いて来た為か、
天候が落ち着いてきた瞬間を見計らいオレはロビンに休憩を提案した。
現在の天気はさしずめ小春日和と言ったとこだろうか?
つい、うとうとしそうな程に気持ちいい。


「大丈夫か?」

「平気。でも、さすがに一筋縄ではいかないわね……」

「疲れたら言ってくれ。
 ただでさえロビンの能力に頼る場面は多いからな」


グランドラインに二人で乗り込んだものの、さすがに二人だけで波を乗り切るのは骨が折れる。
今回はロビンには助けられてばかりだな……
この船を動かすには二人で事足りるのだが
緊急の事態においてロビンの能力でのサポートは本当に助かる。


「いいの、私はクレスを助けられて嬉しいわ」

「そりゃ身に余る光栄だな」


次も目的地まではもう一踏ん張りだ。
もうすぐでこの厳しい航海も終わる。
次の島には何があるか知らないが人がいる事を祈ろう。
出来れば町がいい。久しぶりに甘いケーキが食べたい気分だ。

ぼんやりとそんなことを考えていたその時、微かにだが砲撃音のようなものが聞こえた。
音の伝わり方からして結構遠い。
それにオレ達を狙っている訳ではなさそうだ。
オレは起きあがり双眼鏡で音の方向を覗いた。
丸いレンズに映るのは二隻の船。
海賊船と商船だ。
感じからして商船が海賊船に襲われているようだ。


「どうしたの?」

「海賊船が商船を襲ってるみたいだ」

「それは穏やかじゃないわね」

「幸いまだこの船には気づいていないみ………」


その時オレ達の船の前方に大きな水柱が上がった。
飛距離に関しては全然足りていないがそれはオレ達に向けての砲撃だった。


「……みたいじゃなかったな……はぁ、面倒な」













第九話 「選択と不確かな推測」












船の近くに次々と上がる水柱。
オレ達の船を直接狙うつもりは無いようだ。
砲弾はオレ達を逃がすまいと逃げ口を防ぐように次々と放たれる。
だが砲撃のやり方がいかんせん荒っぽい。
その内この船に当たりそうだ。
敵方の目的は恐らく略奪だろう。
オレとロビンの乗る船に海賊旗は掲げていない。
恐らく今目の前で襲われている商船か何かと勘違いでもされているに違いない。


「二兎を追うもの一兎も得ずだってのに……商船だけで満足しとけよ」

「まったく欲張りな狩人さんね」

「まったくだ、狩りの基本は狙いをつけた一頭を狙い続ける事だってのに」


左右に激しく揺れる船。
帆は張ったままで風をめいいっぱいに受けている。
面倒だから逃げようと思っても風向きが完全に海賊船の方を向いている。
船は後ろには進めない。方向を変えるにしても前に進ま無ければならないのだ。


「こりゃ、交戦するしか無いな」

「そうね……このままだと船が沈められちゃうわ」


船はどんどん海賊船へと近づいていく。
オレは双眼鏡を再び覗き海賊旗を確認した。
知らないマークだ。
海賊については大体のことは頭に入れている。
見覚えが無いということはまだ日の浅い海賊か唯の小物かだ。


「あ」


一発の砲弾。
打ち損じか照準ミスか知らないがその砲弾はオレ達の船に直撃するようなコースを辿った。
それほど大きな船では無い。
砲弾をまともに受けて大丈夫だとも言えない、当たり所が悪ければ数発で沈みそうだ。
これからも航海は続けるつもりなのだ、そう簡単に壊されては困る。


「言わんこっちゃない」


オレは“月歩”で空中へと飛び立った。
砲弾は緩やかな放物線を描き船へと迫る。
オレは的確に砲弾を捉え空中で迎撃する。


「“我流”鉄塊バット」


オレは瞬間的に鉄塊で硬化させた脚を振る。
砲弾は脚に直撃し痛快な音と共にライナー性の当たりを持って、海賊船へとはね返した。
砲弾は砲撃時よりも凶悪な凶弾となって海賊船を襲った。
着弾し当たり所が良かったのか黒煙が上がる。

海賊達がざわめいた。砲撃の標準が船へと向けられる。
砲門に着火がなされ、やがては一斉に火を噴くのだろう。


「──八十輪咲き」


ロビンの腕が敵船の中で一斉に咲いた。
腕は砲門の先端を持ちそれをくるりと反転させた。
驚愕する海賊達。
自身の武器が一斉に反乱でも起こしたように自分達に矛先を向けたのだ。
発射間際の砲門を止める術は無く砲門は全て海賊達に向けて火を噴いた。

砲撃、爆音、怒号、悲鳴、
そしてまた爆音。

あちこちで船の破片が舞い、火の手が上がった。
沈みこそしなかったもののまともな航海は難しいだろう。
時はもう既に戻らず、海賊船は自らの砲門で重大な被害を被ったのだ。


「うわ……被害甚大だな」

「思ったよりうまくいったわね」

「うまくいったと言うより、やり過ぎたというレベルだと思うけど」

「そう?半分くらいはまだ動けるみたいよ。運がいいのね」

「運がいいって……」


さらりと怖い事言うな。
ロビンがダークサイドに落ちてしまった。


「頼もしいでしょ?」

「………………」


まぁ、いい。
つまり半分は倒したということだ。
海賊達からの怒声が聞こえる。
思った通り怒り心頭だった。


「このまま逃げる?」

「いや、面倒だけど後始末をしておこう。
 そのついでに海賊からお宝でも回収しようと思う」

「隣の商船は?」

「ついでに助けようか、もちろん下心は有りだけど」

「一人で行くの?」

「ロビンも来るか?」

「ええ、一緒に行くわ」

「了解。それじゃ船が流されないようにしていくか」






海賊の残党の片づけは手早く済んだ。
やはり小物の海賊団だったようだ。
船長は砲撃時の一撃で倒れていた。
交戦した海賊達はまさに鳥合の衆で各自が怒りにまかせて武器を振り回すだけだった。
こんな調子だったので宝物もあまり期待していなかったのだが、
宝に関しては予想以上に質の高いものばかりだった。
おそらく商船を専門として襲っていたのだろう。
砲撃に加え交戦時に暴れたせいで、
今にも沈みそうな海賊船から宝と思わしき物を片っ端から奪い取った。
どうせどこかから奪ったものだろうし、特に感慨を持つことも無かった。

大破した海賊船の近くにオレ達の船は停泊し、そしてその近くに成り行き上助けた商船があった。
商船は小規模なもので夫婦二人で経営しているそうだ。
何故二人しかいないかと言うと、
護衛を数人ほど雇っていたそうなのだが海賊船を見た途端逃げ出してしまったらしい。
また、災難な話だ。
なんでも人を見る目に自信無いので知り合いに紹介してもらったらしい。
どうやらその知り合いを見る目が無かったようだ。何とも言えない。


「お帰りなさい」

「ただいま」


オレは背負ったカバンの中からお宝を取り出していく。
宝の中には換金しづらい物もある。
そこまで量があるわけでは無いが、オレ達の船は多くの荷物を置ける訳ではない。
運びやすい宝石やなどは残して他は直接ベリーに変えて貰おうと思う。
幸いにも商船は商売の帰りだったので金は大量にあった。


「ん?」


宝の選別をおこなっていた時にえらく頑丈に封をされた箱に行きついた。
鉄ごしらえの強固な箱だ。
揺らしてみればごそごそと音がした。
何だろう?
無理やり開けるのもどうかと思い腰に下げた鞄から針金を取り出す。
鍵自体も固く数十分の時間を費やし開いた。
やけに重い錠の音が響いた。
ロビンも興味が惹かれたのか傍にやって来ていた。
オレは宝箱をゆっくりと開いた。


「なんだ……これ……」


中から現れたのは奇妙なとても奇妙なものだ。
おどろおどろしい、まがまがしい、それでいて妙に重い果実だった。
手に持った瞬間に何かとてつもなく強く惹かれる引力を感じた。


「それ……もしかして……」


ロビンが有りえないとでも言うように呟いた。


「……悪魔の実」














悪魔の実

グランドラインのとある樹に実ると言う未知の果実。
口にした者は海に嫌われカナヅチとなる代わりに 、
大きくは“動物系”“超人系”“自然系”の三つに分類される亜種多様様々な能力を身に宿すと言う。

その例の一つとして上げられるのがロビンだ。
ロビンが口にしたのは“ハナハナの実”。
至るとこからも体の各部を花のように咲かせることが出来る能力だ。

オレとロビンは現在、偶然にも商船に置いてあった“悪魔の実辞典”であの実の正体を探っていた。
悪魔の実辞典なんて子供の頃に図書館で読んだ以来で久しぶりだ。
商船の夫婦も興味があるのか共にページを読み進めた。

その時、腕がとあるページで止まった。
淡い希望を抱いて文字を読み進める。


「………………」


特徴を見比べ共通点を探した。
ご主人が身を乗り出した。
気持ちはわかる。しかしそれは鬼門だ。
ご主人、今だけは紳士的に 振る舞わなければならない。
なぜなら……


「あなた……」


奥さんからの冷たい声。
ご主人の肩がびくりと震える。


「そんなに熱心に観察して何のつもりかしら?」

「い、いや面白くてつい……な」

「へぇ、そんなに面白いの……」


奥さんはご主人にグイッとにじり寄った。


「この“スケスケの実”とかいういかがわしい項目見ていったい何を考えてたのぉぉ!!!」

「やめ……苦し……首しまってるから!!ごめんなさい!!」


あぁ、ご主人地雷を踏んでしまったな。
死して屍拾う者無し。
オレは何事も無かったようにページを読み進めた。


「…………………」


どうしたんだロビン?
そんな氷の刃のようなジト目を向けて。
……まさか、一瞬でも食べてもいいかなんてて思ってなんかないぞ。
本当だよ。
だから早く周りの腕をしまってください!!



冷や汗で背中を濡らしながらもページをめくり続ける。
こうして本として見てみても馬鹿げた能力ばかりだ。
中でも“自然系”の能力は想像を絶する。
クザン……今は大将となって青雉か……
アイツの能力なんかがその最たる例だ。
物理攻撃を全く受け付けず。
なおかつその力は大海をも氷結させる。
まさに人知を越えた能力だ。


「これじゃないかしら?」


ロビンがとあるページを指して言った。
オレは辞典のページに目を通した。
そこにあったのは馬鹿げた能力の中でも更に一線を画すまるで夢のような力だった。


「“トキトキの実”…………時間を操ると言われる能力……」


なんだそゃ?
さすがに無茶苦茶過ぎるぞ 。


「……詳細は不明。
 どうやら詳しい事までは分からないみたいね」

「本当に合ってんのか?
 ここにある内容が全て嘘だと言う可能性もあり得るぞ」

「そうね……でも本当かどうかは食べてみれば分かる。……現に私はそうだった」


オレは悪魔の実を手に持った。
やはり手にした瞬間強く引かれるような、
どこか運命すら感じる程の引力を感じた。


「時間を操るか……過去にでも行けるのかな?」


つい零れてしまったが、今のは我ながら情けない質問だった。


「……分からないわ」


ロビンは少し目を伏せた。


「……すまん」


戻れたらいいとは思う。
あの頃は幸せだった。
もしも……なんて思わない筈がなかった。
今のオレがあそこにいればどうしただろうか?
間違いなく闘うだろう。
そしてどうなるか……コレばかりは分からない。


「戦う上でも意味のあるものだと思うわ、
 どんな能力でも十中八九弱くなることは無いでしょうし……」

「しかし、食べればカナヅチ、もう自由に泳げない……か」


沈黙が降りた。
悪魔の実の力……それはまるで甘言のような響きを持ってオレを犯そうとする。
食べれば泳げなくなる。しかし、その見返りは大きい。


「決めるのはクレスよ」


そう、決めるのはオレだ。


オレは手に持った悪魔の実を見つめた。
相変わらず強く惹かれる。
まるで己を食すのがオレの定めだとでも言っているようだ。


「……ちなみにご夫婦は食べたいと思うか?」


決断までは至らず。
間を取るように質問をした。


「……私どもは商人ですので……悪魔の実など食べても仕方がないですよ」


確かに能力者の商人と言うのは問題があるのだろう。


「ちなみに売ろうと思ったら買うか?」

「い、いえ!めっそうも無いです!!
 時価一億ベリーもする商品なんてとてもじゃないですが扱える気がしませんよ」

「それもそうか……」


オレは再びこの自己主張の激しい困り種を見つめる。

食べるか……
食べないか……

選択は二つに一つだ。

また沈黙が降りた。
ご主人が耐えかねたようにのどをゴクリと鳴らした。


「……決めた」


オレは口を軽く開けた。

悪魔の実を徐々に顔へと近づける。

本当にコレでいいのか?
この選択に間違いは無いのか?
もう一人のオレが心の中で問いかける。

悪魔の実にはひどく凶悪なまでの魅力があった。
コレを食べればオレは今よりも強くなれるのだろう。
しかし、泳げない。

悪魔の実が顔のすぐ側にある。


最後の選択。
今ならまだ間に合う考え直せ……!!
もう一人の自分がオレを苛む。

うるさいぞ、もう決めたんだ。

オレは迷いを断ち切るように思いっきり、

悪魔の実を──────────











「よっ!」














────後ろ手で放り投げた。

手首のスナップが絶妙に効いた、我ながら中々の軌道を辿り悪魔の実は海の中に音もなく落ちた。
海に嫌われた悪魔の化身は浮かび上がる様子もなく、
僅かな波紋だけを残して溶けるように海底へと沈んでいった。


「「ええぇぇぇぇ!!!」」


息の揃ったご夫婦。


「な、何やってんですか!!
 悪魔の実ですよ悪魔の実!!
 船乗りが命を懸けて探し求める海の秘宝にあんた何やってんだ!!!」

「落ち着け、何も考え無かった訳じゃ無い」


オレは我を忘れて迫り来るご夫婦を何とか諫める。
なんとなく思ったが悪魔の実を海に捨てたのは人類史上オレが初めてじゃないのか?


「まず第一に悪魔の実に頼らなくても戦う事は出来る」


我流とは言え今までの人生をかけて積み上げた“六式”と言う技術にオレは誇りを持っている。

リベルは言った。
能力者だとかそうじゃないだとかは関係ない、
勝った者が“勝者”
そこには能力者だとか否かは関係ないのだと。
別にこの無茶な理屈を体現するつもりは無いが、
少なくともオレには能力は必要ない。


「第二に売りさばく事も考えたけど、
 どこぞの金持ちがこの実を手に入れて能力者になるのはイヤだ」

「子供かアンタは!!!」


まぁ……さすがに今のは自分でも大人げないと思った。


「最後に……」


これが一番の理由だった。
オレはロビンを見た。
ロビンは呆れたような笑顔を浮かべていた。
驚きが少ないのは予測していたのか、
それともオレの選択を尊重してくれたからか、
どちらかそれともどちらでも無いのかは分からないが、
オレの選択はどう映ったのか聞いてみたいようで聞きたくない。

もしかしたら後々に後悔するのかも知れない。
でも、これでいいと今は自信を持てる。



「二人旅なんだ。
 ロビンが海に落ちたら誰が助けるんだよ」












オレ達は商人の夫婦達と別れた。
夫婦はオレ達とは別の島に行くらしい。
その際にオレ達の事を人に話さないで欲しいとそれとなく頼んだ。
夫婦がどう受け取ったかは知らないが大丈夫だろう。
もし話したとしてもそう問題は無いように思った。


「よかったの?」

「ん?」

「悪魔の実の事よ」

「良くなかったとしてももうしょうが無いだろう」

「それはそうなんだけど……偶然ってあるものね」

「偶然か……」


果たして本当に偶然だったのか?
オレは悪魔の実から脅迫観念のようなものを感じていた。
まるでそれをオレが食べるのが必然だとでも言われているようだった。


「悪魔の実が食べる人間を選ぶ事ってあんのかな?」


なんとなく浮かんだ疑問だ。
ロビンにして言えば“ハナハナの実”だが、
ロビンがそれ以外の能力を持つ姿が想像出来ないのだ。
そして同様に能力者じゃないロビンを想像出来ない。


「分からない……考えた事も無かったわ。
 私は自ら進んで食べたもの。自分で選んだ、そう信じてるわ」

「そうか……」


もし必然だったならばオレはあれを食べていたのだろうか?

これはあの悪魔の実が時間を操作出来る可能性があると知った時から思っていたことだ。
オレ自身のこと。生まれた瞬間から自我が発現した異端児。
このことはオレと母さんしか知らない。話しても無駄なことだ。


もしかしたら……オレはあれを食べたんじゃないのか?
そして何らかの事故によって時間を遡った。
そこでは時の経過と共に培った全ては失われたが、オレがオレである為の証明だけが残った。


バカな……
考えておいて有りえない事だと自分でそれを打ち消した。

でもそれだと良いな。
そうすればオレは正真正銘の母さんの息子なんだから……


「どうしたの、嬉しそうにして?」

「いや、何でも無い」


顔が緩むのは仕方ない。
嘘でもいいからそう信じようかと思う。













あとがき

私は本格的に馬鹿なんだと思います。
すいません。
ごめんなさい。
申し訳ないです。
“ワンピースの二次小説”に完璧に喧嘩を売ったかもしれません。

今回はクレスの話ですね。
クレスは逆行人間です。以前は能力者でした。
分岐点は幼いころの感染症です。
“トキトキの実”に関しては無茶苦茶だと自身でも思います。
詳しいことはぼかしてありますし、作中では不完全な証明ですらない推測です。
今回の話は別に必要が無いのかもしれません。
ですが、クレスとシルファーの事なので書こうと思いました。
シルファーはクレスの実の母です。彼女には思った以上に情が移ってしまいました。
批判等は甘んじて受けるつもりです。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.033232927322388