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No.11290の一覧
[0] 【完結】幼なじみは悪魔の子 (ワンピース オリ主)  [くろくま](2012/05/21 00:49)
[1] 第一部 プロローグ 「異端児」 [くろくま](2010/03/27 22:21)
[2] 第一話 「母親」  [くろくま](2010/01/15 22:03)
[3] 第二話 「慈愛」 [くろくま](2010/01/15 22:06)
[4] 第三話 「訪問者」[くろくま](2009/11/16 22:22)
[5] 第四話 「悪魔の実」[くろくま](2009/10/31 10:08)
[6] 第五話 「日常」[くろくま](2009/10/31 10:15)
[7] 第六話 「別れ」[くろくま](2009/10/30 22:56)
[8] 第七話 「血筋」[くろくま](2009/09/10 19:51)
[9] 第八話 「秘密」[くろくま](2009/09/11 20:04)
[10] 第九話 「どうでもいい」[くろくま](2009/09/11 20:13)
[11] 第十話 「チェックメイト」[くろくま](2009/09/11 20:26)
[12] 第十一話 「最高手」[くろくま](2010/03/13 12:44)
[13] 第十二話 「悪魔の証明」[くろくま](2009/09/11 20:31)
[14] 第十三話 「お母さん」[くろくま](2009/09/11 20:40)
[15] 第十四話 「ハグワール・D・サウロ」[くろくま](2009/09/09 19:55)
[16] 最終話 「if」 第一部 完結[くろくま](2009/09/13 00:55)
[17] 第二部 プロローグ 「二人の行き先」[くろくま](2009/11/16 22:34)
[18] 第一話 「コーヒーと温もり」[くろくま](2009/11/16 22:37)
[19] 第二話 「老婆と小金」[くろくま](2009/11/16 22:47)
[20] 第三話 「遺跡と猛獣」[くろくま](2009/09/22 00:15)
[21] 第四話 「意地と酒」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:10)
[22] 第五話 「意地と賞金稼ぎ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:06)
[23] 第六話 「意地と残酷な甘さ」 《修正》[くろくま](2010/07/24 09:02)
[24] 第七話 「羅針盤と父の足跡」[くろくま](2009/09/27 02:03)
[25] 第八話 「クジラと舟唄」 [くろくま](2009/10/02 00:50)
[26] 第九話 「選択と不確かな推測」[くろくま](2009/10/05 19:31)
[27] 第十話 「オカマと何かの縁」[くろくま](2009/12/20 00:51)
[28] 第十一話 「オカマとコイントス」[くろくま](2009/12/20 00:52)
[29] 第十二話 「オカマと鬨の声」[くろくま](2009/12/20 00:54)
[30] 第十三話 「オカマと友達」[くろくま](2009/12/20 00:57)
[31] 第十四話 「オカマと人の道」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[32] 第十五話 「オカマと友情」[くろくま](2009/12/20 01:02)
[33] 最終話 「洞窟と水面」 第二部 完結[くろくま](2009/11/04 22:58)
[34] 第三部 プロローグ 「コードネーム」[くろくま](2010/01/11 11:13)
[35] 第一話 「再びのオカマ」[くろくま](2010/01/11 11:23)
[36] 第二話 「歯車」[くろくま](2010/01/11 11:29)
[37] 第三話 「あいまいな境界線」[くろくま](2010/01/11 11:46)
[38] 第四話 「裏切り者たち」[くろくま](2010/01/11 11:50)
[39] 第五話 「共同任務」[くろくま](2010/01/11 12:00)
[40] 第六話 「歓迎の町の開幕」[くろくま](2010/01/11 12:16)
[41] 第七話 「歓迎の町の邂逅」[くろくま](2010/01/21 23:38)
[42] 第八話 「旗」[くろくま](2010/02/21 22:04)
[43] 第九話 「虚像」[くろくま](2010/02/07 23:53)
[44] 第十話 「ユートピア」[くろくま](2010/05/30 00:25)
[45] 第十一話 「ようこそカジノへ」[くろくま](2010/04/08 21:09)
[46] 第十二話 「リベンジ」 《修正》[くろくま](2010/03/10 13:42)
[47] 第十三話 「07:00」[くろくま](2010/03/10 17:34)
[48] 第十四話 「困惑」[くろくま](2010/03/10 17:39)
[49] 第十五話 「決戦はアルバーナ」[くろくま](2010/03/10 17:29)
[50] 第十六話 「それぞれの戦い」[くろくま](2010/03/14 20:12)
[51] 第十七話 「男の意地と小さな友情」[くろくま](2010/03/14 20:40)
[52] 第十八話 「天候を操る女と鉄を斬る男」[くろくま](2010/03/27 21:45)
[53] 第十九話 「希望」[くろくま](2010/03/29 21:40)
[54] 第二十話 「馬鹿」[くろくま](2010/04/11 18:48)
[55] 第二十一話 「奇跡」[くろくま](2010/04/12 20:54)
[56] 最終話 「これから」 第三部 完結[くろくま](2010/05/14 21:18)
[57] 第四部 プロローグ 「密航者二人」[くろくま](2010/05/03 00:18)
[58] 第一話 「サルベージ」[くろくま](2010/05/10 23:34)
[59] 第二話 「嘲りの町」[くろくま](2010/05/20 21:07)
[60] 第三話 「幻想」[くろくま](2010/05/28 21:31)
[61] 第四話 「ロマン」[くろくま](2010/05/31 18:03)
[62] 第五話 「雲の上」[くろくま](2010/06/05 10:08)
[63] 第六話 「神の国 スカイピア」[くろくま](2010/06/15 17:29)
[64] 第七話 「序曲(オーバーチュア)」[くろくま](2010/06/24 20:49)
[65] 第八話 「海賊クレスVS空の主」[くろくま](2010/06/26 23:44)
[66] 第九話 「海賊クレスVS 戦士カマキリ」[くろくま](2010/06/30 22:42)
[67] 第十話 「海賊クレスVS神エネル」[くろくま](2010/07/06 05:51)
[68] 第十一話 「不思議洞窟の冒険」[くろくま](2010/07/08 21:18)
[69] 第十二話 「神曲(ディビ―ナコメイディア)」[くろくま](2010/07/17 22:02)
[70] 第十三話 「二重奏(デュエット)」[くろくま](2010/07/24 15:38)
[71] 第十四話 「島の歌声(ラブソング)」[くろくま](2010/08/07 19:39)
[72] 第十五話 「鐘を鳴らして」[くろくま](2010/08/10 12:32)
[73] 間話 「海兵たち」[くろくま](2010/08/10 17:43)
[74] 第十六話 「ゲーム」[くろくま](2010/08/26 05:17)
[75] 第十七話 「昂揚」[くろくま](2010/08/29 07:53)
[76] 第十八話 「偶然」[くろくま](2010/09/06 12:51)
[77] 第十九話 「奥義」[くろくま](2010/09/14 21:18)
[78] 最終話 「過去の足音」 第四部 完結[くろくま](2010/09/21 20:00)
[79] 第五部 プロローグ 「罪と罰」[くろくま](2010/09/30 18:16)
[80] 第一話 「理由」[くろくま](2010/10/06 19:55)
[81] 第二話 「水の都 ウォーターセブン」[くろくま](2010/10/11 19:42)
[82] 第三話 「憂さ晴らし」[くろくま](2010/10/26 20:51)
[83] 第四話 「異変」[くろくま](2010/10/26 20:57)
[84] 第五話 「背後」[くろくま](2010/11/06 09:48)
[85] 第六話 「エル・クレスVSロブ・ルッチ」[くろくま](2010/11/14 11:36)
[86] 第七話 「隠された真実」[くろくま](2010/11/29 03:09)
[87] 第八話 「対峙する二人」[くろくま](2010/12/20 22:29)
[88] 第九話 「甘い毒」[くろくま](2010/12/20 23:03)
[89] 第十話 「記憶の中」[くろくま](2011/01/03 02:35)
[90] 第十一話 「嵐の中で」[くろくま](2011/02/13 14:47)
[91] 第十二話 「仲間」[くろくま](2011/03/20 21:48)
[92] 第十三話 「生ける伝説」[くろくま](2011/05/04 00:27)
[93] 第十四話 「READY」[くろくま](2011/07/16 13:25)
[94] 第十五話 「BRAND NEW WORLD」[くろくま](2011/08/15 18:04)
[95] 第十六話 「開戦」[くろくま](2011/08/20 11:28)
[96] 第十七話 「師弟」[くろくま](2011/09/24 15:53)
[97] 第十八話 「時幻虚己(クロノ・クロック)」[くろくま](2011/11/13 16:20)
[98] 第十九話 「狭間」[くろくま](2011/12/25 06:18)
[99] 第二十話 「六王銃」[くろくま](2012/01/30 02:47)
[100] 第二十一話 「約束」[くろくま](2012/02/22 02:37)
[101] 第二十二話 「オハラの悪魔達」[くろくま](2012/04/08 17:34)
[102] 最終話 「幼なじみは悪魔の子」 第五部 完結[くろくま](2012/08/13 19:07)
[103] オリキャラ紹介 [くろくま](2012/05/21 00:53)
[104] 番外編 「クリスマスな話」[くろくま](2009/12/24 12:02)
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[11290] 第三話 「遺跡と猛獣」
Name: くろくま◆31fad6cc ID:4d8eb88c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/22 00:15
深く険しい密林を歩く。
熱帯樹やそれに絡まりつくツタやコケを横目にして、
オレは額に流れる汗を拭った。
湿度は高く、
日差しは強い。
しかし、まるで天然の天井のように生い茂る木々によって
日光は遮られ届かない。
よって肌に感じるのは妙に気持ち悪い肌寒さだ。


「なぁ、ロビンそろそろ休憩した方が良くないか?」


オレはそんな気候の条件などまるで気にしないかのように、
もくもくと険しい獣道を進んでいく幼なじみに問いかけた。


「ダメ、もう少しの筈だから我慢して」

「オレの経験上もう休んだ方がいいと思うんだけど?」

「私の経験上もう少し進む方がいいと思うわ」


お互いの経験値を比べれば、
おそらくロビンの方が専門知識を多く持っている分上なのだろう。

はぁ、とため息をつき、
ロビンの横に並んだ。


「理由を聞いていいか?」


ロビンは前を向いたまま答えた。


「周りを見て、もう随分昔の事だと思うけど、
 今進んでいる道が成らされた形跡があるわ。
 巧妙に隠れてる……いいえ、隠されてるけど、
 獣じゃあり得ない道具で成らした跡がある。
 これはココに人口の通路があった証拠」


オレはロビンの言葉に従い周りを見てみる。
確かに“密林にしては”歩きやすい。
何度か行く手をふさぐツタや枝を払ったが、
基本的には続いていく獣道を進んだ。


「決定的なのは植生ね」

「植生?」

「ええ」

「数本に一本だけ……それも道が分かれたそうな時だけ、
 よく探せば、周りとは違う種類の樹があったわ」

「なるほど“目印”か……」

「そう。島の大きさや進んでいる距離、
 それに方位を考えるともう少しのはずよ」


巧妙に隠しているくせに、
導くための情報を残した。
この矛盾した状況といつもよりうれしそうなロビンから導かれるのは……


「今回は“アタリ”かもな」

「ええ」


考古学者としての血が騒ぐのか、
待ちきれないと言いった様子でロビンが答えた。


「今回こそあるかもしれない─────“歴史の本文”が」













第三話 「遺跡と猛獣」













その後、
だいたい十分くらい歩くと密林を抜け広場へと出た。
険しい密林に空いた小さな穴のように日が差した場所で、
短草の乾いた地面に清らかな泉がある。
言うならば、密林の中のオアシスとも言うべき場所だろう。

オレとロビンはここで今日は休む事にした。
目的地までそう遠く無いと言っても急いでる訳ではない。
ならば、体調を万全に整えてから明日に向かうのがベストだろう。
ロビンは今すぐにでも行きたがっていたようだけど納得してくれた。


背負って来ていたテントを降ろし組み立てる。
速やかに出来上がるテント。
自分の手際の良さに少し感心する。

今回で何個目の遺跡調査となるのだろうか?

始めの内はオレもロビンもあたふたと、
経験値ゼロの状態からつぎはぎの知識だけで進んだ。
今思えばなんて危険な真似をしてたんだとあきれてしまうが、
指導者や先導者の作りにくい状況なので仕方無かった。

まぁ、今では随分と手慣れたもので、
知識、経験
どちらでも一流の探検家に引けを取らないと思う。

オレとロビン二人とも一応の事は出来る。
だがオレ達は二人で一つのチームだ。
役割的なことを言えば、


ロビンはその持前の知識を生かして目的地までの道を導き調査する役割で、
オレに関して言えばロビンが指した道を切り開きロビンが調査しやすい環境を整える役割だ。


おかげでオレも一端の探検家と言う訳だ。
まぁ、ロビンには悪いけど……
遺跡そのものも悪くはないが、
どちらかと言えば遺跡に眠るお宝の方に興味がある。
トレジャーハンターとでも言うべきかもしれないな……。



─────ロビンに付き添って世界中の遺跡を調査して回る。



幼いころに思い描いた未来が気づけば現実のものと成っていた。


「クレスー、出来たー!!」

「了解ー」


ロビンからの声に休めていた身体を起こす。
密林とは思えない爽やかな風に乗って、
火にかけられた鍋からいい臭いが漂ってくる。
持っていきた調理器具で作った料理が完成したようだ。


ロビンの作った料理を頬張る。
携帯食と調味料で作ったスープだ。
高価な食料で手間暇をかけた訳ではないインスタントな食事だが、
とても美味しい。
美しいロケーションの中と言うのもあるだろうが、
やはりロビンが作ったと言うのが大きい。
オレはロビンが作った料理ならたとえ大嫌いな物だって食える。

絶対に、食う。


「これからどうする?」


一応ロビンに問いかける。
なんとなく答えは分かってる。
案の定予想道理の答えをオレの顔を窺いながら言った。


「じゃあ遺跡の下見に…」

「駄目」

「うぅ……せめて道順だけ確認して遺跡を一目だけ……」

「駄目」


ロビンが拗ねた顔で抗議する。
目の前に御馳走があるのにお預けをくらった気分なのだろう。
気持ちは分からなくもないが、
オレは腕時計が刻む時刻ををロビンに見せた。


「今ちょうど三時半を回ったとこだ、
 当然まだ日も高いし道順を確認するだけくらいなら問題は無い」

「それじゃあ……」

「駄目だ。だって遺跡を目の前にしたら絶対に“ちょっと”じゃすまない」


これは経験則だ。
ここから遺跡まで三十分掛かるとする。
遺跡につけば4時だ。
日が完全に沈むのが六時だとして返る時間を考えるとだいたい一時間半。
もしかしたらコレよりも時間は短くなる。
遺跡を前にして“それだけ”じゃ絶対にロビンは終わらない。
考古学者としての血が騒ぎ始めたらまず止まらない。
必ず作業は夜まで及ぶ。
何度か深夜まで手に持った明かりを頼りに作業をするのを見てきているのだ 。


「言っとくけど、キャンプを張る地点としてココを動かすつもりは無いからな」


これ以上のロケーションはそう無い。


「……わかったわ」


ロビンは残念そうにうつむく。
……なんかもの凄い罪悪感だ。


「まぁ、その代わり明日は朝一で出発するから」

「えっ!ありがとう、クレス」


俯き顔からの急転換。
ロビンに尻尾がついてたならバタバタと嬉しそうに振っていたに違いないだろう。
そんな様子に思わす笑みがこぼれた。













その後、オレとロビンは別行動を取ることにした。

ロビンは泉の辺で読書をするらしい。
まぁ、まだ日も高いし
もし何かあってもロビンなら大抵のことは平気だろう。

オレは今晩の食材を取りに行くことにした。

わかりやすく言えば狩りである。
何かあった時のためにあまり遠くへは行かないつもりだ。


「じゃあ行ってくる」

「いってらしゃい。何時くらいに戻ってくるの?」

「うーん、日が落ちない内に帰りたいから五時半くらいだと思う」

「うん、わかったわ。気をつけてね」


オレはロビンに片手を上げて答えた。






狩り


と言っても罠なんか作る訳では無い。
今の装備は腰に差した刃渡り五十センチ位のサバイバルナイフと鉄線だ。
これらはサバイバルセットの一つで獲物の解体用と捕獲用だ。

ロビンと共に各地を周っていく内にオレの狩りのスキルは上昇し
既に熟練の域にある。
食料が底を付きそうにそうに成った時は海に潜って魚を捕ったりもしている。
おそらく小型なら海王類も捕れる気がする。


オレはロビンと来た道を少し戻った。
キャンプから少し戻った其処に、
来る途中に見つけた獣の通った跡があった。
改めて其処を調べる。
折れた小枝にまだ新しい足跡、
思った通り獲物は近くにいるはずだ。
しかもこの様子だとかなりの大物だろう。
軽く準備運動を行い、
オレは音を立てずにその跡を追った。






狩りの度に思うのだが、
生きると言うことは奪う事だと思う。

別に悟りを開いたとかそんな大層な事じゃない。
ただ、ぼんやりとそんな事を考える。

考えれば当然なのだろう。
人間だけじゃなく全ての生物は他の生き物のの命を奪って生きている。
それをオレはこうやって自覚したと言う事だけだ。

まぁ、そうこうと無駄で全く腹の足しにもならない事を考えている内に、
不自然に枯れ木や落ち葉が集められた“巣”とおぼしき所に到着する。

辺りに巣の主はいない。
オレはそれを確認すると“月歩”で近くの樹の枝へと飛び乗った。






息を殺して待つこと二十分。
獲物が現れた。

太く反り返った白い牙。
獰猛な気性。
厚い毛皮に覆われた逞しい全身。
岩をも砕きそうな硬い蹄。
にらんだとおりココの主は巨大な猪だ。
それも通常の三倍はありそうなほどの大きさだった。

オレは目の前の獲物に集中し、
静かに腰に差したサバイバルナイフを抜いた。

狙うは首筋、
一撃必殺。
おそらくそれ以外は分厚い皮膚に阻まれる。
手負いの獣ほど面倒なものはない。
確実に仕留める。
その時風が吹いた。
巨大な猪は鼻を鳴らすと、
弾かれたようにこちらを向いた。


(しまった、臭いか!!)


気配は消していた。
だが、風が運んだわずかな体臭までは消せなかったのだ。

巨大な猪は嘶きを上げオレの潜んでいた樹木に向かって突進する。

伝わる衝撃。
樹木は半ばでへし折れメキメキと音を立てる。

オレは空中に投げ出され急ぎ“月歩”で体制を整え着地した。


「見つかったか……」


まさか、あの場面で風が吹くとは思わなかった。
あれさえ無ければ一撃で仕留める自信はあった。


「時の運ってやつか……」


半ば諦めの様につぶやく。
目の前には地面を成らしオレを轢き殺そうてと構える巨大な猪。


「まぁ、いい……。
 どっちが強いか決めようじゃねぇか猛獣」


オレは手に持ったサバイバルナイフを腰のホルダーに納め、脚に力を込める。
重心が下へと移動し地面が僅かに沈む。


「───こい」


それが合図だったのだろう、
猪はその巨大な牙を突き立てるようにオレの方向へと向かう。
当たればただでは済まないのはへし折れた樹木を見れば分かる。


「鉄塊“剛”」


だからオレは全力で受け止めた。

猪との衝突により衝撃が全身を駆けめぐる。
猪のあまりの馬力に身体がじりじりと地面を擦り後退する。
だが、其処までだ。
助走での威力を完全に塞がれた猪にオレを押し切る事はもはや不可能だ。
野生の堪か、
猪はオレを掬い上げようと鼻先を更に下げようとして動きが止まった。


「オレの勝ちだな猛獣」


猪の牙はオレによって完全に押さえられ動けなかった。


「オラッ!!」


腕に力を込め猪を受け流す様にブン投げる。
猪の巨体は宙を舞い背中から地面に激突する。
猪は短い悲鳴を漏らして、倒れ込んだ。


オレは腰からサバイバルナイフを抜き猪に近づく。
猪は立ち上がるもさっきの一撃が効いているのか、全身が小刻みに震えている。


「やめとけ、無駄な抵抗だ。
 動かなければ痛みを感じずに逝ける」


獣に話しかけても仕方がないとは思うが通告する。
だが………やはり猪は動きを止めない。
諦めるどころか寧ろ満身創痍の全身でオレに立ち向かおうとした。

何故だ?
と疑問に思った瞬間猪の後ろから小さな猪が出てくる。
おそらくこいつの子供だ。
そしてその子供は母の前に立ち強大な敵に向かって小さな牙を立てた。


「………そりゃ、無いだろう」


こんなの見せられたら、オレの負けじゃねぇか……













現在狩りに出て三十分くらいたった。
だけど今日はなんだか気分が萎えていた。
前方の樹に鳥が止まる。少し大きな肥えた鳥だ。
腰にあるナイフを投げれば確実に仕留める自信がある。

だが、気分が乗らない。

やがてその鳥の隣に番であろうもう一羽がやって来て空へと飛び立った。

「あぁ……最悪だ。
 ロビンのとこにでも帰って小魚でも捕ろ」


オレは来た道をトボトボと帰る。
なんだか無駄に汗だけかいて、汚れただけだった様に思える。

しょうがないが……今日の夕飯は持ってきた保存食とこれから捕る小魚にでもしようか。

その前に水浴びでもしたいな……


「ただいま……ロビン……悪い今日は取れなか…………っ!!!」


なんと言うべきか、
ブルーな気分で帰って来たら水の妖精かと見間違うロビンがいた。
オレの全身の時間は間違いなく止まった。


「ク……クレス?」


ロビンは一糸まとわぬ姿で泉の中にいた。
艶やかな黒髪は水に濡れ更にその艶を増し、
肌は温度差に戸惑うようにほんのりと上気している。
しなやかで健康的な白さの肌は太陽と水面からの反射で幻想的に輝いている。
今、水滴がそのなやましいうなじから流れ落ちた。
水滴はほっそりとした首筋を通り、
うっすらとした鎖骨を流れ、
少女と女の中間で揺れる、発達途中の背徳的な二つの膨らみの先端から流れ落ち、
奇跡ともいえるしなやかな腰元にある、形の良い臍に一度とどまり
一気に下腹部へと流れ落ちた。

その姿に、
あぁ……成長したんだなぁと場違いにもしみじみと思い入り、
オレの視界は闇に覆われた。
何かと思えばロビンの悪魔の実によって咲いた腕に目を塞がれていた。


「~~~~~~っ!!」


ロビンが声にならない叫びを上げる。
目には見えないが何となくオレの周りには尋常では無い位の量の腕が咲き誇っているのだろう。

そして何となくこの先の展開も分かる。
分かりたく無いけど分かる。
やっぱり思春期の女の子は多感なんだなぁ……
軽く現実逃避をしながら、オレは全身に全力で“鉄塊”をかけるか悩んだ。


間もなく密林に情けない悲鳴が響いた。






「悪かったって」


夜になって一緒に火を囲みながらオレはロビンに誠心誠意頭を下げる。
なんでもオレが狩りに行く前に帰ってくる時間を聞いたのは、
水浴びがしたかったかららしい。
そして想像以上にオレが速く帰って来てしまったために
“事故”が起こったそうだ。

ロビンはツンとそっぽを向いて目を合わせてくれない。
帰って来てからずっとこうだ。


「もう知らない」

「ごめんなさい」

「いや」

「すいません」

「だめ」

「……焼き魚一個あげるから」

「いらない」


ヤバい、泣きそうだ。

ロビンの様子は変わらない。
怒っているのか、
昼間の状況からオレと顔が合わせづらいのか
いっこうに取り合ってくれない。
この調子じゃ明日に持ち越しかなぁ……
ため息をついて仰向けに寝転ぶ。
空を見れば星がとてもきれいだった。

このまま寝ちまおうかなぁ……なんてぼんやりと考えていると
ガサガサと森の方から物音がした。

オレは跳ねあがり意識を音の方向に向ける。
ロビンも同じように身構えた。


物陰からの音が近くなる。
やがて闇の中から巨大な獣が現れた。


「昼間の……猪」


それは昼間に戦った猪だった。
良く見れば後ろには子供の猪もいる。

ロビンが攻撃をしようと動こうとする。
だが、オレ左手でそれを制した。


「どうしたの?」

「少しだけ待ってくれ」


猪は警戒するようにオレに近づき一定の距離を保つと、
地面に何かを置いた。
それは色とりどりの果物と山菜だった。


「くれるのか?」


猪は軽く鼻を鳴らした。
肯定らしい。
猪は再び警戒するようにオレから距離を取った。
本来は敵同士だったのだ。
そしてそれは今も猪の態度を見れば変わらないのだろう。
ならば……借りを返しに来たと言うところだろうか?


「……カッコイイじゃねぇか」


母猪はそのまま子猪を連れ振り返ることなく帰った。
オレは猪の親子が去って行った茂みをしばらく見つめていた。


「……どういうこと?」

「貸し借りは無しだって話じゃねえのか」


オレは猪が置いて行った食材の方向へと向かう。
いまから二次会ってのも悪く無い。














「ほふぃんいふぁい(ロビン痛い)」

「……………」

「いたたたたた……いや、待って……腕が増え……っ!!」


話終わった途端
何故かロビンに頬をつねられた。
しかも無言で、
なんかひたすらに怖い。


「結局あの後あやふやになったもの」

「あやふやって、ロビンのはだ……いだだだだだだだ」


頬の痛みで強制的に黙らさされた。
ヤバい、地雷でも踏んだかもしれない。


「ふふ……これくらいで許してあげる」

「……そりゃどうも」


オレはつねられた頬をさする。


「結局あの後、遺跡はあったけど“歴史の本文”は無かったのよね」

「まぁ……それでもお前は楽しそうだったけどな」

「そうね、……そうだったわね」

「結局“歴史の本文”はこの海じゃ一つしか見つから無かったんだよな」

「ええ、おそらくもうこれ以上は……あったとしても私の知りたい事じゃ無い筈」

「偉大なる航路……グランドラインか……」

「きっとそこに“ある”そんな気がするわ」

「見つかるさ……絶対」

「そうね……ありがとう」













あとがき

過去話第二話です。
書いてみてやってしまったかなーと微妙に後悔してます。
書いてみたかったんですラブコメ。
クレスの武器は基本的に“六式”と“サバイバルセット”です。
クレスはすっかりとハンターですね。
過去編はとりあえず次で最後です。
次は友情モノのつもりです。


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