<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

チラシの裏SS投稿掲示板


[広告]


No.10476の一覧
[0] ファンタジー世界で剣とか作ってます。[流星](2009/07/26 11:47)
[1] 原付とイノシシと母親[流星](2009/07/22 10:06)
[2] 冒険者とアンデッド[流星](2009/07/22 10:25)
[3] ジジイとネクロマンサー[流星](2009/07/26 11:54)
[4] 妹と魔法[流星](2009/07/26 11:58)
[5] 店番とエルフ[流星](2009/07/26 16:32)
[6] 盗品と母様[流星](2009/07/26 16:07)
[7] エルフと師匠[流星](2009/08/02 11:45)
[8] 米と異世界[流星](2009/08/08 10:01)
[9] 番外編  リーラの一日[流星](2009/08/08 12:06)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[10476] 米と異世界
Name: 流星◆805304cf ID:7d0258d3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/08 10:01
魔法付与を行える鍛冶屋は、普通の鍛冶屋と相続の形が違う。
普通、鍛冶屋では、自分の子供に継がせるものだが、
魔法付与を行う鍛冶屋ではそういうわけにはいかない。
なぜなら、魔法付与を行うのに必要なアーティファクト製作の才能が稀少だからである。

魔法を使う才能を持つのは、三人に一人、
魔法の才能のうち、アーティファクト製作の才能を持つのは、百人に一人。
鍛冶屋の子供が才能を持って生まれてくる可能性は、一パーセントに満たない。

魔法付与を行う鍛冶屋の相続の形は四つの種類がある。
一つ目のパターンが、幸運にもアーティファクト製作の才能を持って生まれた場合である。
この場合の、職人は幼少期から専門的な訓練を受けられるため、優秀な職人になることが多い。
俺の親父もこのパターンだったそうだ。

二つ目のパターンが、自分の弟子を跡継ぎにする場合である。
ほとんどの弟子が十五歳から二十歳で弟子入りするため、前述のパターンよりも劣っている場合が多い。
やはり、幼少期は学習効率が良く、その期間に訓練を受けているかどうかで実力に大きな差が生まれる。

三つ目のパターンが、自分の子供を弟子と婚約させて継がせるパターンである。
親としては、自分の子供に店を継いで欲しいと言う気持ちがあるために、才能を持った弟子と結婚させて、店を継がせる。
また、弟子ではなく才能を持った職人の知り合いと結婚させる場合もある。
俺としては、政略結婚みたいな気がしてあまり好きではないのだが、二つ目のパターンと並んで最も多いパターンである。

四つ目のパターンが、普通の鍛冶屋として子供に継がせる場合である。
この場合は、継がせるのにふさわしい弟子がいない職人が選ぶ。
才能が無い子供に継がせても、苦労させるだけなのであまり好まれないパターンである。
そもそも、魔法付与を行う鍛冶屋は、普通の鍛冶屋のような量産にむいていないため、継ぐ場合は工房を大きく作り変えねばならない。


「―――というわけで、うちの鍛冶屋は弟子の俺が養子になっているから、二つ目のパターンだな」

「え、でも、三つめのパターンも、わるくないと、おもうよ?」

リーラは、俺がせっかく懇切丁寧に鍛冶屋の相続に関して説明したのに、理解してくれなかったようだ。
というか、この妹はそこまでこの店を継ぎたいのか?
なんか、六歳児にして玉の輿を狙っているようでお兄ちゃんは悲しい。

「なぁ、リーラ。自分で言うのもどうかと思うが、俺って結構、鍛冶の将来性あるよな?」

赤ん坊の頃から訓練を受けている上に、異世界の知識まで持っているんだ。
いずれは、親父にも負けない立派な職人になれるだろう。

「うん!おにいちゃんは、てんさいだよ」

分かっているのなら、何故、いばらの道を選ぶんだ?
親父は、剣に関しては妥協しない人だから、俺以上の職人を連れてこないと継がせてはもらえないぞ。
俺としては、そんな苦労はせずに、好きな人と結婚して欲しいのだが。

「それなら、俺以上の職人を連れてくるのは難しいからあきらめたほうが良いと思うぞ」

「え、どうして?」

不思議そうな顔できょとんと見つめてくる。
本当に理解していないような表情だ。
もしかして、さっきの言葉はお世辞か?
油断させようとしていると言うことだな。

いいだろう。
俺の実力が大したことないと思っているのなら、
今度、俺の実力を見せ付けてやる。
そして、リーラ、お前は野望を捨て、好きな人と結ばれるといいだろう。

「だって、わたしが、けっこんしたいのは―――」

ゴーン、ゴーン、ゴーン

ちょうどその時、朝の鐘が鳴り響く。

「もうこんな時間か。そろそろ朝飯の準備は整ったかな」

この世界に時計は一応あるのだが、高価で個人所有できるものではないため、庶民は教会や塔で鳴らされる鐘の音で時間の把握をする。
朝の鐘は、目覚まし代わり。

「リーラ、学校へ行く準備は出来ているか?」

うん?どうしてだ?
リーラが、何か不満そうな顔をしている。
まるで、良いところで邪魔をされたかのような顔だ。

「うん。ねるまえに、じゅんび、しておいたよ」

「じゃあ、朝御飯といきますか」



朝食は、パンとじゃがいものスープ、そしてハムを焼いたものだ。
この世界の主食はパンで、ご飯を食べる人はいない。
お袋の料理は、上手いから特に文句は無い。
でも、やっぱり日本人としては米だろう。
米が恋しくなることもある。
だから、探してみた。

………家畜のエサだった。
泣きたくなった。
この………つらい気持ちをどう表現すれば良いんだろう。
俺って意外に、米に対して誇りを持っていたんだな。

リーラは、ちまちまとパンを食べている。
リーラは食べるのが遅く、食事を終えるのはいつも最後だ。

「なぁ、リーラ。最近は、学校でどんなことやっているんだ?」

「えと、きのうは、文字のかきかたと、ゴブリンについてならったよ」

この世界の学校は、校舎で勉強するというより、寺子屋で勉強するというイメージが近い。
教会や教師をしてくれる親切な人の家を学校にしている。
受講科目は、読み書き、そろばんが中心。
他に、社会常識や応急処置の方法などを教わる。

あと、この世界独特な科目として、モンスター学がある。
モンスターに襲われないように、
モンスターから逃げられるように、
モンスターを倒すために、
モンスターの生息分布や習性、攻撃方法、弱点などを学ぶ。
有名どころを百種類ほどだろうか。

「へー、ゴブリンかー。リーラはゴブリンに遭遇したらどうする?」

「にげる!せんせいが、にげなさいって、いってたよ」

たかがゴブリン。
されどゴブリン。
子供では、殺される可能性があるのだから逃げるのが正解だろう。



リーラはニコニコと笑いながら、学校のことを話す。

「リーラは学校楽しいか?」

「うん、たのしいよ。おにいちゃんも、くればいいのに」

この世界の教育水準は低く、俺にとっては簡単に習得することが出来た。
だから俺は、学校に行っていない。
なぜかこの世界の言葉は日本語に類似しているし、
そろばんも小学生の分数ぐらいまでしか習わない。
社会常識やモンスターについての知識なども本を読んで独学で身につけられた。

「俺は別に習うこと無いからな」

「でも、たのしいよ…」

リーラがお願いをするように、
目を潤ませてつぶやく。
しょうがないな、
鍛冶の仕事があるけど、少しぐら―――
って、騙される所だった。
リーラは、修行の時間を少しでも削ろうとしてるんだった。
危ない、危ない。

「リーラ、食べ終わったみたいだし。そろそろ学校に行ったほうが良いんじゃないか?」

「そうだね、じゃあ、いってきます。おにいちゃん」

「いってらっしゃい」

リーラはお皿を片付けると、かばんを持って学校へ行く。
さて、そろそろ仕事でも始めるか。



焼入れを終了させた剣の反り具合を確認。
少し、ゆがんでいるか?
道具を使って魔力を込めながら、修正していく。
ほとんど完成している状態なのだから、ここで失敗したらショックは大きい。
ほんの少しのゆがみさえ生じないように、丁寧に行う。
じっくり、じっくり丁寧に。

刃の形が満足のいくものになったら、次は仕上げ研ぎを行う。
特製の砥石を用いて、魔力を込めながら、剣を研ぐ。
魔法を付与することによって、切れ味は上げられるが剣本来の切れ味が悪かったら意味が無い。
剣が最大限の切れ味を発揮できるように、集中して研いでいく。


ぐぅーっとお腹が鳴った。

「もうお昼か、昼飯にでもするか」

剣を焼成するための釜に入れておいた自家製飯ごうを取り出す。
やっぱり、日本人なら米を食わないと駄目だ。

悲しくも家畜のエサ扱いされているため、米は安く手に入れることが出来た。
この世界の人たちは、ご飯を炊くということを知らずに生で食べているから、
米の良さを知らないんだと思って、リーラに食べさせたことがある。

「ぐちゃぐちゃして、おいしくない…」

それから俺は、家族の反対を押し切りご飯を食べている。
昼飯は、家族ばらばらに食べることにしているので、もっぱらご飯だ。
ご飯をどんぶりに移し、焼肉や香辛料を加え、焼肉丼を作る。
飯ごうに残ったご飯は、後でおにぎりにしていただくことにする。

「やっぱり米を食わんと力出ないよなー。なんで皆、米が苦手なんだろ」

俺は、がつがつと焼肉丼を平らげる。
レパートリーが少ないのが問題だ。
誰かメニューを開発してくれると助かるんだが。

腹も膨れたしもうひと頑張りしま―――

「無理じゃ!うちの工房ではそんなに生産出来ん!」

親父?
店先のほうから、親父の怒鳴り声が聞こえた。
何かあったのか?
始めようとした仕事を中断し、
店先のほうへ向かう。




「では、オルトさんお願いしましたよ」

役人らしき人が親父に声をかけて、出て行く。
役人?
何で役人が来てるんだ?

「親父、さっきの人がどうかしたのか?」

「国からの注文じゃよ。日本刀百本、魔法剣三本。半年以内に出来なければ、税金を上げるそうじゃ…」

「はぁっ!?何だよそれ、作れるわけ無いじゃん。嫌がらせ?」

うちの鍛冶屋は一年で日本刀を六十本しか生産していない。
親父五十本、俺十本である。
半年で百本なんて出来るわけがない。

それに魔法剣を三本もかよ。
魔法剣は、性能を向上させる魔法付与しているだけの剣とは、違って魔法のような能力を持つ剣である。
軽量化、硬化、切れ味向上の魔法を付与しているだけの剣とは違う。
それらの付与に加えて、
切り裂いた対象をしゃべられるようにする。
呪文を唱えるだけで、魔法が炸裂する。
剣を振るだけで、風の刃が敵を切り裂く。
持ち手の身体能力を向上させ、時速百キロ以上で走れるようにする。
このような強力な能力を持っている。

また、魔法剣の特徴としては、オーダーメイドであり、持ち主に適合させるために微調整を繰り返して、完成させるという点がある。
つまり、持ち主以外では、剣の性能を最大限発揮出来ないということだ。

俺が親父と初めて会ったときに使った剣の場合でも、親父が使っていれば唱えるだけで、低級アンデッドぐらいなら灰に変えられる能力を持っていた。
魔力の質が似ている俺が使ってもアンデッドをしびれさせるのが精一杯だったし、
他人が使っても、目くらまし程度の能力にしかならない。

そして今問題なのは、この剣を製作するためには、数ヶ月かかる上に、貴重な素材が必要だということだ。
………間に合うわけ無いじゃん。

「嫌がらせでは無い様じゃ。他の店にも同じように声を掛けとるらしい」

「いや、ちょっと待てよ。国がそんなに武器を欲しがるなんて。戦争でもすんのか?この世界には戦争が無いはずじゃなかったのか?」

この世界は魔物や魔王という共通の敵がいたため、人間の国同士が争うことはまれであり、歴史が残っている千年間のうち数えるほどしか戦争は起こらなかったんじゃなかったのか?

「………わからん。一応、国際情勢には不安な点は無かったはずじゃが」

「何が起ころうとしているんだよ………」



あとがき
夏休みになったから少しは、ペースが上がるかと思ったんですが、なかなか上手くはいきませんね。
次回はリーラ視点の番外編でいこうかと思います。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.026319980621338