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No.10476の一覧
[0] ファンタジー世界で剣とか作ってます。[流星](2009/07/26 11:47)
[1] 原付とイノシシと母親[流星](2009/07/22 10:06)
[2] 冒険者とアンデッド[流星](2009/07/22 10:25)
[3] ジジイとネクロマンサー[流星](2009/07/26 11:54)
[4] 妹と魔法[流星](2009/07/26 11:58)
[5] 店番とエルフ[流星](2009/07/26 16:32)
[6] 盗品と母様[流星](2009/07/26 16:07)
[7] エルフと師匠[流星](2009/08/02 11:45)
[8] 米と異世界[流星](2009/08/08 10:01)
[9] 番外編  リーラの一日[流星](2009/08/08 12:06)
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[10476] ジジイとネクロマンサー
Name: 流星◆805304cf ID:87de6b2d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/07/26 11:54
叫び声という幻聴が聞こえてからそろそろ二時間が経過しようとしている。

アッシュさんなかなか戻ってこないなぁ。
どうしたんだろう、何かてこずっているのかなぁ。
犠牲者の人たちのお墓を作っているのかもしれない。
アッシュさんにとっては、ソニアさんとのお別れのときなんだろうから、時間かかって当然だよな。

そんな現実逃避をしていると夕日によって赤く染まった西側から、砂煙を上げながら凄い勢いで何かが近づいてくる。
何だ?
人間?
老人?

老人が時速100キロ以上で走ってきやがった。
教会で立ち止まり、周りをきょろきょろと見ている。
この人はあごに白いひげをもっさりと蓄え、髪の毛は後頭部に白髪があるだけのおじいさんだ。
背の低い老人であるが、着ているものの上からわかるほど筋肉質な体型をしている。
頑固親父っぽい雰囲気も出している。
何だこの爺さん?

「くっ、さすがに遅かったか?」

爺さんは悔しそうに歯軋りをする。
そして俺のほうを見て、少し驚いた表情になる。

「何じゃ、お主捨て子か?」

爺さんはごくごく当たり前のことを聞く。
いや、聞かれてもおぎゃあとしか言いようが無いんだが。
爺さんがあたりを再び見回して、つぶやく。

「しょうがないじゃろうな。他にちょうど良さそうな者もおらんし。試すだけましじゃろう」

爺さんが俺に近づいてくる。
ふところに手を入れて、ナイフを取り出す。
あの、なんで、俺に近づきながらナイフ取り出すの?
しかもナイフから不思議な威圧感を感じるんだけど?

「少し怖いかも知れんけど、心配するなよ、坊や」

何言ってんの、このジジイ!
首筋を見つめるなよ!
怖いよ!
ジジイのナイフが首筋に当てられる。
まだ赤ん坊の俺には、抵抗することが出来ない。
やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめてくれ!

ぶすっ!

俺の首筋にナイフが突き刺さった。
俺の二度目の人生これで終わり?
………あれ?
いくら経っても痛みを感じない?
そもそも血が流れていない。
ジジイがナイフを俺の首から抜く。
だが、血は流れなかった。

「………俺、死んでない?生きてる?」

首にナイフを刺されても生きているのか俺?
もしかしてこれって最強系異世界転生だったりするのか?
イノシシに殺されたり、捨てられたりしてあきらめていたけど、運が向いてきたかもしれない。

「なぁっっ!!!」

ジジイも俺を見て凄く驚いている。
当然だ、ナイフが刺さっても死なない赤ん坊がいたら驚くだろう。
ここからが俺の逆襲の番だ。
秘められた力が覚醒し、ジジイを打ち倒す!

「覚悟しろよジジイ!」

しかし秘められているだけのことはあって、使い方がよくわからない。

「かめはめ波ぁーーーー!!!」

とりあえず、有名な技を使ってみたけれど、何も起こらない。
くそっ、どうやったら使えるんだ?
見当も付かない。
いっそのこと俺の能力は不死身だけと考えるべきか?
いや、そもそも不死身でもないかもしれない。
ならば赤ん坊の俺ではジジイを倒せない。

どうする俺?
なすすべも無く、やられるだけなのか?

「ジジイ!俺をどうするつもりだ!」

実力で負けているのなら、まず、相手の目的ぐらいは知っておかねばならない。
そうしなければ何をすれば良いのかわからない。
俺はジジイをにらみつける。
ジジイはポツリとつぶやく。

「おぬし、わしの言葉を理解しているのか?」

「えっ?あれっ、そういえば俺普通にしゃべれている?!」

どういうことだ?
さっきまでおぎゃあとしか言えなかったのに。

「それは、さっきわしが使った言詠の剣の力じゃ」

「ことよみ?何それ、さっき俺の首に刺したナイフのこと?」

言われてみれば、ナイフを首に刺されてから普通にしゃべっている。

「言詠の剣は、刺したものが喋ることが出来るようになる魔法剣じゃ。しかし剣には言葉
を理解させる力は無い。何故おぬしはわしの言葉を理解しておるんだ?ただの赤ん坊だとはとても思えん」

なんだかよくわからんが、便利なものがあるらしい。

「それなら俺に聞きたいことでもあったのか?」

相手の疑問をスルーして、問いかける。
転生したから言葉を理解したなんて言うべきではないだろう。
このジジイが信用できるとは思えない。
それに不思議ナイフを赤ん坊に刺さなければいけないほど知りたいことがあったはずだ。

「おっとしまった、忘れておった重要なことだというのに。おぬしが言葉を何故理解できるのかは気になるが、今はそれが好都合じゃ。アッシュという短髪赤髪の男を見なかったか?体格の良い男じゃ。此処にきているはずじゃが何処におる?もう中に入ってしまったのか?」

このジジイはアッシュさんの知り合いなのか。
俺はとりあえず、ジジイに二人は此処を訪れたこと、教会の中に入ったこと、二時間前に叫び声が聞こえてから出てこないことを伝えた。
そして出来ることなら助けてやってくれと言う。

「くっ!まずいな、急がねば。日が沈めば二人は手遅れじゃ。坊主、おぬしも付いて来い」

ジジイは背中に俺をかついで、教会の中に飛び込んでいく。
教会の中には、腐った死体が三つほど転がっている。
アッシュさんに斬られたアンデッドだろう。
酷い異臭がして不快感を覚える。
かつては神聖な場所だったといわれても信じられない。
だが、そんなことはどうでもいい、俺にはもっと重大な問題がある。

「おいジジイ、なんで赤ん坊の俺を連れて行くんだ?」

アンデッドのような危険な魔物がうろつく場所に俺を連れてくるなよ。
自慢じゃないが、はいはいも出来ないんだぜ。
そんな俺がいても足手まといにしかならない。
囮か?いや、えさにでもするつもりか。

「念のためじゃ、あの馬鹿二人が出発してから、新情報が入った。此処には、ネクロマンサーがおる。出来ることなら裏をかきたい」

「俺をえさにでもするつもりか?俺に出来ることは何も無いぜ」

「何を言っておる、喋ることが出来るではないか。それで十分じゃ」

ジジイはそれだけを言って、奥にある地下室への階段を下りていく。
アッシュさんが倒したアンデッドの死体?(上手い表現が見つからない)、それを辿っていくだけで道に迷うことは無かった。
アッシュさんがほとんど倒したらしい。

「坊主は此処で待っておれ、合図をしたらこの剣を掲げて『聖なる光よ!』と叫んでくれ」

ジジイは俺に対してそう告げると、俺を階段の陰に隠し、そして神聖っぽい雰囲気を出した剣を俺に持たせる。
剣の長さは30センチぐらいで、重さは約500グラム。
剣と言うより、短剣といったほうがよいものだが、今の俺では持ち上げることさえ出来そうにない。

「聖なる光?何か魔法でも発動するのか?」

「あぁ、そうじゃ。この剣の持ち主は、唱えるだけで魔法が使えるようになる。威力は眼くらまし程度じゃが、使えば場の流れを変えられるかもしれん」

もしもの時はまかせたと俺に告げて、ジジイは階段の先にある部屋に入る。
部屋の中には、中肉中背でローブをかぶった人、うつろな目をしてぼさぼさの青っぽい髪の少女、端のほうでうずくまる二人の男がいる。
うずくまっているのは、アッシュさんとチンピラのようだ。

「ソニアッ!生きておったのか!」

ジジイの驚きの声が狭い地下室に響く。
あのうつろな眼をしているのがソニアさんなのか。
もしかして操られてる?
ここでローブをかぶったほうがソニアだったら驚きの展開だろうが、間違いなく違うだろう。

「何ですかあなたは?もうそろそろで新しい下僕が増えるところだったというのに」

ローブの男、ネクロマンサーが不愉快そうな声あげる。
やはりこの男が黒幕のネクロマンサーだ。
ジジイとネクロマンサーはじりじりとにらみ合う。
ネクロマンサーは素早く懐から杖を取り出し、

「漆黒の闇夜よ、愚か者を飲み込め!」

ネクロマンサーの詠唱により、杖からどくろのようなものがジジイに向かって放たれ、
恐ろしい気配を発しながら、黒板を引っかくような叫びと共にジジイに襲い掛かる。
だが格が違った。
ジジイが剣を振るうと、風の刃がどくろを切り裂き、相手の杖までも同時に破壊する。

「ふんっ、こわっぱがわしに勝とうなど百年早いわ!」

ジジイは相手のネクロマンサーを鼻で笑い、剣を突きつける。
そういやジジイ時速100キロで走るような人外だっけ。
ジジイの剣を抜くとこ、全く見えなかったんですけど。
俺の出番まったく無しか、まぁいいや、楽なほうが好きだし。

「くっ!ソニア!このジジイを殺しなさい!」

ネクロマンサーがソニアに命令を下す。
ソニアは命令を受けて、鉄の剣を爺に対して振り下ろす。
ジジイは異常なほど敏捷な動きをしているため当たらない。
あのジジイほんとに何者だ?
ジジイのほうが人間に見えないんだけど。

「ソニア目を覚ませ!」

ジジイは必死にソニアに呼びかけるが、反応が全く無い。
その間、異常な動きでソニアの攻撃をかわし続けている。
ジジイによるとネクロマンサーとは、邪法に身を捧げたものであり、死者を操るものであるが、このネクロマンサーは少し違う点がある。
通常は殺してからアンデッドにするが、こいつの場合生きたままアンデッドにして生命力の強いアンデッドを作る。
ソニアもそのようにされたらしく他のアンデッドと違って腐ったりはしていない。

「ふはははは!無駄ですよ。彼女に声は届きません。なぜなら彼女は自ら意思を閉じ込めているのですから」

「なんだと?どういうことだ」

ジジイはソニアが壁になっているのでネクロマンサーに攻撃が出来ずにいる。
ソニアに攻撃を加えるわけにいかないので、避けることしか出来ない。

「アンデッドにした後、子供たちを殺させたら意志を捨ててしまったようでしてねぇ。困った話ですよ。私は彼女が苦しむのを見て楽しんでいたのですから。ふはははははっ!」

えげつねぇ、この男。
何としてでも倒さなきゃいけない。
俺には、ジジイの合図を待つしかないのか。

「中々に粘りますねぇ、そちらの男はソニアを使ったらすぐに動きが鈍っぐぅっつ!」

トンッ

ネクロマンサーが話し終わらないうちに、彼の右腕にナイフが刺さった。
アッシュさんだ。
倒れていたはずのアッシュさんがナイフを投げている。

「糞野郎が!俺は手前のことを絶対に許さねぇ!」

「坊主、今じゃ!」

アッシュさんが叫ぶのに合わせて、ジジイが合図を出す。

「聖なる光よ!」

俺は意地でナイフを掲げて、呪文を叫ぶ。
それと同時に地下室は白い光に包まれて何も見えない。

ザシュッ

何かが切り裂かれる音、そしてゴトリと何かが落ちる音がした。
白い光が薄れていく、切り裂かれたのはネクロマンサーであり彼の上半身が床に転がっている。
ジジイは剣に付いた血を払い落とし、つぶやく

「これで終わったようじゃの」

「オルトさん、ソニアはいったいどうなるんだ。生きることが出来るのか」

ソニアはうつろな目をしたまま、ぼぉっとしている。
ネクロマンサーを倒しても何も変わってない。

「生きることは出来るだろうが、ネクロマンサーの支配を数年受けておったのじゃ。それに酷い過去があったというのなら、もう意識が一生戻らないかもしれん」

「そうか………でも、生きているんだったら、なんとか………するさ」

「じゃあ、そろそろ帰るかの」

ジジイは階段のところに居た俺を担ぎ上げ階段をのぼる。
アッシュさんはソニアを背負っている。

「何だ、さっきのは坊主だったのか、ありがとな」

アッシュさんが俺に礼を言う。
だけど俺は空気の重さのあまり、何も返すことが出来ない。
ソニアは兄の背中でさっきまでより幸せそうな顔で眠っている気がする。

これはハッピーエンドだったのだろうか。
死んだはずのソニアが生きていた。
少なくとも、これ以上の結果は無かったはずだ。
でも、これからのソニアについて考えると複雑な気分になってしまう。

俺たちは二時間ほど歩いて、アッシュさんたちの住んでいる町にたどり着く。
アッシュさんはまずソニアを家まで運び、その後に教会に置いてきたチンピラを回収するつもりらしい。
ソニアと一緒に彼らの家のほうに帰っていく。

俺はジジイと二人きりになっていた。

「おぬし、これからどうするつもりじゃ」

「どっか良い感じの孤児院があるんならそこに連れて行ってくれるとありがたいな」

「家に来るか?ばあさんと二人きりじゃし、前から子供が欲しいと思っておってのう。それに少しばかり魔法の才能があるようだし、わしの跡継ぎとして内弟子にしてやっても良いが?」

「魔法の才能?あの聖なる光ってやつか?」

「そうじゃ、あの剣の魔法はわし専用にカスタマイズしておるから、わしのように造剣に関しての魔法の才能を持ったやつでないと、あれほどの光は発生せん、おぬしの光は相手を麻痺までさせておった」

「造剣?あんた、ただの冒険者じゃないのか」

「そもそも冒険者じゃないわい。わしは生粋の鍛冶屋じゃよ。魔法剣専門のじゃが。」

「ふぅん、じゃあ俺に鍛冶屋になれってことか?いいぜ、やってやるよ」

孤児院に行くよりは、ましだろう。
今さっきまで、寂れた教会にいたから、多少の抵抗感を感じるし。

「修行は厳しいから、根を上げんとよいのだがのう」

こうして俺はオルト爺さんのもとで一流の鍛冶屋になるために修行をすることになった。まぁ前世でも物作りに似たことをやっていたし、冒険者になって戦うよりも俺に向いているだろうな。


あとがき
今回は二話まとめて投稿したので、あとがきはこちらのほうに書いて置きます。
書き始めてから気づきましたけど、作品を書くのって難しいですね。上手く書けないので上手くなるにはどうすればいいのか日々悩んでおります。
しかし、何故か登場人物が不幸になってしまう。全然そんな積もり無いのに、キャラが不幸になってしまう。
一応今回でプロローグ?は終わりです。
次回からは、赤ん坊状態から少し成長した主人公の物語になります。そろそろヒロイン的存在も出すつもりです。


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