【地球 海鳴市 市街地】
場面はアリサ・バニングスと月村すずかが結界内から弾き出された時間まで遡る。
「もう一体何なのよ!?」
「アリサちゃん、なのはちゃん達空飛んでたね……」
クリスマス・イブの市街地に二人の疑問が言葉により立ち上った時、街の様相は一変する事になる。
《海鳴市全域に緊急避難命令が発令されました、市民の皆様は係の案内従い速やかにお近くシェルターに避難して下さい、繰り返します海鳴市……》
「き、緊急避難警報!?」
「あ、アリサちゃん!なのはちゃん達大丈夫かな?」
緊急避難命令が発令されたのだ、日本近海より宇宙怪獣が出現し海鳴市に向かっているのだからそれは当然の事だろう。
アリサとすずかは訳の分からない場所に居たなのはの事が心配だった、なのはが何かおかしな力を持っている事は推察出来たが、とても避難警報が出る状態。
つまり恐竜帝国やミケーネ帝国、宇宙怪獣の来襲や、今は無くなっているがティターンズやブルーコスモスの軍事行動、BF団やヌビア・コレクションの暗躍など、
日本では今まで散々な敵勢力から狙われており、それらに対抗出来るとはとても思えなかった為である。
「行くわよ、すずか、なのはの居た所へ」
「でも、私達が行っても……」
確かに、それらの事象に二人の小学生が向かった所で何の役にも立たず、足手まといになるだけであろう、しかし
「何も出来ないかも知れない……でもじっとしていられる訳ないじゃない!!」
「……そうだね、行こう!アリサちゃん」
何もせずなのはが戻ってこなかったとしたら、絶対に後悔するそれだけは確かな事なのだから。
この行為が間違っているとしても、今は感情のままに二人は海を目指して駆け出した。
【地球 海鳴市】
「ちっ、宇宙怪獣だと!?兵隊ならともかく上陸艇が相手では……サラミスはまだ到着しないか!?」
地球連邦軍極東支部所属、第171MS隊隊長である大尉は愛機であるジェガンのコックピットで通信先に気勢を上げる。
言葉通り、MSでは宇宙怪獣・兵隊の相手は出来ても、500Mを越える上陸艇が相手では、戦艦の艦砲射撃が無くては対処出来ない。
《こちら地球連邦軍極東支部所属、第68PT隊全機到着しました》
続々と先行するMS、PT隊が集まってくるが、上陸艇を相手取る戦艦が到着しなければ、勝負にすらならないと大尉は歯噛みする。
そこに司令部より慌てた様子の通信が入る。
《お、オービット・ベースより入電、宇宙怪獣にはα、αナンバーズが当たるとの事!?》
「あ、αナンバーズだと!!?ではカルアネデス作戦は!!?」
《更に、地球連邦本部より入電!カルアネデスの板は自力で帰還、作戦は成功、繰り返します、作戦は成功です!!》
地球、いやこの銀河の命運を賭けた作戦、カルアネデス作戦の成功を聞き、MS、PTのパイロット達は歓声を上げる。
ここに居る兵士達の同僚、嘗ての同期達、決して少なくない人員がカルネデアス作戦に参加していたのだ、感慨も一入である。
《や、やりやがった、やりやがったぞ彼奴ら!!》
「はははははははっ!宇宙怪獣どもは我らが英雄様が相手どってくれるそうだ!我々は住人の非難と護衛に専念するぞ!
……それから今日の酒は俺の奢りだ!!!」
《《《《サー・イエッサー》》》》
【海鳴市 海岸】
ダイゼンガーのパイロット、ゼンガー・ゾンボルトは時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンより闇の書の防衛プログラムの詳細な情報を聞き出していた。
クロノに取ってもこれからの事を考えれば、極力協力し心証を良くしておく必要が有るので終始協力的だった。
《防御フィールドに再生能力か……》
「はい、やっかいな能力です……」
《参考になった、感謝する!!》
腕組みを解き、感謝の意を表すゼンガーだが、一々気合いが入っている為、クロノの後方でフェイトがビクッビクッとゼンガーが声を張り上げる度に怯えていた。
ゼンガーは仲間達に機体の向きを変える。
《防御フィールドに再生能力、定石通りなら再生能力の追いつかなくなる程の攻撃を畳み掛けるか……》
《再生そのものの意味を無くす攻撃を当てるか……ゼンガー少佐、止めは俺が刺そう》
《ゴードン少尉、任せる!それまで奴の相手は獅子王!街に被害を出す訳にはいかん!!頼むぞ!!》
《分かったぜ!任せてくれゼンガー少佐!!》
《兜と俺は兵隊共を引き付け囮になる、ゲッターチームは上陸艇の牽制を頼む、無理に墜とす必要はない、だが街には近づけさせるな!!》
《了解だぜ、ゼンガーさん》《まかせて下さい、ゼンガー少佐》
《エヴァチームは海岸線に移動、そこを防衛線として後方には一匹たりとも通すな!街に被害を絶対に出させるな!!
アラド、ゼオラは空からエヴァチームのフォローに廻れ!!》
《《《《《了解》》》》》
《レーツェル、お前は遊撃を頼む全体をフォローしてくれ》
《任せてくれ、友よ!》
ゼンガーは矢継ぎ早に指示を出し、空を見上げる。
《あ奴等が到着した時こそ 好機!!》
ゼンガー・ゾンボルトの駆るダイゼンガーは沖に姿を見せ始めた宇宙怪獣と闇の書の防衛プログラムに意識を向けながら、斬艦刀の切っ先を天に翳す。
《我はゼンガー・ゾンボルト!!悪を断つ剣也!!!!》
【海鳴市 海浜公園】
アリサ、すずかの二人が海を臨む公園にたどり着いた時、街には避難を誘導する連邦の兵や防衛部隊のMSやPTが多数展開していた。
「あ、アリサちゃん見てみて、ジェガンだよジェガン!?」
「まったく、すずかは相変わらずの量産党ね……」
「何言ってるの?汎用性、コストパフォーマンスどれを取ってもジェガンこそ至上だよ!?」
月村すずか、MS党ジェガン派である、いくら自分の家である月村重工にとってアナハイム・エレクトロニクスが一番のお得意様であるにしても、
小学生の割に渋すぎである。
ちなみに余談であるが、姉である月村忍は妹と同じMS党であるが、ジオニック信奉者なので時々姉妹喧嘩に発生する事も有るが、どこの家族も似たようなもので
あったりもする。
そこに海上に展開されていた結界が破壊され、ガンエデンを筆頭にαナンバーズのメンバーが転移してきた。
「あ、あれって!!?」「あ、αナンバーズだぁ」
二人は驚愕と供にそれを眺めるが、ポツリとアリサが呟く。
「あれはPTX-015R、ビルト・ビルガーにPTX-016R、ビルト・ファルケンかしらね……良い機体だけど、たった一機で戦局を左右する為に作られた、
ヒュッケバインMk-Ⅲには及ばないわね」
「アリサちゃんは相変わらず、あんな金食い虫の高コスト機が好きなんだね……趣味悪いよ」
「なんですって!?」
アリサ・バニングス、PT党、ヒュッケバインMk-Ⅲ派である。
バニングス・グループの1つであるバニングス生命の最大のお得意様先がマオ・インダストリィであり、アリサ自身が面識の有るマオ社の社長、リン・マオを
理想の女性像にしている事も理由の1つに挙げられるだろう。
普段は仲の良いアリサ、すずか、なのはの三人だが、事こういう話になると言い合いに発展する事が多々あるのだった。
それぞれ好きな機体がジェガン、ヒュッケバインMk-Ⅲ、真ゲッターでは意見が合わないのも仕方のない事なのかもしれないが……
そこに、アリサ達が居る場所に向かって三機の機体が向かって来るのをすずかは捉えた。
「あ、アリサちゃん、こっちに来てる、危ない!」
「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ」」
二人が居た付近に三機、エヴァンゲリオン初号機、弐号機、零号機が降り立った。
《碇君、背後距離30に生命反応2確認》
「え?逃げ遅れたのかな、どうしようか?アスカ」
《子供!?放っておける訳ないでしょうが!ファースト、アタシは金髪の子を乗せるからアンタは紫髪の子をお願い》
《了解》
「え?でもシンクロ率にも影響するし、僕の所に乗せ《バッッカじゃないのアンタ!!》アスカ?」
《だからアンタはバカシンジなのよ!いくら子供でもねあの子達はレディなのよ!エントリープラグはLCLで満たされてるんだから男と一緒に乗れる訳ないじゃないの!》
《碇君……無神経》
「アスカぁ、綾波ぃ」
碇シンジが同僚である二人のチルドレンに責められているが、確かにこれはシンジの自業自得であろう。
平行世界ではアスカはシンジと同乗しているのだが……この世界のアスカにとっては知らぬ事である。
惣流・アスカ・ラングレーは外部スピーカーをオンにする。
《そこの二人、ここは危ないから金髪の子はこっちに紫の髪の子はあっちの青い機体に乗せて貰いなさい》
弐号機と零号機は片膝を付いて、ゆっくりと乗りやすい様にアリサとすずかに手を差し伸べた。
二人は恐る恐る差し出された手に上ると、ゆっくりと弐号機と零号機の手が二機の首の付け根付近に移動する。すると二機のエントリープラグがハーフイジェクトされ、
搭乗口のハッチが開かれる。
アリサとすずかは意を決したようにプラグに滑り込んだ。
「な、なにこれ水!?」「はわわ、溺れちゃう!?」
「大丈夫よ時期に慣れるわ」「LCLが肺に満たされれば、呼吸可能になるわ」
アリサとすずかは肺にまで液体を入れる等という、普通に生きていたら一生ない事態に意を決して止めていた息を解放する。
「「うっ、きもちわるい」」
「それだけ言えれば上等よ!」「我慢して」
血の味がするLCLを肺に取り込み気分を悪くする二人だが、それぞれのパイロットより不器用な慰めが掛かる。
《シンジ!!私達はシンクロ率も落ちてるし、何より子供を乗せてるから何時もの動きは出来ないわ……頼むわよ》
《お願い、碇君》
「任せてよ!!」
碇シンジの力強い応答を聞いてアスカは思う。
(南アタリア島で初めて会った時は、辛気臭くて、ウジウジしてて、パッとしない奴だったのに……)
碇シンジ、二年前14歳の時に父親に手紙1つで呼び出され、エヴァ初号機に搭乗する羽目になり、始めは流されるままにエヴァに乗り戦いに身を投じた少年。
カミーユ・ビダン、シーブック・アノー、ウッソ・エヴィン、同じように無訓練で機動兵器に搭乗し多大な戦果を叩き出した存在に隠れがちだが、二年前パルマー戦役
の折り最終的には軍の命令を無視し、エヴァ量産期に侵攻された旧第二新東京市、ジオフロントに無断出撃したり、戦いを知らなかった普通の少年にも関わらず、一年にも
満たない戦役の最終局面では、宇宙を埋め尽くす程の物量を誇ったゼントラーディ・ボドルザー艦隊、及び宇宙怪獣達に仲間と供に突撃していく程の戦士に成長した。
碇シンジという少年も紛れもなく『スペシャル』な少年である。
(ちぇ、いっちょ前にそんな背中するようになっちゃってさ……バカシンジの癖に)
三機の一番前で戦闘態勢に移行する初号機、アスカに取ってこの陣形は見慣れた物だ、初号機が最前列で強力なATフィールドで敵の攻撃をシャットアウトして、
隙を見つけて弐号機が吶喊、最後尾の零号機が遠距離武器でフォローする最も戦い慣れた陣形だ。
始めはシンジの事もファースト、綾波レイの事もキライだった筈なのに、今は誰よりも頼もしい、そんな事を感じている自分の心をアスカは何故か心地よく感じていた。
自然に口角が吊り上がって行く。
「行くよ、アスカ!綾波!」
《わかってるわよ!》《了解、碇君、フォローは任せて》
エヴァ三機は腰を落とし、駆けだした。
【海鳴市 海岸 上空】
宇宙怪獣・上陸艇より兵隊が射出され、300体あまりが群れを成して海鳴市に向い飛び立つ、その景色は一種の嫌悪感を抱かせるものだ。
「何という光景だ……」
「兵隊か……ちょっとかわいいかも」
「しょ、正気かシャマル!!」
「ガオガイガーに任せとけば大丈夫に決まってるぜ」
ヴォルケンリッター達は目の前に広がるこの世界の戦争に恐れを抱く、10メートルを越える生物が300体程も飛び回りその後ろには500メートル級の生物が控えて
いるなど長い記憶の中でもちょっと思い出せない。
少々シャマルは錯乱し、ヴィータは完全にお子様に成ってしまっているが……
クロノ・ハラオウンは当初αナンバーズに協力し事に当たろうと思っていたが、ゼンガーに拒否された。
それも仕方ない事だろう、50メートルクラスの巨大兵器とたかだかニメートル弱の人体が供に並び立つのは無理がある、15メートルクラスのPTやMS等と連携する
のもそれなりの連携経験が必要になる程のものであるし、別段αナンバーズは自前の戦力だけで十分なので協力が必要という程でも無い、という事も理由に挙げられる。
それに高町なのは、八神はやて両名も参加を辞退する事に抵抗は無かった事も挙げられるだろう、二人にとって闇の書の闇はともかく宇宙怪獣と戦闘、
いや戦争する自信が無かった為である。
何度も言う様だが二人は宇宙怪獣の恐ろしさを良く知っているからだ。
エヴァ三機とビルト・ビルガー、ビルト・ファルケンが闇の書の闇を回り込むように向こう側に抜けたのを確認すると。
戦闘態勢に移行したαナンバーズ地上組の中で真っ先に敵に向かって駆けだして行ったのは、ジェネシック・ガオガイガーとマジンカイザーであった、ジェネシックを先頭
に二機が突っ込んでくるのを認識した闇の書の防衛プログラムは、強力な砲撃を仕掛ける。
その瞬間ジェネシックを追い抜いたカイザーはその砲撃をまともに食らってしまう。
《その程度でカイザーに傷をつけられるかよ!》
「む、無傷だと!!」
カイザーの正に理不尽と言っていい位の防御力にシグナムは心底驚愕の意を表す。
「あたりまえやろシグナム、カイザーはな今正に空にそびえる鉄の城、いやさ鉄の魔神!超合金ニューZαを舐めるんやないで!!
あんなもん効かんわ!!」
自分がやった事の様に腕を組みながら嬉しそうな表情を見せるはやてに対し、シグナムは今まで言った事が無い位の生返事を返してしまう。
シグナムに取ってこの事態がどれ程の衝撃になっているかが分かるというものだろう。
カイザーの影から飛び出したジェネシック・ガオガイガーは一気にバーニアを吹かし距離を詰める。
《うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ガジェットツゥゥゥゥル!!》
ジェネシック・ガオガイガーは自身の尻尾の部分を分解させ、再構築させる、そう今この時、最も相応しいツールとは。
《ディバイディング・ドライバァァァァァァ!!!》
ディバイディング・ドライバー、空間を湾曲させ、周辺の被害を最小限に抑える為のディバイディング・フィールドを構築するツールである、海面に炸裂したドライバーは
海鳴の街の海岸上に円形のディバイディング・フィールドを発生させ、その中心に闇の書の防衛プログラムは取り込まれ、降り立ったジェネシック・ガオガイガーと相対する
「何コレ!!?」
「GGG謹製のディバイディング・ドライバーなの、フィールドを構築する事によって極力周囲に被害を出さない様にする物なの」
「まあ、ここらへんは魔法の結界の方が優れとるかもしれんなぁ」
ユーノがディバインディング・フィールドに驚愕の意を表すがなのはとはやては自分達の知識を提供する。
確かに周囲の被害を押さえるという面では魔法による結界の方が優れているだろうが、ユーノはこのフィールドを構成している技術に目を見張る。
(空間を湾曲させたまま止めるなんて!?完全に制御されているの!?技術的には圧倒的に地球の方が進んでいるのかもしれないなぁ)
出でよ、ディス・レヴ
全ての機体の内、最も上空に位置したクヴォレー・ゴードンの駆る、ディス・アストラナガンは胸部の装甲を自らの手でこじ開ける。
幾多の世界を崩壊させたという闇の書の闇、しかし今回は相手が悪すぎた、その名は勇者王にして究極の破壊神、ジェネシック・ガオガイガー。
《はぁぁぁぁぁあ!!》
右フック、左アッパー、ドリルニー、華麗で有りながら荒々しいコンビネーションで闇の書の闇は吹き飛ばされる。
《ブロォォォクン・マグナァァァム!!》
更に追い打ちに高速に回転した掌、ブロークン・マグナムが土手っ腹に炸裂、防御フィールドなどまるで紙の様に粉砕され、闇の書の闇は真正面から文字通り押されに押さ
れまくっていた。
確かに闇の書の闇は再生はしているのだが、それ以上の破壊の力に晒され何も出来ずに一方的にやられていた、だがそれも仕方ないだろう相手はピサ・ソールにより無限に
再生された、明らかに闇の書の闇より格上なパルパレーパ・プラジュラーを文字通り破壊した究極の破壊神なのだから。
負けじと防衛プログラムも触手の様な物を射出し、ガオガイガーを拘束しようとするが力任せに引きちぎられ、前蹴り、所謂ヤクザキックを炸裂され100メートル程吹き
飛ばされる。
追い打ちを掛ける様にバーニアを吹かし接近したガオガイガーは、殴る蹴る抉る、それは正に嬲り殺し、破壊神の名に恥じぬ戦い振りである。
「凄い、防衛プログラムがここまで一方的に……」
闇の書、いや夜天の書の管理人格、祝福の風リインフォースは今日この日まで幾多の次元を破壊した、自身の悲しみと諦めの象徴でもある闇の書の闇、防衛プログラムがこ
うまで一方的に痛めつけられる事態に心の底から驚愕していた。
しかしこのまま行けば後数分で防衛プログラムは臨界を迎え、あらゆる物を侵食し始めるだろう。
だがどうだ、αナンバーズの戦士達は焦る所かまるで何時もの事だと言わんばかりに戦場を縦横無尽に駆け巡る。
散々に打ちのめされた闇の書の闇は自身が吹き飛ばされた時に捲き起こった土煙の向こうで禍々しく輝くジェネシックのデュアル・アイを捉えると、初めて感じたモノの衝
動に任せて後ろに後ずさり始めた。
「ば、馬鹿な!?闇の書の防衛プログラムが恐怖を……恐れを学習してしまったというのか!!?」
感情の無い筈の闇の書の闇、幾多の世界に恐怖を振りまいた存在が初めて学習した感情は、皮肉にも恐怖だった。
その結果闇の書は恐れに身を任せ1つの行動を取る。
今までとは違う触手を多数展開させ周囲を取り込み侵食していく……暴走を始めたのだ。
「まだ暴走まで未だ時間が掛かる筈……ま、まさか!!恐怖が感情が暴走までのプロセスを短縮させたのか!!?」
リインフォースは闇の書の闇が恐怖を覚え恐怖を取り除く為に暴走を早めた事に何度目かも分からない驚愕の声を上げる。
闇の書の闇は暴走を開始し手当たり次第に辺りを侵食していく、そして当然自分自身の恐怖の対象であるジェネシック・ガオガイガーにもその矛先を向けた。
だが闇の書の闇にとって不幸だったのは始めに侵食の対象に選んだのがジェネシック・ガオガイガーいやエヴォリューダー獅子王凱だった事だろう。
触手はジェネシックに取り付き取り付いた装甲を変色させ侵食を開始する、だが
《この程度でこのジェネシックをエヴォリューダーを取り込めると思うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!》
ジェネシック・ガオガイガーのコックピットを中心に緑色の力強い光がジェネシックを大地を染め上げる。
《俺の勇気は、負けないぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!》
勇気の力により増幅させられたGストーンの力はそのまま獅子王凱のエヴォリューダーの力をも増幅させ、闇の書の闇の侵食を防ぐ所か逆に侵食仕返す。
闇の書はどこまで行ってもプログラムで構成されているモノに過ぎず、エヴォリューダー獅子王凱、その存在こそが天敵とも呼べる存在であった。
『ぎゅぇぇぇぇぇぇぇ!!』
たまらず悲鳴を上げる闇の書の闇を見てあまりに理解不能な事が起きすぎて、リインフォースは逆に落ち着いた様子で呟く様に言葉を発した。
「ば、馬鹿な、闇の書の侵食を防ぐ所か逆に押し返すとは……なんという……」
「すげぇぜ!!さっすが、ガオガイガーだぜ!!ギガ、いや、テラすげぇ!!」
次々に起こる理不尽な事態について行けないリインフォースが、人の気持ちも知らずに浮かれまくっているヴィータに、きつい目線を送ってしまうのも仕方の無い事であろ
う。
テトラ・クテュス・グラマトン
解放されたディス・アストラナガンの胸部から発生した輝きが増してゆく、その光は禍々しく、そしておぞましい。
場面は変わりディバインディング・フィールドの海側の端の上空に位置したダイゼンガーとジェネシックを送り届けたマジンカイザーは多数の兵隊に包囲され攻撃に晒され
ていた。
しかし目立った反撃はせず市街地に兵隊の意識が行かない様に注意を引き付け、気合いをいれ正に『鉄壁』の守りを誇っていた。
「この程度でこの武神装甲は落とせんぞ!!」
「まだまだ!カイザーを落とすにはまだ足りねぇぞ!」
二人より更に海側の海上には上陸艇三艦の間を縦横無尽に駆け巡る真ゲッターの姿が見える。
真ゲッター1が空を飛び多数の兵隊が上陸艇に近づけさせんと畳み掛ける様に突撃を掛けるが、ゲッタートマホークで進行方向に位置する兵隊を磨り潰し、
加速力を生かし振り切る。
しかし直ぐに別の兵隊群に囲まれ全方位から一斉に突撃を受ける。
「オープンゲット!!」
「チェンジ、ゲッター2!!」
逃げ場が無いと思われたが、真ゲッターはオープンゲット、三機のゲットマシンに分離する事で回避し直ぐさま真ゲッター2に変形する。
真ゲッター2はその機動力を生かし、上陸艇を時には兵隊すらも足場にして文字通り空を駆け、翻弄し兵隊の注意を引く。
そうして引き寄せられた兵隊を海面スレスレまで誘い出す。
「オープンゲット!!」
「チェンジ、ゲッター3!!」
今度は真ゲッター3に変形し海中に落下、引き寄せられていた兵隊群は追うように海中に誘い込まれるが、海中に入った事により動きが鈍くなった所にゲッターミサイル
を大量に打ち込まれ沈黙する。
「三位一体!これこそゲッターの神髄なの!これは他の機体には真似は出来ないの!!」
高町なのははゲッターの神髄に歓声を上げ両手をブンブンと振り回す……本当に嬉しそうである。
場面は更に移りディバインディング・フィールドの陸側の縁に位置したエヴァ三機が、闇の書の闇の無差別な攻撃や墜とされた兵隊の残骸等を、
縁に沿いながら初号機が縦横無尽にATフィールドで防ぎ、弐号機が此方を攻撃する兵隊や市街地に抜けようとする兵隊を攻撃的ATフィールドで叩き落とし、零号機が
そんな二機を射撃武器でフォローしていた。
「ちょっとアンタ大丈夫?顔色悪いわよ」
「だ、大丈夫よこの位、大したこと無いわ!!」
何時もよりは押さえ気味とはいえ、エヴァンゲリオンの戦闘機動は激しいものであり、弐号機に同乗していたアリサをアスカは不器用にも気遣うが、
アリサは持ち前の負けん気の強さで強がる。
「意地っ張りな子ね……」
《アスカが二人になったみたいだよ……》
「こんなガキと一緒にしないでよ!!」「むっ、それはこっちの台詞よ!このおばさん!!」
「お、おば……なんですって!!アタシはまだ16よ!このクソガキ!」「く、クソガキ!?何よ!!16なんてアタシにしてみればおばさんよ!!」
「「ムキィィィィィィ!!」」
《やっぱりそっくりじゃないか……》
《アリサちゃん……》《弐号機パイロット……大人げないわ》
この様なやりとりをしながらも一機も後ろに通してないのだから、この三人も大したものである。
さあ 虚無に帰れ
ディス・アストラナガンのこじ開けられた胸部は尚一層輝きを増し、その光は上空から街を照らす程に成っている。
まるで夜空に浮かぶ月の様に、いや月はここまで禍々しくはないだろうが。
エヴァ三機の上空では市街地に飛んで抜けようという兵隊をビルト・ビルガーのパイロット、アラド・バランガとビルト・ファルケンのパイロット、ゼオラ・シュバイカー
が迎撃していた。
「チャンスだ!もといピンチだ!!」
横腹を見せた、兵隊にコールドメタルソードをお見舞いしようとしていたアラドだったが死角から他の兵隊の攻撃に直撃寸前で気づいた。
《もうバカッ!何やってるのよアラド!!》
しかし直撃寸前、その兵隊は更に上空に位置したゼオラのオクスタンライフルによって打ち抜かれる。
「すまねぇ、ゼオラ、油断したぜ」《アンタ油断出来る身分じゃ無いでしょうが!!》
「まったくゼオラは何時も口やかましくて敵わないよなぁ」《なんですって!!聞こえてるわよ!!》
「やばッ!!」
何時も通り端から見たら痴話喧嘩にしか見えないやり取りをしながらも、二人の連携は見事なものだ、かつてスクールと呼ばれた兵士養成機関から一緒でありながら
敵対し、戦い、数奇な運命を辿りながら最後は供に飛べる様になったつがいの猛禽達の連携は一線を画す。
その見事な連携を見て、フェイト・テスタロッサは感嘆の声を上げる。
「凄い、あんなに息ピッタリで、私となのはでもああは行かないのに……」
フェイトはリインフォースと戦った時なのはと連携したが、あんなに見事な連携は出来なかったと思い起こした、あの二機はお互いの動きが示し会わなくても
分かって居るように見えた。
「凄いなぁ」
「そうかい?何かあのハサミ付きは危なっかしい感じがするけど……」
しかしフェイトはアルフの影に隠れっぱなしでビクビクと怯える小動物の様である、なぜなら上空で正にその真骨頂を見せようというディス・アストラナガンを視界に入れ
ない様に頑張っているからである。
《行けトロンベ!シュルター・プラッテ》
アウセンザイターは両肩に装備された盾をまるでブーメランの様に投擲し、ダイゼンガー、マジンカイザーに群がる兵隊を減らす。
《トロンベ!!ランツェ・カノーネ!!》
更に、背後からジェネシック・ガオガイガーに襲いかかる兵隊をランツェ・カノーネ、装備されたライフルで撃ち落とす。
そして今度は自身を標的に襲いかかる兵隊達を地を滑るように滑走しながら翻弄し引き付けると、一気にディバインディング・フィールドを駆け上る。
《行くぞトロンベ!シュツルム・アングリフ!!》
ディバインディング・フィールドの頂上より一気に駆け下り、両手に持ったランツェ・カノーネを縦横無尽に乱射し、群がる兵隊を一掃する。
《駆けろトロンベ!!》
アウセンザイターのパイロット、レーツェル・ファインシュメッカーは愛機を駆りディバインディング・フィールド内を駆け巡り、全てのメンバーのフォローに回る。
「なんという機動性、それに凄まじいまでの視野の広さだな……」
「うむ、あの部隊からは見習うべき事が多いな」
ザフィーラとシグナムは関心しながらアウセンザイターの戦闘機動を見つめる。
クロノ・ハラオウンはαナンバーズの認識を改めていた。
(これがαナンバーズ、この世界の英雄達)
英雄、ヒーロー、勇者、色々と呼び方が有るだろうが、これらの人物はどういった人物だろうか?偉業を成し遂げた人であろうか?勇気ある者だろうか?色々な解釈があるだろうが、
それは間違っては居ないだろう。
それらの力の中で振り向かず、涙を見せず、突き進む生き様、それが背中に現れ回りの者達の勇気を震い起こさせる、それは一握りの人物、英雄譚の主人公の様な人物が持つ力である。
だがこのαナンバーズのメンバーは、その一握りの英雄譚の主人公の様な人物で溢れかえっている、何とも異常な部隊である。
数々のメンバーの背中を見て自身の勇気が沸き上がり、その人物の背中を見ては他の人員も沸き上がる、正にそんな相乗効果が捲き起こる奇跡の部隊がαナンバーズなのだ。
戦うαナンバーズの背中を見て心から沸き上がってくる何処か昂揚した感情を持て余しながらクロノは胸中で呟く。
(質量兵器の凄さに目が行きがちだが、この人達が英雄と呼ばれる訳が分かった……なるほど、あの宇宙怪獣の群れにも躊躇無く飛び込める筈だよ)
「αナンバーズ……これが地球の英雄達か」
「流石に僕でも心が震え立つのが分かるよ」
「何とも凄まじいな、まさかこれ程とは」
クロノ、ユーノ、ザフィーラの男三人衆は仁王立ちに成りながらαナンバーズを見つめていた。
この無限光の中で!!
ディス・アストラナガンの胸部から発射された禍々しい、いや破滅的と言っていい程に高められた光は空へと昇り、禍々しい雲を呼び寄せそこに見たことも無い様な
魔法陣が描かれる、その内から沸き出でる破滅的な光は指向性を帯び、一条の光線と成り闇の書の闇に向かって降り注いで行った。
そこに宇宙から落ちてくる五条の紅い流星の内、一条の流星が進路を変え一気に急降下してくる。
それをいち早く察知したゼンガーは円形に包囲させるように誘導した兵隊の中心から、マジンカイザーと供に地上のディバインディング・フィールド上に落下していく。
入れ替わる様にその流星はゼンガーの居た場所に到達すると天使の羽を開く、その姿は死を告げる告使天使の様。
流星、ガンダムウイングゼロ・カスタムは両手を水平に広げる。
《目標、STMC 排除開始》
ガンダニュウム合金製ガンダムチーム 参戦
「これが主はやての故郷、地球か……私が生まれ、今まで幾多の世界を巡って来たがこれ程の戦力を持つ世界は初めてだ……恐ろしい世界だ、この地球は……」
リインフォースは天より降り注ぐ破滅的な光線、アイン・ソフ・オウルに圧倒されながらそう呟いた。