【地球 海鳴市 海岸 結界内】
闇の書事件は最終幕を迎えていた。
「クロノ君アルカンシェルって、何処でも撃てるの?」
「何処でもって、例えば?」
「今、アースラが居る場所」
八神はやては空を見上げる。
「軌道上、宇宙空間で」
「難しいな……この世界にはコロニーやプラント、そして軌道上にはオービットベースが在る、一つ間違えれば地球に落ちてくるぞ、エイミィその辺りはどうなんだ?」
『それが……ここ最近地球に隕石群が何処からか空間転移してきて降り注いでるから、周辺の空間が不安定で……計算が出来ないんだ』
「そんなぁ~」
手詰まり、アルカンシェルで地表を撃てば防衛プログラムは打倒出来るかもしれないが地球に多大な被害を与える、そうなればこの世界との戦争は避けられない、
それは是が非でも回避したいのがアースラの一貫した考えである。
衛星軌道上でもアルカンシェルの影響で、コロニーやプラント、オービットベースの周回軌道が狂い地球に落ちても同様に戦争になるだろう、完全に手詰まりである。
しかし、その選択肢その物が無くなってしまう事になる、第三者が闇の書事件に介入してきたのだ。
『う、嘘!?ク、クロノ君!ど、どうしよう!?』
「どうした!?エイミィ、落ち着け!何が有った?」
『う、宇宙怪獣がそっちに向かってるみたい!数は上陸艇3!!そ、それにこっちも宇宙怪獣に見つかっちゃった!?か、数は24……ど、どうしよう』
「な、なんだって!!!!」
宇宙怪獣来襲である。
「「う、宇宙怪獣なの!?(STMCやて!?)」」
高町なのはと八神はやては驚愕の声を上げる、それも仕方のない事だろう、地球人類にとって宇宙怪獣とは天敵である。
その脅威は十二分に知っているのだ、当然ながらいくら自分達が魔法という力を手にしても対抗出来る等という考えすら浮かばない程の物だと。
しかしそうとは知らないクロノ以外のメンバーはいまいちピンと来ていない表情を浮かべるが、なのは、はやて、クロノにその脅威の程を淡々と説明されると、
どんどん顔色が悪くなっていく。
「な……んだと、大型の物はキロクラスの巨体で小型の物でも10メートル級、天文学的な数に物をいわせて、星その物に寄生し爆発的に数を増やすだと?」
「な、なのは?そんなのが居るの?この世界には」
宇宙人や地下勢力だけでもお腹いっぱいなのに、想像していた宇宙怪獣像とはまるでかけ離れた化け物だったとは、(5メートル程で二足歩行のキシャーと鳴くような物体を想像していた)
予想の斜め上だったシグナムとこの世界の事を何も知らなかったフェイト・テスタロッサは、宇宙怪獣のあまりな理不尽振りに恐れおののいた。
「ど、どうすりゃいいんだよ!?もう時間も無えし」
ヴィータを筆頭にこの絶体絶命の状態になのは達は頭を抱える、しかし忘れてはならないこの世界には、この地球には最強の守り手達が居ることを。
唐突に空間が歪み、何かが出現する兆候が現れる、その顕著しようとしている圧倒的な存在により内側から結界が弾け飛んだ。
それは天使の様だった、闇の書の防衛プログラムと比べてなお巨体な、三対の羽を生やし、空間を押しつぶす程の静謐な波動を撒き散らしながらその存在は顕著した。
《私の名はガンエデン、地球の守護者です》
人造神 ナシム・ガンエデン 登場
時を少し巻き戻す
【地球圏 衛星軌道上オービットベース付近】
「帰ってきたんだな」
ダイターン3のパイロット波乱 万丈は穏やかな笑みと共に万感の想いを言葉に乗せる。
「ああ、俺たちの地球だ」
グレートマジンガーのパイロット剣鉄也も普段は見せない穏やかな表情で地球を眺める。
「みんな、、胸を張ろう俺たちは勝ったんだ」
ゲッター1のパイロット流竜馬もその言葉に続く、彼もその表情は穏やかだ。
「さよなら…そしてありがとう…俺達を守ってくれた魂達……」
連邦の白き流星アムロ・レイも一つの戦いの終わりを感じると共に、力を貸してくれた、逝ってしまった人々に感謝を捧げる。
「またいつか、会える日が来るさ、きっと……そう、いつか遠い彼方で……」
アムロは万感の思いで地球を見る。
αナンバーズは遂に戦いを終焉に導いた。
12000年の時を越え、この戦いの裏に居た霊帝を倒し、アカシック・レコード、無限力にさえ認められ。
「いいえ、まだ終わってはいないようです」
「そうだな、まだこの世界でやり残した事が有るようだ」
地球の守護者たるナシム・ガンエデンことイルイと平行世界の番人の役目を引き継いだクォヴレー・ゴードンは、まだ終わっていないとαナンバーズに警告をする。
「なんだと!?いったい何が……」
「闇です、闇が見えます、この世界を滅ぼす闇が……場所は……日本」
「力自体は大したことは無さそうだが、時限式の爆弾の様な物だろう、このまま放って置けば……あまり猶予も無さそうだ」
驚愕と共に疑問を口にする、戦艦エルトリウムのタシロ艦長だったが、直ぐさまイルイ、クォヴレーがその疑問に答えると流石は歴戦のαナンバーズ、メンバーは一瞬で臨戦態勢へと各々移行する。
そこにオービットベースよりαナンバーズへと通信が入る。
《地球衛星軌道上に宇宙怪獣出現!!恐らく取りこぼしでしょう、小規模ですがその数およそ2000、船籍不明の艦が襲われている模様!!》
《同じく日本近海に宇宙怪獣出現!!海底付近に潜伏していたようです!数上陸艇3!、日本上陸を目指している模様、上陸予想地点は……日本、海鳴市!!》
「なぁぁぁんて、こったぁぁぁ!!」
タシロ艦長が大げさに驚愕するが、これは艦長の癖みたいなものである、その証拠に焦っている者は誰も居なかった。
何故ならαナンバーズの戦士達は、この程度の危機など何度も乗り越えて来たのだから。
「地球に現れた宇宙怪獣は先程見えた闇のビジョンに向かっているようです、殆ど力は残ってませんがガンエデンの力で空間転移した後、十数機なら呼び込む事は出来ます」
「地球突入のウェーブコースの算出はもう済んでいる、空間転移には遅れるだろうが、ここから一気に日本まで降下は可能だ」
イルイやウイングゼロ・カスタムのパイロット、ヒイロ・ユイが自分達に出来る手段を提示すると、αナンバーズ首脳陣は直ぐさま方針を打ち出す。
「部隊を二つに分ける、地球にはガンエデンが空間転移で先行、到着後真ゲッター、マジンカイザー、ジェネシック・ガオガイガー、エヴァシリーズ、ダイゼンガー、アウセンザイター、ディス・アストラナガン、ビルト・ビルガー、ビルト・ファルケンを呼び込んで貰いたい、イルイ君済まないが頼めるか?」
「大丈夫です」
「指揮はゼンガー少佐に任せる」
「承知!!」
矢継ぎ早の出される指示にイルイはやや緊張した面持ちで受け答え、臨戦態勢に移行しているゼンガー・ゾンボルト少佐は愛機であるダイゼンガーと動きをシンクロさせ、腕を組み目を瞑った状態で一言に言霊を乗せる。
「ウイングゼロ・カスタム、デスサイズヘル・カスタム、サンドロック・カスタム、ヘビーアームズ・カスタム、アルトロン・カスタムは此処より地球に降下、先行した部隊と合流した後、
対象を掃討してくれ」
「任務了解」「ああ、分かったぜ」「了解しました」「了解した」「いいだろう」
ヒイロ・ユイ、デュオ・マックスウェル、カトル・ラバーバ・ウィナー、トロワ・バートン、張五飛、ガンダニュウム製のガンダムのパイロット達はそう答えると勢い良くバーニアを吹かし、
五条の流星の様に大気圏に突入していく。
「残った者達の内、バルキリー部隊はフォールド・ブースターを搭載後、先行し所属不明艦を救助、対応はフォッカー少佐に一任する」
「お任せあれ」
ベテランバルキリー乗りロイ・フォッカー少佐は、通信越しに何時もの余裕な表情を浮かべる。
「では勇者達の健闘を祈る!!」
締めくくる様にGGG長官、大河幸太郎が声を張り上げるとバトル7よりホールド・ブースターを搭載したスカル小隊、ダイヤモンド・フォース、YF‐19、YF‐21、
そしてサウンド・フォースが飛び出していく。
「艦長、バサラ達が飛び出して行きましたな」
「……放って置け」
バトル7ブリッジにてエキセドル参謀の言葉に、目頭を押さえながらバトル7艦長マクシミリアン・ジーナスは、最近娘の無鉄砲ぶりに磨きが掛かっているなと心中で呟いた。
【地球衛星軌道上 アースラ】
アースラは就航以来最も過酷な危機に陥っていた。
「レーダに感!!……宇宙怪獣、STMCです!!数24、内訳、上陸艇18、高速型4、混合型2!此方に真っ直ぐ向かって来ています!!距離3000!
接触までおよそ5分!!」
「海鳴市近海にも宇宙怪獣出現!!対闇の書の作戦領域に直進!接触まで三分!!」
「「艦長!!」」
宇宙怪獣に見つかったのだ、リンディ・ハラオウンは静かに目を開けるとアースラクルーを見渡す。
「アルカンシェル発射用意、目標、宇宙怪獣」
「りょ、了解!!」
リンディは決断した。確かに闇の書の防衛プログラムを放って置く事は出来ないが、防衛プログラムに対する鬼札、アルカンシェルを搭載した
アースラを墜とされる訳にもいかないのだ。
「アルカシェル、バレル展開」
エイミィ・リミエッタが素早くコンソールを弾き、アルカンシェルの発射準備を整えていく。
巨大な環状の魔方陣が3つ展開しエネルギーを収束していく。
アルカンシェル、直撃した地点を中心に百数十キロの空間を湾曲させ反応消滅させる魔導砲である。
旨く巻き込めれば、今接近中の宇宙怪獣を一掃とまでは行かなくても相当数を撃墜出来る程の兵器で有る事は間違いない。
この世界の兵器と比べても平均以上の威力を持つ兵装である。
まあアルカンシェルですら平均以上で評価が落ち着いてしまうこの世界は異常なのだろうが……
「ファイアリングロックシステム、オープン」
「宇宙怪獣、有効射程距離まで200、アルカンシェル発射準備完了まで120!」
しかし忘れてはならない、次元航行艦アースラ、その名の通り、航行艦であって戦艦では無いのだ。
それに時空管理局にとって宇宙空間戦闘は未知の領域、殆ど経験が無かったのも不運だったろう。
「じょ、上陸艇より多数の兵隊の射出を確認!!その数……およそ2000!!!なんというスピードだ、接触まで70!発射まで間に合いません!!」
弾幕を張れる武装も無ければ、本来なら艦載機の役割を果たす魔導師も宇宙空間では戦闘行為は行えないし、小型の宇宙怪獣・兵隊とはいえその大きさは10メートル、
平行世界の話になるが、ガジェット3型より遙かに巨体なのだ。
一般的な魔導師では通常空間でも相手に出来るものではない。
脇目も振らず逃げるべきだったのだ、しかし闇の書の防衛プログラムが暴走寸前である事が撤退を許さなかったのは、リンディ・ハラオウンにとって不運だった。
故に取り付かれれば、アースラは何も出来なくなってしまうのだ。
「艦長!多数の兵隊に取り付かれました!」
「ちょ、直撃!!宇宙怪獣・兵隊の突進により第3格納庫、第二居住区、壊滅!!隔壁下ろします!」
「う、嘘でしょ!次元航行装置、及び次元転送装置破損!!」
「じょ、上陸艇此方に突っ込んで来ます!!接触まで500!!も、もう駄目だ!!」
接敵から数分でアースラは撃沈寸前まで追い込まれてしまった。
自艦よりも大きな500m級、円錐状の上陸艇の突撃を受ければ、ジ・エンド、アースラは宇宙の藻屑となってしまうだろう。
しかし死に神の鎌は振り下ろされなかった。
勝利の女神が微笑んだのだろうか?いや勝利の女神が微笑まなければその横面を引っ叩き無理矢理笑わせる、そんな地球圏最強部隊が到着したのだ。
「ハッハー!一番槍は頂いたぜ!!!」
「あまり調子に乗るなよ、イサム」
最初に到着したのはYF-19、そしてYF-21だった。
パイロットはイサム・ダイソンとガルド・ゴア・ボーマンである。二機はフォールド・ブースター切り離し、一切の減速をせずにアースラの艦首前方に飛び出すと、
機体をファイター、戦闘機形態より、ガウォーク、戦闘機に足が生えた形態に変形させ足裏よりバーニアを逆噴射し急制動を掛ける。
そのまま横に側転の要領で回転しながらガトリング・ガンポッド、マイクロミサイルを全弾発射し、たった二機にしては過剰なまでの弾幕を張り、
アースラに突撃してくる宇宙怪獣・兵隊を寄せ付けない。
「イィィィィィィヤッホォォォォォォ!!!騎兵隊の到着だぁ!」
「まったく、先輩は」
「そうぼやくなよ一条、何時もの事じゃないか」
続いて到着したのはスカル小隊、隊長のロイ・フォッカー少佐と一条輝少尉、柿崎速雄少尉で構成されるVF-1スーパーバルキリー三機である。
三機は直ぐさまフォールド・ブースターを切り離す、フォッカーは一瞬で状況を読み取り、行動に移す。
「スカルリーダーより各機へ、これより接近する宇宙怪獣・上陸艇に向け反応弾を使用する、遅れるなよ!」
「こちらスカル11、了解!」
「任せて下さいよ!」
スカル小隊は編隊を組んだまま、一糸も乱れぬ連携を見せ射線軸に徘徊する兵隊をガトリング・ガンポッドとマイクロミサイルを用い排除すると、
本命である反応弾を各機二発づつ上陸艇に叩き込む、一切の減速を見せず行われたそれは正に猛禽類の如く。
宇宙怪獣上陸艇は反応弾の光の中に溶けるように、終焉を迎えた。
「こちらガムリン、フィジカ!ドッカー弾幕を張れ、敵を近づけさせるなよ!」
「D3、了解」
「了解だぜ!!」
ダイヤモンド・フォースのガムリン・木崎、フィジカ、ドッカーがVF-17ナイトメアで登場し、アースラへと向かう兵隊をシャットアウトしていく。
八機のバルキリー、そうたった八機のバルキリーが登場しただけで未だ本格的に動いていないとはいえ宇宙怪獣達を足止めし戦線は膠着した。
地球圏に存在するバルキリー乗りを並べてみても上から数えた方が早い連中ばかりで構成されているとはいえ、αナンバーズがどれ程異常な部隊かは想像出来るだろう。
「なんて弾幕なの……」
「あ、あれが反応弾なのか……」
「なんて機動性!あれがバルキリー!」
アースラクルー達は目の前で行われている戦闘機動から目を離せない、八機の戦乙女達が縦横無尽に宇宙を駆け巡り、宇宙怪獣・兵隊の墓標を築き上げていく。
更に目にしたのは反応弾のその威力、威力自体はアースラ自慢のアルカンシェルよりは若干劣るかも知れないが、圧倒的な機動性を持つバルキリーを用いて
の一撃離脱攻撃、これの脅威は計り知れないだろう、何十機ものバルキリーが編隊を組みアルカンシェル級の威力を持つ兵器を次々に射出して離脱していく。
リンディ・ハラオウンにはこれを止める術を思いつかない。
そこにバルキリーの一機よりアースラへと通信が入る。
「こちら地球連邦独立遊撃隊、αナンバーズ機動部隊隊長、ロイ・フォッカー少佐だ、応答せよ」
「こちら時空管理局、次元航行艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウンです」
「おおう、これは麗しい女性ですな、エスコートは必要で?」
「はい……お恥ずかしい限りですが、本艦は現在多数の兵隊に取り付かれ、殆どの機能が死んでいる状態ですので、エスコートをよろしくお願いしますわ」
「ハハハッ、お任せあれ、自分はαナンバーズ随一のエスコート上手として有名ですからな……もっとも相手は特上の美女に限りますが、貴女の様な」
フォッカーとリンディは和やかに会話を進めるが、リンディにとっては正に一世一代の勝負と言っても過言ではない、会話とゆう名の交渉である。
アースラは兵隊に現在も取り付かれたままである、アースラの機能が殆ど死んでいるのでリンディ自身がフィールドを張り維持している状態なのである。
しかもこのままでは撃沈は必至、ここでαナンバーズの助力を得られなければ自分達は宇宙の藻屑となるしか選択肢が無くなるである、今の状態では不干渉
だなんだと言っている場合ではないのだ、リンディはクルー全員の命を預かっているのだから。
しかしロイ・フォッカーにとっては時空管理局と言う名は「また異世界からのお客人かな?」位の認識でしかないので、この軽いやりとりは彼の素である。
これから時空管理局の立場やPT事件、ジェルシードと呼ばれる次元断層により世界を崩壊させる可能性のあるロストロギアが地球にばらまかれた状態の時や、
闇の書事件、現在地球上で暴走寸前である全てを侵食して、世界を崩壊させるなどの物品の危険性を知っていながら、地球政府に対し何の情報も与えず、あまつさえ
勝手に地球上で作戦行動を取っている等、外交上地球に対し、些か自分達にとって危険なカードを持っているリンディはこれから先の事を考えると胃が痛くなってしまうのであった。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!山よ!銀河よ!そして地球よ!俺の歌を聞けぇぇぇぇぇぇぇ!」
「バサラ!もう待ちなさいよ!」
「やれやれ、行くぞビヒーダ!!」
ビヒーダは無言のまま激しいビートを刻み、ドラムを叩きだす。
「バサラ……歌う」
「フフフ、今回は私も参加させて貰おう、この身より沸き出でる奔流!これぞ正しくスピリチア・クリエーション!!」
「おおお!ゲペルニッチ様が歌っておられる!これぞ正しく、合唱美!!!」
この戦いの中正に歌って歌って歌い抜いた、最高の歌バカ野郎、熱気バサラを筆頭に同じファイヤー・ボンバーのメンバーである、ミレーヌ・フレア・ジーナス、
レイ・ラブロック、ビヒーダ・フィーズがVF-19に乗って登場し、そしてこの大戦のさなか歌を通じ理解しあった生命体であるプロト・デビルンのシビル、ガビル、
そして彼らのリーダー的存在でもあるゲペルニッチまでもが今回は熱気バサラと共に歌う為に今宇宙を飛んでいるのだ。
生身で。
「な!?これは……歌?」
「宇宙空間で歌……だと?」
もちろんVF-19に搭載されているサウンド・ブースターのおかげなのだが、アースラクルーにはそんな事は理解出来ない。
「な、なあ俺の目の錯覚か?あそこ人が生身で宇宙を飛んでないか?」
「なに馬鹿な事言っているんだ!そんなこと有り得るわけな……飛んでるぅぅぅぅ!!?」
そして宇宙空間でも普通に行動出来るプロト・デビルンに付いてはもっと理解出来なかった。
熱気バサラを筆頭に宇宙に歌声が響いていく、正にダイナマイトが爆発しそうな歌であったが、その歌声を聞いていたアースラクルーの一人が自分に起こっている変化
に気づいた。
「……なかなか良い歌だな、む?まさかそんな?魔力が上がっている?」
「何を言っているんだ?」
「い、いやこの歌を聞いていたら魔力が上がってきているんだが」
「何!?……本当だ」
自分の魔力を調べると僅かながらに上がっていると確認出来たクルーは、信じられないとばかりにフルフルと首を振る。
「こ、これは空間が歪んで! これがフォールドアウト反応なのか!?」
「な、なんだ……大きいぞ!」
撃沈寸前のアースラでコンソールに齧り付き、一心不乱に周囲の情報を集めていたクルーが空間の歪み、対象がフォールド・アウトしてくる反応を捉えた。
「ば、馬鹿な……なんて大きさだよ……」
「データでは知っていたが……馬鹿げた大きさだな」
「あれがαナンバーズ旗艦エルトリウムか……」
確かにデータ上ではアースラクルー達は知っていた。αナンバーズ所属戦艦エルトリウム、全長70キロ、最大幅18キロ、最大高9.4キロ超弩級戦艦である。
しかし百聞は一見にしかずという言葉通り実際にエルトリウムも見たアースラクルーはもう言葉も無いとばかりに呆然と立ち尽くした。
「こちらαナンバーズ、貴艦を援護します」
抑揚の無いエルトリウム副長の声がアースラブリッチに木霊すると共に、一斉に各戦艦より機動兵器が飛び出して行く。
αナンバーズ本隊 到着
【地球 海鳴市 海岸】
『私の名はガンエデン、地球の守護者です』
流石になのはやはやても特別クラスの機密事項であるガンエデンの事は知らないので、ガンエデンに圧倒されながらも何者なのだろう?と顔に疑問符を浮かべる。
しかしクロノは圧倒的な存在感に押し潰されそうになりながらも、執務官の矜持を持って言葉を発する。
「私は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンであります、貴方は一体何者なのでしょうか?」
『お話は後でに致しましょう、今はあの脅威を取り除かなくてはなりません』
ガンエデンはゆっくりと闇の書の防衛プログラムに体の向きを変える。
「あれは闇の書の防衛プログラム、危険なモノです、可能なのでしょうか?あれを取り除く事が」
『私は力を殆ど失っていますが、この地球を守る剣達ならば間違い無く』
圧倒的な存在感を持つこの存在が力の大半を失っているという事実にクロノは絶句する。
ガンエデンは背中の三対の羽を広げ、輝きだす、正にその姿は神話に登場する天使の様。
『地球を守りし剣達よ……此処に!!』
その言葉と供に一層輝きを増したガンエデンにクロノ達は目を瞑ってしまう。
そして再び目を開いた時クロノ達の目に前には幾多の鋼の戦士達が集っていた。
空にそびえる鉄の城にして、鋼の身に魂を宿らせた魔神
魔神皇帝 マジンカイザー
その姿鬼神の如く、ゲッター線の申し子
真ゲッター
その身は勇者にして究極の破壊神
勇者王 ジェネシック・ガオガイガー
生命の実を宿した、神の使いの写し身
人造人間エヴァンゲリオン初号機、同弐号機、同零号機
その一刀弐の太刀要らず、荒武者
武神装甲 ダイゼンガー
その姿正に黒い竜巻、一言で言うなら正にトロンベ
アウセンザイター
大空こそ我らが領域、つがいの猛禽
ビルト・ビルガー ビルト・ファルケン
そして平行世界の番人にして虚空の使者
ディス・アストラナガン
それらを見た高町なのは、八神はやて、ヴィータは奇声を上げながらテンションが鰻登りに。
「ゲ、ゲッターだぁ!」
「ま、魔神皇帝やと?」
「ガ、ガオガイガーだぜ!あれ!あれ?でも何か鬣とか生えて何かもっと格好良くなってねえか?」
ヴィータはガオガイガーがジェネシック・ガオガイガーに変わっている事に疑問を浮かべるが直ぐさま、得意顔のはやてがヴィータの肩を叩く。
「あれはな恐らくパワーアップやで、困難な場面に陥りその逆境をはね除ける為に、パワーアップしたんや!ヒーローのお約束やからな、間違いないで!」
「マジかよ!!パワーアップとかカッコ良すぎじゃねぇかよ!!」
驚愕の表情を浮かべながらも嬉しそうなヴィータに全て分かっているとばかりに、はやては腕を組みながらウンウンとうなずいている。
そしてはやてはビシィと音が聞こえる位に勢い良くマジンカイザーを指さす。
「見てみい!あの魔神皇帝の姿を!飛んどるでぇ!カイザーが飛んどるでぇ!ああこれで『飛べない魔神は只の壁』なんて言われんで済むってもんや!!」
「ガオガイガーもマジンカイザーもパワーアップしたってのかよ……ギガすげぇじゃねえかよはやて!」
ガオガイガーよりジェネシック・ガオガイガーに変化していた勇者王、カイザースクランダーを装備し空を飛べるようになっていたマジンカイザーにはやてもヴィータも
小躍りしながらテンションを上げていた。
しかしここに一人面白く無い表情を浮かべている人物が一人居た。
「む~~、ゲッターだってパワーアップしてるに決まってるの!私には分かるの!真ゲッターから溢れ出る凄いゲッター線の力が!!」
ゲッター党真ゲッター派の高町なのはである、最もらしい事を言っているが、実際の所カイザーやガオガイガーのパワーアップに浮かれていたはやてやヴィータの事を見て見た目の変わっていない真ゲッターに対し悔しくなって言ってみたのだが、それが事実を付いている等とはなのは自身気づいてはいなかったが。
「そうやね」「そうだな」
「にゃあぁぁぁ、ホントなの!間違い無いの!」
ニヤニヤと笑いながら可哀想なモノを見るような目でなのはを見ながら、先程の言動を欠片も信じていないはやてやヴィータに。
なのはは腕を振り上げて抗議するが、はやてとヴィータは適当に受け流していた。
そして一通り騒ぎが収まると三人は憧れの目でαナンバーズの機体群を見る。
「「「でもやっぱり一番格好いいのは(ゲッターなの)(魔神皇帝やなぁ)(ガオガイガーだよなぁ)」」」
「「「…………」」」
「ゲッターなの!!」「魔神皇帝に決まっとるやろ!!」「ガオガイガーに決まってるじゃねぇか!!」
ギャーギャーと声を上げ、腕を振り上げながらなのは、はやて、ヴィータは言い争っているが、三人、特になのはとはやてには先程までの悲壮感など
欠片も残っていなかった。
何故ならαナンバーズは何度も何度も自分達を救ってくれた、実在するヒーローなのだから。
しかし浮かれる三人とは対照的に他のメンバーは、この世界の常識に振り回されてどこか疲れた表情をしているクロノ以外、言葉も出ない位に驚愕していた。
特に予備知識の全くないフェイト、アルフ、ユーノは正に絶句といった表情を顔に貼り付けていた。
ギギギと音がしそうな様子で首をクロノに向けたフェイトが何処か泣きそうな表情で口を開く。
「クロノ……あれ、何?」
「ああ、この世界の質量兵器だよ……その辺のロストロギアよりよっぽど規格外なね」
「質量兵器!?」「ロストロギアよりもかい!?」
何か諦めきった表情で答えるクロノにユーノとアルフは絶句する。
フェイトは闇の書の闇よりよっぽど凄そうなオーラを纏った、質量兵器達を恐る恐る覗き見る。
そして鎌を持った悪魔みたいな風貌の機体から発する濃厚な死の気配に涙目になりながらアルフの後ろに隠れ、半分だけ顔を出しながら警戒するのだった。
なぜならプロジェクトFによって生み出されたフェイトは他の人より魂が不安定なので、鎌を持った機体、ディス・アストラナガンの本質に本能的に気づいたのだ。
「地球って、凄く怖い所だったんだね」
フェイトのその呟きは虚空に溶けるように消えていった。