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No.10395の一覧
[0] 【処女作・習作】テイルズ・オブ・ドラクエ3(オリ主転生・DQ3+テイルズ設定)[tawasi](2014/03/01 19:30)
[1] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第1話[tawasi](2009/07/19 01:08)
[2] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2話[tawasi](2009/07/19 02:45)
[3] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第3話[tawasi](2009/07/22 01:42)
[4] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第4話[tawasi](2009/07/22 01:40)
[5] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第5話(誤字修正)[tawasi](2009/07/29 13:03)
[6] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第6話[tawasi](2009/07/25 02:34)
[7] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第7話[tawasi](2009/07/27 01:04)
[8] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第8話[tawasi](2009/07/29 13:00)
[9] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第9話[tawasi](2009/08/01 17:43)
[10] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第10話[tawasi](2009/08/05 01:17)
[11] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第11話(誤字修正)[tawasi](2009/10/03 14:04)
[12] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第12話[tawasi](2009/08/11 01:28)
[13] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第13話[tawasi](2009/08/15 15:27)
[14] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第14話[tawasi](2009/08/18 00:57)
[15] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第15話[tawasi](2009/08/18 00:56)
[16] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第16話[tawasi](2009/08/23 01:03)
[17] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第17話[tawasi](2009/09/29 13:00)
[18] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第18話[tawasi](2009/10/03 14:03)
[19] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第19話[tawasi](2009/10/03 14:02)
[20] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第20話[tawasi](2009/10/14 21:50)
[21] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第1話[tawasi](2010/02/06 09:39)
[22] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第2話[tawasi](2010/02/04 13:35)
[23] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第3話[tawasi](2010/02/06 09:40)
[24] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第4話[tawasi](2010/02/04 13:37)
[25] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第5話[tawasi](2010/02/06 09:39)
[26] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第6話[tawasi](2013/02/23 20:28)
[27] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第7話[tawasi](2010/02/18 22:25)
[28] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第8話[tawasi](2010/02/18 22:25)
[29] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第9話[tawasi](2010/02/18 22:26)
[30] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第10話[tawasi](2010/02/26 22:39)
[31] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第11話[tawasi](2010/03/27 00:50)
[32] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第12話[tawasi](2010/04/04 23:05)
[33] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第13話[tawasi](2010/04/04 23:04)
[34] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第14話[tawasi](2011/07/13 13:24)
[35] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第15話[tawasi](2010/04/09 23:43)
[36] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第16話[tawasi](2010/04/11 20:43)
[37] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第17話[tawasi](2010/04/12 23:54)
[38] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第18話[tawasi](2010/05/28 22:59)
[39] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第19話[tawasi](2010/06/22 00:42)
[40] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第20話[tawasi](2010/06/24 17:26)
[41] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第21話[tawasi](2010/07/18 00:11)
[42] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第22話[tawasi](2010/07/18 00:10)
[43] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第23話[tawasi](2010/07/19 21:01)
[44] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第24話[tawasi](2010/07/19 21:01)
[45] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第25話[tawasi](2010/07/19 21:00)
[46] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第26話[tawasi](2010/07/20 23:08)
[47] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第27話[tawasi](2010/07/28 22:28)
[48] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第28話[tawasi](2010/08/05 15:32)
[49] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第29話[tawasi](2010/08/03 21:56)
[50] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第30話[tawasi](2010/08/03 21:55)
[51] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第31話[tawasi](2010/08/05 15:34)
[52] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第32話[tawasi](2011/02/06 01:26)
[53] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第33話[tawasi](2011/02/06 01:27)
[54] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第34話[tawasi](2011/02/13 22:49)
[55] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第35話[tawasi](2011/02/22 00:10)
[56] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第36話[tawasi](2011/02/15 00:07)
[57] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第37話[tawasi](2011/03/09 23:51)
[58] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第38話[tawasi](2011/03/20 20:24)
[59] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第39話[tawasi](2011/03/22 20:32)
[60] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第40話[tawasi](2011/03/26 01:26)
[61] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第41話[tawasi](2011/03/26 01:26)
[62] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第42話[tawasi](2011/03/26 01:32)
[63] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第43話[tawasi](2011/03/27 02:24)
[64] テイルズ・オブ・ドラクエ3 番外編[tawasi](2011/03/31 01:02)
[65] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第44話[tawasi](2011/04/16 01:26)
[66] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第45話[tawasi](2011/04/17 21:10)
[67] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第46話[tawasi](2011/04/20 01:08)
[68] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第47話[tawasi](2011/04/20 01:09)
[69] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第48話[tawasi](2011/09/11 16:10)
[70] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第49話[tawasi](2011/09/15 17:51)
[71] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第50話[tawasi](2011/09/15 17:52)
[72] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第51話[tawasi](2011/12/16 00:16)
[73] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第52話[tawasi](2011/12/16 23:27)
[74] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第53話[tawasi](2011/12/18 17:02)
[75] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第54話[tawasi](2011/12/21 21:09)
[76] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第55話 サマンオサ王国[tawasi](2013/02/23 20:36)
[77] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第56話 オルテガの真実[tawasi](2013/02/24 17:13)
[78] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第57話 色々疲れました[tawasi](2013/02/24 17:14)
[79] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第58話 赤の宝珠[tawasi](2013/03/23 23:41)
[80] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第59話 商人の町[tawasi](2014/03/01 19:21)
[81] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第60話 黄の宝珠[tawasi](2014/03/01 19:29)
[82] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第61話 いい根性した奴ら[tawasi](2014/03/08 19:41)
[83] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第62話 ジパング[tawasi](2014/03/23 13:20)
[84] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第63話 ヤマタノオロチ[tawasi](2014/05/22 19:46)
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[10395] テイルズ・オブ・ドラクエ3 第2章 第35話
Name: tawasi◆fef58b94 ID:0c47f28e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/22 00:10
 バルバトス・ゲーティア。アリアハンで一度戦っているが、その強さは並ではなかった。天武の才を秘めた妹があっさり倒され、アタシも一応倒されはしなかったものの、あいつは本気なんか微塵も出していなかった。
 夜に戦っているシグルド並みか、それ以上の実力者。それがバルバトス・ゲーティアだ。

 ルーティとマリーさんに、女王を守ってくれるように目で合図する。こいつを相手にしている時に、他のモンスターなどが現れたら対処できないのだ。
 二人は神妙な顔でうなずくと、それぞれ武器を手に女王を守るように立った。

 アタシと妹が同時に仕掛ける。アリアハンであいつの強さはイヤと言うほど分かっているから、アタシ達二人は今までになく神経を研ぎ澄ませていた。
 左右同時方向からのアタック。一瞬のアイコンタクトでアタシ達はそれを確認し合い、息を合わせた。
 だてにダーマで修行してたわけじゃない。お互いの攻撃の間などは、よく分かっている。

 だが、バルバトスはつまらなそうに鼻を鳴らすと、ハルヴァードの一振りでアタシ達を吹っ飛ばした。とっさに刀でガードしたものの、あまりの威力に手がしびれた。それに、ロクに受け身も取れなかったので、もろに地面に体を打ち付けてしまい、一瞬息がつまる。
 妹も同じだったようで、槍を杖代わりに起き上がろうとしているが、なかなか上手くいかないようだ。

「ファイアストーム!」
 そんなアタシ達を見て、余裕なのか何もしてこなかったバルバトスに対し、フィーノが術を放つ。バルバトスを中心に炎が渦を巻き、飲み込む。
「ベホイミ!」
 そんな時、クレシェッドが回復魔法をかけてくれた。ありがたい、おかげで吹っ飛ばされたダメージは消えた。礼を言う暇もはばかられるので、簡単に手を挙げて礼の代わりとしておく。
 そしてまた、刀を構える。妹もベホイミをかけてもらったらしく、再び槍を構えた。

 その直後。
「ぬるいわ!」
 渦巻く炎の中から、無傷でバルバトスが飛び出してきた。ダメージを負った様子はない。
 向かう先は、フィーノ!
「させるかあ!」
 進行方向に回り込み、真正面から斬りかかる。
 バルバトスは凶悪な笑みを浮かべると、ハルヴァードを横薙ぎに振るった。またもや吹っ飛ばされそうになるが、ここはこらえる!
 そして、バルバトスはアタシに再び攻撃しようとして、
「俺の背後に立つんじゃねえ!」
 アタシが耐えていた間に後ろに回り込んだ妹に、強烈な蹴りを喰らわした。
 援護しようにも、蹴りを放ちながらハルヴァードの一撃が襲いかかって来たので、後ろに飛んでやり過ごすしかなかった。

 苦痛に呻く妹に、バルバトスは追い打ちをかけるでもなく、
「つまらん」
 とだけ言うや、妹をアタシ達の所に蹴り飛ばしてきた。
 急いでクレシェッドが妹にベホイミをかける。

「少しは腕を上げたようだが、その程度か」
 殺す価値もないと、その目が言っている。今すぐ殺すつもりがない事を喜ぶべきか、侮辱されていることに怒るべきか。いや、アタシ達がこいつより弱いことは確かなのだから、怒りを覚えるのもお門違いだろう。悔しいが。

「いい気になんじゃねえぞ!」
 フィーノはバルバトスの言葉が我慢ならなかったのか、今までになく魔力を高める。
「焔の御志よ、災いを灰塵と化せ!」
 これは、火炎系の上級天術か!
「全員伏せろお!」
 アタシが叫ぶのと、
「エクスプロード!」
 フィーノが術を放つのは同時だった。

 灼熱の火炎球がバルバトスを襲い、荒れ狂う。熱い。目の前で業火が燃え盛っているような熱。直接食らったわけでもないのに、火傷しそうだ。吹き荒れる熱風で、部屋の中はめちゃくちゃだろう。
 フィーノだって馬鹿じゃない。何の考えもなく、上級天術なんか使わない。あくまでも、狙いはバルバトスだ。アタシ達が感じているのは、制御しきれなかった余波にすぎない。術の力は、できうる限りのほとんどをバルバトスに集中させただろう。
 あれほどの術を喰らえば、普通は細胞一つ残らずこの世から焼滅する。しかし、アタシはあれで終わりだとは思えなかった。
「気を抜くな! 効いてない!」
 アタシの言葉に、フィーノが驚いた顔でこちらを凝視してきた。そりゃそうだろう。あれだけの術をぶつけたのだから、死んでると思う方が普通だ。
 妹は一度バルバトスとやり合い、その力を身をもって知っているからか、驚いた様子もない。
「で、ですが、あれほどの……」
 クレシェッドは、「あれほどの術を喰らってい生きていられるはずがない」と言いたかったんだろう。しかし、その言葉は続かなかった。

 渦巻く炎が収まると、そこには悠然と立つバルバトス。さすがにある程度は効いたのか、体のあちこちが火傷でただれている。しかし、そんなものはあいつにとって何でもないのだろう。立つ姿は、ちっとも弱っていなかった。
「なかなか面白い真似をしてくれるな、小僧」
 嗤う。活きのいい獲物をみつけたという笑み。
「う、う……あ」
 フィーノはバルバトスから向けられる殺気に恐怖を感じたのか、今までになく怯えている。
 レベルが違いすぎる。フィーノとてロマリアの精鋭、今までに何度も死線はくぐりぬけているだろう。だが、バルバトスはあまりにも常識外れだった。

「礼をせねばな」
 一歩。バルバトスが踏み出す。
 フィーノは「ひっ!」と悲鳴をあげ、それでも後ずさったりはしなかった。それは、フィーノなりの矜持だったのかもしれない。
「させると思う?」
 アタシは一気にバルバトスに斬りかかった。
「押し通るまでよ!」
 ハルヴァードと刀が高い音を立ててぶつかり合う。
 その瞬間をねらって、妹が槍を突き出す。だがバルバトスは退くことであっさりかわし、再び飛びかかってくる。

 アタシと妹もそれに合わせて飛びかかるが、バルバトスはアタシ達とぶつかる直前で飛び、そのままフィーノのもとへ向かう!
 しまった!
「バギマ!」
 クレシェッドがバギマを放つも、そんなもので止められるはずもなく。

 すべてが、スローモーションのようだ。
 クレシェッドがもう一度バギマを放とうとし。フィーノが目を大きく見開いてバルバトスを凝視する。バルバトスは、クレシェッドを邪魔とばかりに殴り飛ばし、フィーノにハルヴァードを振りおろし、
「ほう?」
 そのハルヴァードは、マリーさんの斧に止められた。

「あ……」
 フィーノが死んでしまうところだった。アタシが弱いせいで。
 アタシがちゃんとバルバトスと互角に戦えるような戦士だったら、こんなことにはならず、フィーノが危険な目に会うこともなかったはずだ。
 アタシは、弱くてはダメだ。もっと強くならないと。魔王だろうがなんだろうが、倒せるほどに!

 刀を強く握る。バルバトスの背中を睨みつけながら、走る。
 バルバトスは、マリーさんとの力比べをしていたようだが、アタシが来るのが分かったのか、その場から離れる。
「ありがとう、マリーさん!」
 フィーノを抱きしめながら、アタシは何度も礼を言った。
 よかった。よかった死ななくて。ちゃんと無事で。本当に良かった。

 クレシェッドの所には、ルーティが行っている。基本的に体力がないクレシェッドにとって、先程の一撃は下手したら致命傷だろう。だがルーティは強力な回復魔法の使い手だ。任せておけば大丈夫だろう。

「まだ終わっていないぞ!」
 マリーさんの声に、アタシはフィーノから離れ、再び構える。その時に見たフィーノの顔は、恐怖に彩られていた。
 よくも、仲間を殺そうとしてくれたな。こんな顔をさせてくれたな!
「赦さない!」

 そんなアタシを見て、バルバトスは嗤った。
「以前よりは腕を挙げたようだな。だが、足りん。それでは、我が飢えは満たされん」
 襲いかかってくる様子はない。ハルヴァードも構えておらず、ただ口を動かしているだけだ。
「再び戦う時までに、もっと強くなっておけ、アデル。もっとも、これからの死線をくぐりぬけられればの話だが」
 勝手な事を! アタシは、お前の楽しみのために強くなる努力をしたんじゃない!
「ふざけるな!」
 怒りにまかせて突撃したりはしない。そんなことで倒せる相手じゃないのだ。

 悔しい。力がないのが悔しい。もっと強くなりたい。大事なものを守れるほどに強くなりたい。仲間をあんな目に合わせないほどの、力がほしい!
 こいつは壁だ。アタシが乗り越えるべき壁。睨みつける。いつか越えてやる。いや、たたき壊してやる!
 こんな奴に負けていられないんだ。世界なんてもののためじゃない。大事なものを守れる力。そのためにも、こいつは倒さなければならない。

「いい目だな」
 バルバトスは満足そうに言うや、現れた時と同じく、空間転移で消えていった。
 誰も何も言わない。ここにいる全員の視線が、今までバルバトスのいた所に向いている。

 不意に。
「ちくしょおおおおおおお!」
 フィーノが、アタシを押しのけてバルバトスがいた所に走った。
「ふざけるな! 舐めやがって! オレは、オレは弱いままでいられねえんだ! オレは……!」
 石でできた床を殴る。あまりにも殴りすぎて、拳が血で真っ赤になった。
 フィーノにはフィーノのプライドがある。それが、今の戦いで粉々になった。なってしまった。
 幼いながらもロマリアの精鋭部隊の要。陛下からの信頼も厚い戦士。それは、フィーノにとって誇れるものだったはずだ。
 バルバトスが規格外すぎた。ただそれだけだが、フィーノはそれが受け入れられない。
 ハーフエルフとして迫害され、それでも陛下からの信頼に応え、一人前として扱われることで、フィーノは自分を保ってきたんだろう。自分がちゃんと認められていると感じられたんだろう。
 だが、あの時フィーノは恐怖した。弱い自分を出してしまった。

 フィーノは何も悪くない。アタシは床を殴り続け、自分を傷め続けるフィーノの手を取った。
 フィーノはアタシを凝視する。
 アタシは回復天術をかけて、フィーノの手をいやす。そして、ずっとフィーノの手を握っていた。
「ちくしょう……。ちくしょう」
 フィーノは泣いた。大声を出して泣きわめくのでなく、ひたすら「ちくしょう」と呟き続ける。

 そんな時。
「た、大変です! 南で、今までにないモンスターの軍勢が群れをなして、こちらに向かっています!」
 後の世に『イシス戦役』と呼ばれる戦いの始まりだった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
 バルバトスをなんだと思っているのかと言われそうです。


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