ロマリア国王と謁見することになった。
何でアタシなんかが国王と謁見? と思ったが、敵の大将核を倒したことに対する褒美だとか。正直、いらない褒美である。王様と会うとか緊張するし、遠慮したいのだが、国王直々の命らしく、断れるはずもない。
ちなみに、アタシ達はお城に泊まっていたりする。
先日の襲撃において、敵は城を落とすのに力を注いだらしく、街の被害はそれほど甚大ではなかった。フィレンツェの中央部、つまり王宮がある区画が最も被害を受けており、それ以外は大したことはなかったとか。
以前職人の奥さんに教えてもらった宿も無事っぽいので、そこに行こうとしたのだが、ニッコロに引きとめられた。
「今回のことで敵の大将を打ち取るという武勲を果たしたアデル殿に対し、このまま放りだしてはロマリアの名は地に落ちると言われまして」
とのことだったたが、ニッコロはジョバンニの部下なんじゃないのか? と思った。そういうことなら城仕えの人が来ればいいのに、貴族の部下が来るって、どういうことだろうと思ったもんだ。おそらく、主だった人たちが何らかの理由で動けないか、手の離せない状況だからなんだろうが。
その時、ニッコロにだましていたことについて聞いたのだが、
「近いうちに、ご本人から説明がございますゆえ」
と言うだけで、話してはもらえなかった。カンダタやフィーノにも口止めしてあるから、ということらしく、しばらくは説明なしにされるらしい。
まさか逃げないだろうな? ジョバンニの野郎。
カンダタやフィーノも城に泊まっていて、それぞれ思い思いに過ごしているようだった。カンダタは怪力を利用して力仕事を進んでやったり、フィーノはしょっちゅうアタシ達姉妹の部屋にやって来た。
フィーノなりに気を使っているんだろうな。アタシ、今かなり憂鬱。
そして、アタシ以上に重傷なのが、妹である。この前から口が重くなっており、表情も暗いし、話しかけてもロクな返事が返ってこない。食事ものどを通らないみたいだし。
部屋は魔力のランプでしっかり照らされているはずなのに、薄暗く感じてしまう。フィーノとくだらないどつきあいをして、ワザと気分を盛り上げようとしても、かえって逆効果。
そんなこんなで数日過ぎたところで、王様との謁見の話。
ちなみに、そこには妹も呼ばれている。言い方は悪いが、正直言って、妹はあの時何もしていない。むしろ、足手まといだったと言わざるを得ない。それなのに、どうして呼ばれたんだろうか?
カンダタやフィーノも呼ばれたらしく、アタシ達と一緒に謁見の間へ移動中。
カンダタやフィーノはいいとして、何で案内役がニッコロ? 城もかなり落ち着いてきたし、もうニッコロがやることないと思うんだけど。
それに、こいつらの態度が変。
ニッコロはいつもの無表情だから分からないが、カンダタとフィーノ。フィーノは目を合わせようとしない上に、謁見のことが決まった途端、あからさまにアタシとの会話を避けていた。カンダタは、明らかに目が泳いでいるし、冷汗かきまくり。
どうしたんだお前ら。そろいもそろって。
そして謁見の間。ニッコロが命じて、扉を開けさせる。
え? ニッコロのほうが偉いの? なんで?
そんな疑問を抱きつつも、開かれた扉の奥へ、案内されるままに入って、
「よくぞ来た。歓迎しよう、アデルとリデア」
思わず立ち止りそうになった。が、根性で足を進め、案内された場所まで行き、跪いて首を垂れる。
なんで立ち止りかけたかって? そりゃあ、あれだ。ここよりも数段高い位置の玉座に、足を組んで肘をついて座っていらっしゃる御仁が目に入ったからだ。
「さて、話したこともあると思うが、正式な自己紹介はまだだったな」
ロマリア国王陛下は、楽しげに、実に楽しげに言葉を発する。こっちが頭ぐるぐるなのを見越してのことだと思うが、ああ、なんて人の悪い。そんなこと、以前から分かっていたが、それだからこそ、こいつ、じゃなかった、陛下の底意地の悪さが見て取れる。
「改めて名乗ろう。ジョバンニ・パッツィ改め、ロマリア国王、チェーザレ・ボルジアである」
やっぱりか! 目の錯覚でも何でもなく、ご本人でいらっしゃったか!
そう、あの玉座におわす方は、あの時さんざんいい様にしてくれたムカツク貴族、ジョバンニであったのだ!
なんで王様がアタシ達をあんな回りくどい方法でだます? 必要ないじゃん。
遊びか? 遊びなのか? ちょっと退屈だったから、平民で遊んでみたとでも?
「さて、そうしているのも疲れるであろう。面を上げることを許す」
混乱している頭で、何とか言葉の意味を理解して顔を上げる。見えたのは、カフェでの胡散臭い笑顔そのままの陛下と、その横に立つこれまた精悍なおじさま。そして、陛下に近い場所に立つニッコロと、その他大勢の兵士たち。
「ご苦労だった、ニッコロ」
「いえ、陛下のご命令とあらば」
この言葉は、アタシ達をこの場に案内したことじゃなくて、一連のお芝居のことを指していると思われる。
チェーザレ・ボルジア。ロマリア国王であるが、前世世界において、同名の歴史的人物がいたため、結構すんなりと頭に入った人物である。
前世世界においては通称ヴァレンティーノ公。この世界での父はロドリーゴ・ボルジア。前世世界において、ローマ教皇アレクサンデル六世だった人物とこれまた同名である。
前世世界での歴史では、チェーザレ・ボルジアは容姿端麗、頭脳明晰の上、武芸にも通じていたとか。この世界での評判も同じようなものであり、他国の人間に「ロマリアを、チェーザレ・ボルジアを敵に回すな」と言われるほどの人物である。
こんな人だったとは思いもよらなかったけどな!つうか、知りたくなかった!
「さて、混乱のほどは収まったかな、アデル?」
この人キライだー! ピンポイントかよ! 読心術でも使えるのか!
ここにシグルドがいれば、思いっきり皮肉を言ってくれただろうが、あいにく国王との謁見に武器を持ち込むわけにもいかないので、部屋に置いてきた。ちくしょう、代弁してくれる奴がいないとストレスたまるんですけど。
アタシは表情は取り繕って、いかにも「何のことですか?」と言わんばかりだが、実際心の中はハリケーンである。口を開く許しが出ていないので無言だが、その許しが出ていれば動揺などおくびも出さずそう言う自信がある。
この人には、絶対通じないだろうけど。
そんなアタシの内面を見てとったらしく、あの野郎は、失礼、陛下はのどを鳴らして笑っていた。それを横に立っているおじさまはとがめるように視線を向ける。
「ああ、すまないな。思い当ることはそちらにも色々あるだろうが」
ええ、ありまくりますよ。
「誤解しないでほしいのは、決して遊びでしたわけではないことだ」
だろうね。遊びであんなことをやるほど、国王と言うのは暇じゃないはず。そんな暇があるなら、仕事をさっさと片付けて、ティータイムでもした方がいいに決まってる。
そんなことを考えていると、「ああ、発言することを許す」と、陛下から言われたので、
「恐れながら申し上げます。なら、何故あのようなことを?」
遠慮なく尋ねてみることにした。
すると、陛下は感心したように「ほう?」と息を吐かれると、
「ずいぶんとストレートに聞いてくるじゃないか?」
アタシの明らかな無作法をとがめることもなく、興味深そうに尋ねてきた。相手は王様、ワンクッションどころかツークッションもスリークッションも置いて話さねばならないだろうが、
「以前お話しさせていただいた時のことから踏まえて、回りくどいことはお嫌いかと存じまして」
そう、この王様、おそらくストレートな表現を好むタイプだ。周りが回りくどいタイプばかりで飽き飽きしているのか、元からそういう性格なのかは知らないが。そしてこのお人、自分がストレートなほうが好きだからといって、政治にストレートを盛り込むことはないと思われる。直球でいっては他の国に付け込まれるかもしれないのなら、いくらでも変化球を投げるだろう。公私はきっちり分けるはずである。
アタシの言葉に満足したのか、陛下は鷹揚に頷いた。
「よろしい。では、こちらも正直に話すとしよう。
私はな、アデル、そしてリデアよ、お前たちを試させてもらったのだ」
本当にストレートだな。オブラートのオの字もない。
「試す、とはいかなることでございますか?」
「言葉通りだ。『アリアハンの勇者』がいかほどのものか、この目で見たくてな」
つまり、会った時すでに、こちらのことは把握済みだったということか。
「はて、不思議そうな顔をしているな、リデア。何をそう不思議がることがある? なぜアリアハンから出たことのない自分を知っているのか、ということかな?
さて、アデルは大方分かっているようだが、まだ分かっておらぬリデアのために答えよう」
この人、「分かってないのはお前だけだ」って、わざわざ言わなくてもいいだろうが。
陛下は妹を見据え、立て板に水のごとく話し始めた。
「わが父の代にて、勇者オルテガは没した。そしてその後を継ぐ者としてアリアハンが、リデアの名を正式に発表した。興味を抱くのは当然と思わぬか? かの『勇者オルテガ』の後を継ぎ、魔王と戦うというのだぞ? 年端もいかぬ子娘が。オルテガですら果たせなかった偉業を果たしてみせると、国が宣言したのだぞ?
当然のごとく、私はあらゆる調査をさせた。その宣言は本当か、その娘とはどのような者か、そう、あらゆる調査をな。
不快に思うかもしれぬが、こちらとしては当然のことと思え。『勇者』とは、何か偉業を果たした者にこそ送られる称号。それを何も果たしておらぬ子娘に名乗らせるなど、アリアハンはいかがしたと思うてな。
その勇者とやらがどの程度使えるか、それは我が国だけでなく、世界的に見ても重要ゆえ、手は抜かなかったぞ。リデア、お前がどのような訓練を受け、どのような環境で育ったか、手に取るように分かっている。それはすべて、先に言った通り、どこまで勇者とやらが使えるかを知りたかったからだ。
利用できるならそれでよし、利用できぬのなら捨て置くまで。アリアハンがどれだけ勇者に期待をかけているか、これもまた大いに理解しているが、所詮か弱い人間よ。実際のところ、魔王を倒す、などという期待はかけておらなんだ」
本当に正直に全部話したよこの人! 本人目の前にして、「お前なんかに期待してねえよ」ってはっきり言った! それでも利用価値があるなら利用しようと思ってたよ、て言った!
ポイントは、あくまで利用というところか。『勇者』を利用して士気を上げようとしたか、先行させて斥候にするつもりだったか、なんにせよ、陛下はあくまでも『人間』の力で魔王と戦おうとしていたようである。そのために、利用できるモノはなんでも利用する。そこに、老若男女の区別はない。
ここまでストレートに来るなんて、思ってもみなかったよ。当の妹にしてみれば、いきなり先制のアッパーカットを食らった気分かもしれない。だって、アリアハンでは『勇者』だと持ち上げられ、自分を殺してきたのに、ここではそれをきっぱり否定されたのだから。
この人多分、『オルテガ』に対しても大して期待なんかかけていなかったんだろう。父のロドリーゴはどうだったかは知らないが、この人はオルテガが死んだ時も、「当然」と受け止めたのかもしれない。「所詮か弱い人間」などという言い方をする人が、『勇者』などというものに期待をかけるとは思わない。
恐ろしく冷静で、冷徹な目を持つ人だ。当時世間では恐ろしいほどに『勇者オルテガ』に期待をかけていたのに、この人はそんなものに惑わされず、冷めた目で見ていたのだろう。たった一人の『人間』に何ができるのかと。
「だが、事情が変わった」
今までの笑みから打って変わって、陛下は表情をなくした。
「アリアハン、そして今回の我が国への襲撃。どちらも『勇者』を狙ってのもの。
これすなわち、何を意味するかわかるか?」
視線は妹へ向かっているが、妹は「分かりません」と、蚊の鳴くような声で答えただけだった。そして、視線はこちらへ。
「魔王は、『勇者』を恐れている、ということでございますか」
この答えは陛下の期待に沿えたらしく、消えていた表情が戻り、挑発的な笑みが浮かんだ。
「さよう。この事実は非常に貴重なものである。
かの魔王がたかが一人の人間を恐れるなど、本来なら一笑しうるところよ。だが、二回にわたる襲撃が、それを裏付けている。
が、『勇者』の何を恐れる? 人間一人の武力など痛くもかゆくもあるまいよ。だが、恐れる以上は、何かがあるのだ。さて、アデルよ、何か分かるかな?」
もはや妹に振らないところをみると、聞いても無駄だと思ったのだろうか。それとも、アタシがそれだけ期待されているということ?
なんにせよ、答えねばなるまい。間違えているかどうかは関係ない。陛下が求めているのは『アタシ個人』の意見なのだろうから。
「神聖魔法。おそらく、これかと思われます」
そのことを聞くや、陛下は感嘆の声を上げた。
「神聖魔法を知っているか。さすがはかのバシェッド老の教えを請うていただけのことはある」
ほう? どうやら、アタシのこともきっちり調べてあるようである。別にイヤな気はしない。『勇者オルテガ』の娘であり、『勇者リデア』の双子の姉、当然調べて来るだろう。
それにこの人、世界中に調査員を放ってるんだろうし。世界の情勢はきっちり抑えているはず。おそらく、アタシがポルトガで大会に出たこともしっかり知っているだろう。と言うか、その大会上位入賞者は、魔王との戦いにて使える可能性があるとして、全員チェック済みかもしれない。
「おや、驚かぬか。ちいとつまらぬな」
「つまらない」とか言っておきながら、この人全然つまらない感じしない。むしろ、楽しんでいるようである。アタシとしては、これっぽっちも楽しくない。この人とのやり取りは胃に穴が空きそうでイヤである。
「まあよかろう」と言って、陛下は話を進めていく。
妹が置いてけぼりな気がするが、陛下は多分、「分かる奴だけ分かってろ」という性分である。また、妹の現在の心理状態をおもんばかるようなこともしない。この人には関係ないことだからである。
妹は今傷心なのだから、そこらへん考慮してほしいのだが、言ってもおそらく無駄。むしろ、それを口にすることこそが傷をえぐるだろう。
相手が「ヒト」だと戦えず、陛下には今までの価値観をすべて否定され、おそらく妹は今どん底だ。『勇者』として育てられ、その生き方しかできないと思っている妹にしてみれば、これらのことは人生を揺るがす大事であるはずだ。
陛下もその辺のことは重々承知のはず。そのことを分かってワザと追い詰めている。『魔王が勇者を恐れている』というのも、かなり重い事実だ。とくに、今の妹には。それを分かっていて、あえてその話を持ってくる。
試している。陛下は妹を試しているのだ。これから利用価値があるのかどうか、どん底から這い上がる力を持っているのか。這い上がれればよし、無理なら陛下はさっさと見切りをつけて、谷底へ蹴り落とすだろう。邪魔になるなら、おそらく殺すこともいとわない。
そんなことはさせない。大事な妹には手を出させない。この人にとっては『駒』の一つに過ぎないのだろうが、アタシにとっては大事な家族なのだから。
「神聖魔法、古代において神の加護を得た者のみが扱えたといわれる、伝説の魔法だ。だが、実際に扱えた者は確認されておらず、せいぜい物語に出て来るのみ。
だが、可能性があるとすればそれであろうな。この魔法は、「あらゆる魔を退ける」らしいからな」
そこまで話すと、陛下はつまらないものを見る目で妹を眺め、ひじ掛けを指でこつこつと軽く叩くと、
「その勇者も大したことがないものだ。アリアハンにおいては襲撃者にあっさりと敗れ、このロマリアにおいては戦いすらもしなかった。
はて、アリアハンにおいて、己がどれほど自らの境遇にあえいでいたかと啖呵を切ったわりには、情けなきことよ」
「恐れながら」
これ以上言わせるものか。陛下にしてみれば、こうして言葉で攻め立てることで妹の器を図っているのだろうが、それによって妹がどれだけ傷つくことか。
そんなことは許されない。相手が王様だろうが、これは譲れない。
「これ以上の妹に対する侮辱、たとえロマリア国王であったとしても、赦しませぬ」
アタシの言葉に、周りの兵士が殺気立つ。「何と無礼な」「陛下に向かって」と言う声が聞こえるが、無視する。
視線はまっすぐに陛下を貫く。陛下もこちらを目で射抜く。互いに譲らぬ視線での攻防、それに終止符を打ったのは、
「まいった、まいった。これが『出来そこないの勇者』と言われる者の目か?」
陛下の笑い声と、その後に続いた言葉だった。
「ポルトガにおいてはかのハインスト家の騎士見習いに勝利したと聞くが、なるほど、『勇者』の姉は『英雄』であるかな」
そう言うや、また腹を抱えて笑いだす。兵士たちは困惑し、陛下の隣に立つおじさまは陛下を睨みつけ、ニッコロは相変わらずの無表情。
そんな時、
「いい加減にしろよ、チェーザレ。悪ふざけが過ぎるんじゃねえの?」
フィーノが、不機嫌丸出しの声で言い放った。
おいおい。相手はロマリア国王だってのに、なんて口のきき方? 普通なら胴体と頭がさようならしてるぞ! アタシは無理!
むろん、こいつだって馬鹿じゃない。こういう口のきき方をしても大丈夫だと思っているんだろう。他の国の人間はアタシ達姉妹のみで、他の人たちはおそらく何らかの事情を知っているのだろうから。
「だいたい、オレは気が進まなかったんだ! お前がさせた調査で十分だってのに、俺達を使ってさらに試すたあ、根性が悪いにもほどがあるんだよ!」
お前、勇気あるな、ガキンチョ。アタシ、あの人にそこまで言う勇気ないよ。無理だよ。
「ふむ、いい加減、いじめるのはやめにしようか」
いじめてる自覚はあったんですか。本当に根性悪いな。この人に仕えないといけない人たちに同情する。ニッコロも、今回のことで相当気をもんだだろう。過労で倒れなきゃいいけど。
以前はあれほど激高したのに、今はもうそれはない。むしろ今あるのは、陛下の思惑に巻き込まれた人たちに対する憐みだ。一番の被害者はアタシ達だが、彼らも負けないくらい被害を被っている気がする。
「さて、魔王は『勇者』を恐れている。しかしリデアよ、お前はもう戦いたくないか?」
妹は、このまま沈黙しているわけにもいかず、「分かりません……」と、小さな声で答えた。
先日の出来事、今の陛下の言葉の数々、今までの境遇。ありとあらゆるものが精神をぐちゃぐちゃにかき乱しているんだろう。戦わないなら自らの生き方を否定しなければならず、戦うなら、また「ヒト」と戦わなくてはならない。どちらも、妹にとっては苦痛のはずだ。
「ふむ、確かに、すぐには決められぬことであろうな。
そこでだ、一つまたテストを与えようと思う」
はい? また何かあるんですか? はっきりこうやって宣言しているんだから、以前のようなだましはないと思うが、この人のテストって、無理難題っぽくてイヤ。
そもそも、何でこの人にテストされなきゃならんのだ。だが、
「このテスト、決してお前たちにとって無駄にはなるまいよ。
特に、リデアにとってはな。
第一、このまま何もせず悩んでいて、答えが出るものか。なら、だまされたと思って、気晴らしに受けてみよ。期限は特に定めんし、結果も求めん。
ただ、遠出をしてもらうことになる。様々な人間とも、そうでないものとも出会うであろう。今のリデアには、人と接することこそが必要ではないか?」
なんだかもっともらしいことを言われてしまった。確かにこのまま悶々としていても無意味。陛下は要するに、「気晴らしに旅行がてら、ちょっとお使いに行って来て」と言っているわけだ。
妹を見ると、明らかに困った顔。そして、怯えの感情。
陛下の言葉は、確実に妹の心をえぐった。陛下は、それを承知でやった。妹は、そんな陛下を恐れている。
だが、このままでいいはずもなく、それなら無理やりにでも動かざるを得ないようにするのも一つの手。
「お話を、お聞かせ願えますか?」
アタシは、陛下の手を取った。それは間違いなく劇薬だが、荒行事も時には必要だろうから。
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歴史上の人物について。
ジパングで卑弥呼出てるから、いいよねって感じで出しました。
チェーザレ・ボルジアに関しては、まったく調べていません。
なんでチェーザレがロマリアの国王なんだ、ボルジアはスペインだろ、と言う突っ込みもあると思われますが、わざとです。
漫画『チェーザレ 破壊の創造者』に影響されてます。