なあ、ガストラ帝国って知ってるか?
そうそう。魔導の研究に力を入れてるその国だよ。
うん。俺、そこで兵士やってんの。
上司?
聞いて驚け。世に名高いレオ将軍……ってことはない。
実は俺の直属の上司、結構イタイ人なんだよ。
名前くらい聞いたことあるだろう?
ケフカって言うんだぜ。
「おい、交代だ」
「えっ、もう? これ一杯飲み終わるまで待ってくれねえ? あ、やっぱムリ? でも今日の任務、かなり嫌なんだけど」
「バカ言うな! ケフカの野郎を待たせたらどうなると思ってんだよ」
「だよなー。でもケフカさんのお供っていいことねえんだもんよ。この前なんか俺、その辺に転がってたイヌの排泄物投げつけられたんだ。その前は……」
「うるせえよ。いいから行け、このバカ」
「分かった。分かったよ! 行けばいいんだろ!」
俺が同僚に追い出されつつ酒場を出て向かったのは、上司の待つ執務室。
そこには相変わらずよく分からないファッションセンスの彼がイライラしながら今日のお供を待っていた。
「はいはいはーい。ケフカさまー」
「お・そ・い!! 俺サマを待たせるなんてどういうことだ!?」
「あー。スンマセン。ちょっと酒飲んでました」
軽く言い訳してみたものの、ケフカさんはかなりご立腹の様子だ。
毎度の事ながらこの人の扱いには困る。
「仕事くらいちゃんとやりなさいよ! 実験体希望か? そうなのか!?」
やべ。ちょっとマトモなこと言われた。
確かに、休憩中だったとはいえ、任務中だった俺が酒を飲んでいたのは実は不味い。
レオ将軍にでも見つかったら一発でクビになる程度には。
だがそこは、俺ももう慣れたものだ。ケフカさんを言いくるめるくらいは朝飯前なんだな!
そんな自分が嫌いになりそうだけどな。もう嫌だ、こんな上司。
「いやですねー。こうしてテンションを上げつつ、ケフカさまのためにユカイな日々を提供しようかと思ってるだけじゃないですかー」
「……本当に? また俺サマを騙そうとしてない?」
最近の彼は段々と知恵を付けてきたから厄介だ。
もちろん、帝国唯一の魔導士として名高かった彼だから、決して頭が弱いわけではない。……筈だ。
だがどういうわけかここ数年、幼さを感じる言動が増えてきている。
初めの頃、まだ俺が新米兵士だった頃の彼は、レオ将軍と並んで一般兵からの尊敬を集めていたというのに、この変貌はどういうことか。
噂によれば、まだ少年だった頃に妙な実験の犠牲になった後遺症が今更出てきたということだが、そんなことはあるのだろうかと疑問に思う。
まあ、どうでもいいんだけどな。俺としては。
そもそも初めからレオ将軍の部下になりたくて兵士になったわけだし。
とにかく今日も、こうしてワガママ魔導士のお守りに精を出すくらいしかできないわけだ。
「してない、してない。俺はいつだって誠実じゃないですか。で、今日はどこへ行くんですー?」
「とうとう魔導の力を持つ娘が見つかったのだ! 早速捕まえさせたから様子を見に行く。ついて来い!!」
「えー。また女の子イジメるんですかー? ちょっと前にもそんなこと言ってて結局死んじゃったじゃないスか」
ここ最近の帝国軍はこの噂で持ちきりだった。
魔導の研究をより発展させるために必要なことなのだそうだ。
俺のような下っ端兵には詳しいことが知らされることはないが、直属の上司がこのケフカという男であることも相まって、それらの事態に対応することが特に多いことも否めない。
当然、気分の良いものではないのだ。
何が一番辛いかといって、やはり軍内で後ろ指を差されることだろう。
ケフカさん、嫌われてるからな。
特にレオ将軍の部下に。
この人の部下だというだけで、俺たちはそれはもう肩身の狭い思いを味わいつくしてきた。
軍内のイジメとこの人のキテレツな行動のおかげで、ノイローゼになり辞職する兵士のなんと多かったことか。
今ではケフカ軍に在籍している兵士の8割はアブない薬の愛用者と化している。
俺が今日まで軍人として勤めてこられたのは、ひとえにレオ将軍のおかげだ。
あの人がケフカさんに同情しつつ、俺たち兵士をねぎらってくれるからこそ、こうして一見すれば何事もないかのように生きることができているんだよ。
マジ、尊敬。
それに比べてこの人は。
「うるさいうるさーい! 行くのか!? 行かないのか!?」
「もちろん行きますって。でも、ちゃんと約束守ってくださいよ?」
「約束?」
不思議そうな顔をして首を傾げるケフカさん。
こりゃ完全に忘れてるな。
「困りますよー。俺、レオ将軍に頼まれてるんですって! ケフカさまの衣装をセリス将軍用に作り直してプレゼントしないと」
「ボクちゃん、そんな約束したっけ?」
若干顔色を悪くしながら聞き返してくるケフカさん。
いや、気持ちは分かるよ? 俺もどうしてあの美少女将軍にそんな奇妙な服を着せたがってるのかは知らないけどさ。
でもレオ将軍の頼みなら断れるはずないんだって。
それに俺は知っている。
この人が自分をボクちゃんなんて呼ぶときは、機嫌がいいか何かを誤魔化しているかのどちらかだということを。
おそらく、ケフカさん自身はレオ将軍に詳細を聞かされているはずだ。
セリス将軍にケフカ服を着せたい理由。
俺は知りたくないけどな。
「とにかく! あんな男のことなんてどうでもいいから行くぞ!」
ちっ。誤魔化しやがった。
まあいいさ。任務50回なんて、まだまだ先のことだし。
「それで、その少女の名前はもう分かってるんですか?」
「知らん! 勝手に調べろ!」
何てテキトーな。
しょうがないか。ケフカさんだし。
その後、また訪れた休憩時間に必要な情報は集められた。
少女はティナという名前らしい。
そして俺はケフカさんと2人、少女が待つ個室へと足を向けたのだ。
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ケフカが好きなことを思い出して書いてみたら、収集がつかなくなった。
せっかく書いてみたのでネタとして投稿。
「つまらん」「ケフカキモいから好き!」などの一言感想は大歓迎です。それでは。