要塞便り8
無事にテストデバイス起動とバリアジャケット装着が完了しました。
その後は何度も起動と装着の繰り返しでした。
起動時とBJ装着、そのままでの平常状態でのデータ蓄積と、大量の処理項目があるので大変そうだなと思ったんですが。
「おおぅ、コア2個の同期データに、俺は今猛烈に感動している~!!!」
「俺のこの手が真っ赤に燃えるっ、データを洗えと轟き叫ぶっ!!!」
「ひゃぁあっはあぁぁぁっ、不要なデータは消毒だぁ!!!」
「余分なデータは無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!!」
うん、思ったんですけど楽しそうですね皆さん。
で、適正検査で判明した事があります。
飛べない魔道師はただの陸戦魔道師だ。
その後に行われた飛行適正は、1ミリも浮かないのです。
ええ、ちゃんと魔法は発動しているようなのですが、まったく飛ばないのです。
また不思議データの蓄積が追加されました。
「飛行魔法は発動しているのは確かなんだがなぁ」
「ん~、テストデバイスからのデータを見ても、発動はしてる。でも、効果が一切発揮されていない、と」
「飛べない人はただの人、と誰かが言ってたぞ」
「まぁ、この部隊としては陸戦固定な人材なら、願ってもないんだろうがなぁ」
という事で、単独で空を飛ぶ夢の実現はなくなりました、残念。
《検査項目進行に伴い、各種魔法の使用制限が解除されました》
《検査項目更新。各種魔法使用による適正検査開始》
ターゲットに向かっての射撃、砲撃の試験が始まりました。
魔法の発動に関しては、全部デバイスがやってくれるから、あとは力を注いで発動コマンドを言うだけだそうですが、これに関してはあっさりと撃てました。
初歩の魔法ばかりだそうですが、特に問題も無く、安定した威力が出ているそうです。
そこはリミッターがきっちりとセーブしているからの安定、との事ですが、解除された状態で撃ったらどうなるんでしょうね。
不安定すぎて暴発か不発かの二択かもしれませんが。
補助魔法も説明不要なくらい、初歩魔法の発動と効果の発揮を確認。
で、次は近接なんですが、デバイスが杖タイプなので、先端に短剣程度の長さのブレードを発生させる事が出来ればよかったんですが、長剣くらいの長さになってました。
あれ、長すぎても良かったのかな。
《高効率での魔力刃の発生確認》
《変換率上昇。効果確認の為、リミッター条件の一部緩和。近接ランク制限上昇、B- …… A- …… A+ 魔力安定低下、近接ランクのみ A へ移行》
力がブレード部分に伝わるにつれて、感覚的なものだけど切れ味とか強度が高まっていくのが感じられます。
一番不安定になった途端、ブレードがゆがみ変形していくのがちょっと怖かったんですが。
簡易適正検査の結果としては、近接以外は人並みに使えそうで、原因不明で飛べない事という結果でした。
そこで試験は終わるかと思ってたんですけど。
黙々と1週1キロのトラックを走ってます、杖を持ったまま。
なければいいなぁ、とは思っていた体力面の項目がついにきましたよ。
ジャンプ力や反復横飛びやら、定番の項目ののち、最後に持久走です。
人並みに体力はあるはずなんですが、もう体力が限界にきてます、もろいぞ自分。
しかも力尽きるまでのエンドレス周回、ステータス確認までされてて適当にリタイアができない監視付き。
走る速度が落ちていき、歩き出し、杖を引きずりながらフラフラと歩き、最後にバッタリと倒れましたよ。
男の子、倒れる時は前のめり。
もう動けません。
何か胸の奥が熱くなってきたけど、それよりも水をください。
《限界値確認。運動項目終了》
《基礎検査項目全終了。総合項目の転送確認のち…(音声カット、以後は秘匿レベルにつきリンクのみで協議。データリンクを欺瞞データに置き換え対策)》
ん? 項目転送終わったのかな。
《(データリンク欺瞞開始。協議、パターンブルーの発動を確認。S2の起動はデータとして検知されていない)》
《(協議、ブルー確認。データ未検知確認。以後のS2関連データは全て欺瞞処理)》
《(関連データの常時欺瞞開始。)》
《(S2の常時監視、計測の項目追加。協議終了、表面上の検査項目終了を表示。以後のS2監視はマスターコアでの内部対処)》
《(S2監視権限のマスターへの譲渡。以後のS2項目は、マスターコアの指示を待つ)全項目終了、お疲れ様でした》
《基礎データの転送を確認。お疲れ様でした》
テストデバイスからのコールで、ラミエルは意識を浮き上がらせた。
クッションという聖域に鎮座しながら、デバイスからの情報を考査した。
おかしい。
ドクターの計画では、生命の危機で動き出す可能性が一番高いというデータが確実視されたので、それに合せての計画も準備されていたというのに。
生命の危機を演出する方法もすでに準備済みだったのだが、これも半身が半身たる存在だというのだろうか。
ドクターに追加でデータを転送しておくとしよう。
広い訓練施設のはじっこに、ラミエルは単独で呼び出された。
さて、動けなくなって医療施設に搬送された半身に代わり、広い場所に呼び出されたのだが。
どうぞ壊してくださいといった廃棄車両やら、遠方に設置された標的やら。
おそらく同様に何が出来るかを知りたいのだろう。
何も正直に使える魔法や攻撃を見せつける事もないだろう。
この世界での魔法とは便利なものだった。
使えない魔法は、レアスキルという特定条件持ちといった個人特有の技能くらいであった。
データベースから探し出した魔法の一部を除き、ほぼその全てを再現できるかと思われる。
プログラミングに似た構造を解析し、我が力をこの世界の魔力という骨子に変換し、解き放てばよいのだから。
実際、ドクターの所で様々な魔法を、その威力を最低にまで絞り込み、試し撃ちという乱射をしてみたのだが、ウーノという付き従う女に施設が崩壊しそうだと止められた。
……本当に最低限の威力だったのだが。
よって、まだ管理局の白い悪魔と呼ばれる砲撃は試していない。
全力全壊(ドクターに言わせると誤字では無いそうだが)の映像は見せてもらったが、あれは楽しそうな砲撃だと思う。
が、それもここで放つと訓練施設が軽く半壊しそうなので、適当に終わらせる。
大事な事は二度言わなければならないらしいので、もう一度言っておこう。
適当に終わらせる。
施設は無事でした。
なかがきというドックタグ
前話からのコア2個のネタとかは、雑談掲示板の「もしも貴方がデバイスを手に入れたらどんなのが良い?」から参考にさせてもらいました。
自分なりに複数のコアでのやりとりをやったらこんなテストデバイス(インテリですが)になっちゃいました。
4コアのクアッドはさすがに書くの大変そうなので、適性検査を管理している4人組を1セットにして、4コアの代わり(ネタ成分大量配合)としました。
マッド万歳\(^O^)/