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サモンナイトSS投稿掲示板


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No.36362の一覧
[0] 【完結】サモンナイト3 ~不適格者~[ステップ](2013/12/22 13:20)
[1] 第二話 悩める漂流者[ステップ](2013/01/04 16:33)
[2] 第三話 はぐれ者たちの島[ステップ](2013/02/25 11:19)
[3] 第四話 海から来た暴れん坊[ステップ](2013/02/25 11:20)
[4] 第五話 自分の居場所[ステップ](2013/01/05 23:20)
[5] 第六話 招かざる来訪者[ステップ](2013/02/17 15:03)
[6] 幕間 薬をさがして[ステップ](2013/02/22 03:40)
[7] 第七話 すれ違う想い[ステップ](2013/02/28 20:13)
[8] 第八話 もつれあう真実[ステップ](2013/05/11 12:58)
[9] 第九話 昔日の残照[ステップ](2013/03/11 20:56)
[10] 幕間 ガラクタ山の声[ステップ](2013/03/15 21:53)
[11] 第十話 先生の休日[ステップ](2013/03/20 23:44)
[12] 第十一話 黄昏、来たりて[ステップ](2013/04/20 15:01)
[13] 第十二話 断罪の剣[ステップ](2013/05/11 13:17)
[14] 第十三話 砕けゆくもの 上[ステップ](2013/09/23 14:54)
[15] 第十三話 砕けゆくもの 下[ステップ](2013/09/23 21:39)
[16] 第十四話 ひとつの答え 上[ステップ](2013/10/01 18:24)
[17] 第十四話 ひとつの答え 中[ステップ](2013/10/05 16:46)
[18] 第十四話 ひとつの答え 下[ステップ](2013/10/13 17:38)
[19] 第十五話 楽園の果てで 上[ステップ](2013/12/22 18:04)
[20] 第十五話 楽園の果てで 中[ステップ](2013/12/22 18:04)
[21] 第十五話 楽園の果てで 下[ステップ](2013/12/22 18:04)
[22] 最終話[ステップ](2013/12/22 18:03)
[23] エピローグ[ステップ](2013/12/22 18:03)
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[36362] 第九話 昔日の残照
Name: ステップ◆0359d535 ID:613dbfd6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/03/11 20:56

 翌日。
 船外でおいっちにーさんしー、と体操に勤しむ俺。

 昨日は盛大にぶっ倒れた後、船に運ばれ自室で寝込んだままだったらしい。
 昼ごろになって起きたところ、目覚めもよく体調は良好だった。

 身体を滅茶苦茶酷使した後にたっぷり休むと、やたらすっきりしてることがあるあれですかね。

 起きてからカイルにこれまでのことを聞いたところ、俺が電池切れした直後にビジュ率いる帝国軍が襲ってきたらしいが、所詮は三下。
 対した指揮力もなく、実力もアズリアには遠く及ばない。
 俺を除く全員でフルボッコにしてあっさり撤退させたらしい。さすがの島民パワーである。

 ……ただなぁ。
 ビジュに遺跡について知られてしまったのは後々面倒になりそうっすね。
 仮に守備良く遺跡を封印できたとしても、帝国軍に剣の在処がバレバレなわけで。
 そのままおとなしく封印を維持させてくれるとも思えない。
 まぁ、剣が一本しかない現状では遺跡の封印ができるのかも怪しいんですけどね。
 仮に封印が成功しても、延々ちょっかい出してくる帝国軍から封印を護り続けなければならないのだとしたら考え物だ。
 結局のところ、やっぱり奴らをどうにかせんといかんわけですが。

「……なんも思い浮かばねー」

 下手な考え休むに似たり。

 仕方ないので今できることをしますかね。
 すなわち。

「さて、どっちから行くかなぁ」

 独り言を漏らしながら俺は歩き出す。一瞬だけ迷った後、

 ……近いところからでいっか。








 船長室にて。

「最高にファックだよね」

「急にどうしたのよ先生」

 狭間の領域とラトリクス。
 双方の護人であるファリエルとアルディラの二人に俺は会うことができなかった。
 ファリエルにはフレイズ、アルディラにはクノンがマネージャーよろしく待ち構えており「今はお引取りください」の一点張り。
 埒が明かないのでそれこそ拉致ってやろうかとも思ったが、集落民全員を手なずけているのか、ことあるごとに召喚獣たちにまわりこまれまくってどうにもならない。
 仕方なく船に戻って管巻いていたところ、スカーレルが通りかかったので愚痴を敢行してみた次第である。

「……つーわけで、どうにかならんもんかと悩んでるとこなんだよ」

 ひとしきり愚痴ったところで、多少すっきりした気がする。

「二人の言うとおりに、待ってればいいんじゃない?
 そのうち自分から動き出すと思うわよ、あの二人なら」 

「うーん」

 スカーレルの言うことももっともなんだが、俺としてはこの居心地の悪い状態をさっさとなんとかしたいところだ。
 スカーレルはその辺、気にならないんだろうか。

「センセ、私だってこの空気は好きじゃないわよ」

 苦笑するスカーレル。

「人の心のうちを的確に読むんじゃねーよ」

「わかりやすすぎるのが悪いのよ。
 でもね、厄介なのよ。恋っていうものは……」

「……むぅ」

 その辺については、俺にはどうにもならない領域だった。

 俺もいい年だ。恋をしたことがないわけではない。
 ただ、スカーレルの言う恋とは重みがまったく違う。
 想い人がいなくなってからも、あれだけ激しく揺り動かされるような恋は正直言って想像できない。

「それが間違ったこととわかってても、理屈を無視して、感情だけで身体が動いてしまう。
 あの子を狂わせているのは外部からの命令じゃないわ。
 彼女自身の中にあるひたむきな想いよ。
 純粋で、強くて、だからこそ、もろくて危険すぎる……」

 あの、融機人であるアルディラが感情に支配される。
 その状態がいかに危ういかは誰にも明白だった。

「このまま放っておけば本当の意味で、彼女は壊れるかもしれない」
 
「……あぁ」

「でも、アタシにはそんな彼女を力ずくで引き戻すなんて真似できないわ。
 想いに殉じることを彼女が覚悟したのならなおさらね……」

 フレイズの断罪を受け入れようとしたアルディラの姿が思い浮かぶ。

「………」

 俺が止めなくても、だれかが止めたかもしれない。
 でも、もしもだれも止めていなかったら?

 剣はアルディラを断っていた……?

「スカーレル」

「なあに、センセ」

「話聞いてくれて、ありがとよ」

「どういたしまして」

 おかげで考えがまとまったぜ。

 俺は勢い良く立ち上がり、扉を開け放った。










「ありがとよ、ね」

 スカーレルは一人残った部屋の窓から、外を走り去るレックスの背を見て目を細める。

(本当、まぶしいわね)

 もしも、あのころに会っていたらどう思ったのだろうか。
 反発? 嫉妬? それとも、慕情?

(……どれもしっくりこないわね)

 どの道、自分はすでに過去の自分ではない。
 彼を見ても焼ききれるような感情は現れない。
 そんな自分が、過去を振り返ったところで答えがわかるはずもないのだろう。

「がんばりなさい」

 今はただ、気が向いたときだけ、こうして少しだけ背中を押すことが自分の役目だと考える。

(背中を押すなんて柄じゃない気もするけど)

 スカーレルはそんな自分が嫌いではなかった。








 森にてソノラを発見。
 その辺をうろうろと行ったり来たりしている。
 徹頭徹尾、不審者だった。

「なにをしとるかね君は」

「ひゃッ!? ……なんだよ先生、脅かさないでよ」

「ふつーに声かけただけなんだがな」

 しかしソノラはぶーぶーと不満気だ。

「どうしたんだよ、こんなところで?」

「……先生はさ。最初からファルゼンの秘密、知ってたの?」

「まぁな」

「そっか」

 ソノラは、そっか、ともう一度つぶやく。

「ファリエルってさ、どんな娘なの?」

「からかうと面白い」

「………」

「冗談だからいきなり黙るな」

 あとジト目はやめろ。

「俺だって、まだ大して話をしてきたわけじゃないからな。
 でもよ、ソノラとはすげー仲良くなりそうな感じだ」

「そ、そうなの!?」

 単純に気が合いそうに思える。

 同年代だろうしなぁ。
 ……いや、ファリエルがずっと上なのか? でもそんな感じしないし大丈夫だろ。

「気になってるなら、行ってこいよ。
 覚えてるんだろ、いつかの宴会でのこと」

「……うん。うっすらと、だけどね。
 とってもかわいい幽霊の女の子とお喋りしたんだ」

 ファリエルが皆の前で鎧を解いたときの反応で、もしやとは思っていたが。
 俺の記憶にはきれいさっぱり残っていないが、あの宴会ではアリーゼが暴走してファリエルを、そこら中連れまわしていたらしいからな。

「友達になりたいって……思ったんだ」

「よし、なってこい!
 つーわけで、そっちは任せた」

「……ぅえ!? せ、先生は!?」

「俺は別口。まだ殴り足りないかもしれんしな」

 拳を握りこんで、ニヤリと笑ってやる。

「……もう。わかったよ」

 ソノラも俺と同じようにニヤリと笑った。

「あのときみたいに、強引に行ってくる!」

「……ほどほどがいいと思うぞ」

 やる気に燃えたソノラを前にして、酔っ払いソノラが脳裏によぎり、ちょっとだけファリエルに同情した。








 扉の開閉音を聞いて、クノンは気持ちが落ち込むのを自覚した。

(また、来てしまったのでしょうか)

 今のアルディラは精神が非常に磨耗してしまっている。
 看護人形である自分から見てもそれは明らかだった。
 そんな状態のアルディラを人前に出したくなかった。

(アルディラさまがしてしまったことは、許されないのかもしれない)

 それでもクノンは、自分だけは彼女を無条件で許し、そばにいたいと心底願っていた。
 今の彼女が攻められれば、いつ壊れてしまうかもわからないと思ったから。

「レックスさま、何度こられてもアルディラさまには……あ」

「こんにちは」

 クノンが振り返ると、扉の前に立っていたのはアリーゼだった。

(……それでも誰が相手でも同じです)

「アルディラさまは体調がすぐれません。お引取りください」

「クノンさん。私が、アルディラさんと話がしたいって伝えてくれますか?」

「お断りします」

「伝えて、それで断られたらすぐに帰ります。
 だからお願いします」

 お断りします。

 クノンの返事は決まっていた。
 決まっていたはずなのに、なぜか言葉にはならなかった。
 アリーゼの瞳は、ひどく、自虐的で、

(どうしてでしょうか。アルディラさまに、似ている気がします)

「……わかりました」

 気づくと伝言のため部屋を後にしていた。
 自分の行動の良し悪しを判断する前に、実行に移してしまっている。

(これが感情、なのでしょうか)

 本当に厄介なものですね、とクノンは思った。








 喚起の門にて。
 護人、海賊、俺、アリーゼが集合していた。

 俺がアルディラの元を訪ねたときには、ある程度片が付いていた。
 アリーゼが一足先にアルディラと話をしていたようだ。

 過去、無色の派閥が遺跡を駆使して界の意思を作り出そうとした。
 それを制御できる核識になりえる召喚師は現れず、結局は島の破棄を決定。
 そして、派閥は核識になりえた唯一の例外であったハイネルを恐れ、彼が島の破棄に反対していたこともあり、すべてを抹消しようとした。
 当然ハイネルは島そのものを武器として全力で応戦し、結果、限界を超え命を落とす。
 島から派閥を撤退させることはできたが、遺跡は二本の剣、『碧の賢帝』と『紅の暴君』によって封印された、と。

 アルディラは、遺跡が復活させられれば、封じられたハイネルの意識が復活するかもしれないと思った。
 反対にファリエルは過去の戦いでの遺跡の暴走を恐れて反対した、と。

「で、どうすんの?」

 スカーレルが口火を切る。

「二人の願いを両立することは不可能だってわかったわけだけど?」

「決めるのは、私たちじゃないわ」

 アルディラはアリーゼを見る。
 ファリエルもアリーゼに視線を向ける。

「解放されつつある力を完全に解き放つのも、再び封印するのも、貴女にしかできません。
 だから、貴女が決めてください。
 私たちは、それに、従います」

 皆の視線がアリーゼに集中する。

 待て待て待て。
 アリーゼが最終的な決定権を持つのはわかる。
 結局は剣の使い手であるアリーゼ以外は遺跡をどうこうできないわけだし。

 だが、なんだこれは?
 まるで全責任をアリーゼが負わなきゃいけないみたいじゃねーか。

 俺は場を仕切りなおさせるため口を開こうとして、

「先生」

 言葉と。

 ……アリーゼ。

 握られた手により、静止させられていた。
 アリーゼはそれ以上俺には何も言わなかった。

 ……目は口ほどに、ってやつか。

 アリーゼの瞳は、大丈夫です、と語っていた。

「遺跡は、封印します」

 はっきりとアリーゼは言い切った。

「ごめんなさい、アルディラさん」

「そう……そうよね」

 うなだれるアルディラ。
 アリーゼはアルディラをまっすぐ見据えて、言葉を紡ぐ。

「アルディラさんの気持ち、私はわかります」

 アリーゼの手が震える。
 いつだったか、先生に会いたいと言っていたアリーゼ。

 ……やはり、今では会うことはできないってことか。

「でも、私にはもうできないです。みんなを危険に巻き込むことは。
 だから私は封印を……」

「封印なんて」 

 アリーゼの言葉をさえぎり、

「絶対にさせないわ!」

 アルディラは突如、激昂した。

「約束を破るつもりですか!?」

 非難するヤードを睨み付けるアルディラ。

「なんと言われたって、こればっかりは納得できないッ!!
 私が護人になったのは還ってくるあの人の居場所を守るため……。
 それが叶わないのなら、この島も私自身も存在する価値なんてありはしないわ!!!」

「義姉さん……貴女はそんなにも兄さんを……」

 近づくファリエルからアルディラは間合いを取る。

「どうしても封印を行うというのなら、私を倒しなさい」

 詠唱を開始するアルディラ。

「私を壊しなさい!!
 壊して、全部……全部終わらせてよぉッッ!!!」

 突然の行動以上に、その悲痛な叫びが全員をその場に止めていた。

 ……だから、きっと無意識だったんだろう。

「ひぐッ!?」

 振り下ろした拳がアルディラの頭を直撃する。

「いい加減にしろよ」

 吐き捨てるように俺は言う。
 一瞬、困惑の表情を浮かべた後、怨敵をにらみ殺す勢いで俺を見据えるアルディラ。

 ……てめぇ。

 反射的に剣を抜こうとするほどに怒りが全身を駆け抜ける。
 感情が行動を制御できない。
 全力で目の前の女を叩き潰したくなる衝動。

「待ってください!!」

 あさっての方向から静止の声。
 俺とアルディラの間に立ち、俺の方を向き両手を広げる。
 彼女は――クノンは、アルディラを庇っていた。

「クノン。大丈夫だ。ちょっとこのわからず屋にお仕置きするだけだ」

「どうして、ですか……」

「………」

「貴方がそこまで怒る理由は」

「それは……」

 考えればいろいろと理由は浮かぶ。
 しかし、あんな風に動けたのは、視界の端に物陰に隠れていたクノンが映ったからだ。

 ……きっと、心配で様子を見に来てたんだろうな。

「もしも、その一端に私が関係しているのであれば、私に任せてください」

「……はいよ」

 俺の返事と同時に、クノンは背を向けアルディラに向き合う。

「貴女は、忘れてしまったのですか?
 あの方が、最後に何を望んで眠られたのかを」

「……!?」

「生きて、幸せになってこの島を満たしてほしい……」

「……ぁ」

「みんなが笑っていてくれることが、自分にとって一番うれしいことだから、と。
 その意思を、貴女は踏みにじるというのですか!?」
 
「あ、あああぁぁ…………」

 膝をついて、アルディラはうな垂れる。

「お願いです……どうか、壊れることを望まないでください」

 アルディラの肩に両手をかけ、抱きしめるクノン。

「お願いです。どうか、私を」

 その力は弱々しく、振り払えば簡単に外れてしまうものだった。

「私を…………置いて……行かないでください……」

 それが限界だとでもいうように、それ以上、力は入らなかった。

「クノン……」

 そっと、アルディラが手を回す。

「クノ、ン…………ッ」

 堰を切って涙はあふれ、

「う、うわぁあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 アルディラは子供のように泣き続けた。








 剣による封印を行うため、アリーゼとファリエルとアルディラの三人は遺跡へと向かった。
 残るメンバーは留守番。
 ヤッファやキュウマにも事情を話し、集いの泉にて待機中である。

「……あいつらが心配か、レックス」

 隣にいるヤッファが遺跡の方角を見ながら尋ねる。

「大丈夫だろ、あの三人なら」

「ならその前後左右への動きをやめろ。鬱陶しいぞ」

「無茶言うな。あんな遺跡に三人だけで封印行ったんだぞ。落ち着いて待てるわけねーだろ」

「……お前なぁ」

 ヤッファがため息を吐く。
 少しはあいつらを信頼しろとでも言いたいんだろう。

 そりゃ、俺だって信頼はしている。
 でも心配なものはどうしようもないだろ。
 剣一本による成功するかどうかもわからない封印で、クノンの説教が効いたとはいえアルディラが完全復活したとは言える状態でもなく、ファリエルもアルディラとの戦いでの傷は完全に癒えてはいなくて。
 アリーゼなんて言うまでもない。前回の封印でどんな目にあったってんだよなぁ。

「これは島の問題でもあるが、あいつらがケリをつけるのが一番禍根を残さねぇ。
 そう全員が賛同したから、行かせたんだろう」

 特にアルディラはアルディラ自身がやらなければ意味がない。
 もしも躊躇って、だれかが力を貸してしまったら、それは自分の意思で封印したことにはならない。
 それではいつまでたっても遺跡を復活させようとした気持ちに区切りはつかないだろう。

「嬢ちゃんがついてるんだ。あの姉妹を信頼しないでだれを信頼するんだよ」

「……ヤッファは知ってたのか。ファリエルのこと」

 遺跡に三人が行く前、ファルゼンの姿ではなく、ファリエルの姿でヤッファとキュウマには事情を説明していた。
 戸惑いの表情を浮かべるキュウマに比べ、ヤッファは終始自然体だった。

「まあな」

「そうか」

 驚きは、あまりない。
 ソノラが気づいていた時点で、ヤッファが気づいていないわけがなかった。

「どうして黙っててくれたんだ」

「もともと嬢ちゃんがなにかしたってわけじゃねぇんだ。嬢ちゃんが負い目を感じる必要はない」

「………」

「ただ……ただよ…………。
 嬢ちゃんを見てると、どうしてもハイネルの野郎を思い出しちまうんだ。
 だから、こうして長い時間を置いて会えて、返ってよかったんだろうな。
 心の整理が出来てなかったら、どうして嬢ちゃんだけが存在していてハイネルはいないんだ。なんて口走っちまったかも知れねえ」

「ヤッファ……」

「お前らには感謝してる。
 こうして、もう会えないと思ってた嬢ちゃんに、また会うことができたんだ。
 俺たちだけじゃあ、そんな日はこなかっただろうからな」

「島の危機も来ちまったけどな」

「は。もらった幸運と比べれば微々たるもんだ」

「……違いねぇ」

 互いに笑う。
 ヤッファの話を聞いていたら、俺も落ち着くことが出来た。

 それからしばらくして、遺跡の方から歩いてくる三人を皆で迎えた。



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