奴隷は主の所持物である。

奴隷は主の命令には絶対順守でなければならない。

奴隷はその命令には己の命に代えてでも守らなければならない。

奴隷は主である貴族の命に従ってこそ生きる価値があり、その命に背けば誰であろうとも極刑に処する。

以上。アルカナ王国、奴隷法第一条。








「舐めろ」


学校からどたばたと帰ってきて、開口一番の台詞がそれだった。

豪華なベッドに座り、晒した裸足を此方に向かって突き出して、酷くご立腹な表情で、彼はそう言った。


「…………」


不機嫌らしい。何があったのかは知れないが、不機嫌らしい。こんな露骨な嫌がらせしてくるなんて。


「ほら、ほーらほらほら」


ぐいぐいと、男の割に小柄な足を、私の頬に押し付けてくる。

ああもう、鬱陶しい鬱陶しい。

だけど口答えするとそのまま蹴られそうなので、黙って舌を出して、舐めた。

こういう場合、何も考えないように、何も感じないように、頭をからっぽにしているといい。

とにかく意識しない。そうしない腹が立ってたまらない、


「何をしている。しっかり舐めろ」


足の裏を、その気味の悪い温かさを堪えながら舐めた私への追い打ちが飛んできた。

指をクイクイと主張させる所を見ると、指を咥えろと、言いたい、らしい。

…………死ねばいいのに、このやろ、


「ぐぇ！」


指をくわえた瞬間、そのまま加えた指を喉下に押し込んできた。

痛みと嘔吐感が沸いて、指を吐き出して咳き込む。気持ち悪い。


「蛙かお前は」


私の咳き込む姿を見て、目の前の少年はケラケラと嗤った。

最低だ。最悪だ。これでもかって言うくらい。

しかし少年は嗤う。知ったことかと言わんばかりに少年はケラケラ嗤う。

嗤って嗤って、暫く嗤い続けて、そして何の拍子も無くピタリと嗤うのをやめた。


「……飽きたなー」


つまらなそうにそう言うと、彼はそのまま横たわり、私を手招きする。

何時ものように、私はしぶしぶと彼の手招きに誘われ、しぶしぶとベットに横たわる。

彼はそんな私の事などどうでも良さそうに、適当に、乱暴に抱きしめて、そのままの状態で眠ってしまった。

成人にはまだまだ達していない少年が、同じく似た年頃の女である私に抱きついて眠っている。

何も知らぬ人が見れば、恋人が戯れていると思うかもしれない。

だがこの国に住むものならば、そして私の首に巻き付いている“首輪”が目に入っているのなら、分かるだろう。




彼は私の主であり、私は彼の奴隷だった。


私は彼の言う事は決して逆らう事が出来ず、彼は私の身を自由にできる。


殴りたければ殴れるし、犯したければ犯せるし、殺したければ殺せる。


私にはそれを抵抗する術が無い。首輪がある限り、私の命に自由は無い


「………最悪だ」


何時もの様に、彼に抱きつかれながら、私も寝た。起きた時には彼の機嫌が良くなっていることを祈りながら。




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只今迷走中……うーむ

追記：6／27、オリ板に移動しました