プロローグ




……遥か遠い昔、古の神々はひとつの世界を作った。

その世界には果てしなく広がる海、そして幾数もの大陸が存在し様々な命が生まれ栄える。

それから更に時が加速すると、各大陸に文化が芽生え……やがては国にへと変わっていった。




とある大陸は軍事力に秀で、強力な艦隊を用いて未開拓の大陸の制圧を狙う結束の硬い強国。


とある大陸は逆に争いが絶えず、大陸の頂点を競って今も尚 戦争を続けている小国の集い。


とある大陸は多くの大陸と貿易を行っている為に資金に優れ、一攫千金を夢見て多くの種族が集う国。


とある大陸は大半が森林や草原などの自然で覆われた、動物たちの楽園・エルフ族の国。


とある大陸は魔法が非常に栄えており、それを学びたいと思う全種族の者達が訪れる魔術の国。


とある大陸は非現実的な事を信じず科学をのみ愛すと言う、多くの学者達が集う機械の国。




その他にも芸術の国・妖精の国・東洋の国・貧しい雪国・火山の国など、挙げればキリが無い。

またドラゴンが集う大陸・悪魔が住むと言う大陸・古の秘宝が眠ると言われる辺境の大陸など……

未知の領域も多く存在するが危険ながらも人々の探究心を煽り、今日も世界は忙しなく動いていた。




――――そんな世界に存在する大陸の一つである、広大な面積を持つ国・ダンジョニア王国。




何時 何処で誰が付けた名前だかは知らないが、その名の通りダンジョニアには多くの迷宮が存在する。

かつては迷宮など存在せず、ダンジョニアに住む者達は争いもせず平和な暮らしを送っていた。

しかし神の悪戯でダンジョニア各地に場所を考えず迷宮が出現し、瞬く間にその数は５００を越えた。

当然 全ての迷宮には多くのモンスターが存在し、倒しても倒しても無限に出現する始末。

その沸きには周期があり、一定以下では決してモンスターは迷宮の外には出てこないのだが……

増えすぎると溢れるてしまうのか、溢れた殆どのモンスターは生き物の命を奪い、物を無差別に壊した。

……とは言え、迷宮はダンジョニアだけでなく同時期に他の大陸でもポツポツと出始めていた。

だが……ダンジョニア大陸に限っては桁違いに迷宮の出現する数が多いらしく、
各迷宮のモンスターを溢れずに殲滅する事すら、大陸の者ダケでは到底 手に負えなかったのである。

よって当時のダンジョニアの人々は絶望し……誰もが大陸を捨てる事を選ばざるを得ない筈だった。

しかし、突如生まれた者達の活躍で次々と迷宮が封鎖されてゆき、ダンジョニアは更なる発展を遂げた。

故にダンジョニアは王国となり、王都まで存在する有様。……皮肉ながらも、迷宮が多かった御蔭とも言える。




――――そして、冒険者と言われる者達の数千年にも及ぶ活躍に他ならないのだ！！




さて冒険者とは主に各大陸に出現した迷宮に潜り、モンスターの落とした物資を拾って生計を立てる。

モンスターが主に落とすのはゴールドなのだが、銅貨１枚で１ゴールド・銀貨１枚で１０ゴールド。

そして金貨１枚で１００ゴールドと計算され、何故 共通の貨幣であるゴールドを彼らが落とすのかは謎。

だが暗黙の了解であり、どの貨幣も買い物ダケでなく溶かして武器や防具の貴重な材料となるのである。

例え銅貨であろうと実は貴重であり、前述の機械の国ではコストの問題で鉛を使う。銅など持っての他だ。

実は銅・銀・金は発掘できず全てモンスター頼みな上に、僅かながらも魔力を秘めているのだから。

よって３種類の資源を多く必要としている国は、世界ほぼ共通の紙幣を使い銅・銀・金を回収する事が多い。

冒険者にとっては、そのまま拾ったゴールドで武器や防具の開発依頼をしない限りは、
溜まると重いダケなので紙幣に換えた方が楽なのである。(紙幣は大金になるので簡単には其処まで貯まらないが)

……とは言いながらも、最終的には迷宮を封鎖する事が目標であり、そうしない限りその地域では人が死ぬ。

よってゴールドが目的で迷宮に篭っていようが、封鎖されてしまえば別の迷宮を探して再び潜るしかない。

しかし、どの大陸でも１年に一度は迷宮が生まれるし……資源が欲しければそちらで手に入れれば良いダケだ。

また探さずとも……どの大陸にも一箇所は国掛かりで現在進行形で攻略中の大迷宮も存在するので、
攻略は上位の冒険者らに任せ、レベルの低い冒険者はゴールドが目的で上層のモンスターを狩れば良いのだ。




一方ダンジョニアに限っては１年に５～１０箇所は迷宮が生まれるが、冒険者が多い為 封鎖が早く競争だ。

何故ならダンジョンの封鎖を達成したパーティーのリーダーには英雄の称号が授けられるのである。

これは多くの冒険者が憧れる称号であり、コレが有れば世界迷宮連盟から多額の報酬が受け取れる事が出来る。

また世界各国から名指しの依頼も来る事が有るので、冒険者の誰もが必死になって迷宮の封鎖を狙うのだ。

その方法は簡単……迷宮の最下層に到達し、モンスター発生の根源である幻獣を倒せば良いダケなのだ。

勿論 桁外れに強いので一筋縄にはいかないが、幻獣を倒せば後は迷宮のモンスターを掃除するダケで済む。

まれに使役する冒険者も居るのは余談として、今日も地位と名誉を求めて多くの命が迷宮で散ってゆく。




――――そんな国そのものが巨大な迷宮とも言えるダンジョニア大陸。




国掛かりで攻略している巨大迷宮……ビッグ・ラビリンスの数は世界最大であり１０箇所 以上にも及ぶ。

何処も非常に広く深い迷宮であり、中には１００年経っても攻略できていないダンジョンも有るらしい。

故に迷宮によっては其処ダケの為に街ができ、大都市へと発展している所も有るのでまさにダンジョン王国。

この物語は……そんなダンジョニア王国で、ひたすら夢を追い続けている一人の青年のオハナシである。




●あとがき●
本作はシリアスを衝動的に書きたくなった故での練習……と言うかリハビリＳＳです。
読んでくれて有難う御座いました、下書きも有って短編の予定なので直ぐ完結すると思います。