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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:e3510fd3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/12/23 13:59
+
 さて、探す相手はヴァーリア姫さん。
 アテは無い。
 だが、手掛かりが無い訳でも無い ―― 戦争音楽だ。
 誰かが戦っているなら、そこにヴァーリア姫さんと護衛が居る率が高い。
 そうでなくても、誰か、<黒>に抵抗している奴が居るのだ。
 それを助けるのは決して無駄な事じゃない。

 何より、<黒>を潰すのは気持ちが良い。
 特に、勝ったつもりで調子に乗ってる所へ殴り込んで滅茶苦茶にしてやるのは快感だ。

 人間力を教育してやる。


「ギャゥウゥッ!」


 ゴブ助の集団だ。
 手には錆び錆の獲物と食い物。
 そして、元は人と思しきなにか。
 俺を見て笑ってる。
 獲物に見えるか? 可愛いものだ。
 教育してやろう。
 人間を。

 ロットの腹を蹴る。
 前へ。


「Uraaaaaaa!!」











異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
2-23
公都ルッェルン防衛戦 - 破/3










 歩く、殺す、助ける。
 散文的な表現にはなれない、これが公都の俺の現実。
 なんてね。

 とも角、見敵必戦(キャッチ・アンド・キル)は必要最小限の正解な訳で。
 馬上からだと戦闘とか救助とかで乗り降りとか面倒くさい所があるので降りて戦う。
 ロットは返してってか、後ろに放したんだけど付いてくる。
 ついでに戦ってやがる。
 踏む、齧る、跳ね飛ばす。
 誰ですか、馬は優しい生き物とか言ってるのは。
 例外が居ますよ。
 酷い例外が、ここに。
 戦獣なしろがねよりも狂暴凶悪な、血塗れ暴れ馬。
 なにそれ怖いっ! なトンでも生物(クリーチャー)だ。

 味方なので問題は無いがな。
 とも角、馬を連れての西遊記(初期
 とはいえやってる事は人を助けながらで無かったら、まるで徘徊する殺人鬼にしか見えない件。

 戦争だ、仕方が無いよ、皆殺し(季語無し

 取りあえず、音を頼りに探せば割と生き残りが居た。
 助ける。
 俺の来た方向であれば安全 ――  見敵必戦必殺(キャッチ・アンド・キル)なのだから。


「ギギギギギッ!!!」


 言うてゴブ助、腐る程に出て来る。
 面倒くさいと言うのもめんどくさい位に出て来る。
 この場所に来ないなら、俺の進路上に居ないなら問題は無いんだが、邪魔をするなら仕方が無い。
 人を殺すと言うなら仕方が無い。


「来いやコラァ!!」


 中指立てて嗤う。
 煽る。
 言葉は通じなくとも、悪意は通じる。


「ギギギッ! ギギギギギッ!!」


 殺到して来るゴブリン。
 その手を叩く。
 武器を弾く。
 潰して切って斬る。
 踊り子に手を触れませんように、ってな!


「Siiiiii」


 囲まれない様に、背中から仕掛けて来れない様に、相手が離れない様に、諦めない様に。


「ギギッ!!」


 ほらほら。
 頑張れば踊り子さんに手が届くよ。
 届くよ。
 届くよ。


「ギガッ! ギガガッ!!」


 届くけど、残念! お触りは禁止されてます。
 禁止されてる事をする奴はお仕置きだァ!
 伸ばされた手をめがけてハルバードを下から振り抜く。
 バックステップをしながら溜めたバネを一気に開放し、伸びて来た汚い手を切り落とす。
 巻き添えで首も飛ばす。

 飛び散る血、肉、何か。
 退くか、退かないか。


「ギギギッ」


「ギーギーッ!」


 血に、勝利に酔ってるんかい。
 弱いゴブ助の分際で調子に乗ったもんだ。
 無謀だ。
 実に馬鹿だ。
 とはいえ、賢くも退こうとした所で退かす積りは無いがない。


 掃討戦闘(サーチ・アンド・デストロイ)
 攻勢防御(サーチ・アンド・レスキュー)


 殺して救って逃がして殺して。
 エンドレス。
 どれだけ公都にきやがった。
 100は超えて殺したぞ。
 200は当然、300必然。
 それでも殺しきれないのは ―― 総数1万超えてりゃ、そら仕方が無い。
 とはいえ、厭きるけど。

 飽きたからコイツら勝手に死んでくれないかな。
 俺を見たら死ぬ。みたいな感じで。
 いや本当に。
 どうせ、俺に会ったら死ぬんだし。


「なぁ、自決してくれない?」


 ゴブリンに提案してみる。


「ギギギギ!?」


 拒否された。
 仕方が無いから殺す。
 ハルバード1閃、首コロリ、胴バッサリ。

 と、剣戟の音と怒声っぽい声が聞こえる。
 戦ってる奴らが居る。
 生き残りだ。
 ヴァーリアの姫さん達か!? 
 楽しくなってきた。


「ギィィッ!!」


 盛り上がりに水を差してくるゴブ助。
 死ね。


「邪魔だ!!」


 いや本当に。
 周囲を一掃してロットに登る。
 手綱を引く。


「ブルルン!」


 戦意溢れるロットの鼻息。
 野太い吠え声(ブルゥアァ)と聞こえたのは、多分、空耳。
 多分。
 おっかない馬だけど、今はそれが有難い。
 腹を蹴る。

 細かい指図をせずとも躊躇なくゴブリンの群れに突っ込む。
 割と平和だった(過去形)この国あの村で、どうやればこんな悍馬が生まれたのやら。
 いや、言う事は聞いてくれるから文句は無いけどさぁ!!



 ゴブ助を蹴散らし、粉砕して進めば居る居る。
 戦う人達が。
 見る限り上質そう(比較級)な


「騎兵参上!!」


 第7でも無ければ隊でも無いが、増援だぞ。
 感涙の涙を滂沱の如く流して喜べ! って、振り向いてくる奴らの目が死んでる。
 後、向こう側にはゴブ助だけじゃなく、オークとオーガーが隊伍を成してた。
 対峙する兵。
 今はまだ味方は崩れちゃいないが、浮足立ってるのが後ろから見てて判る。
 こらヤヴァイ。
 とっとと退かなきゃ全滅だ。
 みんな食われる。

 指揮官は誰かと声を上げる。
 返事があった。


「ビクター卿か!」


 クラインさんか。
 生きてたか上々上々。
 後はヴァーリアの姫か。
 この集団には居ないっぽいが、どこなのやら。


「掃除しながら来たぞ、今なら撤退出来る。姫さんは?」


 割と忠臣っぽい感じなので位置程度は把握しているだろうと思って尋ねたら、隣の半壊した建物を指さしやがった。
 人が集まってる。
 何事かと聞けば、崩壊した建物の下敷きになっているとの事。
 オイオイ。

「なんでそうなった!?」


「退きの最中にいきなり道際の建物が崩れて来たのだ。それで兵たちと一緒に殿下は……」


 その時に轟音がしたという。
 アレか、トロルド辺りが攻城兵器で大岩投げてたりするから、それがたまたま着弾でもしたか。
 なんという不運さか。


「生きてるのか!?」


「まだ御存命だ。だ、だが………」


 言葉を濁したクラインさん。
 兵たちが瓦礫をどかそうとしているけど難航しているのが判る。
 当然か、周囲に敵が居て自由には出来ないのだから。


「なってこった」


 取りあえず駆け寄る。
 何人かで乗っている建物をどかそうとするが、如何せん大きすぎる。
 そして重すぎるか。


「城代殿、如何か!?」


「この下なんだ、これさえどかせられれば」


 これというのは、建物の外壁材だ。
 見て判った。
 乗っかっているコレを破壊する事自体はそう難しくないだろうが、挟まれている中へと衝撃を与えずに実行するのは難題 ―― 難航する理由はそれだろう。


「もう、もう良い退け」


 ヴァーリア姫さんの声が聞こえた。
 か細い。


「ヴァーリア城代!」


「ビクターか。来てくれたか」


「ええ。今、助けますから」


「いや、良い。敵が来ているのだろ? 悪いが兵やクラインを連れて城へ下がってくれ」


「殿下、その様な事を!」


「コレも私の不手際が招いた事だ。苦労を掛けたな……」


「殿下!!」


 兵たちが泣く。
 泣かせる上官っぷりだ。
 だが、泣くには、泣いて終わり(バッド・エンド)にはまだ早い。


「大丈夫大丈夫。ま、任せてもらおうか」



 何とかすると言った途端に衆目が集まった。
 視線が圧力に感じるが、それを笑う。
 笑って見せよう。


「クライン。前線をほんの少しで良い、持たせろ(● ● ● ●)


 命令を下す。
 こういう時は有無を言わさぬ勢いが大事だ。
 目と目を合わせる。
 笑ってやる。
 笑う。
 俺は笑えている筈。


「っ、判った」


 駆け出していくが、それを見ている暇はない。


「兵隊、飛び込んで助ける気持ちで居ろ」


 俺に一番近い奴に命じる。


「あんた、どうする気だよ!?」


「ナニ、持ち上げるのさ」


 壁材は重いものは乗ってない。
 重さは、それ自体のモノだ。
 16㎡も無いような、小さな(● ● ●)壁だ。
 出来ない筈が無い。


「持てる訳が無いだろ!?」


 誰かが言った。
 はん、出来るか出来ないかではなく、するんだよ。


「見てな、俺の握力は500㎏さ」


 フチを、掴む。
 潰すように力を入れる。
 腰を入れる。


「ウゥゥゥゥゥッゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ」


「ビクター?」


「ラアァァァァァァァァァッ!!!」


 体中がビシビシと言ってる。
 痛いぞ、クソッタレが。
 いい加減に浮け。
 上がれ。
 上がれ上がれ上がれ上がれ上がれ。

 全力全開(ファイト! イッパツ!!)


「!」


 上がった。
 浮かせられた。
 肩を入れる。
 踏み込む。
 腰を入れる。
 踏み込む。
 伸ばした身体押し込むようにして、壁を支える。


「アアァァァァァァァァァッ!!」


 上がった。
 上がり切った。
 潰れかけたヴァーリア姫さんが居る。
 生きている。
 目が合った。
 ビックリとコッチを見ている。
 笑う。


「なっ、持ち上がったろ?」


 ウィンク1つ、付ける余裕は無いが、あえて笑って見せる。
 男には見栄って大事だよね。
 とはいえ、膝が笑い出しそうなので、そんなに余裕は無い。


「兵隊、飛び込め! 助けろ!!」



 割と見事に救出成功。
 しかも生きているっぽいので大成功。
 他にも数名が救出できたので超成功である。
 だが、無事を祝っている余裕は無い。

 チラ見でクラインの方を見ればかなり押されている。
 隊伍を組んで槍衾を作っていた兵達が、軽く見だだけでも判るレベルで打ち倒されている。
 オークオーガーが居て隊列が全面崩壊していないのは見事だが、そう長くは持たないな。
 突破、蹂躙されるのも時間の問題っぽい。

 チト、ヤヴァイ。

 と、オークの群れを超えてトロルドが来やがった。
 道を丸々っと塞ぐ様に、緑な巨躯が前に来る。
 棍棒が一薙ぎしただけで、人が宙をまった。
 クライン達が頑張るんで、オーク奴ら奥の手を出して来やがった。
 戦車みたいな衝突力だ。
 又、人が飛んだ。

 ヤヴァイ。
 真面目にヤヴァイ。


「ゴッゴッゴッゴッゴッ!!」


 威嚇か笑っているのか、取りあえずムカつく。
 総崩れになりそうな兵たちを見て、余裕か。


「好き勝手に暴れてんじゃねーよ、ボケが」


 大きく開けたその口に、ハルバードをブン投げる。
 殺すぞ?
 否。
 殺す。
 確定だ。


「ゴォ!? ゴォォォォォォォッ!!」


 口の中にぶっ刺さったハルバードに悶えて悲鳴を上げている。
 致命傷じゃないのが残念だ。
 まぁ良い。
 アレで駄目でも今から細切れにして殺せば良い。
 と ――


「ビクター卿!」


 名を呼ばれたクラインだ。
 下がってきている。
 顔が土気色になっている。
 だが、目の力は失せてない。


「姫を、この国を頼む」


 殿をして、撤退を支援するつもりか。
 確かに必要だ。
 必要だ。
 だが、断る。


「重たい荷物は嫌いなんでね。それよりヴァーリア姫さんと兵を連れて下ってくれ」


「おいっ!?」


「今日はゴブ助しか喰って無いから、喰い足りないんでね」


 目の前にトロルド、奥にはオークとオーガー。
 間違っても簡単な相手じゃない。
 壁上げでチト体に無茶が掛かって、マーリンさんのタリスマンが自己修復(オート・ヒール)してくれているが直ぐには完調する気配は無い。
 チト、無理をし過ぎたか。
 体中がまだバキバキパリパリと言いいながら、治って居る途中だ。
 そんな時に戦闘ってのは、正直、危ないが、かといってクラインや兵が戦えば、それは全滅必至の絶望しかないって状況なので、選手交代(コレ)は仕方が無い。
 至当って奴だ。


「と言う訳で、さっさと下がってください」


「感謝する」


 感に堪えぬと頭を下げられた。
 そうそう、無茶をする積りは無いんだけどね。
 チョッとだけ無茶する程度で。

 グーパーグーパー

 体調、概ね良好。
 自己修復率75%、戦闘継続に問題認められずってね。
 トロルドもいい加減、ハルバードを引っこ抜いて投げ捨てている。
 コッチを睨んでいる。

 戦うのが好きかい?
 蹂躙するのも好きかい?
 俺も、大好きさ。


「ビクター!」


 ヴァーリア姫さんに呼ばれた。
 槍を渡された。
 伝家の宝槍、風の霊槍(ゴングナー)だ。


「授ける、頼む」


 授けるって、貰って良いの、コレ?
 まぁ、場の空気的に断るのってアレなので、受け取るけど。
 回してから翳す。
 構える。


「お任せあれ」



 調子よく答えて、トロルドと向き合う。



 魔力を込めると馬鹿みたいな切れ味になるゴングナーであるが、であればトロルドの相手は簡単になる ―― という程に世の中は甘くない。
 実に甘くない。
 切れるってのと止めるってのはイコールじゃないのだから。

 向かって来る、トロルドの棍棒を穂先で両断しても質量と慣性で潰される、的な。
 具体的?
 現在進行形だからな!!


「痛ぇなぁ、オイ」


 ぶっ飛ばされて、壁に叩きつけられた。
 痛いし眩暈がする。
 骨が幾つか逝ってるな、これ。
 呼吸で胸が痛いわ。
 連続のダメージに、チト、回復が追いついてないな、コレ。


「ヴッ!」


 あ、血反吐も出た。
 気管かどっかもやられたか。
 いや、トロルドの火力ってか、単純な物理力って侮れないな。

 ゆっくりと歩いてくる緑の山、トロルド。
 勝った気でいやがる。


「馬鹿野郎、負けてやる義理はねっての」


 血反吐を拭う。
 武器を掴もう。
 立とう。
 戦いは今からだ。
 死ぬまで死なない。


「アアアアァァァァァッ!!!」


 力を力を力を。
 歯を食いしばって立とう。


――ツタウトチイ・キクョリマ=ン=ニクカ・ンモツケ(血液確認。魔力申請受諾)――


「は?」


――ウドキ=ン=レシウョシイケ(担い手継承の儀、起動)――


 槍が、ゴングナーが喋った?
 ってか、光り出した。
 何だよ、コレ!?
 聞いてないよ!!!







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