「郡士家たるゲーベルに連なる者が居るのに、何故あなた方は好き勝手をしているのです! 当代が居らぬとはいえその様な無法は許されません!! 民とは違う地士が居ても、ゲーベルを統べるのは公家より定められた上士のみ!!! それをetcetcetc」 キンキンの金切り声は耳を右から左へスルーってか、理解出来ない。 したくない。 ウザイ。 とはいえ状況を理解しなければ解決も無理ってなもので、チョイチョイっと事情を知ってそうな………お、メンドクサそうな顔したゲルロトさんが居たので聞いてみる。「もしもし?」 何でも、キンキン金切り声のオバちゃんは、先々代の当主の奥方の弟の奥さんの娘さんの娘さんだそうな。 名前はデリア。 で、ゲーベル家の当主から身内扱いされていて、それなりの発言も出来る立場だったらしい。 だからこそ、ご不満なのだという。 “ゲーベル郡を差配するのはゲーベル家の人間であるべきだ” と。 気持ちは分からないでも無い。 だが言いたい、血縁的に見てアンタ、ブッチャケ、赤の他人である。 至極単純に、そして悪意を以て解釈すればゲーベル家の身内扱いだった私に、ゲーベル家の権益を寄越せという訳だ。 ナイワー マジ、ナイワー そう思ってるのは俺だけじゃなくて、回りの皆して白けった顔をしている。 さて村長さんs’はこのオバハンをどう処理するのか高みの見物と思っていたら、オバハン、金切り声の矛先をヘレーネ夫人さんに変えやがった。「大体、ブラウヒアが甘い顔を見せるから下々が調子に乗っているのでは無いですか!? 上士家の誇りをお忘れですか!! 王を立て、民を正道へと導く事は公国の祖からの定めですわ!!!」 ターゲットというよりは、アレだ、ヘレーネ夫人さんの自尊心を擽って味方に引き入れようとしているのかもしれない。 ヘレーネ夫人さんへと手を差し伸べるオバハン。 自分に酔った三文芝居だが、勢いはある。 さて、どうでるかなと俺も回りもヘレーネ夫人さんをじっと見る。 それらの視線に動じることなく、背筋をのばして言う。「貴方は間違えています」 お、断言。 格好良いぞ。「今、この非常の時に家などは関係ありません」「それは間違えていますわ! 非常の時であればこそ、秩序を乱してはならないのですわ!!」 正論ではある。 正論ではあるけど、正論を道具にしかしてない発言っぽいから同意する気にはなれない。 つか3つの集団が、村長×2とヘレーネ夫人さんの三頭体制とバランス良くやってるのに、秩序が乱れるもクソも無いってなものだ。「……そうですね」「そうですね、ここはゲーベルとブラウヒアの上士家が仕切ってこそ秩序が維持されると言うものですわ!!」「貴方の意見は理解しました。ですが、1つだけ疑問があるのです」「何でしょう?」「貴方は誰です?」「え!?」「私、ゲーベル家の方々とお会いして係累の方々ともご挨拶をし、紹介を受けましたが、その中に貴方は居ませんでしたよね? なのに何故、貴方はゲーベルの名を名乗るのですか」 要するに、アンタはゲーベルの名を出すが、アンタはゲーベルの人間じゃない、と面前で言い放ったのだ。 素敵! オバハン、絶句しおった。 これはもう拍手しかない。 周りもみんな拍手しだした。 そんな面子の潰れで顔を真っ赤にしたオバハンを隠すように、後ろに居たゴッツイのが出て来た。 中々の筋骨隆々っぷりの奴だ。 他の奴、ヘイル坊やよりも更に一回りは大きい。 熊かと思うような体格をしている。 拳王ドズルなエミリオの兄ちゃんには負けるけど。 兎に角ゴツイ。 しかし、頭髪を剃り落とすというのはどうかと思う。 悪役(ヒャッハー)系にしか見えない。 つか、人相も悪いし。「血じゃなくて実力主義って話なら、俺の話になるな」 体を見せびらかすようにして、ガラの悪い発音で言った。 確定です、悪役(バカ)だ。「俺は弱い奴に指図されるなんて真っ平だ。生き残る為には強い奴が上に立つ必要があると俺は思うんだがどうだ?」 あー その、なんだ。 皆して俺とゴッツイのを見比べるのはどーかと思う。 特にストーク、笑いを堪えるな。異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント2-14ズバっと解決!(※物理的に ゴッツイ奴、名前はドレラと名乗った。 元々は郡都在住の傭兵で、今はデリラに雇われてる身だと言う。「力の無い奴らが指図する事なんて無駄だ。混乱を治めるには強い力と指導力だ。俺に任せろ。特別に安く請け負ってやる」 集団の命名でハイになって怒鳴りあってたのを誤解したらしい。 馬鹿か。 オバハンは、そんな馬鹿を自慢げに見ている。 騙りで駄目なら、力(ドレラ)を背景に集団を乗っ取ろうというのだろう。 個人的には、誰が集団のトップになっても構わない。 趣味だけで言えばヘレーネ夫人さんだけど、それは趣味だしね。 だけどデリラの人品は宜しくなさそうだし、ドレラは正直弱そう(● ● ●)だし。 ヘイル坊やとかよりは強そうだけど、ね。 トールデェ王国の平均的な兵士と同じか、チョイと上位の所だ。 さて、どうしたものかと村長さん×2を見たら、アデンさんが鼻で笑った。「要らん」 バッサリである。 テント内で誰もが笑う。 俺も笑う。「ふざけるな、笑ってる場合じゃ無いだろうが! 俺はトールデェ王国騎士団にも居た〈岩砕き〉のドレラだぞ。その俺が指揮をしてやろうというのだぞ!!」「知らんし要らん……ゲルロト、要るか?」 戦闘部隊の総指揮官はゲルロトさんだ。 一応、戦闘部隊を出している最大の母集団からという政治的配慮があったりする。 何よりゲーベル郷土隊ベルヒト村分隊の隊長と、ルッェル公国の身分つか軍制の中では一番偉い訳で。 只の村長さんの息子で自警団の隊長になったオイゲンさんとは立場が違うのだ。「兵は欲しかが指揮官は、ビクター。必要け?」 俺、その2人に並んだ地位なんだよね。 何で俺が、と考える駄目無駄か。 成るようになってこうなったとしか言いようがない。「要らないですよ。今のところ頭数は足りてるし、力自慢っぽいから遊撃部隊で受け入れて良いですけど」「馬鹿な、俺が兵と同じだと!? しかもこんな小僧が指揮すると言うのか!!!」 大激怒っぽいドレラ。 だよね。 俺、まだ20を超えないガキなんだよね。 見た目って、初見の信用には大事だわ、本当に。「お前よりは強か」 有難うゲルロトさん。 だけど、それって火に油を注ぐのと一緒だよね。 睨んでる睨んでる。 怖くないけど。「何だと!!!!」 馬鹿(ドレラ)が発狂して面倒くさくなったので〆る事にしました。「覚悟は良いか、俺は子供相手にも手加減はせんぞ」 テントの外で対峙しているドレラが吠える。 暇してた連中が集まって来た。 良い娯楽状態だ。 気分転換には良いかもしれないね。「別に? というか言い訳されても面倒なんで最初っから本気で来い」「餓鬼が!!!」 両手持ちの大型鎚矛(メイス)振り上げて吠える。 ……しかし、沸点低いなぁ。 そんなんで、トールデェ王国でエリート的な名誉もある王国騎士団に居たって本当だろうか。 怪しい。「ドレラ、小生意気な小僧に正しい事の強さを見せてあげなさい」 あ、オバハンめ、ヘレーネ夫人さんに文句を言えないからって俺に噛みついてきやがった。 まぁ良いけどね。「そうだぞドレラ! 田舎者に乗せられた餓鬼に現実を教えてやれ!!」「一発で潰すなよ!」「派手にやれよぉっ、<岩砕き>!!」 小汚い鎧を着こんだおっさん達が吠えてる。 俺たちだって清潔とは言い難いけど、何だろう、それとは違う汚れ方だ。 酒瓶をラッパ飲みをしたり保存肉っぽいのをクッチャクッチャとやってて、実に下品だ。 後、見た事の無い顔ばかりだ。 戦闘要員募集の時にも、要員の編成式ってか顔合わせ会でも見なかった。 自警団上がり以外の戦闘要員募集は志願制だし、別に言う事も無いけど、傭兵を自称したり強者だと言うなら最初っから参加して欲しいとは思う。 戦士としての矜持があるなら。 無いんだろうなぁ、多分。「ビクター隊長! 教育やって下さい!!」「ウラー!!」「ガツンとですよ、ガツンと!」 自警団組みが盛大に声を上げてる。 というか、ウラーは止めようとウラーは。 立会人は、村長で古豪でも鳴らしたアデンさんだ。 俺とドレラを見て頷いた。 取りあえず、10m四方な速成の決闘場を作って対峙する。 腰のを抜剣はしない。 偶にはロングソードじゃなくてショートソードでも使ってやろうと思ったのだ。 母親様の奴も、ゴーレルさんに貰った銘有も使わないと可哀想、と。 どれ__「ビクター!」 ヘイル坊やが人垣を超えてやって来た。 手には最近愛用中のハルバード、ロットの所に置いてた奴だ。「持ってきたぞ!!!」 ドヤ顔で差し出してくる。 うん。 今回はソレ、使わない積りだったけど、ここで受け取らないのも可哀想である。 というか仕草が犬だ。 ガタイが大きいが、子犬系っぽい感じ。「有難う」 情にほだされるって奴だ。 ムンズっと掴んで振り回す。 良い感じだ。 コレはコレで手に馴染んだから別に問題も無いし。「さぁ、やろうか?」「……こんな事で死んだらつまらん、俺も気を付けるから、その、お前も気を付けろ?」「心配するな。即死させしなければ、ブレルニルダの神官(ミリエレナ)が居る」 ミリエレナが頷く。 一緒にしろがねも頷く辺り、実に良い主従。 正義の神様ブレルニルダは、決闘を否定していない。 言葉で意見を交えるのも大事だけど、白黒と結論が出にくい事なら拳で語れと言っているのだ。 即断即決速攻 ―― 即ち脳筋(パワー・オブ・ジャスティス)である事にはブレないブレルニルダ。「彼女の腕(ヒール・マジック)は保障する。それに死んでもキチンと送ってもらえる。安心して来い」「…………お……おう!」 アデンさんの合図に合わせて決闘っぽく、メイスにハルバードの切っ先を触れさせる。 近くで見て判った。 傷だらけで鈍色で、魔法も掛かってないようだ。 これなら全力で当ててもハルバードは痛まないだろう。 コレの刃先って鈍器系、もとい、鉈っぽいから。「では、初めぃっ!」 先ずは中距離でのご挨拶(殴り合い)。 様子見を兼ねて、軽くスイングさせながらハルバードを打ち込む。 メイスを当てて来た。 反応速度、悪く無い。 だけどっと、弾かれたハルバードに無理やりに力を載せて、間髪入れずの2発目だ。「うぉぉっ!」 当てて来た。 楽しくなってきたのでそのまま連続攻撃。 3発目、当てた。 4発目、当てた。 右からの打ち込みで弾かれれば、その弾かれた事を予備動作にしての左からの打ち込み。 でもいなしてくる。 5発目、少し遅れ気味だが当たった。 軽めに打ち込んでいるとは言え、中々に出来る事じゃない。 王立騎士団に居たってのは吹かしだと思ってたけど、ウソじゃないかもしれない。 そこらの奴よりは強い。 多分、オークよりも。「やるねぇ」 チョイと距離を取る。 にらみ合い。 まぁ、俺は笑ってしまうけど。 戦闘は別にして、腕試し(ゲーム)ってのは嫌いじゃない。 否、大好きだ。 とはいえ、ハルバードは大威力過ぎて、チト、辛い。 殺すならまだしも、これは試合でしかないのだ。 幾ら、治療担当(ミリエレナ)が居るとはいえ、無駄に治癒魔法も消費したくないので考えざる得ない。 どうすんべ。 考えてたら睨まれた。 違うか。「……お前、その腕前」 怯えているのか。 警戒しているのか。 どっちでも良いけどね。「じゃ、全力で行くぞ」「へ!?」 下半身をバネにして沈み込むように踏み込んで開放、斜め上への力を載せての全力スイング、狙いはメイス。 吹っ飛ばす。「!?」 飛ぶ、浮いた。 踏み込む。 浅くしか溜めれず、力が乗り切らないきれないが問題ない。 右手をハルバードから離し、右腕を織り込む。 撃(エルボー)。 狙うはメイスと一緒に重心が上に伸びてがら空きになった腹、息も吐きだした場所なのだから。「Tetu!」 崩れ落ちた。 立ち上がれそうな気配は無い。「そこまで!」 アデンさんが声を上げた。 予想通りというか予想以上、もとい、予想以下というか。 アレだ。 弱いと言うのは罪だね。 特に、強者ぶった奴だとって事だ。 尚、後でバルトゥールさんから微妙に恨みがましく言われた。 派手に双剣を振るう所が見たかった、と。 知らんがな。 ドレラを含めた傭兵というか傭兵崩れな連中は、ドレラが沈んでからはしおらしくなりました。 その威を借りようとしていたデリラのオバハンも塩々で御座います。 纏めてテントから放り出す。 デリラのオバハンは、せめて郡都の人間の取りまとめ役をやりたいとか言い出したが、無視だった。 そもそも、既に郡都の官僚だった人で、此処までの逃避行を纏めていた人が就いていたので、少しばかりの財がある程度の一般人はお呼びで無いのだ。 そもそも、取りまとめ役になりたいなら、郡都からの逃避行中に纏めてれば良かったのだ。 そこで仕切ってれば問答無用だったろうに、今の、混乱が治まってから指導者やりたいとか、舐めた事を抜かすな、である。 そんな馬鹿どもが起こした騒動も、血を見ずに終わったので適当なイベント扱いである。 それよりも現実の方が大変なんでね。 というか、煮詰まってたので良い気分転換になった気がする。 集団の名前に関しては、ストレートに南方混成群となりました。 大きく分けて5つのグループの集まりで、場所は公国の南側って事で。 単純が良いのだ、単純が。 名前さえ決めれば、後は実務な話なのでサクサクと会議も進む。 先行避難組みと駐留治療組み、そして護衛部隊の調整である。 護衛部隊以外に関しては、門外漢も良い所なので、白湯でも飲みながらまったりとしておく。 会議ってのは居る事も大事なので、席を外せないのが困った所である。 眠いけど。 俺の遊撃部隊は、敵の接近を察知するまでは直衛の怪我人救護隊と一緒に、怪我人班の側に居る予定なんで、会議が終わったら少し仮眠は取れそうなのが良い感じだ。 というか今でも連中は最優先で休養させている。 ヘイル坊やとか若い側の連中を中心に、移動準備を手伝いたいとか言ってきたが全却下した。 イザって時に身を張らせなきゃらならないので、今は休むべき時 ―― 戦闘員にとっての休息は義務であり、体調管理は重要なのだ。 なのに、俺は休めない。 指揮官なんてなるものじゃないよね。 兵卒の2倍3倍働かないと駄目なんだから。 特に、こんな寄り合い所帯(ボランティア)だと。 眠い。 寝たい。 だけど眠れない。 この南方混成群の行動と役割分担は終了したけど、今度は俺ら戦闘部隊の会議のお時間なのだから。 というか、コレ、俺が主張と言うか主導しているので、文句が言えないのが辛い。 誰だ、俺に責任者をやらせた奴は。 責任者出てこい。 戦闘部隊の指揮官会議は、ゲルロトさんとオイゲンさんと俺の3部隊長に予備隊のバイルさんにヘレーネ夫人さんの5人で集まる。「気分直しにどうぞ」 ヘレーネ夫人さんに付いてきたフリーデがカップを配ってくれく。 芳醇な匂い、黒茶だ。 有難い。 白湯が悪いとは言わないけど、味が無いのはやっぱり寂しいよね。「おぉっこれはこれは有難てっ!」 バイルさんが巌の様な顔を崩した。 いや、皆して嬉しい表情になっている。 先ずは一息入れる。 ここら辺の気遣いって女性特有だよね。 実に有難い。 一息入れてからの話し合いは、主に3つの事に関してだった。 1つは各部隊長での任務に関する方針の表明。 コレが割と重要で、この為に俺はこの指揮官会議の開催を主張したのだ。 哨戒、遊撃、直衛、各部隊の役割は別とはいえ、お互いの行動指針を把握し合っていないと、咄嗟の時の連携が上手く行かなくなる事があるから。 2つ目には、相互の人員の状況の確認。 性格の合わない奴らが組まされてて、騒動が! 何て事が無いようにするのだ。 今ならまだ、人員の移動が楽だからだ。 この2つに関しては特に問題は無かった。 問題は3つ目、道路に関してだった。 正確には避難路。 郡都が陥落した為にルッェル公国の幹線道路も兼ねた北方交易街道が利用不能になった為、新たに公都サックヴィーへの道を考えなければならないという事だ。 ルッェル公国を南北に分断する険しいドレスレン山脈て、その手前、現在居るルッェル公国南部のザックヴィル盆地を囲むパル山脈と、2つの山地を超えなければならないのだ。 女子供に老人連れの馬車で。 馬車が通れる道路、しかも、出来れば水とかも得られやすいと良い。 そんな道を探すなんて、面倒くさいと言うレベルどころの話じゃない。 更には、どこから人を出すのかという所も問題になる。 <黒>の連中が徘徊している状況下で、自衛力の無い奴を偵察に出すのは無理無茶無謀。 とはいえ、どの部隊も人数の少なさはマジ辛い状態。 さてどうすんべ。「哨戒ついでに ―― 」 ゲルロトさん。 村の近くなのでパル山脈に詳しい奴が多いし、自分が出ても良いと言う。「両立は無茶ですよ。というか哨戒線(ピケットライン)が薄くなったせいで肉薄されたら救いが無いです」 ペチコンする。 戦力が少ない現状では、情報こそが唯一と言って良い戦力増加手段なのだ。 それを削るなんて冗談じゃない。「発見するまでは遊撃隊が居るなら、直衛から ―― 」 オイゲンさん。 目線がチラチラとヘレーネ夫人さんを見てて、格好つけたいのは判ります。「馬が少ないのが問題ですよ。そもそも、直衛部隊の人間は……」 ペチコンする。 避難民防衛最後の盾 ―― 最後の切り札と言えば聞こえは良いけど、実際は最後にしか切りたくない札なのだ。 女子供と老人の混成部隊、隊長が文官(ヒョロ)系のオイゲンさんと、ガチに女で子供なヘレーネ夫人さんって事でお察しな訳だ。 となれば残るは1隊、遊撃部隊。「まっ、ウチ(遊撃部隊)で何とかしますよ」「大丈夫なのですか?」 心配そうに言って来るヘレーネ夫人さん。 うん、情報を管制したりする羽目になる俺、兵の少なくなった部隊で指揮して前線に立つ俺。 有難う。 嬉しいね、こういうのって。 特に喪服な美少女の憂いの表情って、破壊力高いよね。 苦労のご褒美? 馬鹿な話は別として、やらねばならぬ事だしね。「まぁ、何とかしますよ」「予備隊から人を出すっけ?」「いや、バイルさん、馬の問題もあるから主隊から裂きますよ」「人が減り過ぎんかね?」「どれだけ居ても足りないというか、判りませんからね」 それに、引っ掻き回すだけなら俺1人ででも大丈夫だしね。 流石にコレは口には出さないけど。 後、バイルさんの予備隊は直衛部隊の予備も兼ねているので、人を引き抜きたくない理由もあるのだ。「それよりも、気を付けて欲しい事があるんですよ」「何ぞじゃ?」「さっきの傭兵崩れ(バカ)どもです」 身なりからしてモラルの無さそうな奴らだったんで、事が更に混乱したら乱暴狼藉の類を起こさないとは限らないのだ。 というか傭兵、それも自由傭兵という時点で人間としての信頼性ゼロである。 腕一本で戦場を渡り歩くなんて言えば聞こえは良いけど、別の言い方をすれば集団行動の出来ない奴らなのだ。 現状、食料事情が悪いって中で私物っぽい肉だの酒だのをかっ喰らってる時点で明白だ。 そんな奴らが、無い無い尽くしの避難生活を我慢できるとは思えない。 悪い事に、連中には武器がある。 武力がある。 そして、避難民ってのは基本、弱者の集団なのだ。 弱者の中に居る、力を持った乱暴者なんてのは碌な未来が予想出来ないってものだ。「連中、そこまでするんか? 人間同士じゃっど」 信じられんと言うバイルさん。 というか他の人たちもだが。 人間と人間の戦が信じられない ―― そんな顔だ。 だが、俺はそう思わない。 <白>と<黒>という明白な対立構造があって陣営内で団結しているとはいえ、人間同士の諍い何て年中行事だ。 小は子供同士から、大は国家間でまで。 だって、所詮は人間(● ● ● ● ●)なのだから。「取り越し苦労に終われば良いけど、女性や子供に妙な被害が出るのは見たくないですからね」 愛でるだけ(イエス・ロリータ ノー・タッチ)なら許すけどね。