良く小説とかで “肉食獣の笑顔” とか、“猛禽の笑み” とか、そんな表現を見た事はあったが、まさかそれを身をもって実感するって事になるとは思わなかった。 誰からって、言うまでも無いだろう。 我らがトールデェ王国の次期国王 ―― 女王であるブリジット王太子の、だ。 キリッとした男前な女性で、しかもタイトラインな軍服っぽいのを着ているのと相まって、実に勇壮で似合ってはいる。 似合っているのだが、間違ってもその矢面には立ちたくない。 なのに何故、私の前に居るのでしょうか。 俺が何をした! だ。 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント1-17淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか とはいえ正直に言って、ある程度だがブリジッド殿下がキレてる理由は推測出来てるんですけどね。 先に勧誘に来た ―― 行ったのに蹴られて、しかも別の勧誘にはホイホイと乗った。 そりゃぁ普通に考えて面白い筈が無い、と。 更に言えば、別の勧誘が三頂五大の一角なのだ。 王家の顔が潰された! と思っても仕方が無いだろう。 ついでに言えば今のエレオノーラ女王の実家は、三頂五大の一角にして副王家の異名を持つフォルゴン公爵家なのだ。 うん、色々な意味で対抗心があるのかもしれない。 フォルゴン公爵家は、元々が王家の分家であり、家が興されて以後も度々、王家との婚姻が行われていて、同じように王家と血の近いリード公爵家を除く、他の6家とは隔絶した立場にあるとは言え、それでもやっぱり面白く無いのかもしれない。 うん。 そう考えると、俺って何でオルディアレス伯の依頼を受けちゃったんだろう。 本気で頭が痛い。 金は大事だけど大切だけど、その対価で面倒事を背負い込むってのは、その面倒事が国のトップ近辺ってのは、どうにも割りに合わないと思える訳で。 クソッタレ。 判子は良く考えて押しましょう、だ。 全く。「これはこれはディージル公」 レニーともども、恭しく頭を下げる。 本来貴族間の礼節は、そこまで上下関係に厳しいもので無いのだが、この相手は別格。 次期国王なのだから。「久しいな。勇名は聞いていたが、顔を合わせるのは一年ぶりか? 壮健で何よりだ」 親しげに話しかけてくる。 視線こそ厳しいが、態度と口調は穏やかで友好的なものだ。 流石は次期国王陛下、鋼の如き自制心をお持ちの様で。 視線のほうは、年齢からそこまで自制出来てたら怖いって事だろう。 気付かないフリをする優しさ。 人間関係に優しさって、大事だよね。 特に、女性相手には。「しかも此度は、その実力を認められての任。実に素晴らしいな」「有難う御座います。今だ未熟の身ではありますが、多くの方々のお陰をもちまして、栄誉を賜る事となりました」 神託への随行は、名誉な事なのだ。 一応。 面倒事でもあるけれども。「謙遜をする必要は無い。卿の実力あってこその推挙もあったのだろう」「有難う御座います公」 深々と頭を下げる。 言葉の内容は全くのほめ言葉なので、こそばゆくなる。 美人に褒められるって、うん、凄いご褒美である。 閨で楽しむよりも、褒めれる方が嬉しいって思えるのは、男ってのが、俺が気取り屋だからかもしれない。 我ながら、安い人間ってなもので。「ふむ、卿の私の仲で、爵位で呼ばれるのもこそばゆいな。良いだろう、我が名、ブリジッドを呼ぶ事を許そう」 名前を呼ぶ事に許可の要る世界。 マンドクセ ―― とは言わない。 貴族社会ってか、王家の人間に対する宮廷内に於ける距離感ってのは難しいものだからだ。 王と目が合っただけで、嬉しいとか、そんな風に思える人も貴族の中には居るって話しだし。 我らがトールデェ王国は国がまだまだ若い事や、強烈な外敵が存在する事もあって、そこまで強い階級化というか、宮廷文化というかは出来ちゃいないが警戒しておくにこした事は無いのだから。 王家という権威に寄り添い、利用しようと云う手合いは少なくないのが現実だし。「有難う御座います、ブリジッド卿」 というか、何でこんなに親しげに来るんで御座いましょう、この王太子殿下ってば。 直で会話したのって、コレを含めても3度目な筈なんだけども。 そんな気分を、俺としては顔に出さなかったのだが、我がバディ殿は見抜きやがった。「(心配するな。悪い状況じゃない)」 耳打ちしてくるレニー。 口元をそっと白い手袋を纏った手で隠している辺り、実に令嬢っぽい。 後、読唇を阻止しているのだろう。 俺と違って搦め手にも強い奴だからな。 直接戦闘なら負けないが、この手の事はからっきしだ。 面倒だと考えて来なかったのが悪いのだろう。「(解説頼む)」 此方は、レニーの耳元で喋る事で、口元を隠す。 日頃のショートカットだと難しいが、今日はウィッグでボリュームアップさせた髪型をしているので、余裕で隠す事が出来た。「(要約すればヴィッグ、君の匂い消しだ。政治的な、ね)」 政治的な匂い消し。 要するにアレか、俺がオルディアレス伯からの依頼を受けたので、政治的にオルディアレス派に分類されそうな俺を取りに来た、という事だろうか。 或いはアピールか。 ビクター・ヒースクリフはオルディアレス派に入った訳ではない、との。 オルディアレス伯への牽制って考える事も出来るな。 共に新興の派閥なので、人材確保では鎬を削っているって話し出し。 んなに取り合う奴でも無いと思うんだがね、俺って奴は。 バーゲンで見つけたら、別に欲しかった訳でもないのに争奪戦になる商品 ―― そんな感じだろう。 きっと。 兎も角、有り難きは同盟相手。 と、そんな俺たちのやり取りを、王太子殿下が笑ってみていた。 というか、割と表情が柔らかくなった。「ふむ、そう言えば私はまだ、卿の連れている淑女の名前を知らなかったな。伺っても宜しいか?」「申し訳ありません。此方はマイヤール子爵家の令嬢、レニー卿です」 レニー。 我が同盟相手殿は紛いなりにもマイヤール子爵家の跡取りである為、卿の敬称が付く訳で。 俺の紹介を受けて、恭しく腰を折るレニー。 常日頃はヅカ系僕っ娘のクセに、隙の無い仕草だ。 女って、化けるねーって思う。 マジに。「初めましてディージル公爵様。マイヤール子爵家長女、レニーで御座います」「ほう! 貴女がレニー卿か。ビクター卿の盟友、ゲルハルド記念大学の誇る奇才の名は、かねてより聞いていた。知己を得られた幸運に感謝しよう」「有難う御座います」 談笑をおっぱじめた2人。 何か楽しそうだ。 共に、女性としての規格から少しばかり離れているので、何か話が合いやすいのかもしれない。 というか、話のネタがスイーツや可愛い服とかじゃなくて、即物的だったり実戦的だったりするのは、年頃の娘達の会話としてどうなんでしょ。 ブリジッドの王太子殿下だって、俺よか年上だけど、まだ10代の “少女” なのだ。 なのに、なにこの色気の無さ。「それが貴方たちの馴れ初めか。しかし、強脅威下生還訓練とは、ゲルハルド記念大学も面白い事をしているのだな」「はい。泥に塗れ、荷を背負い、満足に眠れず、動く。食べるものとて山野に残ったモノを ―― ですが、大変に面白い経験で御座いました」「尊敬をしよう。その試練を乗り越えた貴女を」 羨ましげに目を輝かせる王太子殿下に、嬉しそうに答えるレニー。 うん、話の内容が女の子がするようなモノじゃない。 俺ってば、女の子に幻想を持ちすぎているのかしらん。「有難う御座います。ですが、私だけの力で成し遂げたモノではありません。我が友、ビクターの助力あってこそです」「そうかそうか。ビクター卿、武の才だけではなかったか。此れは実に欲しくなるな。そうだ卿よ、この神託の務めを終えた後に、我がディージル騎士団に加わらぬか?」 他人の色を消して、あわよくば自分の色を付けようか、と。 実に見事だ。 偶々に握ったバーゲン商品をそこまで欲しがる心理は判らんけども。 女性だし、彼岸の彼方の女って事か。 全く。「申し訳御座いません、殿下。お言葉は実に嬉しくありますが、まだ神託の旅にも出てもいないのです。にも関わらず、先の先まで思う事は若輩、未熟な身としては出来かねます」 王太子殿下に膝を着く事が嫌な訳じゃ無いけど、何だろう。 出来物な訳だし、話していて気性も良いし。 なのに何故か、嫌な俺。 アレだ、奇跡で得た2度目の人生、そうそう首輪に繋がれたくない奴か。 うむ、ニート。 働いたら負けだと思っている。 戦闘は、まぁ何だ、趣味の範疇だ。「卿をもって未熟などと言えば、どれ程の人間が未熟では無いのだろうな」 褒めてもらえるのはうれしいが、ぶっちゃけて魂レベルだと30オーバーで40近い人間なのだ。 そら年の近い連中よりは成熟しているっぽく見えるだろうさ。 でも、社会経験はそれ程に積めてないから、ガキだと思うのですよ、俺は。 俺自身は。「私もそう思います。このビクターの欠点は、自己評価が厳しいのが難点かと思います。先に話題にしました強脅威下生還訓練でも随分と助けられましたし」 それまでの令嬢然とした顔に、レニーは何時ものヅカっぽい男らしい笑いを浮かべた。 そして、滔々とレンジャー訓練の経験を話していく。 アレは、あの内容を乗り越えたのは誇っていいけど、俺のネタは勘弁して欲しい。 例えば訓練の最終日前日の夜の事。 積もった疲労と、風雨の酷さから低体温症になりかけていたレニーを介助した話とか、流石に恥ずかしいから。 低体温への対処法として、乾いた服に着替えるとか暖めるとか基礎レベルの話だけど、訓練中は予備の服なんて無かったので、剥いて、乾いた一枚のマントで一緒に包まって、抱きしめて夜を越えたとか、もうね切腹ものの恥ずかしさ。 あの時、俺も睡眠不足でどうかしていたんだろう、きっと。 幾らレニーが意識が朦朧としていたとはいえ、口移しで気付けのアルコールを飲ませて剥くとか、ナイワー。 というか、アリエナーイ。 訓練課程の前半で見せていたレニーの執念 ―― 男に負けない、負けたく無いという気迫を覚えていたから、最終日前日まで頑張ったのに低体温症でリタイアとか、それは可哀想だと思ったわけだ。 が、よーく考えると、本人の了解無し酒を飲ませて裸に剥いたとか、どこの変質者かよ!? ってなものだ。 その意味では恥辱の記憶。 俺にとっての。 レニーはその、何だ、冷静に状況を聞いて、怒る事無く感謝の言葉を述べました。 なもので、逆に凹んでしまったりする訳で。 そんな俺の黒歴史を思いっきり王太子殿下に暴露してけっさる我が同盟者。 なぁお前さん、俺って同盟相手だよな? な?「ほう ―― それはそれは」 何かこー アレだ、王太子殿下の声が怖い。 視線がコッチに来ないけど、何だろう2人の視線は真正面から絡み合っている。 というかアレ、貴女達ってばさっきまで談笑してましたよね? ナニこの雰囲気。 怖いんですけど。「正直、目が醒めた時には衝撃を受けましたが、それも私の為だったと目隠しをしたまま真っ赤な顔で言われては」 いや、女の裸と一緒だったから赤くなった訳じゃ無い。 只、目隠しをしたらその、なんだ、見えない分に良く感覚が鋭くなってしまったのだ。 アレは実に失敗だったと思う。 まっ、それはさておき。 真面目にエロイ展開は無しです。 寝込みを襲う趣味は無いし、そもそも傍には試験審査官が居たし、だ。 俺は、剥く前に、その事を告げ、訓練内容から逸脱する事が、俺もレニーも失格にならない事を確認して行ったのだから。 体温維持の上で、裸で抱き合うってのは遭難時には割りとポピュラーなので問題にはならなかった訳だ。 尚、レニーが体調を崩したのはこの1回きりであり、翌朝、最終日の内容を疲れ果てていながらも歯を食いしばって乗り越えていた。 レニー・マイヤール。 小柄な女性って点を考えれば、及第点以上のモノを与えられてしかるべき、正に女傑だ。「その時に、話したのです。何時か王国東方を旅してみたい、と」 ね、ビクター? って、内心で褒めた矢先に、唐突に話を振らないで下さい。 お願いします。 言葉の魔術は苦手ですし、俺の言葉は剣じゃないんですから。「ほう。ビクター卿は私の誘いだけではなくレニー卿の誘いも蹴っていた訳か」「卒業後、何時かはとの話でしたので、蹴られた訳ではなく、少々、時間が延びただけですわ、公爵様」「帰ってきてから行く、と。レニー卿も気の永い話だな。家族は良いのかね?」「はい。私の弟や妹も中々に努力しておりますので、家の家督を受け継ぐのは、何も私でなくとも良い話ですので」「それは、それは大した覚悟だな」 子爵家の、それも割りと経済的に裕福な家の家督を得られなくても構わない。 そう言えるレニーは、確かに大きな覚悟を持っている。 だがその目的が、俺との王国東方探索ってどうなんでしょうね。 俺の場合だと、<北の大十字>傭兵騎士団への入隊希望とかがあっての願望だったんだけどね。 レニーの趣味的に、未探索領域への冒険行って好みっぽくは見えなかったんだけれども。「ふむ、そうだ1つ良い事を考え付いた。レニー卿、貴女も我がディージル騎士団に参加しないか?」「はぁ?」「え?」「我がディージル騎士団は、錬度向上と将来の国土開拓に向けて王国東方の探索 “も” 行っている。であれば貴女もビクター卿共々派遣する事も出来るだろう」 我がディージル公爵家の金で、将来であれば王家の金で。 男前に言い切りやがったよ、この次期国王陛下。 国是として、王国の東方拡大でも狙っている模様。 国境線を東へ押し込む事で、国内の安定化でも狙っているのか? ある意味で悪手だぞ、それは。 本来はリード高原が<黒>との緩衝地帯であったのが、最近は開発が進みつつあるので、戦乱によって荒らされるのを阻止しようって狙いがあるのかもしれないが。 だが、リード高原から東は肥沃だが広大な平野が広がっている。 そりゃぁ豊かではあるが、<黒>の大軍に囲まれては、数の利益に鏖殺されかねない危険地帯でもあるのだ。 比較的狭隘といって良いリード高原だから、何とか成っていただけの筈なのだ。 言ってしまえば、ポケットに入りきらない金貨を与えられても、宝の持ち腐れになるって事だ。 或いは、我が王国衰亡のフラグか。 まっ、今のところは推測だし、関係の無い話だけれども。「どうだ。音に聞こえた<鬼沈め>とゲルハルド記念大学の奇才だ、給与も下手な部隊よりは出すぞ」 うわーい。 王太子殿下、まじ男前。 言葉を剣に戦いつつも、ヘッドハントは忘れない。 なにこの人材収集狂。って按配だ。 でもレニー、断るんだろうな。 なんでこんな雰囲気になったんだろうか。 敵対したくないんだがな、国家権力に。 というか国家に。「それは ―― それは良い考えかもしれませんね」「え?」 それどういう事ですか? さっきと丸っと違う感じの雰囲気になっておりますが。 意味不明。 マジで意味不明。「そうか! そう言ってくれると嬉しいな。正直、魔術系の人材が薄くて困っていた所だ」「公爵様のお立場であれば、1つお声を掛けさえすれば、方々から馳せ参じたいと思う者も多くいらっしゃるでしょうに」「いや、それが残念な話だが、騎士団に属したいという魔術師は少ないのが現実でね。難儀をしている所だったのだ」 というか、意気投合してきてね? ねぇ何で。 なんでさ。 誰かヘルプ! ヘルプ!! このままだと神託を遂げて帰国したら、そのままディージル騎士団に就職が決まってしまう。 援軍を望んで周りを見渡す。 おい、誰も居ないじゃねぇいか。 何だろう、俺らの周りに人が居ない。 ワロスwwww 隔離状態って、笑えないっての。 救いの女神、マーリンさんを探したら、コッチを見ながら親指を立てていた。 ありゃぁ、助けてくれそうに無いな。 トービーは手をふっていた。 別れの意味の。 絶対、助けてくれる気ねぇな。 エミリオとミリエレナは、それぞれの関係者っぽいのに囲まれている。 アティリオさんとかはエミリオ達の所に居るし、パークスとかはリード家の所か。 というか、傍にアルリーシア殿下がいる。 くそ、リア充め、爆発しろ。 他の連中も、視線を合わせようとすると、ズラシやがる。 ファック。 救いの手は無いのか。 居た。 救いの主、その名は妹。 妹が、ホール付きのメイドさんを連れて笑顔でやってきた。 その顔が今は何よりも頼もしい。「お兄様………」 妹よ! 兄の死地に来てくれたか。 レニーとは微妙に仲が悪かったと思ったけど、にも関わらず来てくれた妹よ。 キッスだってしてしまいそうだ。「おお、これはヴィヴィリ-嬢ではないか」」 妹と面識のあったレニーが、王太子殿下との会話の途中で声を挙げた。 契約がどーとか、そんな単語は聞こえない。 聞かなかった事にしよう。「お久しぶりですレニー様。随分とお話が盛り上がってらっしゃったご様子でしたので、飲み物をお持ちしました」 その声にメイドさんが、持っていた盆を前に出してくる。 軽めのアルコールドリンクっぽいのが載っている。「有難う。所で私と貴女は初めて会ったのだ。紹介をして貰えないだろうか?」 その言葉は、レニーに向けられたものだったが、答えるのは俺にさせてもらう。 コッチを見たレニーにアイコンタクト。 と、頷いてくれた。 有難い。 こんな妙な形とはいえ、王族に身内を紹介するってのは嬉しい事だから。 可愛い妹を紹介できて嬉しい、そんな意味で。 うむ、俺は馬鹿兄貴である事を認める。「公。我が妹、ヴィヴィリー・ヒースクリフを紹介させて頂きます」 救助に来てくれた妹。 だが、その結果は二重遭難だった。 いや違うか。 もっと酷いか。 妹まで俺の就職ネタで盛り上がってやがる。「お兄様が真人間になる為の就職です、私は全力で支えさせて頂きます」「可愛いねヴィヴィリーは。だけど、僕とヴィックの東方行きを止めるのだけは、駄目だ」 ファック。 3人とも顔を真っ赤にして盛り上がってる。 ありていに言って酔っ払っている。「私はどちらも良いぞ。我が騎士団に参加するのであれば、問題はない」「我らが殿下は、全てを持っていく気ですか。実に豪気だ」「当たり前であろう。私はブリジッド。次期国王だ。全てを飲み込み立つ、そうでなければ国王になぞ成れる筈も無いからな」「ならばいっそ、このヴィヴィリーも殿下の騎士団に呼んではいかがか」「おぉ、それは素晴らしいかもしれないな、レニー卿、貴公は実に柔軟な発想をしているな!」「ですけどレニー様は、少しばかり自由過ぎます」「ははははははっ、囲おうとしては逃げられるよヴィヴィリー。君は良い淑女だが、男はもう少し見た方がいい」「お兄様だけで十分ですわ」 アーアー (∩ ゚д゚)アーアーキコエナーイ 妹もレニーも、平素の言葉遣いになっている。 王太子殿下だって、も常とは違う、砕けた口調になっている。 この場にアルコール満載のワゴンが来てて、メイドさん達がひっきりなしに酌をしたりしているのだから、当然だろう。 皆して酔っ払い果てている。 どうにも成りそうにない惨状だ。 3人とも、それぞれにキッチリとした淑女教育は受けている筈なのに、何この状況は。 最初によっぽど強いアルコールでも持ってきたか、妹よ。 ため息が出る。 もうね、逃げていい? 俺もアルコールに。