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No.8338の一覧
[0] 異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント 3-06 投稿[アハト・アハト](2019/04/15 13:26)
[1] 【序章】   ――幼き日々――     (序章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/04/02 09:56)
[2] 0-01 輪廻転生に異世界って含まれると初めて知った今日この頃[アハト・アハト](2011/01/16 23:39)
[3] 0-02 見栄と恐怖のシーソー[アハト・アハト](2010/11/23 11:24)
[4] 0-03 自業自得さー[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[5] 0-04 家庭って素晴らしい[アハト・アハト](2010/11/23 11:25)
[6] 0-05 社会見学?[アハト・アハト](2010/11/23 11:26)
[7] 0-06 現実はチョイと厳しい[アハト・アハト](2010/11/23 11:27)
[8] 0-07 予備動作、その名はマッタリ[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[9] 0-08 只今、準備中[アハト・アハト](2010/11/23 11:28)
[10] 0-09 往きの道[アハト・アハト](2010/11/23 11:29)
[11] 0-10 わるきゅーれS’[アハト・アハト](2010/11/23 11:30)
[12] 0-11 ハヂメテの~[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[13] 0-12 バトルがフィーバー[アハト・アハト](2010/11/23 11:31)
[14] 0-13 ビクターですが、ゴブリンは強敵です。(σ゚∀゚)σエークセレント[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[15] 0-14 男には意地ってものがあるんです[アハト・アハト](2010/11/23 11:32)
[16] 0-15 流石にコレは予想外[アハト・アハト](2010/11/23 11:33)
[17] 0-16 調子に乗ってます[アハト・アハト](2010/11/23 11:34)
[18] 0-17 オニゴロシ[アハトアハト](2010/11/23 11:34)
[19] 0-18 先ずはひと段落[アハトアハト](2010/11/23 11:35)
[20] 【第一章】   ――旅立ちへの日々――     (第1章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/06/23 23:18)
[21] 1-01 行き成りですが、買収されますた[アハト・アハト](2011/02/01 06:59)
[22] 1-02 契約書には、冷静に、そして内容を良く読んでからサインをしましょう[アハト・アハト](2011/04/02 19:03)
[23] 1-03 鍛冶屋は男のロマンです。きっと……[アハト・アハト](2011/07/07 22:30)
[24] 1-04 なんでさ?[アハト・アハト](2010/09/21 13:04)
[25] 1-05 両手に華(気分[アハト・アハト](2010/10/04 10:27)
[26] 1-06 お兄ちゃんは(自主規制)症[アハト・アハト](2011/01/17 00:06)
[27] 1-07 水も滴れ男ども(俺を除いて[アハト・アハト](2011/04/03 08:42)
[28] 1-08 漸く登場、かも?[アハト・アハト](2011/01/16 23:47)
[29] 1-09 力なき速度、それは無力[アハト・アハト](2011/03/20 01:48)
[30] 1-10 アーメン ハレルヤ ピーナッツバター[アハト・アハト](2011/07/07 22:29)
[31] 1-11 使徒は脳筋[アハト・アハト](2011/04/02 09:44)
[32] 1-12 攪拌。撹乱では無いのだよ撹乱では![アハト・アハト](2011/05/13 00:47)
[33] 1-13 晴れ、時々魔法[アハト・アハト](2011/05/27 21:26)
[34] 1-14 酒は飲んでも飲まれるな!(手遅れ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[35] 1-15 気分はぜろじーらぶ[アハト・アハト](2011/06/17 22:38)
[36] 1-16 壮行会は大荒れです(主に俺にとって[アハト・アハト](2011/06/23 23:24)
[37] 1-17 淑女戦争 私はいかにして悩むのを止め、アルコールに逃げるに到ったか[アハト・アハト](2011/07/22 19:31)
[38] 1-18 旅立ち[アハト・アハト](2011/07/23 00:02)
[39] 【第二章】   ――七転八倒的わらしべ長者――     (第二章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2016/02/19 00:07)
[40] 2-01 平穏な旅がしたいのですが、避けようとすれば相手から来る。それがトラブル Orz[アハト・アハト](2011/07/28 00:29)
[41] 2-02 狼は ゴブリンよりも 強かった(節語無し[アハト・アハト](2011/08/01 00:57)
[43] 2-03 牧歌的なのはここまでだ[アハト・アハト](2011/11/06 17:41)
[45] 2-04 <聖女>様、マジパネェっす![アハト・アハト](2011/11/04 10:55)
[47] 2-05 会議は踊らず、ただ進む(ウダウダやっている暇は無い![アハト・アハト](2011/11/06 17:46)
[48] 2-06 教育的指導は鉄拳で[アハト・アハト](2011/11/09 11:11)
[50] 2-07 スキスキ騎兵![アハト・アハト](2013/04/21 08:46)
[51] 2-08 激戦! 騎兵対戦獣騎兵[アハト・アハト](2013/05/03 18:38)
[52] 2-09 コレナンテエロゲ?[アハト・アハト](2013/06/09 12:35)
[53] 2-10 エクソダスするかい?[アハト・アハト](2014/12/01 10:34)
[54] 2-11 一心不乱にエクソダス[アハト・アハト](2014/12/16 23:31)
[55] 2-12 スマッシュ[アハト・アハト](2014/12/25 23:48)
[56] 2-13 戦闘だけが戦の全てじゃありません[アハト・アハト](2015/12/05 19:25)
[57] 2-14 ズバっと解決!(※物理的に[アハト・アハト](2015/12/12 10:31)
[58] 2-15 チョッとしたイベント発生[アハト・アハト](2015/12/30 15:32)
[59] 2-16 公都への道 (※到着するとは言って無い[アハト・アハト](2016/02/18 23:49)
[60] 2-17 責任とか色々?[アハト・アハト](2016/04/04 23:53)
[61] 2-18 虐めってムネキュン?[アハト・アハト](2016/06/15 07:56)
[62] 2-19 戦争は、事前準備が超重要![アハト・アハト](2016/06/27 23:58)
[63] 2-20 公都ルッェルン防衛戦 - 序[アハト・アハト](2016/06/27 23:30)
[64] 2-21 公都ルッェルン防衛戦 - 破/1[アハト・アハト](2016/08/16 22:32)
[65] 2-22 公都ルッェルン防衛戦 - 破/2[アハト・アハト](2016/11/20 22:08)
[66] 2-23 公都ルッェルン防衛戦 - 破/3[アハト・アハト](2016/12/23 13:59)
[67] 2-24 公都ルッェルン防衛戦 - 急/1[アハト・アハト](2017/02/04 09:15)
[68] 2-25 公都ルッェルン防衛戦 - 急/2[アハト・アハト](2017/08/20 20:54)
[69] 2-26 終戦(戦闘が終わったけど戦が終わったとは言って無い[アハト・アハト](2018/04/25 13:44)
[70] 【第三章】   ――殴り愛は神の愛への第一歩――     (第三章 登場人物紹介)[アハト・アハト](2018/10/27 21:54)
[71] 3-01 蒼い砂漠[アハト・アハト](2018/05/06 10:36)
[72] 3-02 旅は道ずれ世は情け。それが可愛い娘さんだともう最高![アハト・アハト](2018/10/17 10:15)
[73] 3-03 美少女と美人が増えました! やったね!![アハト・アハト](2018/10/27 21:57)
[74] 3-04 平穏が続くと言ったな、ありゃぁ嘘だ。[アハト・アハト](2018/11/18 21:05)
[75] 3-05 血塗れ(ガチ[アハト・アハト](2019/04/15 13:29)
[77] ――New―― 3-06 修羅場(※ Level.1[アハト・アハト](2019/04/15 13:24)
[78] 【外伝】                 (登場人物紹介)[アハト・アハト](2011/11/30 23:39)
[81] 1-1  ジゼット・ブラロー ―― 大学生活時、同世代から見た観察記[アハト・アハト](2011/11/30 23:38)
[82] 1-2  ノウラ ―― メイド長ノウラの一日 ~ビクターかんさつにっき~[アハト・アハト](2013/02/22 23:09)
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[8338] 1-13 晴れ、時々魔法
Name: アハト・アハト◆404ca424 ID:053f6428 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/27 21:26
 
 住宅密集地から避難所への距離は約100m。
 全力疾走すれば、それこそ5秒フラットも狙えそうなチートな俺だが、到達した時が体力のピークを超えていては意味が無い訳で。
 だからある程度は、加減して走る。
 更に言えば、一緒に進むエミリオとミリエレナの様子も勘案する。
 俺はマーリンさんのタリスマンによって体力は回復しながらの突進だが、2人は素の体力だけなのだ。
 にも関わらず、最初は全力疾走をやろうとしやがって、慌て早足程度に抑制させたのだ。

 残り70m。

 無論、最初は不満を口にしたが、『人を護りたいって気持ちは偉いモンだが、助ける為に自分の状態が万全じゃなければ、助けられるものも助けられない』なんて言ったら落ち着いた。
 至極合理的内容なので、反論しようが無いって話でもあるが。

 残り40m。

 兎も角。
 そんな早足で駆けながら、気分を蹂躙戦から強襲攻撃へ切り替える。
 鎧袖一触出来るゴブリンから、今度はオークとオーガーを相手にするのだ。
 オークはやや大き目な人間サイズなので、恐ろしいと言っても程度問題ってなレベルの豚助な脅威だが、オーガーは違う。
 一回り以上も巨大で、しかも膂力もハンパではない化け物なのだ。
 ガキの時分に俺が1人でブっ倒せたが、だからと言って余裕を見せれる相手じゃない。
 軽い一撃じゃ沈められない相手だ。
 気分を切り替えていないとヤヴァスってなものだ。

 残り10m。

 死体が散乱している。
 ゴブリンと人の。
 村人は必死に抵抗していた様だ。
 中には子供を抱きしめていたと思しきものまである。
 もう少し速ければ、そう思うと腸が煮えくり返る。
 だから意図的に見ないようにして走る。
 怒りに支配されては効率的にゴブリンを殺せないし、残る村人を救えないからだ。

 と、ゴブリンが叫んだ。
 コッチの事に気づいたか。
 だがもう、遅い。

 残り0m ―― 接敵。

 警戒の声を上げる音源たる喉元を、鎧と顎の隙間を、撫でる様にショートソードを振るう。
 ガキの昔は、走りながら狙いをつけて斬るなんて出来なかったが、今では簡単だ。
 簡単だと言える程に、ショートソードが俺の手の延長になる様にと日々、振るってきたのだ。
 外れる筈など無かった。


「ギィッ!?」


 狙い過たず。
 鮮血を撒き散らし、汚い悲鳴と共に崩れるゴブリン。
 だが役目は果たしていた。
 その断末魔に、ゴブ助と他の連中の約半分がコッチを見た。
 具体的には100匹を超える数が、だ。

 オーケー。
 これだけの悪意に晒されるなんて、滅多に無い経験ってなものだ。
 怖くてゾクゾク来る。
 その悪意に染まった醜悪な面を、恐怖で塗り潰して断末魔を叫ばせてやる。


「Siiiiiii!」


 かみ締めた歯茎の隙間から意気を吐く。
 更に振るうショートソード。
 付いてきた2人も加わって、傍に居たゴブリンを一蹴する。


「狙いは判っているな?」


「はい」


 右横でしっかりと頷いたエミリオ。
 神殿で借りたインファントリーシールドに身を隠しながら、自前のロングソードを構えている。
 隙の少ない姿は、今までの研鑽を感じさせてくる。
 悪くない。

 対してミリエレナは言葉を紡ぐ。
 此方が構えているのは、グレートソードだ。
 <剣嵐>のパークスが持っている神造剣クロイブや、母親様のドラゴンベイン程に極悪なサイズでは無いが、それでも並みのブロードソードより一回りは大きな剣だった。
 ソレを、両手で持っている。
 それが堂に入っている辺り、おっそろしい<聖女>も居たものだが、それよりも疑問が1つ。
 そんな状態でどうやって俺に治癒魔法とか掛けたのか、と。
 いやまて。
 だからこそ<聖女>か。
 納得した。

 したくないけど、しておく。


「オーク、集団の頭を叩く」


 鋭い眼差しでオークを睨んでいるのを確認。
 そらま、今回の首謀者だからミリエレナが睨みたい気持ちも良く判るってなもので。


「宜しい。ならば突撃だ」


 ショートソードを振りぬく。
 突撃。

 万言を費やすよりも、行動で示す時だ。
 <黒>への怒りを。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

異世界ですが血塗れて冒険デス (σ゚∀゚)σエークセレント
1-13
晴れ、時々魔法

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ザックリザックリと、当るを幸いになぎ払って突き進む俺達。
 エミリオは当然としても、ミリエレナも又、それなり以上に使えていた。

 ブンブンとグレートソードを振り回すのではなくコンパクトに、だが十分に慣性を生かして攻撃している。
 後、切るというよりも叩き殺すって感じだ。
 ミリエレナにやられたゴブリンは、鎧ごとにミンチになっている。
 より正確には粗刻み。
 何だろう、いっそメイスでも使えばと思うような
 趣味なんだろうね、きっと。

 そんな風に、2人を観察しながら戦う。
 否、観察ではなく管理しながら、だ。

 見ている限り、2人とも戦闘スタイルは驚く程に似ている。
 そう、全力攻撃ガンパレード型なのだ。
 攻撃優先なのは良いとしても、適時の治癒魔法よりも攻撃を優先するって問題児な訳だ。
 となれば俺がフォーメーションを考え、治癒魔法の使うタイミングを指示しなければならないって状況な訳だ。
 真っ直ぐに進む、その背中を護ってもらうだけならまだしも、横に並んで前に進むとなると、統制を取らずにいては力が上手く発揮出来ないのだ。
 特に、数的不利な戦況では、バラバラに戦っては各個撃破されるのがオチになるから。

 だから見る。
 エミリオをミリエレナを、敵を己を。
 それらを把握し、指示を出し、振るわれる力を適切にコントロールして敵をぶちのめすのだ。
 ゲルハルド記念大学で部隊指揮官コースも選択したので、野戦指揮官としての基礎的な事は学んではいるが、まさか卒業もしない内に実戦で指揮官役をするなんて思いもしなかった訳だ。

 クソッタレ。
 他人の命を預かる重さ、パネェわ、マジで。




「エミリオ! 深追いするなっ!! 目的を忘れるなっ!!!」


 ぶっ倒れた相手に追加攻撃を行おうとしたのを止める。


「ミリエレナ! 時間を作る、自分に治癒魔法を!!」


 怪我の度合いを確認して治癒魔法を指示し、その隙をカヴァーする様に動く。

 都合3匹のゴブリンが迫ってくる。
 その切っ先を、コッチのショートソードの刃が痛まない様に相手の錆びだらけの刀身に此方の刀身を沿わせて流し、隙を狙って打ち込みを食らわす。
 今使っているのも強化魔法が付与されたショートソードだが、刃先を痛めるリスクを背負わずに済むのであれば、それに越した事は無いってモノだ。

 都合5合の応酬で、3匹を尽く屠る。
 が、追加が来る。
 御代わりだ。
 今度のは11匹。

 オークに脅されてか、怯えた表情で遮二無二の勢いで突っ込んでくるが、それで打ち止めだ。
 その向こうにはオークが居る。
 ひぃ、ふぅ、みぃ、と数えて6匹のオークが。
 偉そうに金色の陣羽織チックなモノを裸の上に羽織ってやがる。
 見事な変態臭だ。
 いろんな意味で生かしてはおけない。
 こんなのが王都の、妹やノウラの傍に存在しているってのが赦しがたい。
 殺意が3割り増しになった。
 ショートソードを握る手に、力が篭る。


「Su Arekasi ってなぁ!!」


 吼える。
 だが殺意は滾らせるのではなく、研ぎ澄ませ両腕に乗せる。
 振りぬくショートソード。
 集団で飛び込んできたゴブリンの3匹が、派手に弾ける。

 鎧袖一触、そんな俺の攻撃だけではなく、エミリオもやる。
 振るったブロードソードが、ゴブリンを真っ二つにしている。
 貧弱なゴブリン相手にすらも全力攻撃を常に行っているのだ。
 エミリオの膂力を推測するに、フルスイングしなくても潰せるだろうから、実に効率の悪い事だ。
 或いは勿体無い。
 そこ等辺は今後、指導しておく必要があるだろう。


 瞬く間に半分近くが消し飛んだゴブリン。
 第2列へは、ミリエレナが真っ先に突っ込んだ。
 水平にフルスイングされたグレートソードがゴブリンをミンチに変える。

 ふた呼吸の間にゴブリンが半分も喰われた事に慌てるオークども。
 その表情が、心地よい。

 豚のような悲鳴を上げるクソオーク、最後の心の支えであるオーガーは、まだ避難所の入り口の方から来る途中だ。

 腐れ豚助のオーク野郎は、安全な後方に陣取っていた。
 高みの見物としゃれ込んでいた。
 その事が仇となっている。

 オーガーが来る前に細切れにしてやろう。


「ミリエレナ!」


「はいっ!」


 打てば響くとばかりに、ミリエレナはグレートソードを全力で振り回した。
 大旋回。
 更に2匹の胴体が泣き別れとなった。
 その迫力に、腰の引けたゴブリンを一挙に畳む。

 障害の消滅、であれば後はオークを挽き肉にしてやるだけだ。
 と思った矢先に、何かを感じた。
 それこそピキーンッ! って感じだ。
 その直感に素直に従って、体を動かす。
 ニュータイプって訳じゃ無いが、この世界の第六感って奴はあてになるのだ。

 硬音

 さっきまで俺の居た場所へ、炎の礫が打ち込まれてきた。
 攻撃魔法だ。
 ストレートに、<黒>の連中が使うから黒魔法なんて俗称されている、四元素魔法って奴だろう。
 <黒>の領域でのみ採掘されていると云う、各種元素の力を蓄えた元素石エレメント力ある言葉トリガーで開放するという、システムになっている。
 手元に元素石があって、魔法を操る素養さえあれば誰でも使えるという、シンプルイズベストな魔法との事だ。
 威力は元素石の質および量に比例するから、実に単純で戦闘向きでもある。

 問題は、ソレを行使しているのが敵って事だけだ。
 クソッタレ。

 脳筋がデフォなオークにゃ滅多に居ない、魔法能力持ちの個体マジックユーザーが居たか。
 豚のクセに生意気な。

 視認。
 オークの中の1匹が前に出ている。
 ご大層に羽根飾りが付いた、でも薄汚さ漂うローブを着たヤツが、手をジャラジャラと動かしている。
 まだまだ元素石の備蓄は十分っぽい。
 空へと投げる動作、そして叫んだ。


「 Пламени стрельба Камень Три 」


 細切れな濁声に答えて、空に3つの火炎球が生まれる。
 それらが集束し、一気に降り注いでくる。
 しかも、コッチの動きを阻害するように、集中せずにバラけて、だ。
 メンドクセェ。
 どうやら相手は素人じゃ無さそうだ。

 回避。
 跳ねる様に転がって逃げた足元に、焦げた穴が穿たれる。
 狙われているのは俺か。
 転んで打った肩が痛いが、それに反応するよりも先に立ち上がらないとヤヴァイ。
 弾痕から察するに、この魔法の威力、痛い程度じゃ済みそうに無い。
 大学で魔法抵抗レジストの技術は学んでいたし、俺考案で作った消費型の対魔法護符ヨリシロも持ってはいるが、とは言え、だ。

 致死即死の類は無いだろうが、だから大丈夫って訳じゃないのだ。
 人間だから。
 主にメンタル的な意味で。


「下がれ!」


 立ち上がりつつエミリオとミリエレナに警告を発するが、それとほぼ同じタイミングで、又、オークが空に撒く仕草をした。
 連続射撃か、パネェなオイ。


「 Пламени стрельба Дождь Два 」


 今度は2個生まれた火炎球が集束せずに、そのまま破裂する。
 面制圧を仕掛けてきやがった。
 ヤヴェか、コレは。
 少し、魔法を舐めてたわ。

 見上げれば、雨霰と降り注いでくる。
 綺麗だ。
 ほんの、秒にも満たない時間だが、確かに俺は、立ち上がるのを忘れて見上げてしまった。
 俺の命を取りに来ているってのに。

 馬鹿だよ、本気で。

 そんな俺の視界を閉ざす影。


「ビクターさん!!」


 エミリオだ。
 盾を抱えて突っ込んで来やがった。
 エミリオの盾、インファントリーシールドは鉄の枠で形を整えた木製の盾だ。
 表面には牛の革を張っているが、そんなに魔法に対しては強く無い。
 なのに突っ込んできた。
 俺の為に。
 仲間を見捨てない ―― そんな素直な性根は嬉しいが、同時に嬉しくない。
 俺はコイツを護るのも仕事だからだ。

 馬鹿野郎! そう俺が怒鳴る前に、エミリオは力ある言葉スペルを発した。


「偉大なるレオスラオの名に於いて ―― 発動せよ堅牢なる力! 揺るがぬ盾


 盾が光ってその周辺、実に盾面積の倍ぐらいにまで、ぼんやりとした力場とでも言うべきモノが展開したのが判った。
 盾も防御力を付与する魔法だ。
 物理的も魔法的もあらゆる攻撃に抗甚しうると言われる力場が、言われる通りの能力を発揮し、炎の雨粒の尽くを弾いた。
 マーベラス。

 魔法、マジ凄い。
 笑うしかないってか、笑えて来る位に凄い。
 その気持ちを素直に口にする。


「凄いなエミリオ!」


「はいっ!」


 エミリオは、満面の笑みを浮かべている。
 きっと俺もそうだろう。

 何故か楽しくて堪らない。
 と、見ればエミリオの後ろにはミリエレナが当然の顔をして、立っていた。
 その顔色に怯えは無く、戦意だけがあった。
 コレは確かにチームだ。
 今日出来たばかりのだが、その意志に乱れは無く、目的に揺らぎはない。

 攻撃。

 大きな盾に隠れた3人。
 だが、ここからするのは防御じゃない。
 楽しさが益々に大きくなる。


「行きましょう!!」


 ミリエレナの宣言。
 それに否と応えるなんて、あり得ない。


「応さ!」


 心機一転で駆け出す。
 もうオーガーどもが、かなり近づいてきている。
 手早く片付ける必要がある。

 一歩、二歩、三歩。
 体がトップスピードに乗る前に、ローブ・オークが空に撒く仕草を見せた。
 阿呆が。
 距離を詰めてんのに、詠唱なんて暇、与えるかよ。


「Kiei!」


 右手に持ってたショートソードをブン投げる。
 投擲の様に、槍の様に。
 穿つ様に。


「 Пламени ――」


 切っ先が、狙い誤らず喉元を貫いた。


「―― ギィッ!?」


 汚い絶叫。
 だがそれは、暴発した魔法によってかき消された。
 元素石が炎に変換される所までトリガーが引かれていたのだ。
 であれば、暴発するのも当然だ。

 降り注いだ炎によって、松明となったローブ・オーク。
 俺のショートソードを1本、道連れにした事を最大の戦果として逝きやがれ、だ。
 魔法の掛かった逸品は、糞豚の副葬品としては、贅沢極まりないってなものだ。

 残るオークは5匹。

 1匹目には、勢いをそのままに、右肩からのブチかまし。
 最後の踏み込みで、思いっきり脚のばねをたわませてしゃがみ込み、下から上への突き上げる一撃で。
 派手に揺れるオーク。
 だが倒れない。
 厚めの皮下脂肪越しだが、ダメージは通っている。
 ゴブリンならコレで御昇天な一撃だが、流石のオークはまだ逝かない。
 だから追加攻撃。

 密着したままにショートソードを太鼓腹に差込み、水平に切断。


「ゴォッ」


 ハラワタをブチマケたオーク。
 血と糞と腸が俺にも帰ってくるが、気を向ける暇は無い。
 残る4匹の内、2匹もコッチで着たからだ。
 残りはそれぞれ、エミリオとミリエレナが対応している。
 流石に挟まれている状況で、2人を見る事も、ましてやサポートする事も出来ない。
 だから、さっさとブチ殺してやらんにゃならん。

 そんな、攻撃的な事を考えていても、先ずする事は回避だ。
 何たって、今俺にブロードソードの切っ先が迫って来ているからだ。

 振り下ろされてくる刀身は錆びだらけだが、その柄には装飾っぽいものがあるのが見える。
 ンな汚い切っ先を受けてやるものか、だ。

 だが、回避をするにしてもバックステップはしない。
 もう1匹が、その方向で棍棒を振り上げているからだ。
 フルスイングのホームラン狙い。
 ファック。
 ボールか、俺は。

 だから下がらず前に出る。
 斬りかかるには距離が近過ぎる。
 だからこその踏み込み。
 相手の剣も触れない位置へと距離を詰め、膝蹴りを打ち込む。
 打ち込もうとした。


「くっ!」


 打ち込んだ膝が、カウンターの膝に当たって弾かれる。
 相手も無能じゃない。
 遮二無二に下がりやがった。
 やる。

 お互いにバランスは崩れたが、まだ相手にはジョーカーがある。
 もう1匹のオークだ。
 視野の隅で見れば、今度は棍棒を袈裟懸けに振りぬいて来ている。
 並みの子供みたいなサイズの棍棒が直撃しちゃぁ、洒落にならん。
 粗い表面の仕上げから、撫でただけで肌が下ろされる。

 後先を考えずに回避。
 ジャンプ。
 世界高飛び選手権で悪くない成績を収められそうなレベルのジャンプを、脚の筋力だけで敢行。
 うん、毎度思うが俺の身体能力はチートだ。

 着地。
 息を吐きつつ、脚のばねを思いっきり沈めて衝撃の吸収。
 そして立ち上がりつつ、更に跳ねる。
 挟撃されぬように距離を取るのだ。
 無論、ブロードソード持ちが距離を詰めようとするが、コッチが優速だ。
 イチ、ニの2ステップで挟撃状態から脱するだけの距離を確保した。


「Kieeeeeeeeeee ――」


 3歩目の左の踏み込みで、重心を爪先から踵に移し、そのままターン。
 体重の乗った慣性がそのまま脚にいく、普通なら負担の大きい無茶行動だが、マーリンさんの護符は、そんな無茶をも吸収してくれる。
 左脚の撓みを推進力に変え、右脚の踏み込みで下から上へのベクトルを加える。


「―― Kietu!!」


 左手は鞭の様にしならせての斬撃。
 下からの、逆袈裟だ。

 オークにとって想定外だったらしく、切っ先は対抗も抵抗もされる事なくその身を切り裂いた。
 突っ伏すオーク。
 広がる血溜りと、ピンク色だけどグロい何か。

 血臭がキツイが、気にしている暇は無い。
 そもそも原因は俺が、チトばかり血を撒き散らす攻撃を繰り返した結果だから文句も言えない。
 もっとスマートにブチ殺したいが、いざ戦場となれば、どうしても効率最優先に成るのだから仕方が無いってものである。
 残念。


「つー訳で、偶には綺麗におっ死ね豚助!!」


 嘲りを込めた声に、棍棒のオークが反応した。
 怒声と共に、棍棒を振りかぶって突進してくる。
 悪意は言葉の壁を越えるってなものだ。

 簡単に頭に血を昇らせている辺り、まぁ馬鹿の類ではあるが。
 豚で馬鹿。
 救いが無いってなものだ。


「Kieeeeetu!!」


 蜻蛉に構えたショートソードを両手で握って、振り下ろす。
 空気すらも斬る、それがパチ自顕流。
 その斬撃を受けるなど不可能であり、受けようとした棍棒は真っ二つになって、体も真っ二つ。
 弾け散れる血と糞、肉袋。

 ん。
 綺麗に片付けたかったが、ついついやってもうた。
 まぁ、仕方が無いか。
 馬鹿みたいに真っ向から突っ込んで来られちゃ、ついつい叩き潰したくなるってもので。

 兎も角。
 哀れな残骸となった敵なんかよりも味方だ。
 左右を確認。
 軽い調子で口笛を吹きたくなった。
 エミリオもミリエレナも、見事にタイマンでオークを叩きのめしていたのだから。


「大丈夫か」


「問題ありません!!」


 元気よく応えるエミリオに、ミリエレナは笑って頷いた。
 顔に掛かっている返り血さえなければ、可憐と言っても良いが、如何せん今のままではスプラッタだ。
 装具と体調コンディションの確認。
 2人とも良好だ。
 問題は俺がショートソードを1本失っているが、まぁ何とかなる。
 というかする。
 たった4匹のオーガーなのだから。


「なら残るはオーガーか」


 迫り来るオーガーを確認。
 武器を掲げ、戦意満々な風だ。
 だが俺らだって、戦意だけなら負けちゃいない。
 技量だって、そうそう劣っちゃいない。


「ぶちのめすぞって、ゑ?」


 宣言をした。
 コッチからも攻撃を、迎撃ではなく襲撃をしてやろうと思っていた矢先に、4匹のオーガーは横っから襲われたのだ。
 第1戦闘班だ。
 どうやらゴブ助の殲滅に成功して、追いついてきたらしい。


「あれま」


 数の暴力で見事に凹っている。


 そうだ。
 俺は、俺たちだけで戦っているんじゃないんだから。
 変に気負っていたのを自覚する。
 全く、恥ずかしい話だ。

 俺はまだ、戦士としては兵士としてはガキって事だろうな。
 きっと。 
 
 
 
 
 


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