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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の十 俺と迷子と三途の河と。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/04/19 01:06
俺と鬼と賽の河原と。



 ここは河原。



「一つ積んでは父のため」




 そこで、人は石を積む。




「二つ積んでは母のため」




 それが供養と言われつつ。




「三つ四つ五つ六つ積んで、父やら母のため」







 それが、賽の河原。




「省略しない!!」









其の十 俺と迷子と三途の河と。






 いつも通りの賽の河原。

 そしてそこで相変わらず石を積む俺。

 そこに、一つの人影が。


「お隣、いいですか?」

「おお」


 そこに立っていたのは暁御。

 彼女は、俺が肯くと、上品に俺の隣に座る。

 ちなみに、座布団付きで。


「なんか用か?」

「え、い、いえあの。用がなきゃ、だめですか?」


 そう、暁御が上目づかいで聞いてくる。


「いんや、そんなことはねーさ」

「そうですか……」


 言って、暁御はほっと溜息を吐いた。

 少々、暁御は自分に自信が無さすぎじゃないだろうか。

 だが、口には出さない。

 控えめである点も一種、美徳。

 行き過ぎはいかんと思うが。

 ただ、それからしばらく俺達は大人しく石を積んでいた。

 そして、不意に暁御が口を開く。


「そう言えば、じゃら男さんは――、どうですか?」


 ああ、じゃら男か。

 そう言えば今日は休みだったか。


「じゃら男はあのあとしばらく休んだら治ったらしいな。後は、そうだな、暁御によろしく言っといてくれ、だそうだ」

「そうですか。よかった」


 おお良かったなじゃら男。

 心配されているぞ?

 と、そう言えば。


「お前さん。好きな人がいるそうだが?」

「え? あ、あ、あの、ははははい」


 おお、顔が真っ赤だ。

 面白い。


「どんな奴だ? いい男か?」

「へ? あ、あの、はいっ」

「そしてここで名推理。お前さんが好きなのはこの俺だっ」

「っは、はい!? いや、えーと、あのその」

「っぷ、冗談だ。そんな慌てなさんな」


 ふむ、思えば、暁御も前さんとは違った方向でからかいがいのある。

 そんな彼女は俺の前で湯気でもあげそうな真っ赤さをしている。


「わ、冗談ですか……」

「流石に、それはないわな。それにしてもあれだ、俺としては、暁御に男友達が俺以外にいるとは思わなかった。お兄さん驚いちゃったよ」

「えと、それは――、あの。薬師さんしか男の人の知り合いは居ないですけど」

「うん? じゃあ俺しかお前さんの好きになる人――、そうか、別に問題ないか。まずは勇気を出して声を掛けることから始めるべきだな」


 思えば、一目惚れに評判、直接的な関係は無くても恋することは不可能ではない

 むしろ暁御にはこっちの方がしっくりくるか。

 好きな人をこう、少し遠巻きから見つめるような。

 すると、暁御は諦めたように肯いた。


「え、あの、はい。それでいいです……」


 なんか引っ掛かるがまあいいか。

 適当に納得する俺。

 そこに、暁御は聞いてくる。


「ところで、明後日、暇ですか?」

「あー……、明後日は、五時で上がりだったな」

「じゃ、じゃあ、一緒に買い物に行きません?」

「俺はかまやしないが、いいのか?」


 普通、こういうのは女同士じゃないのか?

 だが、暁御は首を縦に振った。


「はい。その後、食事にも付き合ってもらえるといいんですけど」

「りょーかい。荷物持ちは任せてくれ、おじょーさま」

「お、お嬢様……?」


 おお、また顔が茹で蛸が如く。

 面白い。

 と、反応を見て楽しみ、やっと普通に戻ったところで――、前方から前さんがやって来た。


「あれ、暁御?」


 俺の隣に座る暁御の存在に前さんが気付く。

 ちなみに、ちょいと前まで暁御ちゃんと呼んでいたのだが、今はそうでもない。


「あ、おはようございます」


 秋御が、丁寧に会釈した。


「うん、おはよう」


 前さんもにこやかにあいさつを返す。


「さって、挨拶もいいが、とっとと崩さんと穢れるんじゃないか?」


 水を差すようで悪いが、五分以上石積みを続けると供養の念が澱む。

 五分の理由はここにあるわけで。


「うん、じゃあ、崩すね」


 言いながら、金棒が俺の積んだ塔へと振り下ろされる。

 暁御のは、まだ二分くらいか。


「ところで、暁御と並んで、何話してたの?」

「あー……。じゃら男のこととか? 明後日一緒に買い物に行くとか」

「はい」

「ふーん?」


 これ以上は言わない方が吉だろう。

 すると、ジト目で前さんは俺を見て――、突然こんなことを言ってきた。


「じゃあ、次の休み、あたしと飲みに行こうか」

「お、おう?」


 まあ断る理由もないんだが、前さんから誘ってくるのは、珍しいな。

 と、ここで予想外だったのが、暁御だ。

 彼女はあろうことか、


「わ、私も行きます!」

「お、おおう? でも、暁御はライセンス持ってんのか?」


 ぶっちゃけると、地獄で酒飲むにあたってライセンスがいる。

 肉体に作用するのではなく、魂そのものを酔わせるので、人によっては度を越して酔ってしまう事があるのだ。

 基本的に、現世で酒を飲んだことがあるのなら、その固定観念から、それに準じた酔い方をするのだが。

 ともあれ、酒を飲むには、公的機関に申請しなければならないのである。

 で、暁御は持っていないらしい。


「あう……」


 何で付いてきたいのかしらないが。

 あれか、背伸びしたいお年頃?


「そういうこと。暁御には大人の楽しみはちょっと早いかな?」


 そう言って得意気に笑う前さん。

 だが、俺からしたら前さんだって、


「十分ロ、げほんげほん。どうやら空気中の水分の問題で口が滑ったようだ」

「なにそれ」


 よし、肝心な部分は伝わらなかったようだ。


「まあいいや、次の休みって、日曜日だっけ?」

「ああ」

「じゃあ、そう言う事で。忘れないでよ?」

「りょーかい」


 と、肯いた次の瞬間、いつの間にか俺の前に回っていた暁御が、俺の肩を掴んでいた。


「私、次の日曜日までにライセンス取ります!!」

「お、おお」


 大丈夫だろうかこの子は。

 ライセンス、とはいっても試験官というか、見守る人の前で酒を一杯呷るだけなのだが、本当に大丈夫か?

 そんな時だった。

 闖入者が現れたのは。


「楽しそうだね」

「鬼兵衛じゃないか」

「覚えててくれたのかい?」

「酒飲む約束もしたしな」


 その驚きの青さとでかさ。

 間違えようがねぇ。


「おお、そだ。次の日曜前さんと飲みに行くんだが、お前は?」

「ちょ、薬師」


 前さんがちょっと困った顔をしている。

 何故だ?

 だが、考える前に鬼兵衛は首を横に振った。


「その日は家内の誕生日でね。早く帰らないといけない」


 妻子持ちだったのか。


「ああ、娘もいるよ。最近反抗期みたいでちょっと困ってるんだけど」


 心を読まれた、と思ったら、普通に声に出してたらしい。

 だが、いっそ異常なまでに普通だな。


「で、そういや何しに来たんだ?」

「ああ、暁御の分を崩しに来たんだ。って、あれは……?」


 いきなり、鬼兵衛が俺の後方を見た。

 それにならって、俺も視線をそちらへ向けると――、

 そこには手をつないで泣いてる少年少女がいた。

 はて、あの感じだと、小学校低中学年くらいか。


「はて、どうしたのか。おーい、そこな少年少女、何かあったのか?」


 俺は、立ち上がるとその子たちの方へと向かう。

 近づいてみると、二人の顔はよく似通っていて、兄弟であることを連想させる。

 二人が顔を上げた。


「どうしたんだ? 困っているならお兄さんが力になろう」


 すると、ショートカットのツンツン頭の黒髪の少年の方が口を開く。


「チケット、なくしちゃった……」


 チケット?

 随分断片的だが――、

 ああ。

 川渡るためのあれか。

 てことは今日ここに来たのか。


「川、渡るときにチケットとして渡せって言われた?」

「うん」


 肯く少年。

 やはりか。


「さて、じゃあ、どうするか」


 言いながら後ろを向く。

 そこにはついてきていた鬼兵衛の姿が。


「あー……、まいったな。再発行してもらえばいいんだけど、再発行してもらってたら多分登録に間に合わないよね?」

「そうさな」


 地獄に来て二十四時間以内に、川の向こうで住居登録しなければ、彼らは家なき子になってしまう。

 しかも、来た時点で入獄手続きがあるから長いこと拘束され、残り何時間あるだろう。

 とはいえ、改めて申請し直せばいいのだが、その場合、、入獄手続きの情報が確定する一週間までは再申請できない。

 そして、この場合、働いてない霊が三丁目にいる場合は許可がないと違法だったりする。

 本来は彼らは川の向こう、四丁目にいなければならないのだ。

 さて、どうしよう。

 どうにかしないことには、この子たちはしばらく家なき子?

 なんかないか?

 何か……。

 と、そこまで考えて閃いた。


「ぶっちゃけ、川わたれりゃいいんだろ? だったら、これやるよ」


 俺は、着流しの懐を探ると、とある硬貨を六枚ずつ二人に渡す。


「あれ? それ、地獄じゃ使ってない奴だよね」

「俺は古物集めたりとか好きだったんだよ」


 俺は鬼兵衛をあしらうと、子供達に告げた。


「きっと、洒落のわかる奴なら乗っけてくれる」


 そう言って子供達ににやりと微笑んでみせる。

 チケット持って川を渡るのは形式ではない。

 六枚の硬貨が描かれたチケットを持って川を渡ること、それは正式に地獄に至るという儀式なのだ。

 だったら、これで問題なかろう。

 二人が渡守の方へと駆けて行く。

 しばらく、話していたが彼らの手から硬貨が受け取られ、

 二人が舟に乗る。


「上手くいったみたいだな」

「そうだね」


 その後に渡守が乗り、舟をこぎ出す。

 その時、ふわふわの猫毛を、背の途中まで伸ばした少女が、舟の上で手を振っていた。


「おじさーん、ありがとうございましたー!!」

「ああ、おじさん、おじさん、ね……」


 それでも俺は笑顔で手を振る。

 大人だから。



 俺が渡したのは六連銭、通称、

 六文銭。

 三途の川の渡し賃である。




 今日見送った少年少女。

 彼らのために我々は石を積んでいるわけで。

 だから俺は、

 明日も石を積むのだろう。






――

其の十です。
今回は大したこと書いてない……。
だけど、まあ、ロリショタも出てきましたし、次もまた何かあるかと。




では返信。





UMA様


店主は、脱サラしました。
定住を決めているのであればそんなことも可能だったり。
昔は、早いとこ転生させるためにあまりいい顔はされてなかったのですが、
生命減少に伴い、生命の数と魂の数が合わなくなっているので、地獄に定住全然問題なし、な状況になっているようです。



ザクロ様


まあ、どう考えても薬師でしょう、と言う話は置いておいて。
地獄の一丁目は入獄管理局。地獄に来て一番最初に入る建物です、いろいろ手続きとかします。
二丁目が就労者用住宅街。スーパーとかそういう店の他に、働いてる一般霊の人たちの家とかがある。
三丁目は、工場地区とか、仕事関係が固まってる感じ。賽の河原もここにある。ちなみに、薬師たちの寮もここ。
四丁目は裁判所がまるっと。三丁目の三途の河を隔てて向こう。ここで、転生について決まる。
五丁目に転生待ちの人たちの居住区が。
六丁目は転生の控え室と言うかなんというか。
もっと増えるかも。
余談ですが、普通に三途の河の川原で薬師たちは石積んでます。



妄想万歳様


じゃら男の名前が登場したのは作中五回。
初出が、其の六のじゃら男の手紙に、飯塚猛とフルネームで。
二回目から五回目までは同じく其の六の部分最後の方に。
問題は自己紹介と言うか名前を公開したのはたった一回でございます。
ちなみに、完全な余談ですが、店主は屋台に来るいろいろな客の人生に触れて生きてきたようです。


山椒魚様


じゃら男は諦めません、彼の美点は一途なところ!
とプッシュしても、多分じゃら男は報われない。
それこそ、一発逆転の切り札がないと、薬師が圧倒的有利ですよね。
はたして切り札はあるのか!?
多分ありません。



ニッコウ様


はっはっは、じゃら男の恋が実るわけ……、げふげふん。
まあ、店主と言えばお悩み相談ですよね。
え、違う?
と言うのはともかく。
私から言うことはただ一つ。
頑張って人類の叡智の結晶を立体化させてください、応援してます。



XXX様


四角関係と言うか、ずいぶん歪な図形になってますが、きっともっと増えます。
ただ、自分ドロドロしたの苦手なので、みんなそれなりに幸せになれると思う。
薬師が全員と結ばれるとか。
無理か、あの甲斐性なしでは。
ただ、少なくとも、前さんがMaine heroineであることをここに公言しましょう。






では、最後に。
川の向こうへ消えたロリショタ。
そのひと月後、薬師は二人と再会する。
しかし、彼らは何故かやつれているようで――!?
次回、俺と少女と少年と。
鬼っ娘は人類の叡智の結晶っ!


もしかしたら戯言とか『私と』とか『あたしと』とか入るかも。


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