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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/11 21:42
俺と鬼と賽の河原と。




 いくら育児放棄した、と言っても。

 一緒に住んでるだけはあって、由比紀が最低限の掃除はしていてくれたらしい。

 予想より小奇麗な部屋に、俺は閻魔と由比紀の三人でなんてこともなくゆったりした夜を過ごした。

 とここで言うはずだったのだが。


「そ、その……、急用ができたから少し出てくるわね」


 そう言って由比紀はそそくさと外へと出ていき。

 結局俺は。

 ソファの隅でいじけて体育座してる閻魔さまと二人っきりになってしまったのだった。




 しかも何故かセーラー服の。




其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。




 さて、どうしたものだろうか。

 いや、自問自答するまでもない。

 俺を迎え入れてから五分にしてなった、閻魔不機嫌の理由を聞き出すのがここにおける男の、いや、人間としての基本だろう。

 ああそうだ。

 だがしかし。

 俺はあえて――。


「なんでセーラー服なん?」


 修羅の道を行くことにした。

 いや、だって、ほら、何か気になったし。

 閻魔は恨みがましく俺を見上げる。


「今年の会議で決まったんですよ……!」

「せーらーふくが……?」


 思わず茫然と聞き返してしまった。

 何を会議してるんだ重鎮共。


「私の一年の制服は年の初めに会議で決定するんです……」


 初めて知ったこの事実に、俺は驚愕を隠せない。


「去年はブラウスにミニスカートでしたから、まだ気に入ってたのに……」


 うん、確かに去年はまともだった。


「……しかも最後まで残った対抗馬がナース服とバニーですよっ!? もうどうすればいいんですかぁ!」


 ああ、どこに向かっているのだろう、この地獄は。

 思わず遠い未来に思いを馳せたくなるがここはぐっと我慢。

 セーラー服って年でもないとか言わないのが優しさ。


「しかも……、ちょっとこれを見てください」


 そう言って手渡されたのは一枚の紙切れ。

 そこには綺麗に印刷された文字が箇条書きになっている。

 ・閻魔たんハァハァ。

 ・バニー閻魔たんっ! バニー閻魔たんっ!

 ・ここはボンテージで閻魔様にしばかれたいッ!

 ・セーラー服を脱がしたいです。閻魔さまの。

 ・ラバースーツッ!!。

 ・閻魔たんいいよ閻魔たん。

 ・スク水希望。

 ・透け透け水着がいいです。

 ここまで見て、俺は読むのをやめた。頑張った方だと思う。


「……なにこれ。なにこれ」


 なにこれこわい。


「……一般投票時のコメントです……」


 うわぁ……。

 というか。


「一般投票なんてあったんかい」

「あるんです……」

「俺は知らんぞ?」

「貴方の所には徹底的に情報規制を敷きましたから」

「別に変なのは選ばんぞ? 一応」

「変なのしかないんですよっ! これで身内に投票されたら、もう身投げするしか……」


 そーなのかー……。

 閻魔も大変なんだなぁ……。

 と、半ば無責任な感情を抱きつつ、俺は会話の内容を変えることにした。

 このまま続けたら閻魔が沈みに沈んで世を儚みかねん。


「あーうん。まあ。所で、何でいじけてるんだ? 別に最初から不機嫌じゃなかったろ?」


 そう、それだ。

 俺を入れた当初は優しく微笑んで入れてくれたのに次第に機嫌が下降していって、由比紀が帰った辺りに完全にいじけのだ。

 果たしてそれまで何があったのだろうか。

 そんな疑問に、閻魔はぽんと手を叩いて答えた。


「あ、そうでしたっ。薬師さん、由比紀と何があったんですかっ?」

「何が? 何がってどんな何がだよ」


 特に思い当たる節もないのだが。


「由比紀が妙にそわそわしてたり。貴方を見つめて頬染めたり。何かあったとしか思えませんっ!!」


 と、そこで思い出した。

 そうか。そういうことか。

 しかし、頬に接吻されましたぜお姉さん、という訳にもいかず、俺は曖昧に返事を返す。


「あー……、まあ、確かになー。由比紀の様子はおかしかったよなー。いや、別に仲間外れにしてる訳じゃないんだぞー?」


 しかし、いや、やはりと言うべきか。

 閻魔の御機嫌は斜めと言う奴で、未だ口を尖らせたまま。


「ズルいですっ」

「いやいやいやいや、大したことじゃねーよ」

「ずるいですー……」


 そうかー……、ずるいのかー……。

 何がどのようになってどうずるいのか解らないが、ずるいのか。


「じゃあ今からいつも通り料理作って頬にキスやらかせば満足なのか」


 思わず口をついて出た言葉だが、目に見えて閻魔は動揺した。


「き、ききききき、キスっ? キス、したんですか?」

「いや、ああ、うん。ここの前で、お年玉だっつって」


 あれ、言ってよかったんだろうかこれ。

 私生活で個人的な部分な気がしないでもないが、まあ、言ってしまった以上仕方ないか。

 と、まあ、俺は開き直ることに。


「で、まあ、しないだろ? まあ」


 ちゃんと何したかも話した訳だし。

 納得してくれるであろう、と俺は思った。思ったんだ。

 思ったのだが――。


「し……、してください」


 ……。

 今なんつった。


「してくださいよぉ!」


 言わなくても閻魔はばっちり発音してくれた。


「えー……、何を」

「ちゅー……」


 そして、やりやすいようにだろうか、頬をこちらに差し出すように上向ける。

 その黒髪が流れ、白い首筋があらわになる。

 で。

 頬にキスしろと?

 なんて状況だ。

 何かがおかしい。

 まるで酒に酔ったみたいな――。

 と、そこで気付いた。

 机の上の缶の存在に。

 ……チューハイだ。

 恐ろしく度の低いチューハイ。

 隣のコップに並々注がれたらしいが、一口ほどしか減っていない。

 しかし、それはワインひと口で意識を失う閻魔を酔わせるのに、十分だったらしい。


「ほら、お願いしますよぉ……」


 そう言ってずいっと閻魔はソファから身を乗り出した。

 俺の首元に手が回される。

 ……仕方がない。


「いや、待て待て待て待て。おかしいだろ。良く考えてみたら頬にキスされたの俺だし」


 そのままの勢いで突っ走りそうになったが、しかしよく考えて見ればそうだ。

 理屈では閻魔が俺の頬にキスしないと通らない。

 と言うことで何とかこのままけむに巻こうと思ったんだが。


「男らしくないですよ……っ?」


 酔っ払いに理屈は通じないらしい。

 ああ、藍音にもこんなことさせられたこと無いのに。


「後悔するなよ?」


 なんだかもう禅問答するのも疲れてきた俺は自棄にになる。

 そして俺は、そのまま差し出された閻魔の首筋に吸いついた。


「え? ちょっ……? んっ」


 閻魔から驚きの声が上がる。

 なんで頬でなく首筋か、と問われれば、俺は胸を張って意趣返しだと答える。

 何でも思い通りに行くと思うなよ?

 というか、酔っ払いの相手をさせられる俺にちょっとした仕返しをさせてくれ。

 頑張ってもがいていた閻魔だが、次第に抵抗は薄くなり、最後には完全に脱力してしまう。


「んぅっ、あ。や、薬師さん、ダメっ――!!」


 と、まあ、この辺で俺は閻魔を開放した。

 ふう、と俺は溜息を吐く。

 何やってんだろう、俺……。

 そんなことを想いながら俺は荒い息を吐く閻魔を見下ろした。


「これで満足だな?」


 それにしても新年早々えらい目にあったものだ。

 幸先不安だぜ。

 などと、近い未来に不安を感じながら、俺は閻魔に背を向けた。


「じゃあ俺は飯作るから。それまでに酒抜いとけよー?」


 無理か。

 流石に三十分やそこらで酒が抜ければ苦労はねえや。

 そう思って俺は台所に向かったのだった。












 ところがどっこい予想外。

 閻魔はまったく酒に耐性が無いが、回復速度だけは早かったらしい。

 流石閻魔と言うべきか、それとも酒に強くないのはなぜだと言うべきか。

 ただ、席に着き、真っ赤になってこちらを見にくそうにしていることからして、思い切り反省まっしぐららしい。


「ほれ飯だ」


 言いながら、炒飯を机に置く。

 閻魔は顔を俯けたまま、上目づかいでちらりと俺を見た。


「そ、その……」

「黙らっしゃい。俺も残念な気分だ」


 俺だって感傷的な気分に浸りたいよ。

 いい年して何やってたんだよ俺……。

 いい年した爺さんが年頃の……、いや、ああ、年頃のうん、ああ、……娘さん? の首筋に吸いついて――。

 考えるのは止そう。


「そんなことより炒飯だ」

「は、はい……、いただきますっ」


 それに応えて、俺も席に着く。

 うん、いい炒飯だ。

 そんなことを考えながら炒飯を口に運ぶ最中、閻魔はおずおずと言った風情で、口に出した。


「その……」

「ん?」


 飛び出したのは意外な様な、予想通りの様な判断に困る言葉。

 恥ずかしげに彼女はこう言った。


「今年も……、迷惑を掛けますっ」


 思わず俺は吹きだす。


「かかっ、承知したっ……!」


 瞬間、閻魔が顔を上げた。


「なんで笑うんですかぁ!?」

「いんや別にー? まあ、あれだ。厄介事は嫌いだが、面倒事は嫌いじゃねーぜ?」

「うう……、酷いです。私はもう貴方なしじゃ生きられないのに……」


 彼女は、涙目になって、上目づかいに俺を見る。


「責任、取ってくださいね……?」


 まるで結婚の約束の様だ。

 どういったものか、と考えた俺は、苦笑いで答えた。


「やぶさかじゃないかもしれなくはない」


 そんな俺に、閻魔は涙目のまま唇を尖らせる。


「今年も迷惑掛け通しますからね!?」


 やっぱり俺は――。

 苦笑い。





「お手柔らかにな」




 いやはや幸先不安だな。









―――
正月編は閻魔一族のターンなのか……。
ってことで正月編もいい加減終わりかと。
それなりに幸先のいいスタートだと思います。
このまま一人二人くらい萌え殺せれば今年はばっちりだと思います。
次回はどなたで行きましょうかね、と。

では返信。




奇々怪々様

街中で知り合いに会うだけでも微妙な気分になることがあるのに、バイトですからね。
店長の方は、現状予定はないです。
ちなみに薬師はコーヒーのおかわりだけで終業時間まで居座りました。
別に客も来なかったので店長ともお話したようです。


f_s様

店長への予想外の食いつきにびっくりしております、兄二です。
そんな薬師をあった女性逢った女性須らく落とすような……、落とすような……。
落としてるような気もするので否定出来ませんが、一応一発モブな方向で行きたいと思っていたんですが。
ただ、ここまで反応されると、ええ、まあ……。出してやらないといけない気もしてきましたよ、ええ。


あも様

美沙希ちゃんも今回びっくりしてましたしね。リアクション対象が狙えると。
ちなみに一応最低限は由比紀がやってるみたいです。
流石に毎日来てないので洗濯とかは薬師がやるのはきついですし、いろんな意味で。
そして暁御は、まあ。あの子の不幸属性が現実まで浸食し出したかと。


蓬莱NEET様

総勢十名……。
中々凄いことになってますね、数えたことはなかったのですが。
流石薬師と言うかなんというか……。でも、良く考えると現世居残り組とか、残してきたフラグとかを考えると……。
そして、これから増える予定がまったくない訳でもない訳で……。


ヤーサー様

前回。流石未亡人と言ったところでしょうか。
寂しい老後の心の隙間に入り込む薬師が末恐ろしいです。
ただ、既に女心をマスターするまでもないというか。
永遠に彼は女心をマスターできない星の元に生まれたんじゃないかと。

今回。意外な人がバイトを。がコンセプトです。
店長については現段階ではただのモブですので。
由比紀は基本、押せ押せなんですけどね。初心いのを隠してると言うかなんというか。
最後に、サイコロ、そりゃ二回出る確率もありますよ……。そりゃぁ……。


通りすがり六世様

脱字指摘感謝です。修正しました。
一応自分の知る範囲ですが、喫茶店は精々注連飾りとか飾る位ですね。
流石に衣装代も馬鹿にならないものと。
で、予想通り閻魔でした。いかがだったでしょうか。


take様

ご指摘感謝です。
き、きっとあれですよ。由比紀さんがテンパってたんですよ、ええ。
いえ、別に僕が間違えた訳じゃ、ええ、ああはい。
……修正しておきました。


春都様

フラグ着工……。
私の知らない所でそんなことが――!?
まあ、薬師なら息をするようにやってくれそうな予感もありますが。
果たしてどうなるでしょう。


光龍様

最近閻魔一族は酒に酔ったような行動が多いです。
今回は本気で酔ってましたが。
薬師は、まあ、朴念仁というか、あれですからね、李知さんにキスされても挨拶で通しましたから。今更頬位じゃ。
最初が五、次が四、しかしそううまくいかないのが暁御クオリティ!


トケー様

閻魔勢の攻めが激しいです。
あんまり動じない薬師の防御力の底知れなさを知るばかりですが。
泣いてる閻魔さまはデフォでした。
店長に関しては今はさっぱり。店長にここまでふれられて一番びっくりしてるのは私ですと胸を張りたい。


ryo様

推測の通り。
バッキバキです。もうめっきめきです。
今回は先に振って写真を撮ったのですが。
期待を裏切らないというかもういっそ哀しいというか、いい加減出してあげたいなと同情してしまいそうです。


Eddie様

覚えにくい名前だと自分でも思います。由比紀。
まず普通じゃないし。閻魔妹だし。
現状店長は一発、もしくは喫茶店イベント時のチョイ役です。
まあ、再登場はするでしょう。フラグが立つかまでは分かりませんが。


SEVEN様

お久しぶりです。
余りの糖分過多でモニタの前で砂糖の塊になってないか不安です。
だが一話から見直した自分の方がもっといろんな意味で痒いっ!!と叫んでおきたいと、え、ああ、どうでもいいですね。
とりあえず、今年も甘い方向で頑張ります。




最後に。

本当に……ッ、本当に期待を裏切らないよっ……!

ttp://anihuta.hanamizake.com/3rd.html


暁御……。

ああ、あとどうでもいいかもしれないけれど、セーラー服にスク水と言う選――。
ここから先は血に汚れて読めない。


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