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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/30 21:56
俺と鬼と賽の河原と。





 朝目覚める。

 そんな時、ボーっとした頭で、俺は手に柔らかい感触を捕まえた。


「何だこりゃって……、考えるまでもねーなこりゃ……」


 思わず呟く。

 なんてお約束なのだろう。

 当然俺の腕が掴まえていたのは――。


「……遂に目覚めてくれたのですか。喜ばしいことです。さあ、このままたぎる欲望をこの私に」


 藍音の胸だ。


「悪い」


 悪い冗談でもあるそれを見事無視して、俺は上半身を起こし、藍音と向き合うような状態で後ろに手を突こうとして。

 むに、と。

 何かが俺の手に触れる。


「ん?」


 柔らかいが、平たい感触。

 俺は振り向いた。


「遂に貧乳に目覚めた。大丈夫、準備はいつでも」


 銀子だ。

 ……。


「何故いる」


 俺の問いに、二つの声が同時に返ってくる。


「いつものこと」

「いつものことでしょう」


 お前ら仲いいな。ってか……、いつものことで片づけられても残念な気分なんだが。


「……なんで二人同時なのかね?」


 確かに狭くはないのだが、なかなかない経験だ。

 しかしその答えは、どうにも更に残念なものだった。


「……その為にベッドを大きくしたのですから」

「当然の帰結」


 ……お前ら、組んでやがるなっ?


「……ってどうでもいいか。俺はもうひと眠りするぜー……」


 今日は休日だ。先日は色々あったから疲れているんだ。

 そんな俺に、藍音から声がかかる。


「先日からお疲れのようですが、どうかしたのですか?」


 俺は適当な声音で返す。


「昨日はスライムに付き合って疲れたんだよ……、ってことでじゃーな……」


 言ったきり、俺は再び枕に頭を沈ませたのだった。







其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。








「……朝か」


 いや、昼だった。

 何故だかやたらと部屋を占領しているベッドから身を起こし、左右を確認。

 誰もいない。

 流石に、藍音も銀子いやしない。

 俺はほっと胸をなでおろし、薄い扉を開いて居間へと出たのだった。


「おはようございます」

「もう昼だけどな」


 言いながら、俺はどかりとソファに座る。


「昨日は散々だったな……。俺の運気はどーなってんだか」


 昨日の事件を思い出し、ぼんやりと呟いた言葉。

 それは部屋の宙に浮き、消えるだけだと思っていたが、意外にも藍音が食いついた。


「手相占いをしましょう」


 思わず、背もたれから背を浮かし後ろを振り向く。


「はい……? ってか、そんなんできんの?」


 藍音は俺のすぐ後ろにいる。


「マニュアルを見て一通りは」


 意外な特技が出てきたものだ。

 そして、自分でも予想外に疲れていたらしく、本当に占ってもらおうか、と考えて、やめた。


「今はいいさね。お前さん洗濯だろ?」


 流石に家事の邪魔はできない。

 そう思ったのだが、藍音は首を横に振る。


「洗濯は、銀子に代わっていただきました」

「へ? そうなん?」


 藍音は肯くことで、肯定した。


「……今頃、顔を埋めて満喫していることでしょう」

「……は?」


 ぽつりと呟かれた言葉に、俺は思わず聞き返すが、藍音はすぐに傍目には判らないながら表情を改めた。


「失言でした。忘れてください」

「まあ、良いけどな」


 別に悪事を働いてる訳でもあるまい。

 そう思って、追及をやめると、今度こそ話は本題に戻る。


「……それよりも、手相占いです。手を出してください」

「ああ、そうだったな。ほれ」


 断る理由がないので、俺は無造作に右の手を出し、それを藍音が包むように握る。


「……」


 息が吹きかかるほどの距離で、藍音が俺の手を見ていた。

 そして、見ながら俺の手をにぎにぎと揉むようにしたり、撫でたり。


「……なあ、手相見るとき揉んだり撫でたりって入ってたっけ」

「正確な結果を得るためには仕方のないことです」

「そーなのかー」


 意外に本格的、なのだろうか。

 しかし手相占いに関しては俺は全くの門外漢。

 口を出すのは憚られる。

 ただ、黙っているのも些か空気が重い。

 なので、あたりさわりないように俺は口を開いた。


「どうだ?」

「そうですね……、大体わかって来ましたが――」


 その後に続く言葉は、俺にとって、あまりに衝撃的だった。


「リアリティに欠けます。味も見て見ましょう」


 そう言って彼女は、俺の手を舐めたのだ。

 味……だと……!?

 今時の手相占いはッ……、味も見ると言うのかっ……!

 実に、実に予想外……。

 だが、俺が戦慄している間にも、藍音は俺の手の平、甲、指、そしてその間に舌を這わせていく。

 なんつーか……、何やってんだろう、俺……。

 倒錯的すぎる。

 とても気まずいです。

 そんな折、遂に藍音が咥えていた俺の指を離す。

 やけに淫猥な音が耳に残って、俺の気分を更に盛り下げてくれた。


「で、どうだ?」

「そうですね……」


 藍音はゆっくりと勿体付けて、言う。


「ラッキーカラーは銀色。恋愛運は現在最良ですね。ラッキーアイテムはメイドです」

「え……、いや、うん。とりあえず、メイドってアイテムだっけ……?」


 突っ込み所が満載過ぎて、変なところを突っ込んでしまった。


「私は貴方の所有物です」


 そして、恥ずかしげもなく断言する藍音に、俺は表情を変えず一言。


「……なあ、手相占いってこんなんだったっけ」










「ちょっといい?」

「今度は銀子さんか、俺は限界暇だが」


 ソファに転がり、ぼんやりとしている俺に、今度は銀子がやってくる。


「指のサイズを測りたい」

「なんで俺なのか、聞いてもいいかね」


 いきなりの要求に、俺は問いを発した。

 何故俺の手は本日大人気なんだ。


「……その内必要になる」

「なにゆえに」


 今危うげな発言をしなかったか。


「もとい、今皆に聞きまわってる。今度、贈る」


 なるほど、と俺は手を叩き、納得。


「右と左、どっちがいいんだ?」


 聞くと、銀子は一瞬の逡巡の後、言った。


「左」

「了解、ほれ」


 少しだけ、先程藍音さんにべろんべろんに舐められた右手でなくて良かったと思いながら、左手を出す。


「ん……」


 白く細い指が俺の指を滑る。

 何故か、薬指を念入りに。


「おい」

「プロの仕事に口出ししない」

「……悪か――、ってお前別に指輪の職人の類じゃねーだろうが。錬金術師だよ」


 一瞬普通に謝りそうになったじゃねーか。


「……私でも忘れていたことを掘り返さない」

「忘れてたのかよ」


 そんな会話を繰り広げながらも銀子は次々と俺の指に大きさの違う指輪を嵌めていく。


「これでピッタリ……」

「お、そうか」


 そして、これで終わりだ、と思った矢先。


「だけど、これだけじゃ心もとない」

「おい、まさか」


 嫌な予感が俺の背をよぎる。

 そして、そう言えば先日、こんな言葉を思い浮かべたなぁ。

 嫌な予感程、あたりやすい。


「咥えて見る」

「おい。明らかにおかしいよな。おかしいな、ああおかしいとも。明らかにからかって遊んでるな? おい」

「ぐだぐだ言わない」


 そう言って、銀子は俺の指を口に含んだ。

 お前ら、やはり組んでやがるな……!?

 そんなに俺の指をふやけさせたいのだろうか。

 そしてやっぱり、薬指だけ念入りだった。


「まったく、お前さんは結婚ネタをいつまで引っ張るんだよ」


 言う間にも、銀子は甘噛したり舌を押しつけたりとやりたい放題だった。


「へはははい。ほんひ」

「はいはい、何言ってんのか分からない」


 そして、しばらくそのまま咥え続けられ、遂に俺の指が開放される。


「で、どうだったんよ」


 銀子はしれっと言った。


「貴方は貧乳を愛でるのに最適な手をしている」

「……おい」










 まあ、何というか、危うく手がふやけそうだったが、何とか乗り切り。

 それが終わったころには、藍音が昼食を用意して待っていた。

 の……、だが」


「薬師様、口を開けてください」

「薬師、はい、あーん」


 何故俺は二人に挟まれて飯を食わされてるのだろうか。


「いや、食えるから。一人で食えるから」


 言ってみたのだが、


「お疲れの様ですから」

「無理は禁物」


 一刀両断どころか十字にばっさりである。


「ひゃっはー、ありがとう、諦めろとおっしゃるか」

「はい」

「だが断りたい年頃なんだが」


 流石にこの年になってそいつはきつい。

 のだが。

 俺は藍音を甘く見ていたらしい。


「なるほどそうですか」

「藍音さん? おおい藍音さん?」


 何か不穏な空気が漂う。

 そして。それは訪れた。


「……口移しがよろしいのですか。はい、わかりました、私も覚悟を決めましょう」

「あ、ちょっとまて、おい、藍音。話せばわかる――」


 がたん、と椅子が倒れる音が響く。

 俺が仰け反りすぎたのだ。

 そしてそれは――


「暴れるからです。ですが――」


 ――絶対に逃げられないことを意味する。


「チェックメイトです」


 藍音の唇は既に、俺の視界に入らぬほど近かった――。


「見事な手際。流石私が勝手に師と仰ぐ人。見習いたい」


 銀子の声が、妙に遠かった。





「あーん」


 現在俺は、無言で銀子の差し出す昼食を食べていた。

 ちなみに、あれきり藍音の動きはない、と言うかすぐ隣でそっぽを向いている。


「……照れるなら初めからするなよ」


 やはり今一つ変化に乏しいが、頬に手を当てているその様と、俺の声が聞こえていない時点で、結構照れてるようだ。


「そこはスルーするのが大人の男。女にはわかっててもやりたいことがあるの」

「そうですかい」


 既に下手に抵抗するのは諦めている。

 今度は銀子にまで口移しされてしまうかもしれない。

 流石にこの年にもなってそいつはきついというものだ。

 既にきついが。


「ふふふ、まるで新婚さんみたい」

「抑揚無しで言われてもな」

「ふふふっ、まるで新婚さんみたいっ!」

「まったく別人のように振舞われてもな……」

「人の努力を無駄にするのはよくないこと」

「……。ははは、こいつめぇっ!」

「気味が悪い」

「……人の努力を無駄にするのは良くないと思うんだが」

「やっぱりいつも通りが一番いい」

「その通りだとは思うがね? 流石にさっきのは酷いと俺は思う」


 その時だ。

 唐突に銀子は言った。


「ご飯粒ついてる」

「まじか」

「私が付けた」

「……おい」


 そして、それからの展開はやはり、お約束である。

 果たして、この子は結婚願望でもあるのだろうか。

 いや、あるのかもしれない。

 年頃、とは言えないが、年頃の時に恋愛しなかったようだし、こっち来てからは家なしだ。

 安定した生活にあこがれがあるのかもしれない。

 だったら、付き合ってやるのも悪くはないか。

 そう思った矢先――。


「おい……、照れるなら初めからやるなよ」


 結局彼女も、そっぽを向いていたりした。











 今日も平和だ。

 平和すぎる。


「ああ、地味にさみいな……」


 そんな日常を噛み締めて俺がコタツに入ろうとした矢先。


「いけません」

「ん?」

「余裕はありますが、食い扶持が増えたのです。節約を」


 藍音はそう言って、俺をソファに座らせた。


「つっても、寒いんだけど」


 そのように口を尖らせた俺に対して、答えは横から返ってきた。


「こうすればいい」


 不意に感じる体温。


「ラッキーアイテムは、メイドですから。それと――」


 横を見ると、銀子が俺の左隣に寄り添うようにして、腕を絡めていた。


「貴方も、嫌いではないでしょう?」


 続いて、藍音が銀子の逆側に座る。

 嫌いじゃない、確かに、人の体温は、嫌いじゃない。

 ただ、やっぱり言葉にしてしまうのは恥ずかしいから、溜息にして吐き出した。


「今日も平和だな……」







おまけ。

「貴方と私はキャラが被る」

「いいえ、貴方の方がメイドでない分キャラは薄い」

「今更メイドは時代遅れ」

「本人はあれですが……、ああ見えて彼はメイドが嫌いではない」

「そんなはずはない。薬師にデフォルトで属性なんかついてる訳が……」

「なるほどその通りです。元々あの人にメイド萌属性があった訳ではありません」

「まさか……」

「――そう、私が付けたのです」

「なんというっ……」

「長い時間を掛けて、メイドを見ると落ち着くようにして見せたのです」

「何という気の遠くなるような努力っ……!」

「好みがないなら……、創ればいいのです」

「やっぱり……、私の眼に狂いはなかった」

「なるほど、そういうことですか」

「組まない?」

「……良いでしょう。私も火力不足を感じていたところです」

「それで火力不足とはっ……、流石。師匠と呼ばせてもらう」

「教えることはありません。メイドの技は……、盗むものです」

「……わかった」


 という会話があったとかなかったとか。



―――
スライムのせいで俺の指が暴走しました。
反動です。
と言うことで、前から画策していた藍音さんと銀子さんのタッグが遂に起動。
そろそろ私は砂糖吐いて死ぬんじゃないでしょうか。



では返信。



キヨイ様

混沌すぎて、常人では発狂してしまいそうですね、ええ。
書いてる側もキーボードを打つ手が震えて……。
流石の薬師でも、スライムからは逃げ切れないようです。
ええ、確かにやさぐれはレアですね。スライムに会うたびやさぐれそうですが。


紅様

星の数ほど、属性がある。
今回は死兆星でした。
現実を見ない人が一番性質が悪いということの例だったのでしょうか。
きっとスライムの周りにはこれからも封印を施さねばならないような人たちが集まっていくのでしょう。


春都様

そこまでうざかったならある意味成功、と言えなくもないのですが――。
これ、良くて共倒れですからね。
ええ、今回で口直ししてください。カレーに砂糖水付けるようなもんですが。
まさかの藍音と銀子同時でした。


ヤーサー様

スライムシュートで自分も爽快でした。
もう、夢見がちどころか夢見すぎですね。スライムと一緒にしばらく封印ですが。
ちなみに、暁御については……、まあ……、予定は未定ということで。シリアス編が始まると危ういです。
薬師はきっと本気で困っていたならスライムでも助けるでしょう。そしてやさぐれると。


f_s様

霊侍は古傷を抉ってきますが、だからこそ心当たりがあって理解がある。
しかし少女は断絶しているのですね。
絶対に理解できない領域です。
落ち着いて深呼吸しましょう。そしてスライムとまともなキャラを比べて見れば自分を取り戻せる気がします。


通りすがり六世様

何故、でしょうか。私にもわかりません。何故あんなキャラを造ってしまったのか。
俺の心はざっくざくです。身を削って書く領域です。
厨二の被害は私にも来ると言う不思議。
Gガンは自分も好きです。中々理解が得られないのですが。


見てる人様

ここでそんな要素が混ざったら――。
私の心臓が破裂します。
世に出る前に闇に葬られますね。
ええ、スライムはぶっきらぼうだけど優しい、はずです。空回りしてますが。


奇々怪々様

霊侍ザスライムを懐に入れられるのはよっぽどの大物じゃないと無理でしょう。
私には不可能でした。
そして、厨二は惹かれあうのです。
スライムの近くに行くとカオスワールドに引きずり込まれるのです。


光龍様

この厨二王子ことサライムと夢見がちクイーン、自称悲劇のヒロイン少女。
二人いればカオスワールドを造るに十分すぎました。
胸が痛いです。軋む方向で。
次の出番はしばらく後にします。衛生面的に考えて。


リトル様

ザ・カオス・ワールド。
厨二病患者以外の人間は時が止まる。
混沌すぎて私ももう辛いです。
落ち着いてサライムのことを忘れようとしたら砂糖吐いたりとか。


トケー様

霊侍の性格の友人とは……。
ご愁傷様です。
ええ、厨二は混ぜるな危険です。程々にしておかないとまずいと私は今回学びました。
こっちも最近寒いので、風邪には気を付けたいと思います。


らいむ様

きっと、たぶん、もしかしたら、八十位で出てくるでしょう。
シリアスが始まったりしなければ、ですが。
もしくは出てきても二行で終わるとか。
どうなるかは、私にもわかりません。その内、各段落の一文字目を呼んでみるんだ、とか言うかもしれないです。


Eddie様

もう、笑うしかないです。
これが黒歴史の作り出す恐怖です。
そりゃもう、スライムアタックの瞬間だけ私の手が勝手に動いていた気がします。
俺の手は鎮まるところを知らないようです。


では最後に。


厨二、マゼルナキケン!


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