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No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
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[7573] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/12 21:56
俺と鬼と賽の河原と。



 早朝四時。


「ん……、今ぁ……、何時だぁ……?」


 その日、じゃら男は偶然目を覚ました。


「まだまだ……、早いじゃねえかよ、……あん?」


 じゃら男は枕元にある時計に手を伸ばし、時間を確認して再び眠りに落ちようとしたのだが――。

 違和感。


「……またかよ」


 布団の中に、誰かいる。





 とはいっても。

 そんなの一人しかいないわけだが。




其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。






「鈴、わざわざベッド貸してやってんだからよぉ、俺の布団に潜り込むのやめろよな……」

『なんで?』


 突っ返された紙に、じゃら男はテーブルに突っ伏した。

 もう何度目になるか分からない、見慣れた朝食の光景である。


「なんでってぇ……、そりゃあ、お前はまだガキだけどよ、女だし、一緒に寝るのは駄目じゃねえの?」

『じゃら男は、ねてるわたしにヘンなコト、するの?』

「しねえよっ! 誓ってもいい、なんせ絶賛片思い中だからな!」


 そう言ったじゃら男の背中は、煤けていた。

 だが、現実は思う通りにはいかないものである。


『じゃあ、だいじょうぶ』

「いやそうじゃなくてだなぁ……」

『おそうの?』

「だから――っ……、はあ……。ともかく、次は入ってくんなよ? 常識的な問題だからな?」

『がんばります』


 その一言に、じゃら男は溜息を一つ。


「頼むぜ、おい……」


 こうして、じゃら男の一日は始まったのだった。









「ってなことがあってだなぁ……」

「ふむふむ、このロリコンめっ」

「センセイにだけは言われたくねえよ」


 河原に、男二人。


「俺はロリコンじゃない」

「じゃあなんでセンセイの周りにんなにロリが集まってんだよ」

「人徳?」

「……」


 呆れた顔で息を吐くじゃら男に、薬師は苦笑を返した。


「別になんかしたわけでもないんだけどなぁ……」

「これだからセンセイは鈍感だって言われるんだぜ?」

「んー、って、俺よか、お前さんちの幼妻だろ? 今の問題は」


 今度は先ほどと打って変わってにやりといやな笑みを浮かべる薬師に、じゃら男は背筋を凍らせつつ、言う。


「幼妻って……、なぁ……」

「家事、させてるんだろ? ほれ、そこにあるお前さんの弁当を作ったのは誰だ?」

「そ、そりゃあ鈴だけどよぉ、先生だって、あれじゃねーか! メイド服の、なんつったっけ……」

「あれは娘で、秘書かつメイドだから問題ない」

「……」


 じゃら男は絶句。

 そこに薬師は言葉をはさむ。


「で、だ。お前さんは鈴をどうしたい訳だ?」


 じゃら男は考える。

 確かに家に入れた。では、これからどうするのか。

 自立を促して、独り立ちするのを待つのか。

 それとも家族として今後十年単位で付き合っていくのか。


「……いや、どうしたいっつってもよぉ……」


 言い淀むじゃら男に、薬師は言った。


「ま、即答するよかそっちのがいいとは思うがね」

「は?」

「精々悩め若人ってことだよ」

「ううむ……」

「だが、あれさね。手え出したのはお前さんなんだから、掴まれた手はしっかり握っててやれよ?」


 責任とってやれ、と薬師は言う。

 じゃら男は何も言い返せなかった。


「お前さんもわかってんだろ? 底辺に沈んでる人間に手を差し伸べるってことがどういうことか」

「……そうだな」


 その言葉に、じゃら男は頷く。

 分かっていたことだ。

 手を出した時点で半端にはできない。

 自分がそうだったように、手を差し出してくれた人間というのは、本人が思う以上に特別な意味がある。


「つーこって、それなりに甘えさせてやれよ。ま、それで間違いが起きたなら起きたで、お幸せにってやつだ」

「間違いってなぁ……」

「お前さんが起こさない自信あるならいいだろう? うん」

「……ま、いいか。頑張ってみるか」

「おう、頑張れ。まずは感謝の気持ちを表すことから始めるこったな。居候の負い目があるから距離を測りかねてるんだろ。安心させてやれば、落ち着くさ」


 薬師の言葉に頷いて、じゃら男は立ち上がる。


「おう、男猛、いっちょやってくるぜ!」

「猛……? あ、あーあーあー! 猛な? おう、頑張れよ猛」

「一瞬猛って誰かわかんなかっただろ、おい」

「カレーにつけて食べることで有名な小麦粉を平たく焼いたナンのことかな?」

「……誤魔化したな」

「ちなみにインドじゃナンよりチャパティの方が一般的らしいぞ?」












「なぁ……」


 じゃら男は夕食を囲みながら、言おうとして、やめる。

 感謝の気持ちを表すとか、甘えさせてやるとか言ってみたものの、上手い言葉が見つからない。


『?』

「いや、えーと、よ……」


 元々、じゃら男は器用な人間ではない訳で。

 そもそも器用だったなら、不良なんてやってないし、もっとうまく立ち回れただろう。

 言い淀むじゃら男に、鈴はメモ帳を突き付ける。


『めいわく?』

「迷惑って……、何がだよ」


 意味が分からず聞き返すじゃら男に、今一度メモ帳が返ってきた。


『いいにくそうだから。わたし、めいわくなおんなかな?』

「ちげぇよ! その、あれだよ! 察しろよ、察してくれよ…!」


 思わず捲し立てるようにじゃら男はそれを否定する。


「俺ぁ学がねえからなんも出てこねえんだよ。別に迷惑なんて言ってねえ。迷惑だったら蹴りだしてるっつの」


 じゃら男の言葉に、鈴は苦笑した。


『猛は、お人よしだから』

「はあっ?」


 自分とは無縁な言葉に、じゃら男は素っ頓狂な声を上げる。


「俺がお人好しなわけねえだろ。あれだっつの、確かに、困ることはあるけどな、迷惑じゃねえんだよ」


 やっと言いたいことがまとまって、喉に引っ掛かっている。

 そう感じたじゃら男は、そのまま畳みかけた。


「あれだあれ、ニアンス、じゃなくてニュアンスだよ。困ると迷惑、のニュアンスの違いだよ」


 必死に頭の中から言葉を攫って、吐き出していく。


「つかな、困る以上に助かってるんだよ。洗濯とかな。俺はもう、お前無しじゃ生きらんねえ、っつの」


 洗濯ものの山はもうないし、レトルトばかりだった冷蔵庫は今では、野菜が詰まっている。

 既にじゃら男にとって鈴は、なくてはならないレベルで、生活に溶け込んでいる。


「それに……、いなくなったら……、多少なりとも寂しいだろうしよ」


 小声で呟いた言葉。

 それに鈴は、困ったように、嬉しそうに、微笑んだ。


『おんなったらしだね』

「……はぁ? 女たらしなんぞセンセイで十分だよ」

『うん、だからおんなたらしなんだよ』

「……意味わかんねえ」


 そう言って諦めたように肩をすくめるじゃら男。

 対して鈴は、大層楽しそうに、微笑んだ。


『うん、わかった』

「何がだよ」


 じゃら男の問いに答えて、鈴はペンを走らせる。

 そうして突き出されたそれには、こう書いてあった。


『責任、とるね?』


 じゃら男は、苦笑を返した。


「百年早えよ」










 ある日、少女は家事をしながら、気づく。

 自分のメモに自分のものではない言葉が書いてあることに。

 そこには、こう書かれているのだ。


『いつも、ありがとよ』


 少女はそれを見て、不器用な同居人を思い浮かべ、微笑むのだった。






――
ほのぼのです。
幼妻を獲得したじゃら男の話でした。
うん、もう人生の墓場だね。
幼女とお幸せに。
まあ、ツンデレなじゃら男を書きたかっただけなんですけど。

ちなみに、雑記の方にも書きましたが、これ、一回消えてるんですよね。
同じ話を書きなおすのは辛かったっす。
しかも書いて出来立てほやほやをあげてますから、ちょっとおかしいとこあるかも。

あと、近況報告となってしまい心苦しいのですが、雑記にも書いたとおり、水曜日から宿泊研修に行ってきます。
木曜には帰ってくるので大幅にとはいきませんが一日二日更新が遅れるかもしれません。


次はどうしようか。
シリアスか、李知さんか、玲衣子さんか、閻魔か、妹か。



では返信。

春都様

暁御、おいしいんだか悲しいんだかわからない子です。
ラブコメ的には、悲しいんでしょうな……。
これで覗き放題ですよ、薬師の風呂を。
SDNが常人の数百倍を示してますから。


ミャーファ様

SDNの他にD(どう考えても)M(メイン)H(ヒロイン)値が……、嘘です。
いや、でもありそうです。正確にはMulti Directional Main Hiroin、MDMHですね。意味は多角的に見てメインヒロインってことで。
李知さんとか最近MAXだったりしそうです。
救われない暁御に運命の女神はほほ笑むのでしょうか。


あも様

S(sugu)D(deban)N(nakunaru)というより――。
S(sudeni)D(debann)N(nai)な気もします。
404Not person その人物は存在しません。
きっと藍音との違いはあれですね、余裕の有無でしょう。破れかぶれでは薬師には通用しないと。


奇々怪々様

生きたステルス迷彩、それがソリッド暁ー御ですね。
段ボール要らずです。
まあ、床とかをすり抜けない点に関しては、暁御の都合のいい方に能力が働くみたいですね。
果たして、思い通りかどうかはわかりませんが。


ヤーサー様

そう、大体二番目位のキャラなのに、一番影が薄いのですね。
暁御ステルスを習得するほどに。きっと、薬師が全開でサーチしてもいることしかつかめないでしょう。
きっと、薬師独り暮らしならたまに不用心にも鍵を開けてるのでしょうが、藍音がいますからね。
次の出番、いつでしょうね。


マイマイ様

よくも悪くも、性欲は人間の有する欲求の中で大きな物ですからね。
いわゆる、仏の悟りの精神には近づけると思います。その他色々の欲は付いて回りますが。
現状の暁御は限りなく妖怪に近い人間です。ええ、きっと。まだ、はい。
人間のスキルじゃないけど、きっと、多分、幽霊ならそう、おかしいことではない、はず……? 多分。


悠真様

まだ、ギリ異能者レベル、でしょうか。
いや、でも、そう言えば神の声と会話を果たしてましたね。
超高性能ステルス、これは便利でしょうね。スパイに偵察なんでもござれ。
でも――、誰もそんな技能持ちいることに気付かない。


ガリガリ二世様

これはお赤飯ですね。
暁御が二話連続で出るなんてここ最近類を見ませんよ。
ああおめでたい。
まさか暁御さんを二話連続で見ることができるなんて縁起がいいです。


SEVEN様

確かに、闇討ち暗殺に向いたスキルですね。
このまま上手く育てば……。
我らが怨敵を……。
でもきっとその前に上手くフラグ編集して止めるんでしょうね、あの天狗は。


通りすがり六世様

いつになれば彼女のまともなイベントが来るのでしょうか。ちなみ私の記憶ではあきみだったはずですが、……そうですよね?
ちなみに、エンド内容には、個別エンドから、オールハーレム、閻魔一族エンドなどグループエンド、誰ともくっつかずうやむやエンドなど、果ては鬼兵衛や酒呑とトリオエンドまで。
色々考えてはいますが、多分その時一番しっくり来そうなエンドがそうなるのでしょう。
まあ、終わるまで結構な間がありますし、もしかすると全部書く可能性もあったり。


f_s様

一番盗みたいはずの薬師のハートに関しては何の効果も持ちませんが。
まあ、幽霊という割に生き生きしてますからね。
飯も食えば、擬似的ながら怪我もする、私もすっかり忘れかけてたり。
SDN値は一体何ケタに達するのでしょうね。


Eddie様

ハアハアする暁御萌えだったはずなんですけどね。
オチが付くオチ体質なのですね、暁御は。
声も、気のせいか、的な。もしくはただの雑音としか聞き取れなくなるとか。
さあ、奇跡は起こるのでしょうか。


笹様

一瞬009に見えた私はちょっと寝不足なのでしょう。
決して落とせぬ、被撃墜率0,000000009%の要塞に立ち向かう戦乙女たち――!
と、書くと何となく戦記物に見えますね。
かくれんぼで遊んでる途中でうとうとしててはっと目覚めると皆帰っていたのもいい思ひ出です。


らいむ様

きっと反則を繰り返せば個室で個別指導が……っ。
閻魔の手料理は千年物の大天狗が死にかけるレベルですからね。
異能の一つ二つ手に入れてこないと……。
もしくはやはり人間やめるしか。そちらに特化した方向に。



では、最後に。


式は――、いつですか?


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