<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

オリジナルSS投稿掲示板


[広告]


No.7573の一覧
[0] 俺と鬼と賽の河原と。(ほのぼのラブコメ)[兄二](2009/12/29 22:04)
[1] 其の二 あたしと彼と賽の河原と。[兄二](2009/09/21 21:30)
[2] 其の三 俺と鬼と地獄の酒場と。[兄二](2009/12/24 21:37)
[3] 其の四 俺と彼女と昨日の人と。[兄二](2009/09/24 13:26)
[4] 其の五 俺とあの子と昨日の人。[兄二](2009/09/24 13:50)
[5] 其の六 俺とあの子と一昨日の人と。[兄二](2009/04/01 21:22)
[6] 其の七 俺とお前とあいつとじゃらじゃら。[兄二](2009/09/24 13:55)
[7] 其の八 俺とあの子とじゃら男の恋と。[兄二](2009/04/04 21:04)
[8] 其の九 俺とじゃら男と屋台のおっさん。[兄二](2009/04/05 22:12)
[9] 其の十 俺と迷子と三途の河と。[兄二](2009/04/19 01:06)
[10] 其の十一 あたしと彼といつもの日常。[兄二](2009/05/18 23:38)
[11] 其の十二 俺と鬼と黒髪美人と。[兄二](2009/05/18 23:38)
[12] 其の十三 俺と少女と鬼の秘密と。[兄二](2009/04/13 01:47)
[13] 其の十四 俺と野郎と鬼と少女と。[兄二](2009/05/18 23:39)
[14] 其の十五 俺と河原と兄妹と。[兄二](2009/04/19 01:04)
[15] 其の十六 私と河原とあの人と。[兄二](2009/04/24 23:49)
[16] 其の十七 俺と酒場でただの小噺。[兄二](2009/05/18 23:32)
[17] 其の十八 俺と私と彼と彼女と。[兄二](2009/05/24 01:15)
[18] 其の十九 俺と彼女と気まぐれと。[兄二](2009/05/21 09:39)
[19] 其の二十 俺と彼女とデートと。[兄二](2009/05/24 01:16)
[20] 其の二十一 俺とお前とこの地獄と。[兄二](2009/10/17 19:53)
[21] 其の二十二 俺と天狗と閻魔と家族と。[兄二](2009/05/31 00:27)
[22] 其の二十三 俺と閻魔とパーティと。[兄二](2009/06/04 01:07)
[23] 其の二十四 俺と閻魔と部屋と起源と。[兄二](2009/06/05 00:43)
[24] 其の二十五 じゃら男と少女と俺と暁御と。[兄二](2009/06/09 23:52)
[25] 其の二十六 じゃら男と少女とでえとと。[兄二](2009/07/30 22:38)
[26] 其の二十七 じゃら男と少女と俺と暁御とチンピラ的な何か。[兄二](2009/06/16 00:38)
[27] 其の二十八 俺とじゃら男とリンと昨日と。[兄二](2009/06/16 11:41)
[28] 其の二十九 俺と酒呑みと変なテンション。[兄二](2009/06/20 00:27)
[29] 其の三十 俺と前さんと部屋とゲームと。[兄二](2009/06/21 19:31)
[30] 其の三十一 俺と河原と妹と。[兄二](2009/06/27 19:20)
[31] 其の三十二 俺と山と天狗と。[兄二](2009/06/27 19:18)
[32] 其の三十三 俺と山と天狗と地獄と。[兄二](2009/06/30 21:51)
[33] 其の三十四 俺と彼女と実家と家族と。[兄二](2009/07/03 20:35)
[34] 其の三十五 俺と家族と娘と風邪と。[兄二](2009/07/07 00:05)
[35] 其の三十六 私と彼と賽の河原と。[兄二](2009/07/09 23:00)
[36] 其の三十七 私と主と、俺と部下と賽の河原と。[兄二](2009/07/12 22:40)
[37] 其の三十八 俺と部下と結局平和と。[兄二](2009/07/17 23:43)
[38] 其の三十九 俺とその他と賽の河原と。[兄二](2009/07/21 08:45)
[39] 其の四十 俺とメイドと賽の河原と。[兄二](2009/07/20 22:53)
[40] 其の四十一 俺と無関係などっかの問題と幕間的な何か。[兄二](2009/07/22 21:56)
[41] 其の四十二 暁御と奴と賽の河原と。[兄二](2009/07/25 22:22)
[42] 其の四十三 俺と海と夏の地獄と。[兄二](2009/07/28 00:21)
[43] 其の四十四 俺と海と真の地獄と。[兄二](2009/07/30 22:35)
[44] 其の四十五 俺と貴方と賽の河原と。[兄二](2009/08/01 23:35)
[45] 其の四十六 俺とお前の滅亡危機。[兄二](2009/08/04 21:48)
[46] 其の四十七 俺とお前と厨ニ病。[兄二](2009/08/07 20:23)
[47] 其の四十八 疲れた俺と罰ゲーム。[兄二](2009/08/10 19:10)
[48] 其の四十九 俺と鬼と……、は? 猫?[兄二](2009/08/13 20:32)
[49] 其の五十 俺と盆と賽の河原と。[兄二](2009/08/17 00:02)
[50] 其の五十一 私と俺とあたしと誰か。[兄二](2009/08/19 23:35)
[51] 其の五十二 貴方と君の賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:03)
[52] 其の五十三 俺と藍音と賽の河原と。[兄二](2009/08/28 23:01)
[53] 其の五十四 俺と彼女ととある路地。[兄二](2009/09/04 21:56)
[54] 其の五十五 幕間 ある日の俺とメイドと猫耳。[兄二](2009/09/10 21:30)
[55] 其の五十六 幕間 俺と閻魔と妹の午後。[兄二](2009/09/14 22:11)
[57] 其の五十七 変種 名探偵鬼兵衛。前編[兄二](2009/09/21 21:31)
[58] 其の五十八 変種 名探偵鬼兵衛。 後編[兄二](2009/09/21 21:28)
[59] 其の五十九 俺が貴方と一緒に縁側で。[兄二](2009/09/24 22:25)
[60] 其の六十 俺と君とそんな日もあるさ。[兄二](2009/09/27 22:00)
[61] 其の六十一 俺とお前じゃ端から無理です。[兄二](2009/10/02 21:07)
[62] 其の六十二 今日は地獄の運動会。[兄二](2009/10/05 22:30)
[63] 其の六十三 ワタシトアナタデアアムジョウ。[兄二](2009/10/08 22:36)
[64] 其の六十四 鈴とじゃら男と賽の河原と。[兄二](2009/10/12 21:56)
[65] 其の六十五 俺と妹とソファやら鍵やら。[兄二](2009/10/17 19:50)
[66] 其の六十六 俺と御伽と竹林と。[兄二](2009/11/04 22:14)
[67] 其の六十七 俺と翁と父よ母よ。[兄二](2009/10/23 21:57)
[68] 其の六十八 俺と翁と月と水月。[兄二](2009/11/04 22:12)
[69] 其の六十九 貴方の家には誘惑がいっぱい。[兄二](2009/11/04 22:11)
[70] 其の七十 俺と娘と寒い日と。[兄二](2009/11/04 22:08)
[71] 其の七十一 俺と河原と冬到来。[兄二](2009/11/04 22:04)
[72] 其の七十二 俺と露店とこれからしばらく。[兄二](2009/11/07 20:09)
[73] 其の七十三 俺と貴方と街で二人。[兄二](2009/11/10 22:20)
[74] 其の七十四 俺とお前と聖域にて。[兄二](2009/11/13 22:07)
[75] 其の七十五 家で俺とお前が云々かんぬん。[兄二](2009/11/23 21:58)
[76] 其の七十六 俺と厨二で世界がやばい。[兄二](2009/11/27 22:19)
[77] 其の七十七 俺と二対一は卑怯だと思います。[兄二](2009/11/30 21:56)
[78] 其の七十八 俺とお前の急転直下。[兄二](2009/12/04 21:44)
[79] 其の七十九 俺と現世で世界危機。[兄二](2009/12/11 22:39)
[80] 其の一の前の…… 前[兄二](2009/12/15 22:10)
[81] 其の八十 俺と現世で世界危機。 弐[兄二](2009/12/19 22:00)
[82] 其の一の前の…… 後[兄二](2009/12/24 21:28)
[83] 其の八十一 俺と現世で世界危機。 終[兄二](2009/12/29 22:08)
[84] 其の八十二 明けましておめでとう俺。[兄二](2010/01/02 21:59)
[85] 其の八十三 俺と貴方のお節料理。[兄二](2010/01/05 21:56)
[86] 其の八十四 俺と茶店とバイターさんと。[兄二](2010/01/11 21:39)
[87] 其の八十五 俺と閻魔とセーラー服と。[兄二](2010/01/11 21:42)
[88] 其の八十六 俺と結婚とか云々かんぬん。[兄二](2010/01/14 21:32)
[89] 其の八十七 俺と少女と李知さん実家と。[兄二](2010/01/17 21:46)
[90] 其の八十八 俺と家と留守番と。[兄二](2010/01/21 12:18)
[91] 其の八十九 俺としること閻魔のお宅と。[兄二](2010/01/23 22:01)
[92] 其の九十 俺と実家で風雲急。[兄二](2010/01/26 22:29)
[93] 其の九十一 俺と最高潮。[兄二](2010/02/02 21:30)
[94] 其の九十二 そして俺しか立ってなかった。[兄二](2010/02/02 21:24)
[95] 其の九十三 俺と事件終結お疲れさん。[兄二](2010/02/06 21:52)
[96] 其の九十四 俺とアホの子。[兄二](2010/02/09 22:27)
[97] 其の九十五 俺とチョコとヴァレンティヌスと。[兄二](2010/02/14 21:49)
[98] 其の九十六 俺が教師で教師が俺で。[兄二](2010/02/22 22:00)
[99] 其の九十七 俺と本気と貴方と春と。[兄二](2010/02/22 21:55)
[100] 其の九十八 ~出番黙示録~アキミ。[兄二](2010/02/25 22:37)
[101] 其の九十九 俺と家と諸問題と。[兄二](2010/03/01 21:32)
[102] 其の百 俺と風と賽の河原で。[兄二](2010/03/04 21:47)
[103] 其の百一 百話記念、にすらなっていない。[兄二](2010/03/07 21:47)
[104] 其の百二 俺と憐子さんと前さんで。[兄二](2010/03/10 21:40)
[105] 其の百三 俺とちみっこと。[兄二](2010/03/14 21:15)
[106] 其の百四 俺と保健室が危険の香り。[兄二](2010/03/17 21:48)
[107] 其の百五 俺と娘と妹でなんやかんや。[兄二](2010/03/20 21:43)
[108] 其の百六 大天狗は見た![兄二](2010/03/24 20:09)
[109] 其の百七 俺と春とクリームパン。[兄二](2010/03/27 21:33)
[110] 其の百八 俺と憐子さんと空白。[兄二](2010/03/30 21:44)
[111] 其の百九 猫と名前と。[兄二](2010/04/03 21:03)
[112] 其の百十 俺と猫とにゃんこと猫耳とか。[兄二](2010/04/07 21:56)
[113] 其の百十一 春と俺と入学式。[兄二](2010/04/17 21:48)
[114] 其の百十二 俺と子供二人。[兄二](2010/04/13 22:03)
[115] 其の百十三 俺とあれな賽の河原と。[兄二](2010/04/17 21:41)
[116] 其の百十四 俺と生徒とメガネ。[兄二](2010/04/20 22:07)
[117] 其の百十五 眼鏡と俺と学校で。[兄二](2010/04/23 21:52)
[118] 其の百十六 貧乏暇なし、俺に休みなし。[兄二](2010/04/27 22:07)
[119] 其の百十七 俺と罪と罰と。[兄二](2010/04/30 21:49)
[120] 其の百十八 大天狗を倒す一つの方法。[兄二](2010/05/05 21:39)
[121] 其の百十九 大天狗が倒せない。[兄二](2010/05/09 21:29)
[122] 其の百二十 俺とご近所付き合いが。[兄二](2010/05/12 22:12)
[123] 其の百二十一 眼鏡と俺とこれからの話。[兄二](2010/05/16 21:56)
[124] 其の百二十二 俺と刀と丸太で行こう。[兄二](2010/05/22 23:04)
[125] 其の百二十三 俺と逢瀬と憐子さん。[兄二](2010/05/22 23:03)
[126] 其の百二十四 俺と指輪と居候。[兄二](2010/05/25 22:07)
[127] 其の百二十五 俺と嫉妬と幼心地。[兄二](2010/06/02 22:44)
[128] 其の百二十六 俺と噂も七十五日は意外と長い。[兄二](2010/06/02 22:05)
[129] 其の百二十七 にゃん子のおしごと。[兄二](2010/06/05 22:15)
[130] 其の百二十八 俺とお人形遊びは卒業どころかしたことねえ。[兄二](2010/06/08 22:21)
[131] 其の百二十九 俺と鬼と神社祭。[兄二](2010/06/12 22:50)
[132] 其の百三十 俺と日がな一日。[兄二](2010/06/15 22:03)
[133] 其の百三十一 俺と挑戦者。[兄二](2010/06/18 21:47)
[134] 其の百三十二 俺と眼鏡と母と俺と。[兄二](2010/06/22 23:21)
[135] 其の百三十三 薬師と銀子と惚れ薬。[兄二](2010/06/25 22:09)
[136] 其の百三十四 俺とできる女と強面な人。[兄二](2010/06/29 22:08)
[137] 其の百三十五 逆襲のブライアン。[兄二](2010/07/03 22:49)
[138] 其の百三十六 俺とお前と学校の怪談が。[兄二](2010/07/06 22:03)
[139] 其の百三十七 俺とある日のアホの子。[兄二](2010/07/09 21:21)
[140] 其の百三十八 すれ違い俺。[兄二](2010/07/12 22:14)
[141] 其の百三十九 じゃらじゃらじゃらりとうっかり洗濯。[兄二](2010/07/15 22:11)
[142] 其の百四十 俺と序文はまったく関係ない話。[兄二](2010/07/19 22:50)
[143] 其の百四十一 俺と決闘と日本刀。[兄二](2010/07/22 20:42)
[144] 番外編 現在の短編:薬師昔話 お姫様の話。[兄二](2010/04/17 21:47)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[7573] 其の三十一 俺と河原と妹と。
Name: 兄二◆adcfcfa1 ID:b80cdb5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/27 19:20

 俺と鬼と賽の河原と。




「一つ積んでは母のため」


 どさり。


「二つ積んでは父のため」


 どさり。


「三つ積んでは――」


 どさり。








「人つんじゃ駄目っ!!」


 まさに死屍累々










其の三十一 俺と河原と妹と。








 俺は、閻魔宅の指紋認証システムとやらに指を付け、扉を開く。

 今日は、定期の掃除の日だった。







 その日は、明らかにおかしかった。

 扉を開き、そこに居たのは、閻魔ではない。


「やっぱり……綺麗…、おかしい…、…あの子に……、そんな真似が」


 そこに居たのは、フローリングを、というか床を鬼気迫る表情で見つめる、ウェーブのかかった銀髪の麗人だった。

 その服装は、無駄にふわっふわした感じの、簡素なドレス、というかワンピースとドレスの中間地点に立つようなそれ。

 ここで、俺の脳内に問いと選択肢が生まれる。

 問、この女は誰。

 一、言ってはいけないが、ようは気が付いた違い。いわゆるキチ――。

 二、ドレスを纏った新手の空き巣。

 三、妖精か何か。座敷わらし。

 ……、二?

 などと考えていると、女性はこちらに気づいたらしい。

 俺の方を向くと、口を開いた。


「貴方は誰かしら? 黒い着流しの新手の空き巣?」


 俺も返す。


「こっちの台詞だ。赤いドレスの新手の空き巣」


 それを、目の前の女性は否定した。


「私は空き巣じゃないわよ? だから貴方が空き巣」


 なんだその超理論、と思ったので俺もそれを否定する。


「いや、俺は空き巣じゃないんでな。お前さんが空き巣なんじゃねーの?」


 いたちごっこが始りかけるが。

 さて、ここで結論が出た。

 その結論を俺は口に出して見せた。


「まずは自己紹介から始めようか」


 すると、女性がそうね、と肯き、肯定の意思表示。

 その可憐な口から、すらすらと言葉が紡がれる。


「私の名前はしたなが ゆいこ。漢字は数字の二に、自由の由、比べるの比に、糸へんに己の紀」


 二 由比紀、変わった名前だな。

 俺がそのような感想を下している中、彼女は続けた。


「美沙希ちゃんの妹よ?」

「美沙希ちゃん?」


 聞き覚えのない単語が出てきたため、聞き返す。

 が、予想はつく。

 普通にこの家に入ってること、妹、この二つがあれば想像がつく。

 美沙希ちゃん。


「閻魔のことか」


 言うと、満足げに由比紀は肯いた。


「そう。でも、やっぱり本名を名乗ってないのね」


 ふむ、そう言えば前に本名聞いたが、普通にはぐらかされたな。


「恥ずかしいのか」


 すると、由比紀は愉快そうに笑った。


「そうなのよ。初染 美沙希っていうんだけど。あんまりにも可愛いから照れちゃって」


 まあ、閻魔の名には今一合わんな。恥ずかしがるこたないと思うがね。

 と、そこで。


「じゃあ貴方は?」


 自分のことすっかり忘れてた。

 そう言えば、俺って閻魔の何なのか。

 前回片付けて一週間なのに、少々ちらかり始めた家を見て、俺は考える。

 そして、たっぷり十秒ほど考えてこう結論付けた。


「あー……、俺は如意ヶ嶽薬師。ここに腐敗聖域が再び発生しないようにする番人だ」


 言ってて悲しくなってきたなんてことはない。

 絶対に。

 と、そのように悲壮な覚悟で言って見せた俺に、目の前の麗人は目を丸くして見せた。


「あれを…? 片づけたの?」

「……ああ」


 懐かしきあの日の戦いを思い出す俺。

 というか、ふと思ったんだが。


「お前さんが家出しなければこんなことには」


 すると、俺の目の前には笑顔で冷や汗を流す由比紀がいた。


「いえ、あの。私もすぐ帰るつもりだったのよ? だけど、一月出てただけであの有様で……。もう、家事に疲れてしまったのよ……」


 まあ、ちょっと留守にしたらサンクチュアリ一歩手前だったら逃げ出したくなるのであろう。

 由比紀はうつむきながら言った。


「うるせー。お前さんが責任もって育てて行けよ」


 それに対し、由比紀は芝居がかった動きで肩を竦めて見せる。


「いやよ。流石に限界よ。それに、貴方があの子の世話をした方があの子も嬉しいでしょうし」

「ん? 仲でも悪いのか」


 俺の方がいいというのはあれなのだろうか。

 由比紀が閻魔――、美沙希か。まあ、閻魔でいいか。

 閻魔をからかいすぎて仲が悪いのか?

 すると、由比紀はそれを否定した。


「……鈍いのね。まあ、ともかく、あの子をいじるのは好きだけど、家事はあまりしたくないのよ」


 まあ、嫌いなんてことはないのか。


「なんせ、心配になって定期的に様子を見に来てるようだからな」


 その言葉に、彼女は表面上変わりなく返した。

 だが。


「うふふ、そうかも知れないわね」


 そう言ってはぐらかしながら、背を向けた彼女の耳が真っ赤なのを、俺は見逃さなかった。


「うふふ、それを指摘されて耳が真っ赤かもしれないな」


 彼女は振り向かない。


「何のことかしら?」


 そう言って歩いて行く閻魔妹。

 とりあえず俺は、部屋の掃除を開始することにした。









 そんな出来事から三日ほど時が過ぎた。

 ううむ。

 暇だ。

 その日の俺は驚くほど暇で。

 しかも、よりにも寄って一人であった。

 由美と由壱は仕事であり、前さんも李知さんも同じく。

 というか、驚いたことに偶然にも俺だけが休みだったりする。


「飯、でも作ろうか……」


 ともあれ、普段一人なら絶対つくらないようなそれを作ろうかと考える程度には暇だった訳だ。

 さて、如意ヶ嶽薬師の三分クッキング。

 今回は、冷蔵庫にある物を使った野菜炒め。

 油をしき炒めるだけ。

 なんと簡単なのでしょう。

 三分クッキングなんて言うと、それで完成したものがこちらですなんて言うけども。

 俺はそんな真似はしない。

 本当に三分で決着を付けようじゃないか。

 さて、

 まずは羽団扇を用意します。

 次に、風を浄化して滅菌します。

 更に、野菜を全て放り投げ、風の刃で切ります。

 この間二十秒。

 次に、フライパンに油をしき、温めます。

 温まったら野菜を投入。

 塩コショウで味付けして、足りない火力は雷で補いましょう。

 ちなみに程よく雷で物を焼く技術を習得するのに二年かかった。

 さて、三分ジャスト。

 適当な野菜炒めが完成。

 簡単ですね、テレビの前の皆さんも――。

 虚しくなってきた。

 やめだやめ。

 俺は席に着くと、箸を持って、野菜炒めを食べ始める。

 味は…、普通だな。

 塩胡椒の味以外の何物でもない。

 そんな中、俺しかいないはずの部屋で、若い女性の声がした。


「一口、いただけるかしら?」


 ひょい、と皿の上の野菜が一つ、可憐な指につままれ、愛らしい口の中に消えた。


「あらおいしい」

「行儀が悪い」

「気にする方?」

「食事はおいしく派」

「奇遇ね。私もよ」


 そこに居たのは、銀髪の麗人。

 要するに、


「何の用かな閻魔妹」


 目の前の女性は、にっこりと怪しい笑みを浮かべつつ、口に人差し指を当てて言う。


「つれないわね、由比紀って、よ、ん、で?」

「わかった二氏」

「もうっ、照れなくたっていいじゃない」

「いやいや照れてないよ二氏。それで何の用かな不法侵入者」

「何気に不法侵入者にレベルダウンしてないかしら?」


 それで尚笑顔を崩さぬ由比紀に俺は言う。


「いやいやただの知り合いより不法侵入者の方が重要度高いだろ」

「じゃあ、親友が死にそうで、家に侵入者がいると知ったら?」

「無論侵入者を爆砕して親友の元に向かう」

「……用はないんだけどね」


 話を突然変えた上に用はないのか。


「じゃあ何しに来たんだか」


 すると、いきなり由比紀は目を潤ませた。


「用がないと来ちゃだめなの…?」

「そこまで親しくした覚えはねーけどな」


 するといきなり床に横座する由比紀。


「冷たいのね……! 貴方、昔はこうじゃなかった!!」

「三日前?」


 初めて会ったのは三日前ですよねー。


「そう、三日前の貴方はあんなに優しく自己紹介を!」


 優しい自己紹介ってなんだ。


「……、俺は変わったんだよ。今の俺は自己紹介も荒々しい」


 まあ、どうせなので乗ってみるわけだが。


「もう、あの頃には戻れないの……?」

「ああ…」


 そも、三日前の自分がどういう自己紹介をしたかも覚えてねーよ。


「そう…、貴方の決意はわかったわ…。じゃあ、最後に、貴方の自己紹介をもう一度きかせて?」


 決意を秘めた瞳で由比紀が俺を射抜いた。

 俺は椅子から立ち上がり、言う。


「ああ……。俺ぁ、如意ヶ嶽薬師、河原のバイターだっ、ってなんでやねん」


 とりあえずここで突っ込み。

 これ以上やると落とし所が解らん。


「ふふ、ノリがいいのね」


 なんか満足そうにしている由比紀。

 その後に彼女は立ちあがりながらこう続けた。


「私たち、気が合いそうじゃない?」


 俺は適当に答える。


「どうだかな?」

「うふふ、私と貴方であの子をいじめたら楽しそうじゃない?」


 ふむ、それはおもしろそうだな。

 だが。


「それで。愛しの美沙希ちゃん宅に頻繁に出入りしてる男はお前さんのお眼鏡に適ったのかい?」


 俺としては、


「なっ…、私はべちゅに…」

「噛んだ、動揺してる」


 こう言う女性をからかうのも楽しい訳で。


「な、ななな、何のことかしら?」

「ここにボイスレコーダがある」


 すると、由比紀は思い切り手を伸ばして、俺が取り出したレコーダを奪おうとする。

 が、ひょいと後に下げることで回避。


「あっ」


 倒れこみそうになる由比紀を両脇を掴んでキャッチ。


「大丈夫か二氏」

「っ……」


 それにしても由比紀、顔が真っ赤である。

 そしてそれを俺は眺めてにやにや。


「別に赤くなんてないわよ?」

「何も言ってない」

「……」


 最終的に、俺と由比紀は睨みあった末。

 由比紀が涙目になったあたりで俺が折れた。


「悪かったよ。ほれほれ、これ以上こんな所にいると、また涙目にされてしまうぞ?」

「な、なってないわ……」

「へいへい。ま、お前さんが閻魔のことが大好きなのはよくわかったから。安心しろ、手はださねーよ」


 すると、ゆっくりと由比紀は玄関に向かって行った。


「…また来るわ」


 そう言った彼女の耳はやはり、真っ赤だった。





 今日の我が家もいつも通り、平和である。





―――

うふふふふふふふふ、天狗編やるつもりだったのに、いつの間にか妹編。
予定は未定とはこのことだよ関口君。
いや、でもこのままだと色々タイミングが取れないことに気が付いたので、ここで妹参上。
あと、閻魔の本名が発覚。
それと、きっとあれだね、涙目になっちゃったりするのは家系だね。
さて、フラグは立つのやら。




さて返信と相成ります。




ねこ様

うふふうふふ、前さんとの罰ゲームは忘れた頃に参上です。
しかし、ツインファミコンですか。私の世代には全く通じない機体ですね。
たしか、ディスクシステムと一体化した奴でしたっけ? ディスクの回転部分がゴムなのでメンテなしじゃ数年持たないとか聞いたことがあります。
ともかく、薬師争奪戦が起こったらきっと美沙希ちゃんが閻魔権限で強引に嫁ごうとして血を見ることに……。
そして由壱は陰ながら由美を応援しながら結果を待つだけだと…。






奇々怪々様

酔わせた後膝の上でゲームするんですねわかります。
ただし、酔わせすぎるとべろんべろん、ってレベルじゃないので注意。
一口二口で何かに注目させて飲ませないのがポイントです。





スマイル殲滅様

大胆になれなくて、そこで酒を用意した、というのもそれはそれで萌える私です。
膝の上でゲーム。やったことありますよ、リアルで。いえいえ、嘘じゃないっす。
野郎ですけど……、もしくは猫。猫は可愛い、野郎は捻じれろ。
ともあれ、罰ゲームはしばらくとっときます。








最後に。

年季をひっくり返すほどの薬師の才能。
              虐めっ子気質。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.071339130401611